舞翼です!!
頑張って書きました。
それではどうぞ。
俺たちはセレブ御用達の店を出てから、エギルが経営するカフェ兼バーの≪
理由は、ALOでエギルが経営している店に、アイテムを預かって貰う許可を得る為だ。
ドアを押し開けたと同時に、備え付けられていたベルが“カランカラン”と音を立て、店内に響いた。
カウンターでグラスを磨いていた、巨漢の男がニヤっと笑いこちらを見た。
「いらっしゃい。 キリトにユウキちゃん」
俺たちは近くのスツールに腰を下ろした。
「エギル。 ジンジャエール」
「ボクも同じのお願い」
数分後。
眼前に炭酸の気泡を、シュワシュワと音を立てたグラスが置かれた。
一口飲んで喉を潤す。
俺たちは一息吐いてから、口を開いた。
「エギル。 実はALOから、キャラクターをコンバートさせる事になったんだ」
「だから……アイテムの事なんだけど。 二、三日の間だけ預かってくれないかな……」
エギルは一つ頷いてから、
「まぁ、それはいいが……また危ない事に、首を突っ込んでるんじゃねぇよな?」
「「ギクッ!?」」
エギル、勘が鋭すぎるよ……。
「大丈夫だ。 危険な事は無いはずだ」
「ちょっとだけ、他のゲームのリサーチをしてくるだけだから」
「……なら、いいけどよぉ。 何かあったら俺たちを頼れ、いいな??」
「「ああ(うん)」」
俺と木綿季は、『いい仲間を持ったな』、と改めて実感したのだった。
♦♦♦♦♦♦♦♦
俺たちは今、菊岡に指定された入院病棟三階にやって来ていた。
ドアの隣のネームプレートに患者の名前は書かれていない。
ノックの後、ドアを引き開けた。
「おっす! 桐ケ谷君、お久しぶり!」
俺を出迎えた人物は、長いリハビリの期間にお世話になった、女性看護婦の安岐さんだ。
俺は軽く頭を下げた。
「あ……ど、どうも、ご無沙汰してます」
安岐さんは、俺の隣に眼をやった。
「そっか~、君が紺野木綿季ちゃんだね。 桐ケ谷君がリハビリ期間中、何時も君の事を言っていたね。『俺の大切な人だ』ってね」
人に言われると恥ずかしいな……。
あの時は早く歩けるようになって、木綿季に会いに行くことしか頭になかったからな。
「こんにちは、
そう言ってから、木綿季はぺこりと頭を下げた。
安岐さんは首を傾げた。
「ん、桐ケ谷……紺野じゃなくて……」
安岐さんは手を打ってから、
「あ、そういうことね……。 二人はできているのね……。 なるほど、桐ケ谷君の必死さが解ったわ」
安岐さんは少し考えてから、
「二人は、もう経験済みなのね」
「「いや、まだです(けど)」」
「結婚の約束もしているんでしょ。 早めに終わらせときなよ」
木綿季が爆弾を投下した。
「誘っているんですけど。 和人は中々の奥手で」
嫌な予感がする。
「ほほう。 美少女の誘いを断るなんて、桐ケ谷君……いや、和人君も中々やるね」
「いや、そういうのは、もう少し大人になってから……。 木綿季も待ってくれるらしいので……」
安岐さんは笑みを浮かべた。
「まっ、頑張りなさい。 君たちはお似合いのカップルよ」
俺は自分を立て直してから、安岐さんに聞いた。
「……あと、今日なんですけど」
「あの眼鏡のお役人さんから話は聞いているよー。 何でも、お役所の為に仮想……ネットワーク?の調査をするんだって? 君たちが《あの世界》から帰って来て一年も経っていないのに、大変だねぇ。取り敢えず、これからよろしくね。 桐ケ谷夫婦」
「「こ、こちらこそ……よろしく(お願いします)……」」
俺は気になる事を聞いてみた。
「……で、眼鏡の役人は来てないんですか?」
「うん、外せない会議があるとか言ってた。 伝言、預かってるよ」
渡された茶封筒を開き、手紙を引っ張り出す。
【報告書は店で渡したアドレスに頼む。 諸経費は任務終了後、報酬と併せて支払うので請求すること。 追記――美人看護婦と婚約者と個室だからといって、若い衝動を暴走させないように】
「……あのやろう」
一瞬で封筒ごと握り潰し、ポケットに放り込む。
俺は強張った笑みで、安岐さんを見た。
「あー……それじゃあ、早速ネットに接続をお願いできますか……」
「あ、はいはい。準備出来てます」
俺たちが案内されたベッドの脇には仰々しいモニターの数々が並び、ベッドレストの上には新しいアミュスフィアが置かれている。
「じゃあ脱いで、桐ケ谷夫婦。 電極を貼るから」
「「は」」
「早く早く、カーテンあるから」
電極を貼ってから、俺たちはベットに横になった。
「何で、一緒のベッドに寝れるのかな~」
安岐さんは、ニヤニヤと笑みを零していた。
「ま、まぁ、色々あるんですよ……」
俺は言葉を濁した。
何か、色々とばれてる気もするが……。
「安岐さん。 ボクたちの体、お願いしますね」
「多分、五時間位潜りっぱなしだと思いますが……」
「はーい。 君たちの体はしっかり見てるから、安心して行ってらっしゃい」
それから俺たちは眼を閉じ、銃の世界に赴くコマンドを唱えた。
「「リンク・スタート」」
♦♦♦♦♦♦♦♦
数秒後。 俺は銃の世界に降り立った。
この世界の空一面は、薄く赤味を帯びた黄色に染まっていた。
GGOの舞台である地は、最終戦争後の地球という設定だ。
この空は、黙示録的雰囲気を出す為の演出なのかもしれない。
俺は改めて、眼前に広がるGGO世界都市、《SBCグロッケン》の威容に眼を向ける。
メタリックな質感を持つ、高層建築群が天を衝くように黒々と聳え、それらを空中回廊が網目のように繋いでいる。
ビルの谷間を、ネオンカラーのホログラム広告が鮮やかに流れている。
俺が立っている場所は、金属プレートで舗装された道の上だった。
どうやら此処が、初期キャラクターの出現位置らしい。
俺は両手を広げて見た。
俺はそれを見て、嫌な予感がした……。
両手の肌は白く滑らかで、指も吃驚するほど細い。
視点からして、そんなに身長は高いとは思えない。
すると、後ろから声を掛けてきた人物が居た。
振り向くと、漆黒の大きな眼に長い黒髪を揺らした、女性プレイヤーであった。
「あの~、貴方のお名前を伺ってもよろしいでしょうか??」
「えっと、キリトですけど……。貴方は??」
「ボクの名前は、ユウキでs」
「「え、ええええぇぇぇぇええええ―――――ッッッ!!!!!」」
よく見てみたら、ユウキだ。
現実世界の容姿に酷似している。
この世界では、敵を怯えさせる外見がパラメーターになる。
男たちは濃い
だがユウキのアバターは、一言でいえば美少女だ。
「え、本当にキリトなの!!?? ボクの婚約者のキリトだよね!!??」
「あ、ああ、そうだぞ……。 どうしたんだ、そんなに取り乱して……??」
俺はユウキに手を引かれ、近場にあるガラスに自身を映した。
そして、眼を見開いた。
「な……なんじゃこりゃ!!??」
映っていたのは、ユウキと同じく美少女だった。
長い黒髪が、頭頂部から肩甲骨あたりまで滑らかに流れている。
顔は手と同じで、透き通るような白、唇は紅、漆黒の瞳。
すると、俺たちに駆け寄るプレイヤーが居た。
「おお、お姉さん運がいいね! そのアバター、F一三〇〇番系でしょ! め~~~たに出ないんだよ、そのタイプ。 どう、アカウントごと売らない? 二メガクレジット出すよ!」
え……お姉さん??
俺は放心していたが、すぐに我を取り戻し、ある事故が起きていないか調べる為、両手で自身の胸をまさぐった。
幸い、そこには平らな胸板があった為、危惧した事には成らなかった。
次の言葉が俺の胸を貫く。
「おじさん、この子はボクの可愛い
……ユウキさん、今何と仰いました。 俺の耳が確かなら、妹って。
うん。 腹を括るしかない……。
少し声のキーを上げて、
「……ユ、
と言い、俺はユウキに抱き付いた。
ユウキは、俺の頭を撫でてくれた。
「そ、そうなのか……。
……今のおじさんが姉妹だってよ。
てか、傍から見れば姉妹に見えるんだね……。
男はそれを聞き、残念そうにこの場から去って行った。
だがまぁ、一つだけ良かったことがある。
この世界に来た目的は、噂の《死銃》と接触して、正体を探ることでもある。
その為には、とにかく強いアピールをし、目立たなくてはならない。
この姿で勝ち続ければ目立つことが出来る、と言う事だ。
……俺って、妹キャラを通すのか……。
自分で言うのも何だが、こんなに可愛い子が銃をぶっ放すなんて、シュールすぎるだろう……。
「なぁ、ユウキ。 俺って妹キャラを通していくのか……??」
「この世界に慣れるまでは、姉妹で通そうよ!!」
ユウキさん、何かテンション上がってませんか??
そう言えば、前から妹が欲しいとか言ってたな。
……この世界に慣れるまで、ユウキの妹で通すか。
「この世界に慣れるまでは、俺はお前の妹でいくか……」
「姉妹なんだから、手を繋いで移動しようか」
そう言ってから、ユウキは手を差し出して来た。
俺は手を取り、握り返した。
「行こうか」
「おう」
それから、俺たちは移動を開始した。
――数分後、あっけなく道に迷った。
SBCグロッケンと言う都市は、どうやら広大なフロアが幾つも重なる、多層構造をしているらしい。
簡単に言えば、ダンジョンを彷徨っているみたいだ。
メインメニューから詳細なマップを呼び出す事は可能だが、表示される現在地と、実際に広がる光景を照合するが容易ではない。
だが、此処はMMOだ。
ここで取るべき手段は一つ。
俺たちは一人の後ろ姿に駆け寄り、背後から声を掛けた。
「「あの~、すいませーん。 道を……」」
振り向いたのは、女の子だ。
細い青い髪は無造作なショートで、くっきりとした眉の下に、猫科な雰囲気を漂わせる藍色の大きな瞳が輝き、小ぶりな鼻と薄い唇。
首には、サンドカラーのマフラーを巻いている。
彼女には警戒の色が見えたが、すぐにそれは消え去った。
彼女に眼には、女の子が映っていたからだろう。
……俺は男なんだが。
彼女を騙す事になってしまうけど、姉妹で通そう。
「……このゲーム、初めて? 何処行くの?」
「はい、初めてなんです。 おr……私たち、道に迷ってしまって……」
「何処か安い武器屋さんと、あと総督府、って所に行きたいな」
と言い、美少女二人は首を傾げた。
「総督府? 何しに行くの?」
「えっと、バトルロイヤルイベントのエントリーに……」
それを聞いた途端、彼女は眼を丸くした。
「え……ええと、今日ゲームを始めたんだよね? その、イベントに参加するには、ちょっとステータスが足らないかも……」
ユウキが、彼女の問いに答えてくれた。
「大丈夫だよ。 コンバートだから」
「へぇ、そうなんだ」
彼女から笑みが浮かんだ。
「聞いていい? 何で貴方たち姉妹は、こんな埃っぽくて、オイル臭いゲームに来ようと思ったの」
「それは……ええと、私たちは、ずっとファンタジーなゲームばっかりやっていたんですけど。 たまには、サイバーっぽいのが遊びたいなってね。 ね、ユウ姉」
「うんうん。 銃を使うゲームに、興味もあったしね」
「そっかー。 それでいきなりBOBに出ようなんて、根性あるね」
彼女は大きく頷き、
「いいよ、案内してあげる。 私も総督府に行く所だったんだ。 その前にガンショップだったね。 好みの銃とか、ある?」
「「え、えっと……」」
俺たちは言葉に詰まった。
俺とユウキは、銃の事は全くの無知なのだ。
解るとしても、アサルトライフルとサブマシンガン位だ。
女の子は微笑をした。
「じゃあ、大きいマーケットに行こう。 こっち」
遂に、GGOにログインしましたね。
この世界では、キリト君はユウキちゃんの妹?なんですかね(笑)
あと、キリト君はユウキちゃん以外の人に話す時は、キーが高くなっているということで。
シノンの過去の話を飛ばしてしまったが……。
何処かで書ければ書きますね。
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