ソードアート・オンライン ~黒の剣士と絶剣~   作:舞翼

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ども!!

舞翼です!!

書き上げました。

誤字脱字があったらごめんよ。

それではどうぞ。


第69話≪日常への復帰≫

「それでは今日はここまで、課題ファイル25と26を転送するので来週までにアップロードしておくこと」

 

チャイムが午前中の授業の終わりを告げ、教師が大型パネルの電源を落としてから立ち去ると、広い教室には弛緩(しかん)した空気が漂った。

俺はマウスを操り、ダウンロードされた課題ファイルを確認してから、大きな溜息を吐いた。

端末をバックに放り込み、肩に掛けて立ち上がろうとすると、隣席の仲のいい男子生徒が見上げて言ってきた。

 

「あ、かず、食堂行くなら席取っといて」

 

「無理無理、今日は《姫》と、だろ」

 

「あ、そうか。 ちきしょう、いいなぁ」

 

「うむ、まぁ、そういうことだ。 悪いな」

 

俺と木綿季の関係(婚約者)は、この学校に居るほぼ全員(・・・・)が知っているのだ。

何処から情報が漏れたかは分からんが。

俺は連中の愚痴が始まる前に、教室から抜け出した。

小道を数分歩くと、円形の小さな庭園に出る。

其処の花壇の外周部には白木のベンチが幾つも並び、その内の一つに、青い空を見上げながら長い黒髪を揺らし、一人の女子生徒が腰を掛けている。

俺はベンチに近づき、声を掛けた。

 

「今朝ぶりだな、木綿季」

 

木綿季はこちらを振り向くと、唇を尖らせた。

 

「和人は朝に弱いんだから。 ボクが何回も起こしてるのに、布団の中に潜るんだから」

 

「う、悪い」

 

「もう、ボクと部屋が離れたらどうするの?? 一人で起きられるの??」

 

「……多分、大丈夫だ」

 

何か、説教を受けている旦那の気分だな……。

木綿季には、頭が上がらないだろうな。

俺は木綿季の隣に腰を下ろして、大きく伸びをした。

 

「ああ……疲れた……腹減った……」

 

「はいはい、ご飯にしましょうね」

 

そう言ってから木綿季は、バックの中からバスケットを取り出した。

今日のメシはなんだろうか、楽しみだな。

そう思ってから、俺は木綿季を横目で見た。

 

「木綿季」

 

「なに~?」

 

「今更だけど、俺とお前って、学校ではもうバレバレだよな」

 

「うん、バレてるね」

 

「だよな~」

 

この特殊な《学校》に通う生徒は全て、中学、高校時代にSAO事件に巻き込まれた者が通う場所だ。

この学校で卒業すれば、大学の受験資格が与えられる。

表向きはそのようになっているが。

実際は、SAO帰還者を一つの場所に集めておきたいのだろう。

俺を含めて、自衛の為に他のプレイヤーに手を掛けた者は少なくないし、盗みや恐喝といった犯罪行為は記録に残らない為チェックのしようもない。

基本的に、アインクラッドでの名前は出すのは忌避されているのだが、顔がSAOと同じなのだ。

俺と木綿季と藍子と明日奈は、キャラネームを出さなくても、入学直後に即バレしたのだが……。

尤も、すべて無かったことにしようと言うのは無理な話なのだ。

あの世界での体験は、夢でもなく現実なのだし、その記憶は、それぞれのやり方で折り合いを付けていくしかないのだ。

木綿季の小さな手を優しく握った。

この小さな手に何度も助けられた。

《はじまりの街》を出てから、クリアされるまでの二年間。

 

「和人」

 

「どうしたー」

 

「この場所って、カフェテリアから丸見えなんだけど。 ――窓際を、何時も姉ちゃんたちが使ってる」

 

「なぬ!?……まぁいいか」

 

顔を上げると、確かに木々の上に、校舎最上階の大きな迷彩ガラスが見えた。

俺は一瞬手を離そうとしたが、バレてることだしいいか、と思ったので改めて握り直した。

木綿季も握り返してくれた。

 

「和人がいいなら、ボクもいいけどさ」

 

「少しの間、このままでいいかな??」

 

「うん、いいよ」

 

俺と木綿季は暖かい風に吹かれながら、手を握り続けた。

数分後手を離し、ご飯を食べる事にした。

 

「ご飯にしようか」

 

「おう」

 

木綿季は隣に置いたバスケットを膝の上に乗せ、蓋を開けた。

キッチンペーパーの包みを一つ取り出し、俺に差し出す。

受け取って紙を開くと、それはレタスのはみ出た大ぶりのハンバーガーだった。

香ばしい香りに刺激され、かぶり付く。

 

「こっ……この味は……」

 

「えへへ~、覚えてた」

 

「忘れるもんか。 第74層の安地で食べたハンバーガーだ……」

 

「味の再現に苦労してね。 姉ちゃんにも手伝って貰ったんだよ。 こんなに苦労するとは思わなかったね」

 

何時もこいつが早起きして試行錯誤していた料理は、このハンバーガーだったのか。

う~む、俺はいい奥さんを持ったなー。

 

「で、和人。 午後の授業は?」

 

「今日はあと二コマかな……。 まったく、黒板じゃなくてELパネルだし、ノートじゃなくてタブレットPCだし、宿題は無線LANで送られてきやがるし、これなら自宅授業でも一緒だよなぁ」

 

ぼやく俺を見て、木綿季が笑った。

 

「明日奈の話だと、パネルとかPC使うのは今の内だけらしいよ。 そのうち、全部ホログラフィになるらしいね。 此処は次世代の学校のモデルケースになるらしいね。――学校に来れば、みんなに会えるしね」

 

木綿季は両の手を腰に当て、えっへんと胸を張った。

まぁ、うん。 お前が胸を張って言える事でも無いと思うんだが。

 

須郷についても説明しておこう。

 

あの日病院の駐車場で逮捕された須郷は、その後も醜く足掻きに足掻きまくった。

黙秘に次ぐ黙秘、否定に次ぐ否定、最終的には茅場晶彦に背負わせようとした。

須郷は『僕は人体実験には関わっていない。 僕は無実』と主張し、黙秘を続けた。

 

木綿季のナーヴギアには、茅場晶彦から受け取ったメモリデータが、暗号化されて保存されていた。

それはSAO対策チームの菊岡誠二郎から、茅場の後輩にあたる比嘉(たける)によって解析が完了した。

ファイルには、須郷伸之の研究内容が記載されていた。

木綿季、藍子、明日奈に手を出した罰として、俺とユイでテレビ局の放送をハッキングしてから、須郷の悪行(ファイル内容)を全国に流したんだけどな。

これによりレクトの上層部、国民全員に、須郷の悪行の数々が知れたということになる。

これで須郷は、“社会から抹殺”されるはずだ。

 

須郷は裁判に掛けられた。

壇上に上がった須郷の顔は(やつ)れ、髪は過剰なストレスや恐怖で、白髪になっていた。

須郷は黙秘を続けていたが、不意に藍子がボイスレコーダーを再生させたのだ。

鳥籠内部で、須郷が話ていた人体実験の内容を録音していたらしい。

……いつの間にそんなものを入手していたんだ……藍子さん、恐るべし!!

その内容を聞いて須郷は、眼を見開いた。

それから数分後、須郷は観念したのか、己が行った罪を洗い(ざら)い吐いたのだ。

須郷は無期懲役の判決を言い渡され、部下たちは懲役40年と言い渡された。

俺はそれを聞いて、『ざまーみろ』と言ってしまったのだ。 それも裁判所で……。

その後、木綿季と藍子に頭を叩かれたな……。 うん、結構痛かった。

須郷とその部下たちは、“社会から抹殺された”のだ。

現在須郷とその部下たちは、仲良く刑務所生活を楽しんでいるだろう。

 

奴の手掛けていた、フルダイブ技術による洗脳という邪悪な研究も、初代ナーヴギア以外では実現不可能であるということが判明したのだ。

ナーヴギアは全て廃棄され、そして万が一の対策も可能にしたらしい。

 

幸いであった事は、300人の未帰還者プレイヤーに人体実験中の記憶が無かったことだ。

精神に異常を来してしまったプレイヤーは居らず、全員が十分な加療ののちに社会復帰が可能だとされている。

残念になってしまったことは、VRMMOというジャンルゲームそのものが、回復不可能な打撃を(こうむ)ったことだ。

今度こそ安全、と展開したALOを含むVRMMOゲームが、須郷の起こした事件によって全てのVRワールドが犯罪に利用される可能性がある、と注目されてしまったのだ。

ALOも運営停止に追い込まれ、中止を免れないだろう。

だが、この状況を変える物を俺は持っている。

茅場晶彦が俺に託した《世界の種子》だ。

 

「おーい、和人」

 

木綿季は、俺の顔の前で手を振っていた。

どうやら考え込んでいたらしい。

 

「あ、悪い。 ちょっと考え事してた」

 

「うん、和人が考えていたことが解るよ。 ボクもその場に居たんだしね。 あと、 “あれ”をどうするかは、和人が決めなよ。 ボクは和人の考えに賛同するね」

 

「おう。 サンキューな」

 

「で、今日のオフ回だけどさ」

 

「ああ、それがどうしたんだ??」

 

それから俺と木綿季は、昼休みが終わるまで手を繋ぎながら話込んだのだった。

カフェテリアからの視線には気付かずに……。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

Side リズ 

 

私は、カフェテリアの西側の窓際のテーブルに座り、乙女が立てるには相応しく無い騒音を盛大に発生し、パックの底に残ったいちごヨーグルトドリンクをストローで力任せに吸い上げ、外を眺めていた。

其処に映し出されていたのは、学校内でラブラブしているキリトとユウキだ。

 

「もう……リズ……里香さん、もうちょっと静かに飲んでくださいよ」

 

「だってさぁ……あー、キリトの奴、あんなにくっついて……」

 

私の視線の先では、中庭のベンチで男子生徒と女子生徒が手を繋ぎながら、肩を触れ合わせて座っている。

 

「けしからんなもう、学校であんな……」

 

「そ、それ趣味悪いですよ、覗きなんて!」

 

人がラブラブしている所は、いやでも気になってしまうのだよ。

私はシリカを見て、少々意地悪い口調で言った。

 

「そんなこと言いながら、シリカだってさっきまで一生懸命見ていたじゃない」

 

シリカは歯切れが悪い口調で、隣に座っている人物に助けを求めた。

 

「ら、ら、ランさんの妹さんですよ……。 ランさんは、何とも思っていないんですか??」

 

「ええ、何とも思っていないわよ。 ユウキを任せられる人だからね、キリトさんは」

 

ランはきっぱりと言った。

それに続いて、私の隣に座っていたアスナが口を開いた。

 

「そうね。 キリト君とユウキちゃんは、お似合いのカップルよ。 キリト君の隣を歩ける人は、ユウキちゃんしか居ないと思うしね」

 

何と、世間を盛大に騒がせた《ALO事件》には、キリトとユウキ、アスナとランが関わっていたのだ。

世間には伏せられているけど、ランとアスナは特殊な被害者だったのだ。

どうやって私の連絡先を入手したかは解らないけど、ランとアスナが救出されてから、キリトから連絡を貰った。

『ランとアスナが会いたがっている』と言われ、すぐさまお見舞いに飛んで行った。

雪の妖精のような姿を見て、アインクラッドで見に付いてしまった、保護者的感情が大いに刺激されてしまったのだった。

私はランとアスナのリハビリを手伝い、身体のマッサージなどをしていた為、保護者的立ち位置に就いてしまったのだ。

だからこそ二人は、四月の入学に間に合ったのだけどね。

多分、いや、そうであって欲しい。

 

「で、あんたらは、今日のオフ回行くの??」

 

「もちろんですよ。 私、リーファちゃん……直葉ちゃんに会いたいなー」

 

「私も行くわよ。 皆とお話がしたいしね」

 

「私も行くわ。 皆と再会して、話がしたいもの」

 

上から順に、私、シリカ、ラン、アスナだね。

私もオフ回楽しみにしてるしね、特にみんなの変わりようとかね。

それから私たちは、顔を見合わせ笑い合った。

 




下種郷のお仕置きしました。(現実世界で)
四人の会話の時の名前は、キャラネーム統一ということで。

四人は、即バレしたね(笑)
まぁ、四人とも二つ名持ちだし、下層のプレイヤーまでに知られていたしね。
そりゃバレるよね(笑)

あと、ALOも1、2話やね。
うーん、ALO終わったらどうしようか……。

ご意見、ご感想、評価、よろしくお願いします!!

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