舞翼です!!
うん、書きあげたよ。
今回は、明日奈さんと藍子さんを出したよー。
誤字脱字があったらごめんよ。
それではどうぞ。
俺たちは、太い木の根を貫く螺旋状の階段を勢いよく駆け上がり始めた。
十分以上経過した頃――遂に、行く手に一筋の細い光が現れた。
勢いよく飛び出した場所は、苔むした石のテラスだった。
一瞬眼を瞑ってから周りを見渡すと、そこは美しく、積層都市の夜景であった。
石造りの建築物が、縦長に何処までも連なっている。
その明りの下を行き交うプレイヤーは、妖精九種族が均等に入り混じっている。
暫し夜景に見入っていた俺とユウキは、夜空を枝葉の形に切り取る影を見た。
それから、俺とユウキが呟いた。
「……あれが世界樹かな……」
「……ああ、多分、あれが世界樹だ……」
リーファは視線を俺とユウキに移し、言った。
「……うん、あれが世界樹よ。 そうすると、此処は《アルン》で間違いないわね。 アルヴヘイムの中心。世界最大の都市」
「……やっと着いたな……」
「……うん。 やっと着いたね……」
ユイが俺の胸ポケットから顔を出し、輝くような笑みを浮かべた。
「わぁ……! わたし、こんなにたくさんの人が居る場所、初めてです!」
「今日はここまでだね。 宿屋でログアウトしよっか」
俺とユウキは、リーファの言葉に頷いた。
「ああ、そうだな」
「うん。 わかった」
これから週に一度の定期メンテナンスがあるらしいのだ。
時間は、午前四時から昼の十二時までだ。
「さ、宿屋探そうぜ」
世界樹を眺めていたユウキも、顔を戻して俺の言葉に続いた。
「そうだね」
「じゃあ、行きましょうか」
それから大きな部屋を取り、三人同時にベットに仰向けになり、そのまま睡魔に襲われ《寝落ち》した。
♦♦♦♦♦♦♦♦
薄く雪の残る庭に出ると、冷たい朝の空気が体を包んだが、俺の頭に居座る微かな眠気が消える事は無かった。
何度か顔を左右に振ってから、庭の隅にある手洗い場へ向かう。
水道管の蛇口を捻り、零れる冷水を両手で受け止めてから、顔にばしゃりと顔に浴びせた。
「ッ………!!」
構わず二度、三度被り、首にかけたタオルで顔を拭いていると、縁側のガラス戸が引き開けられ、スウェット姿の木綿季とジャージ姿の直葉が顔を覗かせた。
「おはよー、お兄ちゃん」
「おはよー、和人」
木綿季と直葉は、まだ半眠半覚醒といった顔でぼーっと頭を揺らしている。
二人は、そのまま俺の前までやって来た。
「おはよう、木綿季、スグ。――二人とも眠そうだな。 まぁ、《こっち》に還って来たのが、午前三時過ぎだからな」
俺はちょっとした悪戯心が出て来た。
これを実行すれば、二人とも完璧に覚醒するだろう。
後が怖いかもしれんが。
「木綿季、スグ。 後ろ向いてみ」
木綿季と直葉は首を傾げてから、くるりと半回転する。
無防備な背中に、極低温の水滴を半ダースほど投下する。
「「きゃ――――――ッ!!」」
飛び上がった二人の悲鳴が、桐ケ谷家に響き渡った。
木綿季が頬を、ぷく―と膨らませて不機嫌になってしまったが、俺が何でも一つ聞いてあげる所を二つにしてあげたら機嫌を直してくれた。
直葉は、近所のファミレスで宇治金時ラズベリークリームパフェを奢る約束をしたら、機嫌を直してくれた。
それから一階のキッチンに向かい、朝食の準備に取り掛かることにした。
母親の翠は徹夜の仕事帰りで、案の定寝室で爆睡中だったので、俺と木綿季と直葉の三人で朝食を摂る事になる。
今日の朝食は、俺と木綿季で作る事にした。
最近は、直葉に作って貰ってばかりだったからだ。
洗ったトマトを六等分に切っている木綿季と、隣でレタスを千切っている俺を交互に見ると、指定席に座っていた直葉がこう言った。
「なんか……お兄ちゃんと木綿季ちゃんって、
「まぁ、うん、そうだな」
俺はぎこちない返事で直葉に返したが、
「ボクはその………和人とボクの子供が欲しい、かな………」
「なッ!!??」
木綿季は顔を真っ赤にして、ダイナマイト級の爆弾を放り込んだ。
それから俺と木綿季は、顔を真っ赤にしながら朝食を作った。
指定の椅子に座り、朝食を摂る事にした。
直葉がサラダボールの中のトマトをフォークで刺した後、俺と木綿季に聞いてきた。
「お兄ちゃんと木綿季ちゃんは、学校はどうするの?」
今の俺の年齢は十六歳。
木綿季の年齢は十五歳。
本来ならば今月の四月から俺は高校二年、木綿季は高校一年のはずだが、当然入試など受けていないし、今までに勉強した内容はSAO関連の事で頭が埋め尽くされていて、覚え直しが必要になる。
アイテムの値段やらモンスターの攻撃パターンを忘れ、歴史の年号や英単語を覚えるだけでも一苦労になるだろう。
俺と木綿季は齧っていたトーストを皿の上に戻し、口を開いた。
「ええと、確か、都立高の統廃合で空いた校舎を利用して、SAOから帰還した中高生向けの臨時学校みたいの作るらしいな。 入試なしで受け入れて、卒業したら大学受験資格もくれるらしい」
「だからボクと和人は、そこに入学って事になるかな。でも待遇が良すぎるよね。 多分、SAO帰還者を一箇所に纏めておきたいんじゃないかな、その方が政府も安心できるから」
そう、木綿季の言う通りである。
政府は、SAO帰還者を一箇所に集めて管理しておきたいのだろう。
何せ俺たちSAO帰還者は、二年も殺伐としたデスゲームに身を投じていたのだから。
心理面に、どんな影響を受けているかも知っておきたいのだ。
その為、定期的にメンタルカウンセリングを行うと記載もされていた。
この話は、総務省の眼鏡の役人から俺が聞いた話だ。
俺は大丈夫なんだが、木綿季がこの臨時学校に通うのは少し抵抗があった。
もちろん、明日奈と藍子も同様だ。
何せ、同じ学校にデスゲームをプレイしていた人が集まるからな。
木綿季の希望は、『皆と一緒に高校に入学したい。 SAOで出会った人たちとまた再会して、話がしたい』。
おそらくこの事は、明日奈と藍子も同じだと思ったのだ。
だから、考えた末にOKと言ったのだ。
それまでに、ランとアスナを救い出す。
「そ、そんな……」
直葉はくしゃっと顔を歪めので、俺は木綿季の言葉に付け加える。
「でも、管理云々はさて置いても、セーフティネット的な対処してくれるのは、有り難いしな。 それに学校には、心強い仲間も居ると思うから」
「ならいいけど……」
直葉も納得してくれたようだ。
トマトを一齧りしてから、直葉が聞いてきた。
「で、今日は、木綿季ちゃんとお兄ちゃんは何をするの?」
「ああ、今日は木綿季の大切な人に会いに行くんだ」
俺が言うと、直葉が少し声を上げて言った。
「えっ、そうなの、私も行っていいかな!?」
「まぁ、うん。 前に紹介が出来ないって言っていたねぇねぇと、ボクの親友を紹介するよ」
木綿季は、『本当は起きている時の姉ちゃんと、明日奈を紹介したかったんだけどね』と聞き取れないボリュームで呟いていた。
木綿季の表情は、やはり寂しそうであった。
♦♦♦♦♦♦♦♦
俺は携帯端末で三人分の料金を払い、バスに乗り込んだ。
今日は人数も多いということで、バスを使うことにしたのだ。
約二十分、バスに揺られ目的の病院に到着した。
俺と木綿季は、直葉を連れ立ってバスの降車口から降りた。
「わぁー、やっぱり大きい病院だねー」
「そうだな。 スグは一回来たことがあるからな」
「それって、ボクに会いに来た時のこと?」
俺は、木綿季の問いに頷いた。
「そうだぞ」
それから病院の中に入り、三人分のパスを受け取ってから、二人が眠る最上階までエレベータ移動し、人気の無い廊下を突き当りまで歩く。
「最初は、ボクの親友に会ってね」
そう言ってから木綿季は、パスカードをドアのスリッドに差し込んだ。
そこには、602号室『結城明日奈 様』と書かれている。
すると、金属プレートを見て直葉が呟いた。
「結城……明日奈……さん。 今から会う人が、木綿季ちゃんの親友なんだね」
「うん、そうだよ。 スグちゃん」
言いながら木綿季はカードを滑らせると、同時に控えめな電子音と共に、ドアがスライドした。
ゆっくりと病室に足を踏み入れる。
ベットの中央は、純白のカーテンで仕切られている。
俺たち三人は中央にあるベットの前まで移動してから、木綿季が純白のカーテンに手を掛け、それをゆっくり引き開ける。
「スグちゃん、紹介するね。 彼女が結城明日奈だよ。 SAOでは、血盟騎士団副団長《閃光》のアスナ。 そして、ボクの唯一無二の親友だよ」
木綿季は優しい顔で、そっと明日奈の栗色の長い髪を撫でている。
直葉は無言のまま佇んでいたが、はっとした。
それほどまでに、見入っていたんだろう。
直葉は、恐る恐る声を掛けた。
「……はじめまして、明日奈さん。 桐ケ谷直葉です」
当然の如く、彼女からの答えはない。
彼女の頭を拘束するのは、《悪魔の機械ナーヴギア》。
その前縁部で、青く輝く三つのインゲージランプが彼女の存在を示している。
だが彼女の魂は、どことも知れない居世界に繋がれたまま。
「久しぶりだね明日奈。 今度ユイちゃんを紹介するね。 明日奈に会いたがっていたよ。 『ママの親友に会いたいです!』って、ボクたち四月から学校が始まるんだ。 今から楽しみだよ、明日奈と同じ学校なんて。 もちろん、和人も楽しみにしているよ」
「木綿季に言いたい事全部言われちゃったよ。 俺と木綿季は、明日奈と入学出来ることを楽しみにしているからな」
すると、直葉がゆっくり口を開いた。
「……お兄ちゃんと木綿季ちゃんと明日奈さんって、深い絆で繋がっているんだね」
「ああ、明日奈は俺の恩人だからな。 明日奈は木綿季のことを支えてくれていてな、俺が木綿季から眼を離した時は、何時も木綿季のことを見てくれていたんだ。 俺と木綿季の為にも、一肌脱いでくれたな。 今の俺たちがあるのは、明日奈のお陰もあるしな」
「……それって、プロポーズの指輪選びの事?」
「まぁそれもあるな」
俺と木綿季は顔を見合わせ、笑い合った。
「明日奈、また来るな」
「うん。 また来るね明日奈。―――絶対助けるからね、待っていてね」
木綿季の後半の言葉は、誰にも聞かれないように呟いた。
「じゃあ、失礼します。 明日奈さん」
と最後に直葉が言い、病室を後にした。
♦♦♦♦♦♦♦♦
明日奈の病室を後にした俺たち三人は、隣の病室に足を向けた。
そこには金属のネームプレートで、601号室『紺野藍子 様』と書いてある。
直葉は、その名前を見て眼を丸くした。
「えっ……紺野って……」
「スグちゃん。 今から会う人はボクの双子の姉であり、ユイちゃんのお姉さんだよ」
「ああ、俺を支えてくれたもう一人だ」
直葉は、俺と木綿季の言葉に驚いていた。
そして同時に思った。
紺野姉妹がSAOにログインをしていて、兄・和人を支えていたんだと。
「じゃあ、ユイちゃんが言っていたねぇねぇって!?」
「うん。 ボクの姉のことだよ」
直葉の問いに、木綿季が答えた。
木綿季はパスカードをドアのスリッドに差し込み、ゆっくりと滑らせる。
それと同時に、オレンジのLEDが青く変わり、電子ドアがゆっくりと開く。
病室の内部にゆっくりと足を踏み入れる。
中央のベットは、純白のカーテンで閉め切られていた。
中央にあるベットの前まで移動した所で、俺が純白のカーテンに手を掛け、ゆっくりと引き開ける。
「今度は俺が紹介するな。 彼女名前は紺野藍子、木綿季の実の姉だ。 SAOでは、途中から俺と木綿季と行動を共にして、支えてくれたんだ。 主に俺の事を支えてくれたな。 名前は、《剣舞姫》のランだ」
暫し見入っていた直葉は、如何にか口を開き、挨拶をした。
「……はじめまして、和人の妹の桐ケ谷直葉です。 えっと、木綿季ちゃんには毎日お世話になっています。 よろしくお願いします、藍子さん」
彼女の頭には明日奈と同じく、《ナーヴギア》で覆われている。
ナーブギアが正常に作動されているということは、彼女の意識も今何処かの居世界に閉じ込められているのだろう。
「久しぶりだね、姉ちゃん。 今ボクは、和人のお家でお世話になっているよ。 姉ちゃんも、和人の家に遊びにおいでよ。 和人部屋を荒探ししよう。 和人が隠してる“聖書”を探し出すんだよ、きっと楽しいよ。 和人が、あたふたしている姿が見られるはずだよ。 その為には早く起きないとね。 ボク待ってるからね、姉ちゃんが起きるのを」
「荒探しなんかやめてくれよ。 そんなものは置いてないからな。 うん、置いてないぞ。 まぁ藍子は『和人さん、あそこの本と本の間が怪しいですね。 見てもいいですか?』とか言いそうだけどな」
隣に居る木綿季がクスクスと笑っていた。
十中八九言いそうな言葉だからなー。
「ねぇ、お兄ちゃんと木綿季ちゃんと藍子さんって、どういう関係だったの」
と直葉が聞いてきた。
「えっとね、ボクと姉ちゃんは、和人にふたm「トリオ関係だったんだ!!」」
俺は木綿季の言葉を遮った。
木綿季さん、その言葉はNGだよ。
「そ、そうなんだ」
如何にか誤魔化せたかな。
誤魔化さないと、俺が色々とヤバいからな。
「お兄ちゃんと木綿季ちゃんは、明日奈さんと藍子さんに支えて貰っていたんだね?」
直葉は、俺と木綿季に問いかけてきた。
「そうだな」
「どんな時も、味方で居てくれたよね」
そう言って、俺と木綿季は答えた。
「そろそろ御暇しようか?」
俺は、木綿季と直葉に聞いた。
「「うん」」
「それじゃあまたね、姉ちゃん」
と木綿季が言い、
「失礼します。 藍子さん」
と直葉が言った。
二人が病室から出て行ったのを確認してから、眠っている藍子に言った。
「今度は俺が助ける番だ。 絶対助ける。 もう少しの辛抱だからな」
そう言ってから、俺は病室を後にした。
それから俺たち三人はバスに乗り、桐ケ谷家に戻った。
うん。 木綿季ちゃん、爆弾発言したね(笑)
妹の直葉にも、アスナとランの紹介をしておきましたー。
さて、ここからどう展開しようか。
ご意見、ご感想、評価、よろしくお願いします!!