ソードアート・オンライン ~黒の剣士と絶剣~   作:舞翼

62 / 144
どもっ!!

舞翼です!!

ふうー、書き上げたぜ。
うん。 最強夫婦降臨したね(笑)

なんか、この小説って特徴的やね(多分)

誤字脱字があったらごめんよ。

それではどうぞ。


第62話≪再戦の約束≫

誰一人身動きする者は居なかった。

シルフも、ケットシーも、五十人以上のサラマンダー強襲部隊も、魂を抜かれたように凍り付いていた。

それほどまでに、先の戦闘がハイレベルだったのだ。

流れるような剣舞、超高速エアライド、ユージーンの天地を砕かんばかりの豪剣、それを打ち砕いた俺の超高速の二刀流―――。

シンの神速の剣技、そしてその神速を越えたユウキの超高速の剣技―――。

最初に沈黙を破ったのは、シルフ族領主サクヤだった。

手にした扇子をパッと開き、高らかに声を上げた。

 

「見事、見事!!」

 

「すごーい! ナイスファイトだヨ!!」

 

ケットシー領主のアリシャ・ルーがそれに続き、シルフ、ケットシーの護衛十二人も加わった。

盛大な拍手に混じって、サラマンダーの強襲部隊の中からは賛辞や歓声が上がった。

それ程までに、俺とユージーン、シンとユウキのデュエルが彼らの心を揺さぶったのだろう。

歓声の輪の中央で、立役者となった俺とユウキは笑みを浮かべ、四方にくるりと一礼すると、リーファたちの方に向かって着陸する。

其処には、赤いリメインライト二つがふわふわと漂っている。

 

俺はユウキが剣を収めてから口を開いた。

 

「誰か、蘇生魔法頼む!」

 

「解った」

 

サクヤは頷くと、リメインライトの前まで移動し、スペルワードの詠唱を開始する。

やがてサクヤの両手から青い光が迸り、赤い炎二つを包み込んだ。

その炎は、徐々に人の形を取り戻していく。

ユージーンは、肩を回しながら俺とユウキに向かって口を開いた。

 

「見事の腕だな。 オレとオレの直属の部下シンまで倒すとはな、貴様らは今まで見た中で最強のプレイヤーだ」

 

「そりゃどうも」

 

俺が応じてから、

 

「楽しいデュエルだったね、おじさん」

 

ユウキが応じた。

 

「貴様らのようなスプリガン、インプが居たとはな……。 世界は広いということかな」

 

すると、ユージーンの後ろで話を聞いていたシンがおずおずと少し前に出てきてから、口を開いた。

 

「あ、あの、とても楽しいデュエルでした。 ありがとうございました、ユウキさん」

 

「うん。 ボクも楽しかったよ」

 

ユウキの言葉を聞いた後、シンはユウキに一礼してから俺を見た。

 

「あと、キリトさん。 今度相手をしてくれませんか?」

 

おお、凄い好戦的だな。

ま、そういう奴は嫌いじゃないが。

 

「おう。 今度やろうな」

 

「はい。 よろしくお願いします」

 

シンは俺に一礼をしてから、ユージーンの後ろに戻った。

 

「で、俺たちの話、信じてくれたかな?」

 

ユージーンは眼を細め、俺とユウキを一瞥して沈黙した。

 

「…………」

 

その時、会談場所を取り囲むサラマンダーの部隊から、一人のプレイヤーが着陸し、此方に歩み寄ってきた。

 

「ジンさん、ちょっといいか」

 

「カゲムネか、何だ?」

 

ユージーンが口にした人物は、ルグルーの橋の上で聞いた名前であり、俺とユウキが古森で剣を交えたサラマンダーのランス隊隊長だ。

 

「昨日、俺のパーティーが全滅させられたのはもう知っていると思う。 その相手がまさに其処にいるスプリガン、インプなんだが―――その時は、こいつ等と一緒にウンディーネがいたよ」

 

「「ッ!?……((へぇ))」」

 

俺とユウキは一瞬眉を上げたが、すぐにポーカフェイスに戻る。

 

「……そうか、そういうことにしておこう」

 

ユージーンは軽く笑みを浮かべ、次いで俺たちに向き直る。

 

「確かに現状でスプリガン、ウンディーネとも事を構えるつもりは俺にも領主にもない。 この場は引こう。―――だが貴様とはいずれもう一度戦うぞ。 インプの小娘もな」

 

「望むところだ」

 

「うん。 楽しみにしているよ、おじさん」

 

「僕も忘れないでくださいよ」

 

上から順に、ユージーン、俺、ユウキ、シンだ。

四人が右手の拳をゴツンと打ち付けると、ユージーンは身を翻してから、翅を広げ、地を蹴る。

それにシンとカゲムネが続く。

サラマンダーの大軍勢は一糸乱れぬ動作で隊列を組み直すと、ユージーンとシンを先頭に鈍い翅音を響かせながら遠ざかっていった。

再び訪れた静けさの中、俺が笑いを含んだ声で呟いた。

 

「……サラマンダーにも話の解る奴がいるじゃないか」

 

ユウキが笑いながら俺に続いた。

 

「うんうん。 あのおじさんは話が解るねー」

 

リーファは片手を頭にやりながら、今浮かんできた言葉を口にした。

 

「……やっぱり、キリト君とユウキちゃんはムチャクチャね」

 

「「よく言われる(よ)(ね)」」

 

「すまんが……状況を説明してもらえると助かる」

 

シルフ族の領主サクヤを含め、両陣営十四人が説明を求めていた。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

静けさを取り戻した会談場の中央で、『一部は憶測なんだけど』、と断ってからリーファは事の成り行きを説明した。

サクヤ、アリシャ・ルーを始めとする両種族の幹部たちは一つも音を立てず、リーファの長い話に聞き入っていた。

リーファが話し終わり、口を閉じると、両種族の幹部たちは揃って深い溜息を洩らした。

 

「……なるほどな」

 

両腕を組み、サクヤが頷いた。

 

「此処何ヶ月か、シグルドの態度に苛立ちめいたものが潜んでいるのは私も感じていた。 まさか、サラマンダーに通じていたとはな……」

 

サクヤ曰く、シグルドはパワー志向の男だから、彼には許せなかったのだろう。

勢力的にサラマンダーの後塵を拝しているこの状況が、との事だ。

 

「でも、だからって、なんでサラマンダーのスパイなんか……」

 

「もうすぐ導入される《アップデート》の話は聞いているか? ついに《転生システム》が実装されるという噂がある」

 

「あっ……じゃあ……」

 

モーティマー(サラマンダー領主)に乗せられたんだろうな。 領主の首を差し出せばサラマンダーに転生させてやると。 だが転生には膨大なユルドが必要になるらしいからな……。 冷酷なモーティマーが約束を履行したかどうかは怪しいところだな」

 

俺がサクヤの言葉に苦笑い混じりで言った。

 

「プレイヤーの欲を試すゲームだな、ALOって。 デザイナーは嫌な性格しているに違いないぜ」

 

次いで、ユウキが口を開いた。

 

「うーん、ボクは転生なんて興味ないけどなー。 ボクはキリトと居られれば何でもいいしね」

 

ユウキは俺に肩を寄せ、ぴったりと接してから、体重を預けて来た。

 

リーファが口を開き、サクヤに言った。

 

「それで……どうするの? サクヤ」

 

リーファが訊ねると、サクヤは一瞬瞼を閉じた。

それからケットシー領主、アリシャ・ルーに振り向いた。

 

「ルー、確か闇魔法スキル上げていたな?」

 

サクヤの言葉に、アリシャは大きな耳をぱたぱたと動かして肯定した。

 

「じゃあ、シグルドに《月光鏡》を頼む」

 

「いいけど、まだ夜じゃないからあんまり長く持たないヨ」

 

「構わない、すぐ終わる」

 

もう一度耳をぴこっと動かし、アリシャは詠唱を開始する。

周囲が僅かに暗くなり、一筋の月光が降り注いだ。

それがやがて、完全な円形の鏡を作り、その表面がゆらりと波打って――滲むように何処かの風景を映し出した。

 

「あ……」

 

リーファが微かに吐息を洩らした。

鏡に映った場所は、何度か訪れた事がある、領主館の執務室だったからだ。

鏡の向こうで、椅子に座り、机にドカッと両足を投げ出している人物がいた。

眼を閉じ、頭の後ろで両手を組むその男は間違いなく―――シグルドだ。

サクヤは鏡の前に進み出ると、琴のように張りのある声で呼びかけた。

 

「シグルド」

 

鏡の中のシグルドは眼を開き、椅子から跳ね起きた。

震える声で呟く。

 

「サ……サクヤ……!?」

 

「ああ、そうだ。 残念ながらまだ生きている」

 

サクヤは淡々と答えた。

 

「なぜ……いや……か、会談は……!?」

 

「無事終わりそうだ。 条約の調印はこれからだがな。 そうそう、予期せぬ来客があったぞ」

 

「き、客……?」

 

「ユージーン将軍が君によろしくと言っていた」

 

「な……」

 

どうやらシグルドは、今の状況を悟ったようであった。

言葉を探すかのように視線を動かし、俺とユウキとリーファを捉えた。

眉間に深くシワ寄せ、猛々しく歯を剥き出す。

 

「……無能なトカゲどもめ……。で……? どうする気だ、サクヤ? 懲罰金か? 執政部から追い出すか? だがな、軍務を預かるオレが居なければお前の政権だって……」

 

「いや、シルフで居るのが耐えられないなら、その望みを叶えてやることにした」

 

「な、なに……?」

 

サクヤが領主專用の巨大なウインドウを開き、一枚のタブを引っ張り出し、素早く指を走らせる。

 

「貴様ッ……! 正気か!? オレを……このオレを、追放するだと……!?」

 

「そうだ。 レネゲイドとして中立域を彷徨え。 いずれ其処にも新たな楽しみが見つかる事を祈っている」

 

「レネゲイドとして旅に出なよ。 きっと楽しいはずだよ、強いモンスターとか出るけどね」

 

とユウキがシグルドに向けて言葉を放った。

 

「だ、そうだ。……さらばだ、シグルド」

 

金色の鏡はが消えると、周囲の暗闇が薄れ、再び太陽の光が照らしだした。

リーファはサクヤを心配するように、そっと声を掛けた。

 

「……サクヤ……」

 

サクヤはシステムメニューを消すと、吐息交じり笑みを浮かべた。

 

「礼を言うよリーファ。 君が救援に来てくれたのはとても嬉しい」

 

するとリーファは顔を左右に振り、俺とユウキを見た。

 

「あたしは何もしていないもの。 お礼ならキリト君とユウキちゃんにどうぞ」

 

「そうだ、そう言えば……君たちは一体……」

 

「ねェ、キミたち、スプリガン=ウンディーネの大使と、その護衛って本当なの?」

 

並んだ二人の領主が、疑問符を浮べながら俺とユウキを見て来た。

俺はユウキを支えながら、領主二人に言った。

 

「勿論大嘘だ。 ブラフ、ハッタリ、ネゴシエーション」

 

続いてユウキが言った。

 

「ボクはキリトの案に乗っただけだよー」

 

「「な――……」」

 

二人の領主は口を開け、絶句した。

それからサクヤが口を開いた。

 

「……無茶な事をする二人だな。 あの状況でそんな大法螺を吹き、それに乗るとは……」

 

「手札がショボイ時はとりあえずレイズする主義なんだ」

 

「ボクは何時もキリト無茶に付き合っていたからね」

 

すると、それを聞いたアリシャ・ルーは突然二ィッと悪戯っぽい笑みを浮かべると、数歩進み出でて、俺とユウキを覗き込んだ。

 

「おーうそつきくんにしてはキミたち、ずいぶん強いネ? 知ってる? さっきのユージーン将軍と将軍の懐刀シンは、ALO最強って言われているんだヨ。 それに正面から勝っちゃうなんて……スプリガン、インプの秘密兵器、だったりするのかな?」

 

「いや、俺たちはしがない用心棒だよ」

 

「うんうん。 ボクとキリトは二人一組の用心棒かな」

 

「ぷっ。 にゃはははは」

 

アリシャは大きく笑うと、俺とユウキに顔を近づけて来た。

 

「フリーなら、キミたち―――ケットシー領で傭兵やらない? 三食おやつに昼寝付きだヨ」

 

「「へっ」」

 

俺とユウキは、同時に声を上げた。

サクヤはアリシャを退けてから、

 

「おいおいルー、抜け駆けはよくないぞ。――キリト君とユウキ君と言ったかな。 どうかな、個人的興味もあるので礼も兼ねてこの後スイルベーンで酒でも……」

 

「うーん、ボクはキリトと一緒なら何でもいいよー」

 

「まぁ、そうだな。 でも、俺たちにはやる事があるんだよな。――俺たちはリーファに《アルン》まで連れて行ってもらう約束をしているんです」

 

と俺とユウキは、サクヤの問いに答えた。

 

「ほう……そうか、それは残念」

 

サクヤは、残念そうに引き下がった。

 

「アルンに行くのか、リーファ。 物見遊山か?――それとも……」

 

「領地を出る――つもりだったんだけどね。 でも、いつになるか分らないけど、きっとスイルベーンに帰るわ」

 

「そうか。 ほっとしたよ。 必ず戻って来てくれよ――彼等も一緒にな」

 

サクヤに続いてアリシャが言った。

 

「途中でウチにも寄ってね。 大歓迎するよ」

 

二人の領主は表情を改め、俺とユウキに一礼した。

顔を上げたサクヤが言った。

 

「――今回は本当にありがとう、リーファ、キリト君、ユウキ君。 私たちが討たれていたらサラマンダーとの格差は決定的なものになっていただろう。 何か礼をしたいが――」

 

「いや、そんな……」

 

俺は困ったように頭を掻いた。

不意にユウキが声を上げた。

 

「ねぇねぇ、サクヤにアリシャ。 今回の同盟って、世界樹攻略の為なんだよね?」

 

「ああ、まぁ――最終的にはな」

 

「ボク達もそれに同行していいかな?」

 

ユウキの言葉にサクヤとアリシャは顔を見合わせる。

 

「……同行は構わない。 と言うよりこちらから頼みたいほどだよ。 しかし、なぜ?」

 

すると、ユウキが悲しい表情になってしまった。

俺はユウキの頭を撫でながら二人の領主に言った。

 

「俺たちがこの世界に来たのは、世界樹の上に行きたいからなんだ。 そこに居るかもしれない、ある人たちに会うために……」

 

「人? 妖精王オベイロンのことか?」

 

「いや、違うはずだ。 リアルで連絡が取れないんだけど……どうしても会わないといけないんだ」

 

俺の言葉に興味が引かれたアリシャが言った。

 

「へぇェ、『世界樹の上で待っている人が居る』。 何だかミステリアスな話だネ?」

 

だが、すぐに申し訳なさそうに、

 

「でも……攻略メンバー全員の装備を整えるのに、しばらくかかると思うんだヨ……。 とても一日や二日じゃ……」

 

「そうか……そうだよな。 いや、俺たちも取り敢えず樹の根元に行くのが目的だから……あとは何とかするよ。――あ、そうだ。これを資金の足しにしてくれ」

 

そう言って、俺はウインドウを手早く操り、かなり大きな革袋をオブジェクト化させる。

ユウキも『じゃあボクもだね』と言い、革袋をオブジェクト化させる。

 

それを受け取ったアリシャとサクヤが一瞬ふらついてから、革袋の中を覗き込んで眼を丸くした。

 

「……十万ユルドミスリル貨……これ全部……」

 

サクヤは摘まみ出したのは、青白く輝く大きなコインだった。

 

「……いいのか? 一等地にちょっとした城が建つぞ」

 

「構わない。 俺にはもう必要ない」

 

俺は何の執着も無さそうに頷く。

 

「うん、ボク達には必要が無くなったからね。 資金の足しにして」

 

ユウキも俺に続いて頷いた。

再び革袋を覗き込んだサクヤとアリシャは、『ほうーっ』と深く嘆息してから顔を上げた。

 

「……これだけあれば、かなり目標金額に近づけると思うヨー」

 

「大至急装備を揃えて、準備が出来たら連絡させてもらう」

 

「「よろしく(頼む)」」

 

二人の領主は手を振りながら一直線に上昇すると、赤く染まった空に進路を向け、その後を六人の護衛が美しい隊列を組んで追っていく。

夕焼けの中に彼らの姿が消えてしまうまで俺とユウキとリーファは無言で見送った。

沈黙を破ったのはリーファだった。

 

「じゃあ、行こうか? 日が暮れちゃうよ」

 

「うん。 行こうか」

 

「行くか」

 

そう言ってから、俺たちは地を蹴る。

俺たちは世界樹に向かって、大きく翅を振るわせながら加速を開始した。




こんな感じに書き上げたでー。

うん。 キリト君とユウキちゃんは、相変わらずだね(笑)

次回は、イチャイチャ? するのかな(わからんが)

もしかしたら、次回更新遅れるかもしれん(ロストソングにはまったら)

ご意見、ご感想、評価、よろしくお願いします!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。