ソードアート・オンライン ~黒の剣士と絶剣~   作:舞翼

56 / 144
ども!!

スランプ気味でも投稿をする舞翼です!!

あと、第55話のサブタイトル変えたよー。

第56話のタイトルと被っちゃうからね。

頑張って書いたよ。

誤字脱字があったらごめんよ。

それではどうぞ。


第56話≪目指せ世界樹≫

Side リーファ

 

エレベータに乗り込もうとした時、不意に傍らから数人のプレイヤーが現れ、私たちの行く手を塞いだ。

激突する寸前で、如何にか翅を広げて踏み止まる。

 

「ちょっと危ないじゃない!」

 

私が反射的に文句を言いながら、眼の前に立ち塞がる長身の男を見上げると、それは私のよく知った顔だった。

シルフにしては図抜(ずぬ)けた背丈に、荒削りだが男っぽく整った顔。

やや厚めの銀のアーマーに身を包み、腰には大ぶりのロングソード。

額に幅広の銀のバンド巻き、波打つ濃緑の髪を肩の下まで垂らしている。

彼の名前はシグルド。

彼の両脇に控えている二人はパーティーメンバーだ。

シグルドは、この数週間私が行動を共にしているパーティーメンバーの前衛だ。

また、シルフ最強剣士の座を私と争う剛の者で、同時に、主流派閥に関わるのを忌避(きひ)している私と違って政治的にも実力者だ。

 

「こんにちは、シグルド」

 

私は笑みを浮かべて挨拶したものの、シグルドはそれに応える心境ではないらしく、唸り声を交えながら行き成り切り出した。

 

「パーティーから抜ける気なのか、リーファ」

 

私はこくりと頷いた。

 

「うん……まぁね。 貯金もだいぶできたし、しばらくのんびりしようと思って」

 

「勝手だな。 残りのメンバーが迷惑するとは思わないのか」

 

「ちょっ……勝手……!?」

 

私がパーティーに入る時に出した条件は、パーティーに参加するのは都合のつく時だけ、抜けたくなったら何時でも抜けられる、という二つを出したんだけど……。

シグルドは太い眉を吊り上げ、言葉を続けた。

 

「お前はオレのパーティーの一員として既に名が通っている。 そのお前が理由もなく抜けて他のパーティーに入ったりすれば、こちらの顔に泥を塗られることになる」

 

「……………」

 

私は口を閉ざしてしまった。

私はレコンに真面目な顔で忠告された事があった。

『このパーティーに深入りするのはやめたほうがいいかもしれない』。

理由を聞くと、シグルドはリーファを戦力としてスカウトしたのではなく、自分のパーティーのブランドを高める付加価値として欲しがったのではないか。

更に言えば、自分に勝ったリーファを仲間、というより部下とアピールすることで勇名の失墜を防いだつもりではないか、と。

考え込んでいたら、背後で気配を消していたキリト君とユウキちゃんが口を開いた。

 

Side out

 

 

俺とユウキは、シグルドに向かって言葉を発した。

 

「仲間はアイテムじゃないぜ」

 

「そうそう」

 

シグルドは俺とユウキの言葉を聞いて、唸り声を上げた。

 

「……なんだと……?」

 

俺とユウキは一歩踏み出し、リーファの間に割って入り、シグルドに向き合った。

 

「他のプレイヤーを、あんたの大事な剣や鎧みたいに、装備欄にロックしておくことはできないって言ったのさ」

 

「それにさっきの話を聞くようだと、リーファちゃんは条件を出していたんじゃないの?」

 

「ッ……きッ……貴様らッ……!!」

 

俺とユウキのストレートな言葉に、シグルドの顔が瞬時に赤く染まった。

肩から下がった長いマントを巻き上げ、剣の柄に手をかける。

 

「屑漁りのスプリガン、インプ風情がつけあがるな! リーファ、お前こんな奴の相t「おい……お前、今なんて言った……」…」

 

俺はシグルドの言葉を遮り、シグルドに向けて殺気を放った。

ユウキは笑みを浮かべながら、俺の肩をポンポンと優しく叩いてくれた。

 

「ボクは平気だから、抑えて抑えて」

 

「…了解」

 

俺は殺気を霧散させた。

シグルドは、剣の柄に手を添えたまま震えを我慢していた。

……やりすぎたか?

 

「失礼なこと言わないで! キリト君とユウキちゃんは、あたしの新しいパートナーよ!」

 

シグルドは、驚愕を滲ませ口を開いた。

 

「……リーファ……領地を捨てて《レネゲイド》になるのか……」

 

「ええ……そうよ。 あたし、此処から出るわ」

 

自発的に領地を捨てた、あるいは領主に追放されたプレイヤーを脱領者(レネゲイド)と呼称している。

シグルドは唇を歪め、食い縛った歯を僅かに剥きだすと、ロングソードを抜き放った

 

「……小虫が這いまわるくらいは捨て置こうと思ったが、泥棒の真似事とは調子に乗りすぎだな。 のこのこと他種族の領地まで入ってくるからには斬られても文句は言わんだろうな……?」

 

俺とユウキが肩を竦める動作で応じた後、ユウキが口を開いた。

 

「おじさん。 デュエルしようか?」

 

ユウキはウインドウを開き、シグルドにデュエル申請しようとする。

だが、シグルドは歯噛みしながらロングソードを鞘に収めた。

 

「ちッ」

 

シグルドは周囲に目立つことはしたくないようだ。

 

シグルドさんや、目立ちたく無いなら剣を抜くなよ。

 

「せいぜい外では逃げ隠れることだな。――リーファ」

 

俺たちに捨て台詞を浴びせてから、俺たちを睨む。

 

「……今オレを裏切れば、近いうちに必ず後悔することになるぞ」

 

「留まって後悔するよりずっとマシだわ」

 

「戻りたくなった時のために、泣いて土下座する練習をしておくんだな」

 

それだけ言い放つと、シグルドは身を翻し、塔の出口へ歩き始めた。

付き従う二人もシグルドを追って走り去って行った。

彼らの姿が消えると、リーファは大きく息を吐き出し、俺とユウキを見た。

 

「……ごめんね、妙なことに巻き込んじゃって……」

 

「いや、俺たちも火に油を注ぐ真似しちゃって……。 いいのか? 領地を捨てて……」

 

「うん。 今ならまだ間に合うかも……」

 

「あー……うん。 いいのよ」

 

と言い、リーファは俺とユウキの背中を押して歩き始めた。

野次馬の間をすり抜け、ちょうど降りて来たエレベータに乗りこむ。

最上階のボタンを押して数十秒後、エレベータが停止すると、ドアが音も無く開いた。

白い朝陽と心地良い風が同時に流れ込んで来る。

彼方に殆んど空と同化した色で高く(そび)える影――世界樹。

 

「おぉ……凄い眺めだな……」

 

「わぁー、綺麗だねー」

 

俺とユウキは、リーファの後に続いてエレベータから降り、数歩歩き周囲を見回した。

リーファは俺の隣に立ち、言った。

 

「でしょ。 この空を見ていると、小さく思えるよね、色んなことが」

 

リーファは言葉を続ける。

 

「……いいきっかけだったよ。 いつかは此処を出て行こうと思っていたの。一人じゃ怖くて、なかなか決心がつかなかったんだけど……」

 

「そうか。……でも、なんだか、喧嘩別れみたいな形にさせちゃって……」

 

「……ごめんね。 リーファちゃん……」

 

「あの様子じゃ、どっちにしろ穏便には抜けられなかったよ――なんで……」

 

この先は、リーファの独り言だった。

 

「なんで、ああやって、縛ったり縛られたりしたがるのかな……。 せっかく、翅があるのにね……」

 

この問いに答えたのは、俺の胸ポケットから顔を出したユイであった。

 

「フクザツですね、人間は」

 

音を立てて飛び立つと俺の肩に乗り、小さな腕を組んで首を傾げる。

 

「ヒトを求める心を、あんなふうにややこしく表現する心理は理解できません」

 

リーファはユイの顔を覗き込み、屈みこんだ。

 

「求める……?」

 

「他者の心を求める衝動が人間の基本的な行動原理だとわたしは理解しています。 ゆえにそれはわたしのベースメントでもあるんですが、わたしなら……」

 

ユイは俺の頬に手を添えると、音高くキスをした。

 

「こうします。 とてもシンプルで明確です。 ママとねぇねぇも、こうしていました」

 

あっけに取られて目を丸くするリーファの前で、俺は苦笑いしながら指先でユイの頭を突いた。

それに、余計な事は言ったらいけないよ。

 

「……ユイちゃん覚えていたんだ」

 

「人間界はもうちょっとややこしい場所なんだよ。 気安くそんな真似したらハラスメントでバンされちゃうよ」

 

「手順と様式ってやつですね」

 

「……頼むから妙なこと覚えないでくれよ」

 

「……うん。 妙なことは覚えないでね」

 

俺とユウキとユイのやり取りを呆然と眺めていたリーファは、如何にか口を開いた。

 

「す、すごいAIだね。 プライベートピクシーってみんなそうなの?」

 

「こいつは特にへんなんだよ」

 

「ユイちゃんは特別だからね」

 

俺はユイの襟首を摘み上げると、ひょいと胸ポケットに放り込んだ。

 

「そ、そうなんだ。………人を求める心かぁ……」

 

リーファは、屈めていた腰を伸ばした。

 

「さ、そろそろ出発しようか」

 

展望台の中央に設置されたロケーターストーンという石碑を使って俺とユウキに戻り位置をセーブさせると、リーファは四枚の翅を広げて軽く震わせた。

 

「準備はいい?」

 

「「ああ(うん)」」

 

俺の胸ポケットから顔を出したユイが頷くのを確認して、いざ離陸としようとした所で。

 

「リーファちゃん」

 

エレベータから転がるように飛び出してきた少年に呼び止められ、リーファは僅かに浮いた足を再び着陸させた。

 

「あ……レコン」

 

「ひ、ひどいよ、一言声をかけてから出発してもいいじゃない」

 

「ごめーん、忘れてた」

 

ガクリと肩を落としたレコンは、顔を上げると真剣な表情で言った。

 

「リーファちゃん、パーティー抜けたんだって?」

 

「ん……その場の勢い半分だけどね。 あんたどうすんの」

 

「決まっているじゃない、この剣はリーファちゃんだけに捧げているんだから……」

 

レコンは短剣を空に突き上げたが、

 

「えー、別にいらない」

 

リーファの言葉により、よろけてしまっていた。

 

「ま、まぁそういうわけだから当然僕もついて行くよ……と言いたいところだけど、ちょっと気になることがあるんだよね。 だから、当分シグルドのパーティーに残るよ……」

 

確かに、何か企んでいる感じがしたしな……。

レコンが俺とユウキに向き直った。

 

「キリトさん、ユウキさん。 彼女、トラブルに飛び込んでいくクセがあるんで、気をつけてくださいね」

 

「あ、ああ、わかった」

 

「大丈夫だよ。 ボクはキリトのトラブルに付き合っていたしね」

 

……ユウキさんの言う通りですね。

SAOでは、何時も俺のトラブルに付き合ってくれていたからな~。

 

「それから、言っておきますけど彼女は僕のンギャッ!」

 

語尾の悲鳴は、リーファがレコンの足を思い切り踏みつけたからだ。

 

「余計なこと言わなくていいのよ! しばらく中立域に居ると思うから、何かあったらメールでね!」

 

そう言って、リーファは翅を震わせて飛翔した。

 

「り……リーファちゃん元気でね!! すぐ追いかけるからねー!!」

 

とレコンの叫び声。

 

俺とユウキも飛翔し、リーファの隣まで移動する。

 

「彼、リアルでも友達なんだって?」

 

「……まぁ、一応」

 

「へ~」

 

ユウキは笑みを浮かべている。

俺の胸ポケットから顔を出したユイが言った。

 

「あの人の感情は理解できます。 好きなんですね、リーファさんのこと。 リーファさんはどうなんですか?」

 

「し、知らないわよ!!」

 

リーファは照れ隠しをする為、スピードを上げた。

 

「さ、急ごう! 一回の飛行であの湖まで行くよ!」

 

「「了解!!」」

 

俺たちは思い切り翅を鳴らし空中移動を開始した。

 




こんな感じに書き上げましたー。

あと、何でランちゃんが鳥籠の中に居るのか? 考えたよー。

あ、予想とか書かんといてね。

次回も頑張るよ。

頑張る。

ご意見、ご感想よろしくお願いします!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。