ソードアート・オンライン ~黒の剣士と絶剣~   作:舞翼

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ども!!

舞翼です!!

今回は書くのに時間がかかってしまった。

一度書き直したからかな。

一度目を投稿したらシリアスで進めないといけなかったからね。

なんか言い訳に聞こえるよね。

すまん。

今回はランちゃんがメインかな。

誤字脱字があったらごめんよ。

それではどうぞ。



第54話≪囚われの姫たち≫

Side アスナ

 

私。 いや、私たちが居る場所は、白い大理石で造られた、冷ややかな硬いテーブルと椅子。

傍らに、同じく純白の豪奢(ごうしゃ)天蓋(てんがい)付きベット。

 

白のタイルが敷き詰められた床は、端から端まで大きな真円形で、壁は全て煌く金属の格子で出来ている。

十字に交差する黄金の格子は垂直に伸び上がり、やがて半球形に閉じる。

その頂点には巨大なリングが取り付けられ、それを太い枝が貫いていて、この構造物を支えている。

つまりこの部屋は、大樹の枝から下がった金の鳥籠()――私たちはこの中に囚われている。

 

「私たちが囚われてから、何日経っているんでしょうね」

 

私に声を掛けてくれた人物は、アインクラッドで《剣舞姫》の二つ名を持っていたランさんだ。

私たちの鏡に映っていた姿は、現実世界とほぼ同じ容姿だった。

私の栗色の長い髪と、ランさんの長い黒髪も元のままであった。

私が身に纏うのは、白い薄いワンピース一枚。

胸元に、血のように赤いリボンがあしらわれている。

――ランさんが身に纏うのは、薄いぼろぼろのワンピース

私たち二人の背中からは不思議な羽根が伸びている。

鳥というより妖精の翅。

 

「わからないです……」

 

私は涙を抑えながら、ランさんの言葉に応じた。

本当にいつもありがとう。

ランさんが居なかったら、私の心はすでに折れていました。

――須郷の手によって。

 

「アスナさん。 そんな悲しい顔しないでください。 “あの子”が悲しみますよ」

 

「……はい」

 

「私は大丈夫ですよ」

 

「……ごめんなさい……」

 

「気にしないでください。 アスナさん、笑って」

 

と言い、ランさんは私にニッコリと微笑んでくれた。

私は、今出来る最高の笑みを作った。

 

「アスナさんには笑顔が似合いますよ」

 

「……ありがとう……。 本当にありがとうございます……」

 

「助けが来るまで頑張りましょうね」

 

「……はい」

 

 

不意に鳥籠の中に声が響いた。

 

「その表情が一番美しいよ、ティターニア」

 

金の檻の一個所、《世界樹》と呼ばれる巨大な樹に面している部分に、小さなドアが設けられている。

そのドアから入って来たのは、一人の長身の男、波打つ金髪が豊かに流れ、それを額で白銀の円冠が止めている。

体を包むのは濃緑のゆったりした長衣、これも細かな銀糸で細かい装飾が施されている。

背中からは私たちと同じように翅が伸びている。

その翅は艶のある四枚の翅、鮮やかなエメラルドグリーンの模様が入った巨大な蝶の翅。

顔は、作り物としか言いようのない程端麗だ。

滑らかな顔から連なる鋭い鼻、切れ長の双眸からは、翅と同じ色の虹彩(こうさい)が光を放っている。

だがそれらを台無しにしているのが、薄い唇に張り付く微笑、全てを蔑むような歪んだ笑い。

私はその人物を一瞬見ると、汚わらしいものを見たかのように視線を逸らせた。

 

「泣き出す寸前のその顔がね。 凍らせて飾っておきたいくらいだよ」

 

「なら、そうすればいいでしょう。 それにこんな所に閉じ込めといてよく言うわ。 それにその変な名前で呼ぶのはやめて。 私はアスナよ、オベイロン――いえ、須郷さん」

 

私は言葉を続ける。

 

「――あなたなら何でも思いのままでしょう、システム管理者なんだから、好きにs「ダメよアスナさん、それ以上言ったら!!」…」

 

私の言葉を遮ってきたのはランさんだ。

 

「また君かい、セイレーン。 もう少しでティターニアの口からいい言葉が聞けると思ったのに。 それに君は、何時まで僕の邪魔をするんだい?」

 

ランさんは私の前に立ち、須郷を見据えた。

 

Side out

 

 

Side ラン

 

「また君かい、セイレーン。 もう少しでティターニアの口からいい言葉が聞けると思ったのに。 それに君は、何時まで僕の邪魔をするんだい?」

 

セイレーンとは、ギリシャ神話に登場する半人半鳥の怪物の名前。

美しい歌声で船乗りを惑わして遭難させるといわれる、海の妖精。

まぁ、今の私はちゃんと人の姿をしているけどね。

 

「アスナさんに近づかないで」

 

私はアスナさんの前に立ち、須郷を見据える。

こんな汚い男の手で、アスナさんを触らせるわけにはいかない。

 

「君は何時まで僕の邪魔をするんだい?」

 

「私が死ぬまでかしら、《妖精王オベイロン》。 それとも須郷信之さんの方がいいかしら」

 

「君が居るからティターニアの心が折れないのかなぁ。 それに、この世界では僕は妖精王オベイロンだよ。 此処アルヴヘイムの支配者。 そして君の後ろに居るのは、僕の伴侶、女王ティターニア。 君は邪魔なんだよ」

 

「あなたが支配者? 笑わせないで」

 

私は須郷を見て笑いながら言った。

須郷の眼を、アスナさんに向かないようにする為には強く出ないとね。

 

「君は何時までそんな口を聞くのかなぁ、僕はこの世界の神だよ」

 

「あなたが神? ふふ、可笑(おか)しすぎて笑っちゃうわ」

 

須郷が此処に居られる時間を減らさないとね。

その為には、私が時間を稼がないと。

 

「助けは来るわよ、あの子がね」

 

「あの子? ……ああ、あの子か。 僕の手を振り払った子のことかな。 たぶんそうだろうな、君とよく似ている、特に僕を見る眼がね。 確か、紺野木綿季とか言ったかな。 そうそう隣に男の子も居たね。 確か、桐ケ谷和人と言ったかな」

 

「そう」

 

桐ケ谷和人は、きっとキリトさんのことね。私の妹、木綿季も一緒に居るのね。

貴方はミスをしたわ。

アスナさんに希望を持たせるというミスをね。

二人は私たちの事を知ったら助けに来てくれるはず。

私は二人を信じる。

きっと助けに来てくれる。

 

「……何が可笑しいんだい」

 

どうやら私は笑みを零していたのね。

ふふ、嬉しい情報が手に入ったんだから。

 

「いえ、何でもないわよ」

 

「君は本当に気に食わない。 何で此処に居るのかな?」

 

須郷は顔を歪めながら言った。

貴方はその醜い顔の方が似合っているわ。

 

「さぁー、何でかしらね。 貴方がミスでもしたんじゃないの」

 

「君は本当に気に食わないよ。 もう君とのお喋りはここまでだよ」

 

もう時間稼ぎが限界かしら。

けど、結構時間が稼げたわ。

 

Side out

 

 

Side アスナ

 

「ティターニア。 僕に顔を見せておくれ」

 

須郷は舌を舐め回し私に言った。

 

「嫌よ。 貴方の顔は眼に毒だわ」

 

「またつれない事を言う、でもティターニアは此処で起きたことは全部忘れ、そして僕を求めるようになる。 ふふ、時間の問題さ」

 

「――絶対貴方なんか求めないわよ」

 

「いや、すぐに君の感情は僕の意のままになるんだから。 ……ねぇ、ティターニア」

 

須郷はにやにやと笑い浮かんだ顔を鳥籠の外にぐるりと巡らせる。

 

「見えるだろう? この広大な世界には、今も数万人のプレイヤーがダイブし、ゲームを楽しんでいる。 しかしね、彼らは知りゃしないのさ。 フルダイブシステムが娯楽市場のためだけの技術ではないという真実をね!」

 

須郷は芝居がかった仕草で両手を大きく広げる。

 

「冗談じゃない! こんなゲームは副産物にすぎない。 フルダイブ用インタフェースマシン、つまりナーブギアやアミュスフィアは電子パルスのフォーカスを脳の感覚野に限定して照射し、仮想の環境信号を与えているわけだが――もし、その枷を取り払ったらどういうことになるか。――それは、脳の感覚処理以外の機能……すなわち思考、感情、記憶までも制御できる可能性があるってことだよ!」

 

私とランさんは、須郷の言葉に絶句するしかなかった。

私は須郷に見て、どうにか声を絞り出す。

 

「……そんな、そんなことが許されるわけが……」

 

「誰が許さないんだい? すでに各国で研究が進められている。 でもねぇ、この研究はどうしても人間の被験者が必要なんだよ。 自分が何を考えているか、言葉で説明して貰わないといけないからね!」

 

須郷は、ひっ、ひっと甲高い声で笑いを洩らした。

 

「脳の高次機能には個体差も多い、どうしても大量の被験者が必要だ。 脳をいじくり回すわけだからね、おいそれと人体実験なんかできない。 それでこの研究は遅々として進まなかった。――ところがねぇ、ある日ニュースを見ていたら、いるじゃないか、格好の研究素材が、一万人もさ!」

 

一万人――それはSAOにログインした人の人数。

そして私は、須郷が何をこれから言おうとしているのか、その先が想像できてしまった。

 

「――茅場先輩は天才だが大馬鹿者さ。 あれだけの器を用意しながら、たかがゲーム世界の創造だけで満足するなんてね。 SAOサーバーに手をつけられなかったが、あそこからプレイヤー連中が解放された瞬間に、その一部を僕の世界に拉致できるようルーターに細工するのはそう難しくなかったさ」

 

須郷は舌を這わせた。

 

「いやぁ、クリアされるのが実に待ち遠しかったね! 全員とはいかなかったが、結果三百人もの被験者を僕は手に入れた。 現実ならどんな施設でも収容できないほどの数さ、まったく仮想世界さまさまじゃないかい!」

 

須郷は饒舌(じょうぜつ)に言葉を捲し立て、続ける。

私は昔から須郷のこういう性癖が大嫌いだった。

 

「三百人の旧SAOプレイヤー諸君のお陰で、たった二ヶ月で研究は大いに進展したよ! 人間の記憶に新規オブジェクトを埋め込み、それに対する情動を誘導する技術は大体形ができた。 魂の操作――実に素晴らしい!!」

 

「そんな……そんな研究、お父さんが許すはずがないわ」

 

「無論あのオジサンは何も知らないさ。 研究は私と極少数のチームで秘密裏に進められている。 そうでなければ商品にできない」

 

「商品……!?」

 

「アメリカの某企業が(よだれ)を垂らして研究終了を待っている。 せいぜい高値で売りつけるさ。――いずれはレクトごとね。 僕はもうすぐ結城家の人間になる。 まずは養子からだが、やがては名実ともレクトの後継者となる。 君の配偶者としてね。 その日のためにもこの世界で予行演習しておくのは悪くない考えだと思うけどねぇ」

 

私は首を振った。

 

「そんな……そんなこと、絶対にさせない。 いつか現実世界に戻ったら、真っ先にあなたの悪行を暴いてあげるわ」

 

「私もそんなことはさせないわ。 現実世界に帰ってアスナさんと一緒にあなたの悪行を暴くわ」

 

「やれやれ、君たちはまだ理解していないのかい。 実験のことをぺらぺら喋ってあげたのはね、君がすぐに何もかも忘れてしまうからさ! セイレーンも僕が迎えてあげよう。 あとに残るのは僕への……」

 

不意に須郷は言葉を切ると、僅かに首を傾け沈黙した。

すぐに左手を振ってウインドウを出し、それに向かって言う。

 

「今行く。 指示を待て」

 

ウインドウを消し、再びにやにや笑いを浮かべながら、

 

「――という訳で、君が僕を盲目的に愛し、服従する日も近いということが解ってもらえたかな。 しかし勿論、君の脳を早期の実験に供するのは望まない。 次に会うときはもう少し従順であることを願うよ、ティターニア」

 

囁くと、須郷は身を翻し、ドアに向かって行った。

ドアの開閉音が響き、次いで静寂が訪れた。

 

「アスナさん、もう少しの辛抱ですよ。 きっと二人は助けに来てくれます。 それまで気をしっかり持ってくださいね」

 

ランさんは、私が安心できるように微笑みかけてくれた。

 

「……はい」

 

私は心の中で呟く。

――早く……早く助けに来て、キリトくん、ユウキちゃん……。

 

 




こんな感じに書きあげました。

ランちゃんは恐れを知らないね。

胆が据わっているね。

今回は久しぶりにアスナさんとランちゃんを出しました~。

最近あんまり出ていなかったからね。

もっと須郷を最低に書きたかったんだけど、これ以上は無理だった。(多分イライラが止まらなくなると思うから)

あと、何でランちゃんが鳥籠の中に居るか? 後で書くよー。

多分、読者の皆さんが疑問に思っているだろうしね。

ご意見、ご感想よろしくお願いします!!


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