ソードアート・オンライン ~黒の剣士と絶剣~   作:舞翼

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ども!!

舞翼です!!

ちょっと、リアルでごたついてて。

更新遅れました。

誤字脱字があったらごめんよ。

それでは、どうぞ。


第45話≪ユイの涙≫

教会の扉から出た後、皆が転移結晶を持ったのを確認してから、俺とユウキとランは戦闘服を身に纏ってから武装した。

武装した俺たち三人は、ユリエールの先導に従って足早に街路を進んでいた。

ユイは、ユウキと手を繋いで歩を進めている。

俺は、前を歩くユリエールに声を掛けた。

 

「あ、そう言えば肝心なこと聞いていなかったな。 問題のダンジョンってのは何層にあるんだ?」

 

「ここです」

 

ユリエールの答えは簡素だった。

 

「「「…………?」」」

 

俺とユウキとランは、首を傾げた。

 

「はじまりの街の……中央部の地下に、大きなダンジョンがあるんです。 シンカーは……多分、その一番奥に……」

 

「マジかよ。 ベータテストの時にはそんなのなかったぞ。不覚だ……」

 

俺は呻くように言った。

 

「そのダンジョンの入り口は、黒鉄宮――つまり軍の本拠地の地下にあるんです。 恐らく、上層攻略の進み具合によって開放されるタイプのダンジョンなんでしょうね。 発見されたのはキバオウが実権を握ってからのことで、彼はそこを自分の派閥で独占しようと計画しました」

 

「なるほどな、未踏破のダンジョンには一度しか出現しないレアアイテムも多いからな。 さぞかし儲かったろう」

 

「それが、そうでも無かったんです」

 

ユリエールの口調が、僅かに痛快といった色合を帯びる。

 

「基部フロアにあるにしては、そのダンジョンの難易度が恐ろしく高くて……。 基本配置のモンスターだけでも、60層相当位のレベルがありました。 キバオウ自身が率いた先遣隊は、モンスターに追い回されて、命からがら転移脱出する羽目になったそうです。 使いまくったクリスタルのせいで大赤字だったとか」

 

「ははは、なるほどな」

 

俺の笑い声に応じたユリエールだが、すぐに沈んだ表情を見せた。

 

「でも、今はそのことがシンカー救出を難しくしています。 キバオウが使った回廊結晶は、モンスターから逃げ回りながら相当奥まで入り込んだ所でマークしたものらしくて……。 シンカーが居るのはそのマーク拠点の先なのです。 レベル的には、一対一なら私でもどうにか倒せなくもないモンスターなんですが、連戦はとても無理です。――失礼ですが、お三方は……」

 

「まぁ、60層位なら……、なんとかなるかな」

 

俺は、ユウキとランを見る。

二人は頷いてくれた。

60層配置のダンジョン攻略に必要なマージンはレベル70だが、俺たち三人のレベルは90を超えている。

これならユイを守りながらでもダンジョンを突破出来るだろうと思って、ほっと肩の力を抜く。

だが、ユリエールは気がかりそうな表情のまま、言葉を続けた。

 

「……それと、もう一つだけ気がかりな事があるんです。 先遣隊に参加していたプレイヤーから聞いたんですが、ダンジョンの奥で……、巨大なモンスター、ボス級の奴を見たと……」

 

俺たち三人は、顔を見合わせる、

 

「60層位のボスなら大丈夫だよね。 てか、どんなボスだっけ」

 

ユウキは、首を傾げて俺とランに聞いてきた。

 

「えーと、確か……、石でできた鎧武者みたいな奴だっけか?」

 

俺は、ランに問いかける。

 

「確か、そうだったはずです」

 

ランは言葉を続ける。

 

「まぁ、大丈夫でしょう」

 

「そうですか、良かった!」

 

ようやく口許を緩めたユリエールは、何か眩しい物でも見るように目を細めながら言葉を続けた。

 

「そうかぁ……。お三方は、ずっとボス戦を経験しているんでしたね……。すいません、貴重な時間を割いていただいて……」

 

「気にするな、今は休暇中だから問題ない」

 

俺は手を振りながら答えた。

そんな話をしている内に、前方の街並みの向こうに黒光りする巨大な建築物が姿を現し始めた。

はじまりの街最大の施設、《黒鉄宮》だ。

正門を入ってすぐの広間にはプレイヤー全員の名簿である《生命の碑》が設置され、そこまでは誰でも入れるが、奥に続く敷地の大部分は軍が占拠してしまっている。

ユリエールは宮殿の正門には向かわず、裏手に回った。

高い城壁と、それを取り巻く深い堀が侵入者を拒むようにどこまでも続いている。

人通りはまったくない。

数分歩き続けた後、ユリエールが立ち止ったのは、道から堀の水面近くまで階段が降りている場所だった。

石壁に暗い通路がぽっかりと口を開けている。

 

「ここから宮殿の下水道に入り、ダンジョンの入り口を目指します。 ちょっと暗くて狭いんですが……」

 

ユリエールはそこで言葉を切り、気がかりそうな視線をちらりとユウキと手を繋いでいるユイに向けた。

するとユイは心外そうに顔をしかめ、

 

「ユイ、こわくないよ!」

 

と主張した。

その様子に、俺たち三人は思わず微笑を洩らしてしまう。

ユリエールには、ユイのことは『一緒に暮らしている』としか説明していない。

彼女もそれ以上のことは聞こうとしなかったが、さすがにダンジョンに伴うのは不安なのだろう。

 

「大丈夫ですよ、この子は見た目よりしっかりしていますから」

 

ランはユリエールを安心させるように言った。

 

「大丈夫だよ、ボクがユイちゃんの手を離さないから」

 

ユウキもユリエールを安心させるように言った。

 

「うむ。 将来はいい剣士になる」

 

俺とユウキとランは、顔を見合わせ笑い合った。

ユリエールは大きく頷いた。

 

「では、行きましょう!」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦

 

「ぬおおおおお」

 

俺は右手に装備した《エリュシデータ》でモンスターを切り裂き、

 

「りゃあああああ」

 

左手に装備した《ダークリパルサー》でモンスターを吹き飛ばす。

俺は、久々の戦闘に嬉々していた。

俺は二刀流、全方位攻撃《エンドリボルバー》を連発し、モンスターを蹂躙し続けた。

ユイの手を引くユウキは、ため息をついている。

ユウキの後ろでユイを護衛しているランは笑っている。

金属鞭を握ったユリエールには出る幕が全くない。

 

「パパー、怪物をやっつけてー」

 

「おう!! 任せろ!!」

 

俺はユイの声援により、更に気合が入る。

全身をぬめぬめした皮膚で覆った巨大なカエル型モンスターや、黒光りするハサミを持ったザリガニ型モンスターなどで構成されているモンスター群が出現する度に、俺は左右の剣でちぎっては投げ、ちぎっては投げで蹂躙し続けた。

 

「あれ? 終わった? これからなのに」

 

どうやら、今のモンスター群で狩り終わってしまったらしい。

鞘に剣の刀身を収め、ユウキとランの元に戻ったと同時にユウキに声を掛けられた。

 

「ねぇ、キリト。 ボス戦より気合が入っていなかった?」

 

「えッ……、そんなこと……ないぞ…」

 

俺は、明後日の方向に顔を背ける

うん。 ボス戦より気合が入っていたな。

 

「ユリエールさん。 シンカーさんの位置まで、後どれくらいですか?」

 

ランがユリエールに問いかけた。

ユリエールは、左手を振ってマップを表示させると、シンカーの現在位置を示すフレンドマーカーの光点を示した。

このダンジョンのマップが無いため、光点までの道は空白だが、もう全体の七割を詰めている。

 

「シンカーの位置は、数日間動いていません。 多分安全エリアに居るんだと思います。 そこまで到達出来れば、後は転移結晶で離脱できますから……。すみません、もう少しだけお願いします」

ユリエールに頭を下げられ、俺は慌てて手を振った。

 

「い、いや好きでやっているんだし、アイテムも出るし……」

 

「へぇ、どんなアイテムなの?」

 

ユウキが俺に問うてきた。

ユウキがランの顔を一瞥してからユイの手を離した。

すると、ランがすぐにユイと手を繋いだ。

ユウキは、俺の隣まで歩を進めた。

 

「おう」

 

俺は手早くウインドウを操作し、赤黒い肉塊を出現させた。

グロテスクなその質感に、ユウキの顔を引き攣らせる。

 

「……何それ」

 

「カエルの肉! ゲテモノほど旨いって言うからな、後で料理してくれよ」

 

「……無理!!」

 

ユウキは、共通化しているアイテムウインドウを開いた。

ユウキは、容赦なく《スカベンジトードの肉×24》をゴミ箱にドラッグする。

 

「あっ! あああぁぁぁ……」

 

世にも情けない顔で声を上げる俺を見て、ランとユリエールは顔を見合わせ笑い合った。

途端、

 

「お姉ちゃん、初めて笑った!」

 

ユイは嬉しそうに叫び、ユリエールの顔を見やった。

彼女は満面の笑みを浮かべている。

ユウキは、ユイと再び手を繋ぎ直した。

ユイは、ユウキとランの二人と手を繋いでいる。

 

「じゃあ、行こうか」

 

俺は言葉を発してから、俺たちは最奥に向かって歩を進めた。

ダンジョンに入ってから暫くは水中生物型が主だったモンスター群は、階段を降りる程にゾンビやゴーストといったオバケ系統に変化した。

俺は携える二本の剣は、現れる敵を瞬時に屠り続けた。

二時間でマップに表示される現在位置と、シンカーが居るとおぼしき安全エリアに着実な速度で近づき続けた。

遂に暖かな光が洩れる通路が目に入った。

 

「あっ、安全地帯だ!!」

 

ユウキが叫んだ。

 

「プレイヤーが居るわ」

 

ランが俺たちに聞こえるように言った。

俺は、索敵スキルを使用した。

 

「奥にプレイヤーが一人居る。グリーンだ」

 

「シンカー」

 

もう我慢が出来ないという風に一声叫んだユリエールが、金属鎧を鳴らして走り始めた。

剣を両手に掲げた俺と、ユイを抱いているユウキ、片手剣を右手に掲げているランも慌ててその後を追う。

右に湾曲した通路の明かり目指して数秒間走ると、やがて前方に大きな十字路とその先にある小部屋が目に入った。

部屋は眩い程の光に満ち、その入り口に一人の男が立っている。

逆光のせいで顔はよく見えないが、おそらくシンカーだろう。

男は、こちらに向かって激しく両腕を振り回している。

 

「ユリエ――――ル!!」

 

こちらの姿を確認した途端、男が大声でユリエールの名を呼んだ。

ユリエールは左手を振り、走る速度を速める。

 

「シンカ―――!!」

 

涙混じりのその声に被さるように、男が叫んだ。

 

「来ちゃだめだ――っ!! その通路には……っ!!」

 

俺とユウキとランは、それを聞いて走る速度を緩めた。

だが、ユリエールにはもう聞こえていない。

部屋に向かって一直線に駆け寄って行く。

 

その時。

 

部屋の数メートル手前で、通路と直角に交わっている道の右側死角部分に、不意に黄色いカーソルが出現した。

表示された名前は《The Fatal-scythe》―。

《運命の鎌》という意味であろう固有名とそれ飾る定冠詞。 ボスモンスターの証だ。

 

「――ユリエールさん、戻って!!」

 

ユウキは叫んだ。黄色いカーソルはゆっくりと左に動き、十字路に近づいて来る。

このままでは、出会い頭にユリエールと衝突する。

 

「くそッ」

 

俺は敏捷力を最大に活かしてユリエールの背後まで移動し、背後から右手でユリエールの体を抱きかかえた。

俺は、左手に握っていた《ダークリバルサー》の刀身を思い切り床に突き立てた。

すさまじい金属音と共に急制動をかけた。

十字路のぎりぎり手前で停止した。

俺とユリエールの直前を大きな鎌を携えた黒い影が横切った。

黒い影は左の通路に飛び込むと一度停止し、体の向きをゆっくりと変え再び突進して来る。

俺はユリエールから右手を離してから床に突き立てた《ダークリパルサー》を抜き、左の通路に飛び込んだ。

ランも俺の後に続く。

ユウキは呆然と倒れるユリエールの体を起こし、ユイを腕から降ろしてユリエールに預けてから叫んだ。

 

「この子と一緒に安全地帯に退避してください!!」

 

ユウキはユイが安全地帯に向かうのを確認してから、腰の鞘から《黒紫剣》を抜剣し、左の通路に飛び込んだ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦

 

俺たち三人は、ボスモンスターと対峙していた。

ボスは、身長三メートルはあろうかという、ぼろぼろの黒いローブを身に纏った人型だ。

フードの奥と、袖口から覗く腕には、漆黒の闇が纏わりつき蠢いている。

暗く沈む顔の奥には生々しい血管の浮いた眼球が嵌まり、俺たち三人を見下ろしている。

右手に握るのは長大な黒い大鎌。

凶悪に湾曲した刃からは、赤い雫が垂れ落ちている。

いわゆる死神の姿そのものだ。

俺は、ユウキとランに言葉を掛けた。

 

「……二人とも今すぐ安全エリアの三人を連れて、クリスタルで脱出しろ」

 

「「え……?」」

 

「こいつ、やばい。 俺の識別スキルでもデータが見えない。 強さ的には多分90層クラスだ……」

 

三人の中で、俺が一番レベルが高い。

その俺が識別出来ないのだ……。

こいつはやばすぎる。

俺が考えている間に死神は徐々に空中を移動し、こちらに近づいて来る。

 

「俺が時間を稼ぐ、早く逃げろ!!」

 

「キリトも一緒にッ」

 

ユウキが俺に言ってくれるが、この死神は簡単に逃がしてくれそうに無い。

最終的離脱手段である転移結晶も、万能のアイテムでは無い。

クリスタルを握り、転移先を指定してから実際にテレポートの時間が完了するまで、数秒間のタイムラグが発生する。

その間にモンスターの攻撃を受けると転移がキャンセルしてしまうのだ。

なので、時間を稼ぐ殿が必要になる。

 

「……ユリエールさん、ユイちゃんを頼みます!!」

 

ランはユリエールに向かって叫んだ。

 

「ラン、逃げろ!!」

 

俺は叫んだ。

だがランは、俺に笑顔を向けて死神と対峙した。

俺の隣で、ユウキが声を掛けてきた。

 

「死ぬ時は、一緒だからね」

 

ユウキも死神と対峙した。

ユウキも戦う気か…。

 

「……お前ら、死ぬなよ」

 

俺たち三人は死神と対峙した。

 

その時だった。

 

大鎌を振りかぶった死神が、突進を開始した。

俺は、二刀を十字に交差させた。

ユウキとランも、俺の二刀と剣を合わせた。

死神が大鎌を俺たちの頭上めがけて振り下ろしてきた。

凄まじい衝撃音。

俺たち三人は、バラバラに吹き飛ばされた。

朦朧とした意識のまま、俺はHPを確認する。

俺たち三人のHPバーはレッドゾーンに割り込んでいた。

このままでは、次の一撃には耐えられない。

俺の体は、先程の衝撃により動かない。

このままでは、やばい。

 

――と、その時

 

小さな足音が耳元から聞こえてきた。

視線を向けると、細い手足。 長い黒髪。 背後の安全地帯に居たはずのユイの姿だ。

 

「ばかっ!! はやく逃げろ!!」

 

「ユイちゃん、行っちゃダメ!!」

 

「ユイちゃん、戻って!!」

 

俺たち三人は、必死に上体を起こそうしながら叫んだ。

死神は再び重々しいモーションで大鎌を振りかぶる。

この攻撃を受けてしまえば、ユイのHPは確実に消し飛んでしまう。

しかし次の瞬間、信じられない事が起こった。

 

「だいじょうぶだよ、パパ、ママ、ねぇねぇ」

 

言葉と同時に、ユイの体がふらりと宙に浮いた。

見えない羽根を羽ばたかせた様に移動し、死神の目の前で止まった。

あまりにも小さな右手を、そっと宙に掲げる。

死神の大鎌が容赦なくユイに向けて振り下ろされた。

その寸前、紫色の障壁に阻まれ、大音響と共に弾き返された。

ユイの掌の前には、システムタグが浮かび上がり表示された。

【Immortal Object】、不死存在――プレイヤーが持つはずの無い属性。

直後、ユイの右手を中心に紅蓮の炎が巻き起こった。

紅蓮の炎が凝縮し、巨大へ姿を変えていく。

巨剣は、ユイの身長を上回る長さを備えていた。

ユイは僅かな躊躇いも見せず、炎の刀身を死神に向けて振り降ろした。

死神は大鎌を前方に掲げ、防御の姿勢を取った。

死神が携える大鎌と、ユイが振り降ろした炎の巨剣が衝突した。

炎の刃は、死神の持つ大鎌にじわじわと食い込んでいく。

 

やがて――。

 

死神の大鎌が真っ二つ断ち割れた。

炎の刀身は、死神の顔の中心に叩きつけられた。

死神は断末魔を響かせながら消滅した。

俺たち三人は、ようやく力が戻った体を動かした。

剣の刀身を支えにして立ち上がる

ゆっくりとユイに向かって歩み寄った。

 

「ユイ……」

 

俺は、ユイに呼びかけた。

ユイは、音もなく振り向いた。

小さな唇は微笑んでいたが、大きな漆黒の瞳にはいっぱいの涙が溜まっていた。

ユイは、俺とユウキとランを見上げたまま、静かに言った。

 

「パパ……ママ……ねぇねぇ……。ぜんぶ、思い出したよ……」




いやー。

今回の話は書くの楽しかったな~。

今思うと結構書いてるのね。

誤字脱字が多いけれどさ(汗)

もうちょいで設定改変するよ~。たぶん…。

ご意見、ご感想よろしくお願いします!!

あ、あと、予想とか書かんといてね。


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