舞翼です!!
今回は短いです…。
すいません…。
今回は、ヌシ釣りのお話ですね。
誤字脱字があったらごめんなさい。
それでは、どうぞ。
たちまち食器は空になり、熱いお茶のカップを手にしたニシダは
「……いや、堪能しました。 ご馳走様です。 しかし、まさかこの世界に醤油があったとは……」
「よかったらお持ち下さい」
ランは、キッチンから小さな瓶を持ってきてニシダに手渡した。
恐縮するニシダに向かって、こちらこそ美味しいお魚を分けていただきましたからと笑う。
「ところで、キリトが釣ってきた魚は?」
ユウキは、こちらを振り向いて聞いてきた。
「……えーと……。 一匹も釣れませんでした……」
俺は、肩を縮めながら呟いた。
「一匹もですか?」
ランもこちらを振り向いて聞いてきた。
「俺が釣りをしていた湖の難易度が高すぎるんだよ」
「いや、そうでもありませんよ。 あの湖だけ難易度が高いんですよ。 他の湖でなら初心者でも釣れますよ」
「な……」
ニシダの言葉に俺は絶句した。
俺の5時間はなんだったんだ…。
二人とも、お腹を押さえて笑っているし。
「なんでそんな設定になっているんだ……」
「実は、あの湖にはですね……」
ニシダは声を潜めるように言った。
俺たち三人は身を乗り出す。
「どうやら、主がおるんですわ」
「「「ヌシ?」」」
ニシダは眼鏡を押し上げながら続けた。
「村の道具屋に、一つだけ値が張る釣り餌がありましてな。 物は試しにと使ってみたことがあるんです」
俺たち三人は固唾を呑む。
「ところが、これがさっぱり釣れない。 散々あちこちで試した後、ようやくあそこ、唯一難度の高い湖で使うんだろうと思い当たりまして」
「大当たりと……」
と俺が聞いた。
ニシダは深く頷く。
「ただ、私の力では取り込めなかった。 竿ごと取られてしまいましたわ。 最後にちらりと影だけ見たんですが、大きいなんてもんじゃありませんでしたよ。 ありゃ怪物、そこらにいるのとは違う意味でモンスターですな」
両腕いっぱいに広げてみせる。 あの湖で、俺が此処にはモンスターは居ないと言った時にニシダが見せた意味深な笑顔はこういうことだったのか。
「「見てみたいな!!」」
ユウキとランは目を輝かせながら言う。
ニシダは、そこで物は相談なんですが、と俺に視線を向けてきた。
「キリトさん筋力パラメーターの方に自信は……?」
「う、まぁ、そこそこには……」
「なら一緒にやりませんか!! 合わせる所までは私がやります。 そこから先をお願いしたい」
「ははぁ、釣り竿の《スイッチ》ですか……」
「「やろう!! やろうよ!!」」
ユウキとランのテンションが最高潮まであがっていた。
「……やりますか」
俺が言うと、ニシダは満面に笑みを浮べて、そうこなくちゃ、わ、は、は、と笑った。
♦♦♦♦♦♦
ニシダからの主釣り決行の知らせが届いたのは三日後の朝のことだった。
どうやら仲間に声を掛けて回ったらしく、ギャラリーが三十人来るらしい。
「……参ったなぁ」
此処で暮らしているのがばれたら、情報屋や剣士が押し掛けて来るよな…。
「「これでどうかなー??」」
ユウキとランは、長い黒髪をアップに纏めると、大きなスカーフを眼深に巻いて顔を隠した。
さらにウインドウを操作して、だぶだぶした地味なオーバーコートを着込む。
「お、おお。 いいぞ、生活に疲れた農家の主婦っぽい」
「「……キリト(さん)!!」」
「ごめんなさい……」
♦♦♦♦♦♦
湖畔にはすでに多くの人影が見える。
やや緊張しながら近づいて行くと、見覚えのある男が、聞き覚えのある笑い声と共に手を上げた。
「わ、は、は、晴れてよかったですなぁ!!」
「「「こんにちはニシダさん」」」
俺たち三人は、頭をぺこりと下げる。
「え~、それではいよいよ本日のメイン・イベントを決行します!!」
長大な竿を片手に進み出たニシダが大声で宣言すると、ギャラリーが大いに沸いた。
俺は何気なくニシダが持つ竿と、その先の太い糸を視線で追い、先端にぶら下がっている物に気付いてぎょっとした。
トカゲだ。
だが大きさが尋常ではない。
大人の二の腕位のサイズがある。
赤と黒の毒々しい模様が浮き出た表面は、新鮮さを物語る様にぬめぬめと光っている。
「……大きいですね」
「……うん、大きいね」
ランとユウキは、顔を引き攣らせて言った。
ニシダは湖に向き直ると、大上段に竿を構えた。
見事なフォームで竿を振ると、巨大なトカゲが宙に弧を描いていき、やや離れた水面に盛大な水飛沫を上げて着水した。
俺たち三人は固唾を呑んで水中に没した糸に注目した。
やがて釣り竿の先が二、三度ぴくぴくと震えた。
だが竿を持つニシダは微動だにしない。
「き、来ましたよニシダさん!!」
「なんの、まだまだ!!」
ニシダは、細かく振動する竿の先端をじっと見据えている。
と、一際大きく竿の穂先が引き込まれた。
「いまだッ!!」
傍目にも判るほど糸が張りつめた。
「掛りました!! 後はお任せしますよ!!」
ニシダから竿を手渡された途端、猛烈な力で糸が水中に引き込まれた。
「うわっ!!」
慌てて両足で踏ん張り、竿を立て直す。
「こ、これ、力一杯引いても大丈夫ですか?」
俺はニシダに声を掛けた。
「最高級品です!! 思いっきりやって下さい!!」
俺は竿を構え直し、全力を解放した。
「「あっ! 見えた(よ)!!」」
ユウキとランが、水面を指差した。
俺は岸から離れ、体を後方に反らせているので確認することが出来ない。
俺は、全筋力を振り絞って竿を引っ張り上げた。
突然、俺の眼前で皆揃って二、三度後退する。
「どうしたん……」
俺の言葉が終わる前に、連中は一斉に振り向くと猛烈な勢いで走り始めた。
「キリトー、逃げないのー」
遠く離れた所からユウキが言って来た。
ユウキの奴、何を言っているんだ??
嫌な予感がする…俺は背後を振り向いた。
……魚が立っていた。
そいつは、六本脚で岸辺の草を踏みしめて俺を見下ろしていた。
こいつは魚じゃない、モンスターだ……。
俺は、そのままくるりと後ろを向き、
俺はそのまま、ユウキとランの後ろに隠れた。
「ず、ずずずるいぞ!! 先に逃げるなんて!!」
「こっちに近づいていますよ」
ランさん、そんなに呑気に言わなくても…。
「おお、陸を走っている……。 肺魚なのかなぁ……」
俺も呑気に言っているけど…。
「凄いよ!! お魚が歩いているよ!!」
ユウキは、魚を見てテンションがあがっているし……。
俺たちって緊張感が無いよね……。
「早く逃げんと!!」
ニシダが慌てて叫ぶ。
数十人のギャラリー達も余りの事に硬直してしまったらしく動かない。
中には座り込んだまま呆然としているだけの者も少なくない。
「じゃあ、ボクと姉ちゃんで殺りますか」
「わかったわ」
ユウキとランは、アイテムウインドウを操作し片手剣を装備した。
ギャラリーには、見えないようにスカーフを解除し、二人は同時に走り出し、走っている途中で片手剣を腰の鞘から抜剣した。
正面から巨大魚に突っ込んでいき、片手剣ソードスキル《ホリゾンタル》で水平に斬りつけ、巨大魚はポリゴンを四散させた。
二人は、片手剣の刀身を鞘に収め、こちらに歩み寄って来た。
すぐにスカーフを眼深く巻き、顔が見えないように隠した。
「二人ともお疲れ」
「久しぶりの戦闘は楽しかったね」
「そうね」
俺とユウキとランで緊張感の無いやり取りをしていると、ようやくニシダが口を開いた。
「……いや、これは驚いた……。 奥さん方、ず、ずいぶんお強いんですな。 失礼ですがレベルは如何ほど……?」
俺たちは顔を見合わせた。
ユウキとランは、顔を隠しているのだが…。
この話題は引っ張ると危険だ。
「そっそんなことよりホラ、今の魚からアイテムが出ましたよ」
俺は話を逸らす為、口を開いた。
「お、おお、これは?!」
ニシダが目を輝かせ、それを手に取る。その手の中には白銀に輝く一本の釣り竿が出現した。
「それじゃあ、俺たちは帰りますね」
俺は、此処を早く離れたいのでニシダに言った。
「今日はありがとうございました」
ニシダは満面の笑みで応じた。
「「「じゃあ、また(ね)」」」
俺たち三人は、帰宅することにした。
♦♦♦♦♦♦
「「「ただいま~」」」
俺たち三人は、扉を開けたと同時に言った。
ログハウスに足を踏み入れた二人は、顔を隠していたスカーフを解除した。
俺たち三人は、リビングの左側に設置してあるソファーに腰を下ろした。
「今日は、楽しかったね!」
俺の左隣に腰を下ろしているユウキが言った。
「だな」
俺は、ユウキの言葉に応じた。
確かに、楽しかったな~。
珍しい物も見れたしな。
俺の右隣に腰を下ろしているランも口を開いた。
「私も楽しかったです!」
ランも今日のヌシ釣りを楽しめたようだ。
「明日は、何をする?」
ユウキが俺に質問してきた。
「よしッ!! じゃあ、明日は森を探検しよう!!」
「「OK」」
二人は頷いてくれた。
こうして明日の予定が決まった。
顔がばれないようにしちゃいました(+o+)
ばれたらユイちゃんが出せなくなっちゃうしね…。
まぁ、後でばれるようにします。
次回はユイちゃんの登場です。
ご意見、ご感想、よろしくお願いします!!