ソードアート・オンライン ~黒の剣士と絶剣~   作:舞翼

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ども!!

ランちゃんもヒロインにしようか、すごく迷っている舞翼です!!

今回は少しだけオリジナル設定を入れました。

誤字脱字があったらゴメンナサイ…。

それでは、どうぞ。


第36話≪紅の聖騎士・ヒースクリフ≫

青い悪魔との戦闘が終えたと同時に、俺は右隣で剣を杖にして片膝を付いているユウキに声を掛けた。

 

「……大丈夫か?」

 

「……一応、大丈夫かな」

 

ユウキは、弱々しい笑みを浮かべていた。

先程の戦闘による倦怠感(けんたいかん)が襲って来たんだろうな。

 

「……キリトは、大丈夫?」

 

俺は、剣を杖にしたまま応じた。

 

「……大丈夫だ」

 

ボス部屋は、まだ青い光の残滓(ざんし)が舞っている。

俺の左隣からランの声がした。

 

「キリトさん。 こっち向いてください」

 

俺は、ランが立っている方向に顔を振り向けた。

 

「どうしt “うぐっ”」

 

ランは、俺の口にレモンジュースの味に似たハイポーションが入った小瓶を突っ込んできた。

俺は、目を白黒させて飲み干した。

俺は、ランの事を恨めしそうに見たが無視されてしまった。

俺がハイポーションの中身を飲み干したのを確認してから、ランは、俺の隣に座った。

 

「ユウキちゃんもだよ。 ほらっ口を開けて」

 

ユウキは、アスナにハイポーションを飲ませて貰っていた。

こちらは普通に飲ませて貰っていた。

ハイポーションの中身を飲み干したのを確認してからアスナはユウキの隣に座った。

足音に顔を上げると、クラインが遠慮がちに声を掛けて来た。

 

「生き残った軍の連中の回復は済ませたが、コーバッツとあと二人死んだ……」

 

「……そうか。 ボス攻略で犠牲者が出たのは、六十七層以来だな……」

 

「こんなのが攻略って言えるかよ。 コーバッツの馬鹿野郎が……。死んじまったら何にもなんねぇだろうが……」

 

吐き出すようにクラインが言った。

頭を左右に振ると気分を替える様に聞いてきた。

 

「そりゃあそうと、お前ら、何だよさっきのは!?」

 

「言わなきゃダメか?」

 

「ったりめえだ! 見たことねえぞあんなの!」

 

ユウキが俺の前まで座りながら近寄ってきて口を開いた。

 

「それって、ボクも言わないといけないんだよね……?」

 

「……だな」

 

周りを見渡してみるとアスナとランを除いた、部屋にいる全員が沈黙して俺とユウキの言葉を待っていた。

 

「エクストラスキルだよ。“二刀流”」

 

「おおっ……。 ユウキちゃんのは」

 

「同じく、エクストラスキルの“黒燐剣”だよ」

 

おお……と、軍の生き残りやクラインの仲間の間にどよめき声が流れた。

エクストラスキルとは、ある条件を満たすと、新たに選択可能になるスキルのことだ。

俺の《体術》スキルもこれに含まれる。

 

「しゅ、出現条件は!?」

 

「解ってりゃもう公開している」

 

「そうだね」

 

首を横に振った俺達に、刀使いも『まぁそうだろうな……』と唸る。

出現条件がはっきり判明していない武器スキル、ランダム条件とさえ言われている、それが《エクストラスキル》と呼ばれるものだ。

このスキルには、クラインの《刀》も含まれる。

もっとも、刀スキルはそれほどレアなものではなく、曲刀をしつこく修行していれば出現する場合が多い。

 

このように、十数種類知られている《エクストラスキル》の殆どは最低でも十人以上が習得に成功しているのだが、俺の持つ“二刀流”と、ユウキの持つ“黒燐剣”と、【ある男】のスキルだけはその限りではなかった。

この三つは、恐らく習得者がそれぞれ一人しかいない《ユニークスキル》とでも言うべきものだ。

今まで、俺とユウキは“二刀流”と“黒燐剣”の存在をひた隠ししていたが、これだけの人数の前で披露してしまっては、とても隠しおおせるものではない。

 

「ったく、水臭ぇな二人とも。 そんなすげぇ裏技黙ってるなんてよう」

 

「スキルの出し方が判っていれば隠したりしないさ。 でもさっぱり心当たりがないんだ」

 

「何気なくスキルウインドウを見たら、今のスキルの名前が出現していたんだ」

 

以来、俺の“二刀流”と、ユウキの“黒燐剣”の修業は常に人の目が無い所でのみ行ってきた。

モンスター相手でもよほどのピンチの時以外使用していない。

いざという時の為の保身という意味もあったのだが。

それ以上に無用な注目を集めるのが嫌だったからだ。

 

「二つとも情報屋のスキルリストに載ってねぇな……。 てことは、ユニークスキルか!?」

 

クラインは、スキルリストを確認しながら呟いた。

 

「「多分……」」

 

俺達は言葉を続ける。

 

「……こんなスキル持っているって知られたら」

 

「しつこく聞かれたり、面倒なことになると思ったから表に出せなかったんだ」

 

クラインが深く頷いた。

 

「ネットゲーマーは嫉妬深いからな。 俺は人間が出来ているからともかく、妬み嫉みはそりゃあるだろうな」

 

クラインは、俺とユウキの左手薬指に嵌めらている結婚指輪を一瞥した。

 

「……まぁ、苦労も修業のうちと思って頑張りたまえ、若者よ」

 

「どういうことだ……?」

 

「どういうこと……?」

 

クラインは腰を屈めて俺の肩を叩くと、振りむいて軍の生存者達の方へと歩いて行った。

 

「お前達、本部まで戻れるか?」

 

クラインの言葉に一人が頷く。

まだ、十代とおぼしき男だ。

 

「はい。 ……あ、あの……有り難うございました」

 

「礼なら奴らに言え」

 

こちらに向かって親指を振る。

軍のプレイヤー達は、よろよろと立ち上がると座り込んでいる俺達四人に深々と頭を下げ、部屋を出て行った。

回廊に出た所で次々に転移結晶を使いテレポートしていく。

クラインは、軍全員のテレポートを見届けてから俺達に声を掛けてきた。

 

「オレ達は、このまま七十五層の転移門をアクティベートしに行くけど、お前達はどうする?」

 

「俺達は、このまま帰るよ」

 

「そうか。 ……気を付けて帰れよ」

 

向うには上層へと繋がる階段があるはずだ。

扉の前で立ち止まると刀使いはこちらに振り向いた。

 

「その……、キリトよ。 おめぇがよ、軍の連中を助けに飛び込んでいった時な…」

 

「……なんだよ?」

 

「オレぁ……、なんつうか、嬉しかったよ。 そんだけだ、またな」

 

まったく意味不明だ。

首を傾げる俺にクラインは右手親指を突き出すと、扉を開け仲間達と一緒にその扉の向こうへ消えて行った。

だだっ広いボス部屋に、俺達四人だけが残された。

 

「キリトさん、心配したんですからね!!」

 

「ユウキちゃんもだよ!!」

 

「「ごめんなさい……」」

 

「じゃあ、私はギルド本部に戻って、団長にこのことを伝えに行くね」

 

「「「わかった(わ)」」」

 

アスナは、アイテムストレージから転移結晶を取り出てから回廊まで移動し転移結晶を使い第55層「グランザム」に転移した。

 

「じゃあ、俺達も帰るか?」

 

「だね」

 

「そうですね」

 

俺達は、転移結晶を使わず迷宮区を抜ける事にした。

俺とユウキの“二刀流”と“黒燐剣”により途中でPOPしてきたモンスターを蹴散らしながら第74層迷宮区から抜け出した。

 

「明日から面倒な事になるよなー」

 

「だねー」

 

「手伝える事が有ったら何でも言ってくださいね」

 

俺とユウキは、ランを第47層「フローリア」に送ってから、第50層「アルゲード」に戻った。

 

 

 

第50層「アルゲード」

 

翌日。

 

俺達は攻略に向かう為、戦闘服に身を包んでから武器を装備して第75層迷宮区に向かうことにした。

 

「よしっ! 迷宮区に行くか」

 

「OK」

 

だが、俺達は失念していた。

剣士や情報屋が家の前で張り込んであろうことに…。

玄関を開けたら絶叫に近い声が届いて来た。

 

「「「「「《絶剣》と《黒の剣士》が出て来たぞーーーーー」」」」」

 

「「「「「スキルの出現条件教えろごらーーーーー」」」」」

 

「「「「「この二人結婚しているらしいぞーーーーー」」」」」

 

剣士と情報屋の人数は、ざっと見ても15人は居るぞ…。

攻略組の連中はともかく、何で一般プレイヤーも一緒に張り込んでいたんだ…?

それに、どうやって俺達の家を特定した…。

今は、逃げるしかない。

 

「ユウキ、逃げるぞ!!」

 

「わっわかった!!」

 

俺達は、アルゲードの大通りを疾風の如く駆け抜け、エギルの経営する店まで走った。

エギルの経営している前に到着すると扉を勢いよく開けた。

 

「「はぁ……はぁ……はぁ…」」

 

「「エギル(さん)匿ってくれ!!」」

 

「……おう。 二階使ってもいいぞ」

 

「「ありがとう!!」」

 

俺達は、二階までダッシュして掛け上がった。

 

 

10分後。

エギルが二階に上がって来た。

 

「まさか、二人がユニークスキル使いだったとな。 ほれ、今日の新聞だ」

 

俺とユウキは新聞の見出しを見た。

新聞の見出しにはこう書いてあった。

 

『《軍の大部隊を全滅させた悪魔》曰く《それを撃破した二刀流使いの五十連撃》曰く《黒燐剣使いの三十連撃》』

 

こうも書いてあった。

 

『二人は、結婚していた。 プレイヤー名は《黒の剣士キリト。絶剣ユウキ》二人の左手薬指に注目。 男性プレイヤーの諸君これを見てどう思う?!」

 

……あの時、クラインが俺達の左手薬指に嵌めている結婚指輪を一瞥してから、発した言葉の意味は、こういう事を予想していたからか……。

この新聞を見て一般プレイヤーも押し寄せてきたのか……。

つか、いつの間に第74層のボス部屋の内部の写真撮ったんだ。

 

「一度くらい有名になってみるのもいいさ。 どうだ、いっそ講演会もやってみたら。会場とチケットの手はずはオレが」

 

「するか!!」

 

「しません!!」

 

俺とユウキは、ほぼ同時に叫び右手カップをエギルの顔頭のぎりぎりを狙って投げた。

が、染み付いた動作によって投剣スキル《シングルシュート》が発動してしまい、輝きながら猛烈な勢いで飛んだカップは部屋の壁に激突して大音響を撒き散らした。

幸い、建物本体は破壊不能なので、視界に“Immortal Object”のシステムタグが浮かんだだけだったが、家具に命中したら粉砕していたに違いない。

 

「おわっ、二人とも俺を殺す気か!」

 

俺とユウキは、エギルに一言謝罪する。

 

「はぁー、まぁいいか。 俺は店番しているから、落ち着くまで二階を使っていていいぞ」

 

「すまん。 助かる」

 

「助かります」

 

エギルは、店番に戻っていった。

同時にユウキに声を掛けられた。

 

「ねぇ、キリト。 今アスナからメッセージが飛んで来たんだけど……」

 

「どうした?」

 

「今、ヒースクリフさんがこちらに向かってきているみたい……」

 

「なんで俺達がいる場所が判ったんだ……? そして何の用だ……?」

 

 

5分後。

そいつは、やって来た。

 

「こんにちは、エギル君。 キリト君とユウキ君は居るかね?」

 

「こんにちは、エギルさん」

 

「こっ……、こんにちは、キリトとユウキちゃんに話があるんですか?」

 

上から順に、ヒースクリフ、アスナ、エギルだ。

アスナは、此処までの道案内を頼まれたらしい。

 

「うむ。 二人と話したくてね。 お邪魔させてもらったのだよ」

 

ヒースクリフは、表情一つ変えずエギルに伝えた。

 

「キリト、ユウキちゃん。 降りて来てくれ。 俺だけじゃ話が進まん」

 

「「了解……」」

 

俺達は、しぶしぶ一階に下りた。

俺とユウキを、呼び出した人物の名はヒースクリフ。

最強の男。 生きる伝説。 聖騎士等々。

血盟騎士団のギルドリーダーに与えられた二つ名は手の指で足りないほどだ。

 

そしてこの男は、唯一のユニークスキルを持つ男として知られていた。

こいつが操るユニークスキルは、十字を象った一対の剣と盾を用い、攻防自在の剣技を操る。

そのスキルの名は《神聖剣》。

とにかく圧倒的なのはその防御力だ。

彼のHPバーがイエローゾーンに陥った所を見た者は誰もいないと言われている。

 

大きな被害を出した第50層のボスモンスター攻略戦において、崩壊寸前だった前線を十分間単独で支え続けた逸話は今でも語り草となっているほどだ。

 

そいつが俺達に何の用だ?

 

「キリト君、ユウキ君。 君達はユニークスキル使いなんだね」

 

「「……ああ(ええ)」」

 

「どうだい。 私とデュエルをしてみないかい?」

 

何を言っているんだ、この真っ赤っか野郎は。

俺達には、メリットが無いだろうが。

じゃあ、家が欲しいわ。

あの家には戻れそうにないだろうからな。

 

「ふむ。 キリト君達にはメリットはあるよ」

 

何で俺の心が読めるんだよ……。

 

「で、メリットって何だ……?」

 

「君達は、家は欲しくないかい?」

 

だから、何で俺の心が読めるんだよ…。

今さっき思ったさ、家が欲しいってな!

 

「……受けてやるよ。 俺が勝ったらちゃんと家を買えよ。 でも、俺だけしか受けないぞ……」

 

「それで構わんよ」

 

ヒースクリフは表情一つ変えず頷いた。

 

「で、何処でやるんだ?」

 

「第75層「コリニア」の闘技場はどうかな?」

 

「じゃあ、明日朝10時でどうだ?」

 

「それで構わんよ。 私に負けたら一日だけ任務をこなして貰いたい」

 

「……いいぜ。 じゃあ、明日な」

 

「楽しみにしているよ。 お邪魔したね、エギル君」

 

「お邪魔しました。 エギルさん」

 

こうして、ヒースクリフとアスナは第55層「グランザム」に戻って行った。

ヒースクリフとアスナが帰った後、ユウキが声を掛けてきた。

 

「キリトの馬鹿……。 何で一人で決めちゃうの……」

 

ユウキは、今にも泣きそうだ。

 

「ごめん……。 勝手に決めて……」

 

「でも、ボク達が新しく住む家が欲しかったんだよね」

 

こいつは、俺の考えが解ったのか。

さすが、俺の奥さんだ。

 

「そうだな」

 

「たとえワンヒット勝負でも強攻撃をクリティカルでも貰うと危ないからね。 危険だと思ったらすぐにリザインしてね。 いい?」

 

「ああ」

 

こうして、俺とヒースクリフの決闘が決まった。

 




ついに決まりました。

ヒースクリフとキリト君の決闘!!

あと、ランちゃんをどうしたらいいと思います?

ご意見、ご感想、よろしくお願いします!!

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