ソードアート・オンライン ~黒の剣士と絶剣~   作:舞翼

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ども!!

舞翼です!!

今回の話は長くなりそうなので、二つか三つにわける予定っす。
なので、ちょっとしたタイトル詐欺になりそうっす(^_^;)
この話は、和真君がメインですね。

楽しんでくれたら幸いっス。

誤字脱字があったらごめんよ。
それではどうぞ。


第123話≪音楽祭と二つの楽器≫

二〇四五年。 七月。

和真は、玄関前で紗季の事を呼んでいた。

 

「おーい、紗季。 先に学校行っちゃうぞー」

 

『ま、待ってよ。 カズ兄!』

 

パタパタと廊下を走って来たのは、セーラ服を身に纏った紗季だ。

和真と紗季は、中学生2年になったばかりだ。

紗季は、玄関で靴に履き替えた。

 

「カズ兄。 行こう」

 

和真は、息を吐いた。

 

「お前なァ……。 まあいいや」

 

和真と紗季は立ち上がり、リビングに向かって声をかけた。

 

「ママ、行ってきます!」

 

「ママー、行ってくるねー」

 

数秒後、リビングから、木綿季の声が届いた。

 

『車に気をつけるんだよ。 学校では、みんなと仲良くね!』

 

「「はーい」」

 

そう返事をしてから、和真と紗季はマンションを出た。

二人は、いつも一緒に登校している。 とても仲の良い双子である。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

和真と紗季は、通学路を歩きながら学校の行事について話していた。

 

「そういえば、二週間後に音楽祭があるよな。 オレらのクラスって、ピアノ弾ける奴居たっけ?」

 

「カズ兄、ピアノ弾けたよね?」

 

和真は苦笑した。

 

「弾けるけど、男子のピアノはあれじゃん」

 

「そうかな。――紗季は、みんなの前で演奏できるレベルになってないんだよね」

 

「そうか? 一回聞いたことあるけど、結構レベルが高かったと思うぞ」

 

紗季は首を振った。

 

「まだダメ。 優衣姉を超えるくらいにならないと」

 

和真は、右掌を額に当てた。

 

「お前の理想高すぎ。 優衣姉を超えるっていうことは、音楽の先生より上手くなるってことだぞ」

 

「ん、そうだよ」

 

話していたら、学校の校門が見えてきた。

和真と紗季は校門を潜り、昇降口で上履きに履き替えてから、自身の教室2年C組へ向かった。

和真が教室に入ると、悪友の神崎裕也(かんざき ゆうや)が肩に手を回してきた。

 

「今日も紗季ちゃんと登校か。 羨ましいな、この野郎」

 

「紗季は、オレの妹だから」

 

ちなみに、紗季はもの凄くモテる。

告白された回数は、二桁に突入してるらしい。

 

「(パパがこれを知ったら、どうなっちゃうんだろ?)」

 

和人がこれを知ったら、親バカが発動することは間違いないだろう。

 

「つか、和真。 お前モテるよな? お前なら、誰とでも付き合える気がする」

 

和真も父親に似て、可愛いイケメン?なのだ。

女子の中では、カッコいい男子ランキング上位に入っている。 もちろん、男子はこのことを知らない。

 

「知らん。――オレはお互いのことを、ちゃんと知ってからじゃないと付き合わない」

 

「へー、お前って一途なタイプなのな」

 

「かもな」

 

その時、担任の佐々木先生が出席簿を持って教室に入って来た。

 

「はいはい、席に着けお前ら。 出席を取るぞ。 あと、連絡事項もあるからな」

 

そう言って、佐々木先生は教壇に上がり、机に出席簿を置く。

 

「やべ。 和真、また休み時間な」

 

「おう」

 

と言っても、裕也の席は和真の隣なんだが。

予鈴が鳴り、SHRが始まった。

 

「じゃあ、出席を取るぞ。――荒井」

 

「ほーい」

 

「ちゃんと返事しろ。――伊東」

 

「はい!」

 

「うん、良い返事だ。――内田」

 

「あいよ」

 

とまあ、このように出席が取り終わった。

そして、連絡事項に入った。

 

「今週末に、音楽祭が開催される。 でだ、誰か演奏してくれないか。 男女から一人づつ選出してくれだそうだ。……あ、桐ケ谷双子はどっちかにしてくれ。 二人が一緒に出たら、確実にお前らが優勝になっちまうからな」

 

クラスメイト全員が、うんうんと頷いていた。

和真と紗季がコラボした時、クラスメイトの度肝を抜いたことがあるのだ。

数分経過しても、手を上げる者は居なかった。

 

「(えー、これって決まるまで終わらないの)」

 

『和真君が演奏してる姿見てみたい』、の視線が凄い。 主に、女子からだが。

和真は大きく息を吐き、手を上げた。

 

「……じゃあ、オレやりますよ。 ピアノですけど」

 

和真がそう言うと、一斉に拍手が鳴った。

 

「よし! 男子は、桐ケ谷和真で決定だな。 残るは女子だが……」

 

すると、おずおずと、一人の女子が手を上げた。

この子の名前は永瀬葵(ながせ あおい)。 クラスでは、とても大人しい子でもある。 実は、男子受けも良かったりする。

 

「お、永瀬か。 お前は何ができるんだ?」

 

「え、えっと、……ば、バイオリンが、ひ、弾けます」

 

佐々木先生は、うんうん、と頷いた。

 

「そうかそうか、バイオリンか。 いいんじゃないか。 異論がある奴は挙手してくれ」

 

挙手の代わりに、拍手が鳴った。

 

「よし、これで決定だ。 男子からは、桐ケ谷和真。 女子からは、永瀬葵だ。 曲は『明日へ』だ。 練習頑張れよ。 先生は応援してる」

 

先生は、『今から自習だ!』と言い、教室から出て行った。

それに応じて、裕也が、和真の方に体を向ける。

 

「オレが思った通り、和真は演奏者になったな」

 

裕也は、は、は、はと笑うだけだ。

 

「……お前、人ごとだからって」

 

「おうおう、いいじゃんか。 隠れキャラの永瀬ちゃんとだぞ。 あの噛み具合がいい、いいね」

 

和真は、はあー、と溜息を吐くだけだ。

和真は永瀬葵の席まで行き、『今日の放課後練習な』と言い、席に着いた。

その時、女子からの黄色い声が凄かったが、和真はそれをシャットアウトしたのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

時は経過し放課後。

和真は音楽室の鍵を借り、ピアノの前の席に座り、アンジェラ・アキ。 手紙~拝啓十五の君へ~を弾いていた。

その間も、葵の姿は見えなかった。 演奏が終わると同時に、小さく拍手しながら葵が姿を現した。

 

「き、桐ケ谷君。 じょ、上手だね」

 

「まあな。 猛練習したからな。――今度は、永瀬が弾いてくれよ。 オレだけは不公平だろ」

 

葵は、ぼん、と顔を赤くした。

 

「え、え、私が、ムリムリムリ」

 

葵は、両の手を突き出し、思い切り左右に振った。

だが、和真はそんなのお構いなしに、立て掛けてあるバイオリンを葵に渡す。

 

「ひ、弾かないとダメかな……」

 

「おう、それから練習だな」

 

「う、うん。 わかったよ。 わ、私が、最初に弾けるようになった曲で」

 

葵は、半分諦めモードだった。

和真に抵抗しても、無意味と悟ったのだ。

葵はバイオリンを肩に乗せ、深呼吸をしてから、右手に持ってる弓を弦の上に置いた。

 

「い、いきます」

 

葵が奏でるハーモニーを聞きながら、和真は眼をつぶっていた。 そして、心地良い気分にもなった。 まさに、コンクールなどで聞く演奏だった。

 

「わ、私が最初に覚えた曲。 Supercellの、君の知らない物語だよ。――き、桐ケ谷君」

 

「わ、悪い。 寝そうだった」

 

和真は頬を掻いた。

この仕草は、父、和人の仕草そのものだった。

 

「……やっぱり、下手だったかな」

 

「いや、その逆だから。 永瀬、バイオリン上手いんだな。 ちょっと意外かも」

 

「い、意外!?」

 

和真は、慌ててフォローに回った。

 

「う、うん。 良い意味でだよ。 ほ、本当だよ」

 

「わ、私も、桐ケ谷君がピアノ上手くて意外かな。 女の子が得意とする楽器なのに」

 

和真はこれを聞いて、どよーんと肩を落とした。

 

「ふ、ふん。 どうせオレは女顔ですよ。 やっぱりピアノが弾けちゃうと、女子力が上がっちゃうのかな……。 パパの苦労が解ってきたかも。 も、もしかして、これで弄られちゃうのかな……」

 

「き、桐ケ谷君。 しっかりして、私が悪かったから。 もう、女の子みたいって言わないから」

 

「……永瀬さんよ。 それ、地雷踏んでるから」

 

「ご、ごめん」

 

葵は、しゅん、とした。 和真はそれを見て、声を上げて笑った。

 

「ん、んん。 笑った笑った」

 

「き、桐ケ谷君。 どうしたの?」

 

「いやー、永瀬にもそんな一面があるなんてな。 お、面白かった。……ぷぷっ」

 

「ちょ、笑わないでよ」

 

「それに、最初より距離が縮んだな」

 

葵は、ハッとした。

たしかに最初は、オドオドしながら、距離を取っていたのかもしれない。

 

「そ、そうかも。 私、凄く人見知りだからさ。 初対面の人には、壁みたいの造っちゃうんだ」

 

「そうなのかー。 だから一人で居る時が多いんだな。……ん、今度、紗季に話しかけてみ。 あいつなら大丈夫だ。 何せ、本人に天然が入ってるしな」

 

「き、桐ケ谷さんと」

 

「おう、桐ケ谷さんだ。 てか、桐ケ谷君と桐ケ谷さんってゴッチャにならないか?」

 

和真の言う通り、桐ケ谷さんと言ったら、和真と紗季が反応しそうだ。

和真は、『それじゃあ』と言い、言葉を続ける。

 

「オレのことは、和真でいいぞ」

 

葵は目を丸くし、顔をトマトのように真っ赤に染めた。

 

「え、え、名前で!?」

 

「おう、名前だ。 オレも、葵って呼ぶから。……あれ、ダメだった」

 

和真は首を傾げた。

 

「だ、ダメじゃないけど、いきなり呼び捨てはハードルが高いといいますか……。 『く、君』づけでもいいですか」

 

「呼び捨てでいいんだけど……。 ま、それは慣れだな、慣れ」

 

「そ、そうだね。――えっと、和真、君」

 

「ん、よく出来たぞ。 葵」

 

葵は、再び顔を真っ赤にした。

 

「うー、は、恥ずかしいね」

 

「そうか。 本来なら恥ずかしいだろうけど、オレは、恥ずかしいのに慣れちゃったって言えばいいのかな?」

 

和真の言ってることは、桐ケ谷夫婦のことである。

二人をいつも見てる和真は、免疫?がついたのかもしれない。

葵が、おずおずと話しかけきた。

 

「あ、あのさ。 和真君」

 

「どったの?」

 

「今日は練習お休みして、お話しない?」

 

「オレも同じこと考えてた。――練習は明日からにするか。 今日はお互いを知るってことで」

 

葵は、満面の笑みで頷いた。

それを見た和真も、笑みを浮かべた。

 

「和真君って、趣味とかあるの?」

 

「……お見合いで、話題を必死に作る男の言葉だな」

 

「じゅ、純粋に知りたくて」

 

「そだな。 オレの趣味は、ALOだな」

 

和真は即答した。

和真は、二刀流の猛練習中でもある。 まあ、父のようにはいかないんだが。

葵は、目を丸くした。

 

「わ、私もALOが趣味なんだ」

 

「ほう。 種族は」

 

水妖精族(ウンディーネ)だよ。 主に、回復(ヒール)担当かな」

 

和真は、顔をグイッと近づけた。

 

「ま、まじか。 今度狩り行こうぜ。 いやー、オレも紗季も、魔法は得意じゃなくてね。 やっぱ、接近戦でしょ!」

 

「か、和真君って、脳筋プレイヤーなの」

 

和真は、ムッ、とした。

 

「いや、脳筋じゃないぞ。 ちゃんと魔法も使うし、……目暗ましとか暗視魔法とか」

 

「……うん、そうだね」

 

「おい、残念そうな目で見るな。――そんなわけで、回復(ヒール)してくれる人がパーティーに加わって欲しんだよ」

 

「わかった。 じゃあ、和真君のパーティーにお邪魔するね」

 

和真は、ガッツポーズをした。

 

「っし、これで接近戦が楽になるぜ。 てか、葵の副武装ってなんだ?」

 

細剣(レイピア)だけど」

 

葵は、可愛く首を傾げる。

だが、和真は顔を引き攣らせていた。

 

「そ、そうか。……バーサクヒーラー二代目になるかもな」

 

後半の言葉は、葵に聞こえないように呟いた。

 

「噂で聞いたんだけど、和真君のお父さんとお母さんって、“黒の剣士”、“絶剣”なの?」

 

「リアル割れしちゃったか。――そうだよ。 オレの両親が、“黒の剣士”、“絶剣”だよ。 パパとママの親友は、“閃光”、“剣舞姫”でもある」

 

「へー、和真君って、伝説のプレイヤーと知り合いなんだね。 “閃光”と“剣舞姫”ってどんな人なの?」

 

「二人とも、メッチャ優しいよ。 今度会ってみなよ。 第二十二層ログハウスに居るかもよ」

 

明日奈と藍子も、大学の教授の仕事で忙しいので、休日にならないと会えないかもしれないが。

こう話し込んでいたら、学校最後の予鈴が鳴ってしまった。

 

「終わっちゃったな」

 

「……うん、終わっちゃたね」

 

葵は、とても残念そうにしていた。

もっと話したかったんだろう。 葵にとっては、壁を造ることなく、接することが出来る友達なのだから。

 

「残念そうにするなって。 あ、そうだ。 葵、スマホ出して」

 

「う、うん」

 

葵は、バックの中からスマートフォンを取り出し、和真に手渡す。 和真はスマホの画面をスライドさせ、何かの作業をしていた。 作業が終わり、葵にスマホを返した。

 

「オレの連絡先を電話帳に入れといたから、いつでも連絡してくれ」

 

「…………え、えッッ――――!」

 

葵は声を上げた。

それはそうだろう。 和真の連絡先は、一年女子にとって、喉から手が出るほどの代物なのだ。 それに和真はガードが固いので、そう簡単に連絡先を教えようとしないのだ。

 

「あれ、そんなに嫌だった」

 

葵は、ぶんぶんと、勢いよく首を左右に振る。

 

「え、えっと、私なんかがいいのかなって」

 

「おう、構わないぞ。 葵と話すのは楽しいしな。 連絡待ってるよ」

 

葵の心は、和真に掴まれそうになったが、葵の抵抗が勝ったのだった。

 

「……和真君、それって素だよね」

 

和真は、何言ってるんだ。と言いたげに首を傾げた。

 

「和真君、将来苦労しそう」

 

「そうか。 オレは正直に生きてるだけだぞ。 てか、そろそろ帰らないと。 送るよ」

 

「ひ、一人で大丈夫だよ」

 

だが、葵の言葉は一刀両断される。

 

「ダメだ。 送らせてくれ。 17時以降に女の子が一人は危ないだろ」

 

和真の真剣な顔つきに、葵は折れたのだった。

父、和人に言われているのだ。 『17時以降になったら女の子を一人にしちゃいけない。 何があっても、和真が守ってやれ』と。

 

「う、うん。 お言葉に甘えるね」

 

「おう、任せろ」

 

そう言って、和真と葵は職員室に音楽室の鍵を返しに行き、夕焼け空の中、二人一緒に下校したのだった。




和真君と紗季ちゃんモテますなー。
和真君。和人君の遺伝子を受け継いでますな。うん、将来大変そうだぜ。
スマホ等は、OKな学校なんス。授業中見つかったら没収ですけど。

で、女子で楽器を弾けるのは、紗季ちゃんと葵ちゃんしかいなかったんす。
まあ、紗季ちゃんが出れないんで、自動的に葵ちゃんになるんス。

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