ソードアート・オンライン ~黒の剣士と絶剣~   作:舞翼

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ども!!

舞翼です!!

え~、初めて更新がこんなに遅れました。
ごめんなさい!!m(__)m

書く題名などはあるんですが、内容が思いつかなくて……。
でもまぁ、書き上げました(^◇^)
前置きはこれ位にして、それでは、後日談第13弾いってみよー(^o^)/

誤字脱字があったらごめんよ。
それではどうぞ。


第108話≪花火大会とボス戦≫

これから行われるのは、ALO統一デュエルトーナメント終了後に開催される花火大会だ。

そしてその花火が、アルンの上空に綺麗な花を咲かせるのだ。

今、俺たちは世界樹の根元に集合していた。

俺が周りを見渡し言った。

 

「じゃあ、ユイ、ユウキ。 行こうか」

 

「OK♪」

 

するとユイは笑みを浮かべながら、

 

「えっと、今日はパパとママだけで周って大丈夫です。 私は、リーファさん達と周ります。 今のパパとママの邪魔をしたら、怒られちゃいます!」

 

ユウキは顔を朱色に染め、俺は取り乱してしまった。

 

「ぁ……う……」

 

「そそ、そうか。――じゃあ、行こうか、ユウキ」

 

「う、うん……」

 

それから、俺とユウキは皆に手を振り歩き出した。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

今、俺とユウキはアルンに中央に点在する噴水広場に居た。

 

「ボクは浴衣に着替えてくるから、三十分後に此処に集合でいいかな?」

 

「まぁ、うん、いいけど。 このままじゃダメなのか?」

 

「もう、キリトは乙女心を解っていないんだから。 ボクが今日の為に新調した浴衣を見て貰いたいからだよ……。 い、言わせないでよ……」

 

そう言ってから、ユウキは顔を真っ赤に染めた。

俺も釣られて、顔を赤くしてしまう。

 

「りょ、了解……。――じゃあ、此処に三十分後な」

 

「ん、わかった」

 

こうして、俺とユウキは一度二手に別れる事になった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

俺は時間を潰す為、屋台を周っていた。

俺が眼に留まった屋台は、かき氷を売っている屋台だ。

 

「取り敢えず、かき氷を二つ買っていくか」

 

俺はかき氷を買う為、屋台の前まで行った。

 

「へいらっしゃい!!」

 

屋台の前まで行くと、親仁のNPCが元気よく迎えてくれた。

 

「かき氷を二人分頼む」

 

「ありがとうごぜいやす!!」

 

(ユルド)を払い、二人分のかき氷を受け取った。

一つはブルーハワイ味、もう一つはメロン味だ。

時間を見ると、あと五分で待ち合わせの時間なので、歩みのスピードを少しだけ上げ、噴水広場へ向かった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

其処で眼にしたのは、二人の男にナンパされているユウキの姿だった。

こういうイベントでは、ナンパは珍しくないのだ。

まぁ、ユウキは平然な顔をしているが。

 

「(はぁ~、俺の奥さんに手を出すとか……。 ここが圏外なら、剣で斬り刻んじゃう所だったな)」

 

俺はかき氷を持ったまま近づき、一人のナンパ男の頭にメロン味のかき氷をかけた。

うん、滅茶苦茶冷たそうだな。

 

「おい、冷てぇじゃねぇか!!」

 

男は振り向き、こちらを見てきた。

もう一人の男もそれに倣った。

男たちは俺を睨むように見てきたが、その顔を徐々に青くしていく。

 

「くく、黒の剣士!!??」

 

「じゃ、じゃあ、この女の子は、ぜぜ、絶剣なのか!!??」

 

「まぁ、そうなるな」

 

「「す、すいませんでした!!!!!」」

 

男たち深く頭を下げ、敏捷力をMAXにして駆け出し、人混みの中にとけ込んでいった。

それを確認してから、俺はユウキの隣まで移動した。

 

「キリト、助けてくれてありがと♪」

 

「俺が助けなくても、如何にかなったと思うけどさ」

 

ユウキは俺と同じく、体術スキルを身に付けているのだ。

なので剣が無くても、あの程度の連中なら撃退出来たはずなのだ。

 

「ん~、そうだけど。 やっぱり、大好きな人に助けて貰いたかったから」

 

「そ、そうか。 でも、何事も無くて良かったよ」

 

会ってから数秒で、俺たちの周りには、甘い固有結界が展開されていた。

うん、周りのプレイヤーは、砂糖を吐きそうになっているな。

 

「で、どうかな。 ボクの浴衣姿は?」

 

ユウキはその場でくるっと一回転し、首を傾げた。

ユウキが身に纏っている浴衣は、綺麗な花柄が刺繍(ししゅう)された浴衣だった。

 

「うん、メッチャ可愛い。 誰にも見せたくないレベルだぞ」

 

「ありがと♪」

 

「よし、じゃあ、行くか」

 

「うん、行こっか」

 

俺がユウキの手を引き向かった先は、俺とユイで見つけた秘密の場所で、花火が良く見渡せる。

この場所は、世界樹から少し離れているので、とても静かだ。

俺とユウキは、その一角にあるベンチに腰を掛け、先程買ってきたブルーハワイ味のかき氷を食べていた。

もちろんストローは一つしかないので、必然的に間接キスになるが。

 

「美味しいね」

 

「ああ、夜風に当たりながら食べるのは、最高だな」

 

「それに、隣に最愛の人が居るからね」

 

「だな。 ずっと一緒に居ような」

 

「もちろんだよ♪」

 

その時、

 

――――ドーーーーンッ!!

 

と、大きな音を立て、アルンの空に綺麗な花を咲かせた。

一発目に大きな花火が上がると、それに続いて、青や緑、赤に黄色、紫と、鮮やかな色の花火が次々と打ち上げられる。

そしてその花火は、アルンの夜空を輝かせた。

 

「綺麗だね~」

 

「ああ」

 

それから数分間、二人は花火に見入っていた。

俺がゆっくり口を開いた。

 

「今年の花火大会は、行けなかったからな」

 

「現実の世界の花火大会の事だね」

 

その日は結婚式のお礼周りに行っていたので、花火大会へ行くことが出来なかったのだ。

 

「ああ」

 

「う~ん、じゃあさ、来年は行こうよ」

 

「おう、来年が楽しみだな。――ユウキ、後ろを向いてくれないか?」

 

「う、うん。 いいけど」

 

俺は左手を振り、アイテムウインドウを視界に表示させ、アイテムストレージから目的の物を取り出し、それをユウキの髪につけ、シャランと鈴の音が鳴った。

ユウキは俺の方に身体を向け、正面から俺を見た。

 

「これはプレゼントの簪だ。 優勝おめでとう」

 

「……ありがと。 これは一生大切にするね」

 

「一生って、大袈裟だな」

 

「ううん、大袈裟じゃないよ。 和人から貰った物全部、ボクの宝物だから」

 

二人は顔を朱色に染めながら、短く、触れ合うキスをした。

二人は顔を離し微笑してから、再び前に眼をやり、花火に見入った。

最後の花火が打ち上がり、夜空に花を咲かせ、花火大会が終了した。

 

「終わったな……」

 

「うん、終わったね……」

 

「じゃあ、戻るか」

 

「うん!」

 

俺たちは漆黒の翅を広げ、我が家に飛翔を開始した。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

第二十二層、《森の家》ログハウス。

花火大会が終了し、アルヴヘイムは静かな夜へと戻っていた。

そんな中、星が綺麗に輝いている。

俺とユウキは庭に着陸して翅を畳んで消してから、歩み始め、俺が玄関のドアノブを捻り扉を開けた。

 

「「ただいま~」」

 

「パパ、ママ。 お帰りです!」

 

俺たちを迎えてくれたのは、我が愛娘のユイであった。

それから、俺が玄関のドアを閉めた。

ログハウスに集合していたメンバーは、アスナ、ラン、リズ、シノン、リーファであった。

クラインは明日の仕事の為、シリカは明日が早い為、俺たちより早くログアウトをしたらしい。

長い黒髪を揺らしながら、水妖精族(ウンディーネ)が話し掛けてきた。

 

「キリトさん、ユウキ、おかえりなさい。 クラインさんとシリカちゃんから伝言を預かっていますよ」

 

「おう、聞かせてくれ」

 

「えっとですね。 『また、イベントなどがあったら誘ってくれ』、『また誘ってください』、だそうです」

 

「おう、了解した。 後でメールでも送っておくわ」

 

ソファーに座っていたリズが口を開いた。

 

「……あぁーあ、お祭りも終わっちゃたわねー。 明日から暫くIN出来そうにないし……。 やっぱり、大学は大変だわ……」

 

「でも、良い息抜きにはなったんじゃないかしら」

 

「リズさん。 お互い頑張りましょう」

 

シノンに続いて、リーファだ。

リズが呟いた。

 

「そういえば、あんた等のデュエル大会のお祝いをして無いわよね?」

 

「別にやらなくても構わないが……」

 

「だね」

 

「ですね」

 

「そうですね」

 

上から、俺、ユウキ、アスナ、ランだ。

すると、シノンとリーファが言葉を発した。

 

「いや、やりましょう。 お祝いパーティー」

 

「そうですね。 やりましょう」

 

それから話は盛り上がり、お祝いパーティーが開催される事になった。

少し時間が経った頃、俺の隣に座っていたユウキが爆弾発言をした。

 

「ねぇねぇ、このまま皆でボス攻略をしない?」

 

「「「「「「「えっ!!??」」」」」」」

 

「剣士の碑に、皆の名前を残さない?」

 

ユウキが言う《剣士の碑》とは、新生アインクラッド第一層に存在している碑の事だ。

その《剣士の碑》は、各フロアボスを倒した者の名前が刻み込まれる。

碑には四十九人全員の名前を刻み込む事は出来ず、ボスに止めを刺した者の名前が刻まれるのだ。

だが、一パーティーで攻略すれば、全員の名前を刻み込む事が出来る。

ユウキが言っている事は、今の人数でボスを倒し、七人の名前を刻もうと言っているのだ。

 

「あんた……マジで言ってるの……」

 

俺の向かいに座っているリズが顔を引き攣らせ、リズの両側に座っているリーファとシノンも顔を引き攣らせていた

だが、ユウキに隣に座っているアスナと、その隣に座っているランを見てみると、笑みを浮かべていた。

うん、二人はやる気満々だな。

 

「ま、まぁ、此処には、トーナメントの優勝者からベスト4が揃って居るんだから、出来ない事は無いんじゃないか?」

 

すると、リズが呆れたように言った。

 

「……あんたら四人は、チートの塊みたいなもんだしね」

 

まぁうん。 自分で言うのも何だが、俺たちはチートの塊かもしれない。

俺たち四人は、チート級のシステム外スキルや、OSSを持っているのだ。

 

「いや、でも、ボスの一撃を貰ったら、結構なダメージを受けるぞ」

 

「でもあんた等は、それを躱すんでしょ」

 

「まぁ、そうかもだけどさ……」

 

俺たち四人は、ボスの攻撃を完全に躱すことが出来るかもしれないが、精神力、集中力が削られる。

ボス戦で、精神力、集中力が切れると、命取りになるのだ。

 

「やってみようか」

 

「そうですね」

 

「ものは試しだよ」

 

アスナ、ラン、ユウキがそう言うと、リズを大きな溜息を吐き、リーファとシノンは頷いた。

俺は両の手を打ち付けた。

 

「よし!! 決まりだな。 確か、第27層のボスになるな。 こいつは、俺たち七人で倒すぞ!!」

 

「「「「「「「おー!!」」」」」」」

 

それから七人と一人(ユイ)は立ち上がり、それぞれが戦闘服と武器を装備した。

俺は左手を振り、アイテムウインドウを視界に表示させてから、アイテムストレージからもう一つのロングソード《聖剣エクスキャリバー》を取り出し、剣を交差するように背に装備した。

それから全員は庭に出て、それぞれの翅を展開させてから、第27層迷宮区を目指し飛翔を開始した。

ユイも小妖精の姿になり、俺の肩にちょこんと座っている。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「見えたよ、迷宮区!」

 

眼を凝らすと、連なる岩山の向こうに一際巨大な塔が見えてきた。

円筒形のそれは地上から上層部まで真っ直ぐ伸び、迷宮区の入り口は、塔の下部に黒々と開いていた。

暫くホバリングし、モンスターが居ないのを確認してから、迷宮区入り口前に着陸した。

それから七人は巨大な塔を見上げ、大きく息を吐いた。

 

「さて、どういうフォーメーションで進もうか?」

 

「そうだね。 キリト君とユウキちゃんとランさんが前衛で、私とリズが中衛、リーファちゃんとシノのんは後衛で。 シンプルだけど、これが一番適任だと思うしね」

 

俺たちは、アスナの提案に頷いた。

 

「よし! さくっと攻略しますか」

 

六人は、腰や背に装備している鞘から音高く得物を抜剣し、アスナは世界樹の杖を掲げ幾つもの支援スペルを詠唱し、七人の身体にライトエフェクトが纏い、視界の左上、HPバーの下に複数のスターテスアップのアイコンが点滅する。

続けて俺が、全員に暗視魔法を掛け、視界を明るくする。

準備が完了した所で、迷宮区に足を踏み入れた。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「……これって、私たち必要だったのかな……。 私たち、ただ歩いているだけなんだけど……」

 

と、リーファがそう呟いた。 こう思っているのは、リズとシノンも同様だった。

最初アスナは距離を稼いで攻撃を繰り出していたのだが、『私も戦いたい』と言い、前衛に参加したのだ。

これにより二組のペアが出来、POPしたモンスターがバッサバッサと斬り倒されていくのだ。 まさに無双状態だ。

最早この四人に掛かれば、迷宮区のモンスターは紙切れに等しいだろう。

この四人は、――アイテムを一つも使っていないのだ(・・・・・・・・・・・・・・・・)

三時間掛かると予想したボス部屋前まで、僅か一時間程度で到着したのだった。

 

「久しぶりの戦闘は楽しかったな~」

 

「だな」

 

「私も楽しかったですね」

 

「うん、良い連携が取れていたと思うよ」

 

ユウキに続いて、俺、ラン、アスナだ。

そしてこの四人は、疲れを見せていない(・・・・・・・・・)

 

「さてと、ボスを拝みに行きますか」

 

「ここのボスをこの七人で倒しちゃおー」

 

「頑張りましょう」

 

「ええ、そうですね」

 

俺は扉に手を掛け、二枚の扉の片方を押し開けていく。

ごろごろと雷鳴に近い音をフロア全体に響かせながら、扉が開き始めた。

内部は完全な闇――。

時間を置いて、ボス部屋の左右が無数の青い炎が灯り、ボス部屋内部を明るくする。

 

「よし!! 行くぞ!!」

 

「「「「「「了解!!」」」」」」

 

俺の掛け声と共に、ボス部屋に突入した。

ボス部屋は完全な円形で、床面は磨かれた黒い石敷、広さも相当なものであった。

そして、一番奥に次の層に続く扉が見える。

全員は、各自の武器を構えた。

――次の瞬間、部屋の中央に巨大なポリゴンの塊が集まり、ボスの形を形成し、最後に“ぱしゃーん”と無数のポリゴン片を撒き散らして、ボスが実体化した。

ボスモンスターは、身の丈が四メートルあろうかという黒い巨人だ。

筋骨の逞しい胴体から二つの頭と四本の腕を生やし、それぞれの手に凶悪なフォルムの鈍器を握っている。

巨人が一歩踏み出すと、地震のような揺れがフロア全体を震わせた。

赤く光る四つの眼で、全員を一瞥した後、野太い咆哮を放った。

巨人は上側の二本の腕を振り上げ、振り下ろす。

 

「全員、回避だ!!」

 

全員は左右に別れるように、ハンマーを回避した。

そのハンマーは鈍い音を立て、床に打ち付けられる――。

新生アインクラッドのボスモンスターのHPゲージは表示されない為、残りHPはボスの挙動から推測するしかない。

 

「ユイ。 ボスの挙動は任せた!」

 

「了解です! パパ」

 

そう言ってから、ユイは後方のシノンの肩に移動した。

俺はそれを確認してから、全員に指示を出す。

 

「よし!! 俺とユウキとランとアスナで攻め込む。 リズとリーファは隙が出来たら攻撃してくれ。 シノンは後方から支援攻撃だ!!」

 

俺たちのメンバーには、壁役(タンク)となるプレイヤーが居ないので、必然的に全ての攻撃を回避することが必須条件になる。

本来なら、前衛に立つプレイヤーは長くても五分で交替するのがセオリーだ。

だが、前衛に立てるのは、俺、ユウキ、ラン、アスナだけだ。

二人交替でスイッチも出来るが、普段より早く、精神力、集中力が削られていくので、時間は掛けられない。

なのでスイッチはせず、継続的にダメージを与えるしかない。

 

四人は、振り下ろされたハンマーや鎖を紙一重で躱し、それをかい潜って的確に攻撃を与えていくが、床から飛び散った破片でHPがじりじりと削られていく。

時には、アスナかランがHP回復やスターテスUPへ回り、三人の支援をする。

アスナが振るった細剣が、ボスにダメージを与えた時、――ボスが大きく隙を見せ、ユイが大きく叫んだ。

 

「ボスのHPゲージは、残り一段と半分だと思います!!」

 

「俺たちのOSSを仕掛けるぞ!! リズとリーファも大きい攻撃だ。 シノンは支援攻撃を継続!!」

 

「「「「「「了解!!」」」」」」

 

俺は二刀流OSS《スターバースト・ストリーム》計十六連撃を繰り出し、ランは片手剣OSS《夢幻闘舞》計五連撃を放ち、剣技連携を使用し、片手剣OSS《桜華狂桜》計六連撃に繋げ放つ。 アスナは、細剣OSS《スター・メモリー》計七連撃を繰り出した。 そしてユウキは、片手剣OSS、《エンド・オブ・ハート》三連斬+七連直突きの計十連撃を放つ。

リーファとリズも、最上位ソードスキルを繰り出す。 シノンも後方から弓で支援攻撃。

鋭い剣先がクリティカル・ポイントを攻撃するたび、ボスは悲鳴じみた絶叫を上げていた。

そして全員の攻撃が終わると、ボスは全身を凍らせ、黒光りする巨人の肌に無数の白い亀裂が発生し、ひび割れ、硝子のように無数のポリゴン片となって爆散した。

俺とユウキとランとアスナ以外のメンバーは、尻餅を突いてしまった。

――体力と精神力に限界が来たのだろう。

 

「わ、私、もう無理……」

 

「ええ、私もです……」

 

「私もだわ……」

 

リズに続いて、リーファ、シノンだ。

俺はこれでボス戦が終了したと思ったが――――ボス戦はまだ終わっていなかったのだ。

前方に無数のポリゴン片の塊が凝縮し、形作ったのだ。

このボスは、黒い巨人ボスを倒した数秒後に実体化するらしい。

ボスの名は、≪The Dionaea muscipula≫(ディオナラ・ムスキプラ)だ。

 

「……ハエトリグサ、か。――こうなったら、俺たち四人で倒すぞ!! アスナ、ラン。 あれ(・・)を使うしかないぞ!!」

 

「「了解!!」」

 

俺とユウキは突撃を開始し、ボスに攻撃を仕掛けた。

アスナとランは視界にスキルウインドウを表示させ、スキルの変更を完了させてから、OKボタンにタッチしウインドウを消し、走り出した。

 

「「二人共、スイッチ!!」」

 

ランとアスナは振り下ろされた太い(つた)を回避し、俺とユウキと入れ変わり、アスナは流星剣上位剣技《流星神秘》計八連撃の高速突き攻撃を放ち、ランは疾風剣上位剣技《疾風迅雷》発動させ、雷風を纏った剣で高速九連撃を繰り出した。 これを受けて、ボスがノックバックした。

流星剣と疾風剣は二人のユニークスキル(・・・・・・・)であり、流星剣は全プレーヤーを凌ぐ剣の速度(・・・・)の持ち主に、疾風剣は全プレーヤーを凌ぐスピード(・・・・)を持つ者に与えられるのだ。

ボスは体勢を立て直し、勢いよく蔦を振り下ろしたが、俺とユウキが二人の前に立ち、ユウキは剣を横にして、俺は剣をクロスさせて頭上に掲げ受け止め、“がきーッん”という音がフロア内に響き渡った。

アスナとランの硬直が解けたのを確認してから、俺とユウキは蔦を弾いた反動と共に後退した。 アスナとランもそれに倣う。

俺はボスから距離を取り、腰に装備したベルトから三本のピックを同時に抜き、投剣スキル《シングルシュート》を発動させ、ボスの意識を三人から逸らす。

その隙に三人はボスにダメージを与える。

このように四人はスイッチし、後方に下がった者が回復や、ボスにデバフを掛けるというようになっていた。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

戦闘が開始してから、十分が経過していた。

ボスのHPゲージも二段を切り、残り一段と半分になっているはずだ。

たった四人でここまで削れるとは、破格のペースだ。

そして、デバフのアイコンも凄い事になっていた。

《ATK、DFE低下》、《クリティカル率低下》、《毒》、《凍傷》、《麻痺》、《衰弱》、等々。

一般プレイヤーでは、ここまでのデバフを掛ける事は不可能だろう。

何故なら、魔法を詠唱している途中で、攻撃を受け死んでしまう事が多々あるからだ。

だが、四人の連携は完璧なので、後方に居るプレイヤーには攻撃が届かない様に、攻撃を弾くなり、ボスの意識を逸らしたりしているのだ。

最早四人は、誰がどのような攻撃を仕掛けるか、誰が支援に回るのかなどは、声を掛けず解るのだ。 まさに以心伝心だ。

これは、強い絆から生まれた信頼からだろう。

そして、ボスが悲鳴に近い声を上げ、行動を停止させた。

 

「今だ!! 全ての蔦を斬り落とせ!!」

 

俺の掛け声と共に、四人が凄まじい速度で動き、蔦を斬り落としていく。

残りの攻撃オプションは、噛み付きだけだ。

――だが、俺の予想は外れた。

ボスのHPゲージが残り一段を切ったのか、今までと違う挙動を見せたのだ。

ボスは大きく息を吸い、大量の花粉に似たものを吐き出したのだ。

 

「(――これを喰らったらやばい……)」

 

それが、四人に迫ってくる。

四人は危険を察知し、敏捷力を最大にして振り切った。

 

「どうしよう……。 近づけないよ……」

 

ユウキの言う通り、近づくことが難しくなってしまった。

だが、ボスのHPゲージは一段を切っているはずだ。

――ならば、

 

「花粉効果の時間が過ぎたら、俺たちのOSSと最上位剣技を仕掛けるぞ」

 

「ええ、私はそれに賛成です」

 

「私もよ。 それに、これ以上は私たちが持たないかも」

 

確かに、アスナの言う通り、四人の精神力は限界に近い。

――これで、決めるしかない。

 

俺とユウキは走り出してから高く跳び、宙高く滞空したまま、俺は二刀流OSS《ジ・イクリプス》計二十七連撃を繰り出し、ユウキは片手剣OSS、《マザーズ・ロザリオ》計十二連撃を放った。

空中でソードスキルを放った場合、例えそこが飛行不可エリア内だとしても、技が出終わるまで使用者が落下することはない。

アスナとランも走り出し、アスナは流星剣最上剣技《流星神技》計九連撃を放ち、ランは疾風剣最上位剣技《疾風乱舞》計十連撃を放った。

 

「「「「はああぁぁああ!!」」」」

 

黄色、緑、紫、オレンジと、様々な光が交錯し、ボスを切り刻み、抉る。

ボスは、高速連撃、突き攻撃を受け、悲鳴にも似た声を漏らしていた。

そして最後の攻撃が、ボスの弱点と思われる場所に深く突き刺さり、暫しの時間を置いてから、刀身中央からひび割れ、ポリゴン片となり爆散した。

俺とユウキは着地してから床に尻餅を突き、アスナとランはその場に座り込んだ。

円周部から、ドーム内部を薄闇に照らしていた青い火が一瞬激しく揺れてから、橙色へと変わった。

同時にボス部屋全体が明るい照明に満たされ、漂っていた妖気の残滓を追い払った。

“ガチャリ”と音を立て、正面奥の、次の層に繋がる扉の鍵が外れた。

これを確認したら、疲れがドット押し寄せてきた。

 

「……め、メッチャ……疲れた……き、きつかったな……」

 

「……はぁはぁ……づ、疲れた……」

 

「……で、ですね。……き、きつかったです……」

 

「……し、暫くは……ぼ、ボス戦やりたくないな……」

 

そのまま数分休んでから、四人は立ち上がった。

話していると、リズとリーファとシノンが、俺たち四人の元までやって来た。

 

「遂にやっちゃったわね。 これであんたら四人は、今以上に有名になるわよ。 ユニークスキルの事もあるしね」

 

リズは、俺たち四人に労いの言葉をくれた。

すると、リーファがはっとしてから、眼を輝かせた。

 

「え、え、あれって、ユニークスキルなの」

 

「はぁ~、私は、もう何も言わないわ……」

 

シノンは大きな溜息を吐いた。

リーファがその場でぴょんぴょん飛び跳ね、言葉を発した。

 

「お兄ちゃん、お義姉ちゃん。 《剣士の碑》を見に行こうよ!!」

 

シノンもポンと手を打ち、

 

「そうね。 名前が刻まれているか、確認に行きましょうか」

 

そう。 この七人でボスを撃破したという事は、七人の名前が《剣士の碑》に刻み込まれているはずだ。

 

「それじゃあ、行こうか」

 

俺が次の層をアクティベートしてから、この層の転移門から第一層の《はじまりの街》に転移した。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

巨大な王宮に背を向け、花壇の間を縫うように歩くと、すぐ前方に四角い《黒鉄宮》が姿を現した。

そこは、新生アインクラッドで有名な観光スポットの為、初心者からベテランプレイヤーが出入りしていた。

高いメインゲートを潜り、建物の内部に足を踏み入れると、ひんやりとした空気が肌を撫でた。

そのまま前進し、奥の大広間の《剣士の碑》がある場所へ向かった。

その大広間の中央には、巨大な横長の黒い碑が鎮座してる。

七人は、黒光りする碑に眼を向ける。

 

「お、あったぞ」

 

「あ、本当だ」

 

「あったね」

 

「ですね」

 

「本当に私の名前があったわ」

 

「私もです」

 

「ええ、そうね」

 

上から、俺、ユウキ、アスナ、ラン、リズ、リーファ、シノンだ。

黒光りする碑の中央、【Braves of 27th floor】の下に、アルファベットで七人の名前が刻み込まれていた。

こうして、俺たちの祭り兼ボス戦は、終わりを迎えた――。




書きたいことを書いていたら、文字数が増えすぎてしまった……(汗)
分けようと思ったんだが、そのまま投稿しちゃいました☆
皆、キリト君とユウキちゃんのデートには、突っ込まなくなっちゃいましたね。
まぁ、二人はいつでもラブラブですから、皆、なれちゃったんでしょうね(笑)

え~、ボス戦が淡々進んで気がするが……、大目にみてっちょ☆
このボス戦で思う所があるかも知れませんが、ご都合主義ということで。
今回の話で、アスナさんとらんちゃんのユニークスキルが出ましたな。
キリト君は二刀流、ユウキちゃんは黒燐剣、アスナさんは流星剣、らんちゃんは疾風剣ですな。
まぁ、キリト君とユウキちゃんはOSSとして再現しましたが。

らんちゃんとアスナさんの全プレイヤーを凌ぐとありましたが、キリト君とユウキちゃんは、例外ですね(笑)もちろん、アスナさんはらんちゃんのスピードについていけますし、らんちゃんもアスナさんの剣にはついていけますよ。この二人も例外っすね(笑)
じゃあ、何で例外が居るのにユニークスキルが持てたんだ!?って言いたくなりますが、ええ、二人にも持たせたかったんです……。矛盾があるんですが、そこは暗黙の了解でおねぇげぇしやす……。キリト君とユウキちゃんは、OSSで完成させたユニークスキルがありますからね(^O^)

てか、凄すぎだよね。
ボスを四人で倒しちゃったよ!!最早、チートのチートやん(笑)
でも、リズもリーファもシノンも頑張ったんだよ。
それと、ユイちゃんは最後までいましたよ~。言葉は発さなかったが。

そして、お知らせです(^O^)
この小説のリメイク版を出そうと思っているんですよね~。(まだ、考え中の段階ですが)。

次回の話は、まぁ、一応考えているんですが、不定期になるかも(>_<)
でも、早く投稿できるように頑張ります!!
それでは、ご意見、ご感想、評価、よろしくお願いします!!

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