2095年10月13日(木) -東京旧メトロ線構内
暗くかび臭い通路――さらに下に。
無数の難民――薬に耽る
つい先日潜入したばかりの
命令内容――仮想敵国、日本の魔法技術及び聖遺物《レリック》の強奪。
現地協力者の視察。
<ヴェルミ・チェッリ>
脅迫・誘拐・監禁・拷問・暗殺・虐殺をこなすプロ/中でも虐殺を得意とするフリーの傭兵集団。
ゴミの掃き溜めから生まれた最悪の蛆虫。さまざまな噂を聞く。
噂――機械化された兵士達。
噂――魔法実験体の末路。
噂――一部人員は狂っている。
噂――他者を喰らう
その中でも特に
魔法が効かない。
近頃、旧メトロを中心に暴力団関係/多国籍外国企業/
その源泉がヴェルミ・チェッリとも聞く。
”調理者“と言われる者が彼らを作り――怪物に仕上げた。
さまざまな薬――覚せい剤/
日本の新兵器/”
もっとも日本の傭兵なんぞに力は借りたくない――純粋な大亜の武力で制圧したい。
だが国防軍との戦力差は歴然。後詰めに控える揚陸部隊を合わせても。
そんな中、魔法を無効化する
深く――さらに深く下って行く。
降りていくにつれ人間の種類も変わってくる/目が虚ろな人たち――異臭もさらに酷い。
恥も何も無く糞やゲロを垂れ流し/薬にふける者達――闇に堕ちた亡者達。
「お、おっさん......」
少年――
腕が震え/鼻血が垂れる。
ゲロと糞にまみれ、焦点が合っていない=明らかな麻薬乱用者/禁断症状のそれ。
「頼む......金を
震える手でナイフを突き出す――薬に溺れた哀れな亡者。
「やめておけ、お前では1元も毟り取れん」
「う、うるせぇ、あんたも飲んでみるといい。
後ろでいたほかの中毒者も動き、陳を取り囲む。
(少々手荒になってしまうな)
制圧しようとCADを取り出そうとする。
状況の変化――戦慄する現象。
取り囲んでいた数人にノイズが走る――立体映像のように現実味が無くなり。消失する。
消えた者のがいた場所に小さな青色の火が輝き消える。
過去に一度聞いた魔法――沖縄海戦で使われた魔法。
「......
日本政府の介入=不可能/手を出せないからここまで堕ちた人間がいる。
国防軍の悪魔が何故ここに?――地を蹴る音/高速で近づく足音。
風船が割れたような音=発砲音。真っ暗闇の中で爛々と輝く赤――宙に漂う焔の刀身=黒服のマスクをした少女。
陳を取り囲む
鮮やかな動き――体と刀が一体化したように振るわれる斬撃。
意思を持ったように刀が敵の体に向かい斬り付ける――数人は機械化しているにもかかわらず輪切りにしていく。
切断――右鎖骨から入った刀身6字を描き中身を抉る。
切断――足の腱を数センチ切りつけ倒れたところで首を刎ねた。
切断――脳天から股にかけ真っ直ぐ割った。
陳は、その剣術に唖然となった
剣技なんてもんじゃない。でたらめな動き/軌道。
我流の剣術――完成された一種の流派。
体の筋肉を鞭のようにしならせ出された斬撃は雌豹の狩りを彷彿とさせた。
刀は神々しさも感じさせ。さながら多聞天をのように少女の立ち姿は美しかった。
「ミスター陳、”調理者“がお待ちです」
暗闇の向こうから現れる/少女と同じ黒服の男――影の落ちた顔=イケメン部類。
声は鍛えられた喉と肺活量のお陰で徹りが良く深みのある声をしている/燃えかすを思わせる髪の奥で爛々と輝く眼球――色素の抜けた血の色。
少女と男=ヴェルミ・チェッリ。
「見事、さすが
表情を変えずただ
「”調理者“がお待ちです。こちらに」
くるりと背を向け歩き出す――後ろにいた少女はその後を着いて行く。
肉の焼けた臭いと腐臭を掻き分け”調理者“の厨房へ。
最深部のそこにあった厨房――旧メトロ線構内にあるとは思えないくらいに滅菌された空間。
そこにいた機械化された、兵士とは程遠い化け物達=ヴェルミ・チェッリ。
その奥にいた”調理者“。
まだらに染めた髪/染みが付いた白衣/血走った目の男。
「ようこそ、我が信者が巣食う腐肉の家に」
2095年10月16日(日) -東京都足田市
引火――広がる火種。ハッカーの位置を解析=割り出しに成功。
東京都足田市にある警備会社――共用サーバを貸し出している一室。
逆探知が知らせるクラックの居場所。
「居るかしらね、ハッカーがまだあそこに残ってるとは思えない」運転席に座る藤林。
「居ないでしょうね。でも行く価値はあるはずです」アイマスクをして天井を見上げるナナ。
本当か解らない、そういった感じで肩を竦める藤林。「相手が社内カメラに写っているって?軍のファイアーウォールを突破するような相手よ。映像は残っていないと思うけど」
「それでも社員には電脳化した者も居ました。その視覚野情報を貰えば少しは情報が増えます」
「そうだといいけど。......それより寝ないの? アイマスクしてるのに」
「......眠れないんです」
「他の事に気が散って寝られないってこと?」
「それとはまた違うんです、ただ
到着――貸し出された共用サーバ室へ。
「ここがハッキングが行われた場所ね」
最新のコンピューター郡/明らかな破壊の後。
タンパク質で作られたニューロチップが剥き出しになっていた。
「先日貸し出した客のせいだそうよ、多額の貸出金を貰ってたそうよ」
「それだけの財力が相手方にあるって事ですか」
散乱する機械パーツ/工具/溶け出したニューロチップ。
工具の数から複数人/徹底に破壊された/壁まで破壊され吹き抜けになっている。
巨大なものでも持ち込んだのか?
ウフコックが嗅ぎ取る部屋に残る臭い――僅かに体臭/汗の臭い。臭いからして女性。
疲れからの臭いではない――興奮/快感/出産の時に生じる臭いだそうだ。
「何かわかりそう?」
藤林は生き残っているコンピューターキャッシュを調べている/何も残っていない。
「大急ぎで逃げたって事はわかりました、でも壁をぶち抜く必要がわかりません」
「何か大掛かりな物を持ち込んだとか?」
「スーパーコンピューターでも持ってきたかですね」
部屋を見渡す――散乱した部屋/僅かな痕跡を探す。
監視カメラも破壊されている/壁に小さな傷。
切り取り線のように着いた刺し傷――壁中にある。
床を見る/ある――人の指ぐらいの深さ。何かの傷。
ビジョン――四葉の研究所――遊具室。
虚無の囁き――異様な人間/機械化された肉体/電脳世界の
キドニー達とハッカー/多額の金を払い最新のコンピューターを破壊。
壁を壊し何を運び込んだ。
犯人側に利益が無い。
視点を変える。ハッカーの行方――社員の証言「先日消えた」
火種――運び込んだものをどう運んだ?壁を抜くくらい巨大/運ぶ手段も限られる。
「藤林少尉、ここ数日の街灯カメラのデータって出せます?」
「国土交通省の管轄だから手続きに時間が掛かるわ」
「なら、手続きの間別を探しましょうここにはもう何もありません」
警備会社を出る/藤林の車――乗り今後の捜査方針。
「とりあえず、あの部屋は私たちが押さえるわ、工具の指紋を取って。交通省の街灯データが送られるのを待つことね」
「工具の指紋は取れないと思います。工具が曲がっていました。明らかな違法出力の機械化です」
「さすが本業と言ったところかしら。分かったわ、交通省の手続きを急がせる」
「お願いします」
車を降りる/身を乗り出す藤林「ホテルまでなら送っていくわよ」
「歩いて行きます」
そう言い車を降りる/眠気も来ず歩き続ける。
ビジョン――師族会議に現れた少女/頭にちらつく刀身。「また遊んでね。
まだ見ぬハッカー――軍のファイアーウォールを突破する技術/多額の財力。
型に嵌らないピースたち。
推測――キドニーとワンピースの娘=協力者にハッカー。
見えぬ目的――
ハッカーの犯人像――不明。複数の可能性/巨大な荷物。壁をぶち抜く必要性。
姿を消したキドニー/ワンピースの娘。姿を忽然と消す。街灯カメラに映像なし。
ぽつぽつと歩き続ける――二日も寝ていない/眠気も来ない。
おかしな体調/ウフコックに聞く。「私は今どんな匂い?」
ウフコックの答え。「懐かしい匂いだ。昔組んでいたパートナーの匂いがする」
そんな答えを聞きながら、ただ歩きホテルに向かった。
どうも、こんにちはこんばんは。運珍です。
すぐの投稿です。前の話なんか区切りが私の中で悪かったので勢いで書きました。
勢いのため誤字脱字が多いかも?
さてストーリーの話に戻ります。
今回は前々から考えていたキャラクターの話をチラッと出しました、そう。
ヴェルミ・チェッリです。
やっぱりマルドゥックシリーズの定番と言えば狂ったビジュアルの敵だよな~なんて考えで生まれた奴等です。でもヴェルミ・チェッリの子達出るのはまだ先です。
誤字脱字報告。感想、意見、要求などはどんどん受け付けます。