みなさんご存知のように決勝の組み合わせは東方不敗マスターアジアと孫悟空!
いったいどちらが勝利し天下一の称号を手に入れるのか!
それではドラゴンファイトレディーゴー!
前回準決勝第二試合ドモンカッシュ対孫悟空の試合は激戦に次ぐ激戦の中、かめはめ波対シャイニングフィンガー対決にて生き残った悟空の勝利と終わり、東方不敗マスターアジアとの決勝戦を迎えることになった。
だが、決勝戦線は当初の予定と異なり3日延期となった。本来の天下一武道会の日程では予選から決勝戦まで一日で全ての試合が行われるはずであったが、準決勝第二試合の激戦にて勝者である孫悟空が決勝戦を満足に闘える状態でなかったためと万全の状態の孫悟空と戦いたいとの東方不敗マスターアジアの要望により、天下一武道会決勝戦は準決勝第二試合終了時刻からちょうど72時間後午後五時からとなった。
天下一武道会会場
近年の武道大会決勝の3日延期は当初武道大会を楽しみにしている多くの観客達から批判や不満が出るかと思われたが、これまでの本選六試合を見てきた多くの者達が両選手の完全な状態での試合を見たいとの意見が大多数をしめとくに問題とはならなかった。
「ご来場の武道を愛する皆様、大会に参加した武道家の皆様ついに、ついに今大会第21回天下一武道会もクライマックス決勝戦を迎えることになりました。ここで改めて決勝戦を戦う二人をご紹介いたします。東方不敗マスターアジア選手と孫悟空選手です。まず、東方不敗マスターアジア選手は皆様すでにご存じのように世界最強と謳われる流派東方不敗を極めた武道家であり、また、天下一武道会にて過去五度の優勝をした天下一武道会の歴史上最強のチャンピオンであります。一方もう一人の決勝進出者である孫悟空選手は大会最年少の12歳の少年ですが、なんとこの孫悟空選手はあの武術の神様武天老師様のお弟子さんなのです。いったいどちらの選手が勝利して、天下一の称号を手にするのか、」
審判はそこで一呼吸置いてそして言った。
「それでは、天下一武道会決勝戦始め。」
最終決戦がついに始まった。いったい勝利を掴み天下一の称号を手に入れるのか!
「とりやあぁぁー!」
「はあーッ!」
二人の拳が衝突し火花が散る。前回のドモン戦以上の強い連打を繰り出す悟空。前回の試合で受けたダメージは全くない様子だ。観客や並みの実力の武道家達はまったく二人の攻防を目で捉えることはできないが、これが別次元の戦いであることはここにいる皆が感じ取ることができた。また、クリリンやヤムチャもあまりの早さに目で追うのがやっとだったのである。この会場内で二人の動きを捉えきられていたのはドモンと亀仙人の二人だけであった。
(こやつ、先日のドモンとの試合時より強くなっておる!)
悟空の先の戦いからの驚異的な回復力や潜在能力等を東方不敗は試合前から感じていたが、実際に悟空との戦いでそれが想像以上のものであったと再認識することになった。
ちなみに、三日間で悟空の準決勝で受けたダメージから完全回復できるのかと一部から危ぶまれたが、数件の飯屋の食材を食いつくすことによって準決勝以前以上の状態になったことで問題はなくなった。その一方で亀仙人やブルマの財布を空にしたのであった。
この時点においてこの場にいる誰も知るよしもないことであるがサイヤ人としての常識はずれの復活力やサイヤ人の戦いに対する闘争本能が悟空に影響をあたえたのかもしれない。
一方東方不敗への挑戦者でもある悟空も今までにない強敵と戦いワクワクを感じられずにいられなかった。世界には自分よりも強く上には上がいるという亀仙人の言葉を思いだし正しかったことを戦いながら理解した。
(もしわしが亀のやつよりも先にこやつめと出会っていたら、わしも亀のやつと同じように弟子にしただろうな。)
孫悟空という天才的な武道の才覚を持っている少年と出会えたことへの喜びと先に弟子にしたいと思ったことへの少し残念という気持ちを彼は思った。
「はあっ」
東方不敗の背後に現れた悟空に裏拳を繰り出すがその攻撃は空を切った。東方不敗が攻撃したものそれは悟空の残像であった。
(残像か!)
先の試合でドモンが見せた残像拳を一度見ただけで完全にマスターし自分の物とした悟空の武道家としてのセンスを残像であったことに動揺せずに瞬時に悟空の気配を探す。
「ではこちらか!」
再び悟空の現れる場所を予測して攻撃するが、
ヒュンッ
「何っ!」
またも空振りで半透明の悟空の姿を切った。
「こっちだ!」
叫びながら頭上に現れた悟空、足を繰り出し攻撃する。完全に攻撃が決まったと誰もがこの時思った。
「くっ。」
東方不敗は避ける動きはせず防御の構えを取ろうとするが一歩悟空のが早かったために悟空の蹴りは東方不敗の左頬をかすった。攻撃を命中させた悟空は東方不敗が反撃をする前に素早く攻撃の第二波第三波の攻撃を防御体勢の東方不敗に叩き込んだ後、後ろへ数回後転して距離を取り東方不敗の反撃を備えた。
「へへーん、二重残像拳だ。」
東方不敗の行動を警戒しつつ悟空は陽気に言った。
「なんて小僧だ、ドモンの残像拳を一度見ただけで自分のものにしおった。だが、それだけではない。」
東方不敗が驚いたことはそれだけではない。残像拳を一度見ただけで、使えたことも凄いことではあるがそれ以上に東方不敗マスターアジアほどの格上の武闘家に通用するレベルの技を極めたことをとても東方不敗は驚いた。
「ふふっ、それに今の蹴りは少し効いたぞ、わしに血を出させるとは貴様の祖父孫悟飯以来数十年ぶりだ。」
手で左頬へ受けた攻撃によって口から出た血を拭うと東方不敗の目付きが変わった。
「じっちゃんと戦ったことがあるんか。」
思いがけぬ悟空が最も尊敬する祖父孫悟飯の話が出て嬉しくなる悟空。
「亀とともに稽古をつけたこともある。」
「へえー、マスターのおっちゃん凄いんだな。」
素直に感心する悟空。
「この東方不敗マスターアジアの本気を少しだが見せてやろう。無論全力ではないがな。」
不敵な笑みを浮かべほんの一瞬の間を置いて
「はあっ!」
気を解放した東方不敗は目にもとまらぬスピードで大地を強く踏み出し悟空に向けて走り出した。
ごふっ
防御する時間もなく一方的に東方不敗の攻撃を受けた悟空。
「うっ。」
右左と守る暇やかわす暇もなくリズムよく攻撃を受けている悟空。何十発東方不敗の攻撃を受けた悟空はそれまでで一番大きなケリ攻撃を受け吹き飛ばされた。吹き飛んだ悟空に対して東方不敗は手を緩めることなく追撃体制を取り吹き飛ばされる悟空よりも早いスピードで攻撃しようとした。
「かっかめはめ波ああー!」
なんとか反撃する瞬間を手に入れた悟空は東方不敗が近くまで接近する前に今までにないスピードでかめはめはを繰り出した悟空。これで最悪でも一時的に東方不敗の攻撃を止められると誰の目にも思えた。だが、
「ふんっ小癪な、効かぬわ」
かめはめ波が東方不敗に着弾する瞬間右手を突き出し受け止めかめはめはをかき消した。
「うっ」
かめはめはをかき消した東方不敗はすぐに攻撃に移るのかとおもいきや一旦攻撃の構えを解いた。
「・・・残念だが、貴様はこれで負けだ。すぐに決着がつく。」
先の試合のドモンと同じように東方不敗の右手が光始める。ドモンが黄緑色に光っていたのに対して、東方不敗は紫に光る。その紫の光は禍々しく圧倒的な威圧感を見むものに感じさせる。特にこれを受ける対戦相手である悟空が一番感じていた。
「ダークネスフィンガー!」
先ほどとは比べ物にはならないなほどのスピードで詰め寄り悟空の頭部を捉えた。
悟空は両腕で東方不敗の右腕を掴み剥がそうとするが、東方不敗の腕は微動だにしない。
「はっ離せぇっ」
両腕だけでなく両足やしっぽも使って拘束を解こうとするが通用しなかった。
「わしのダークネスフィンガーにここまで耐えるとは、だが。」
悟空が東方不敗のダークネスフィンガーを受けてから十数秒しか立っていないが当の攻撃を受けている本人である悟空にとっては永遠の苦痛にも思えた。ゆっくりとだが徐々に手に力を込めていく東方不敗。輝きが強くなるほどそれに比例してダークネスフィンガーに込められていく力も強くなっていく。その力、ドモンのシャイニングフィンガーをはるかにしのいでいる。
「降参せい、おぬしの勝機はもうない。」
諭すように降参を勧める東方不敗。誰の目にもこのまま東方不敗の勝利に終わると思えた。
「ぐぬぬぬっ」
サンサンと輝く太陽が沈みそれに変わって月が現れるなか悟空はやせがまんや根性でなんとかダークネスフィンガーに耐えていたが、いつまでも耐えられるものではないこと悟空にもわかっていた。
ごおんっ!
「仕方ねえ、・・・まっ、ま、まいっ、・・・あっ!」
ごおんっごおんっ!!
悟空は負けを認めることにした。くやしいが今の自分では勝てない相手だと拳を交えることで理解できた。今は勝てなくももっと修行を積んでまた今自分の前にいる男に挑戦しようと思った。だが、最後の一言を悟空は発することはできなかった。
「うんっ?」
東方不敗は悟空の異変に真っ先に気が付いた。さきほどまで東方不敗のダークネスフィンガーにもがき苦しんでいた悟空が
ごおんっごおんっごおんっ!!!
「・・・」
悟空の心臓が他人にも聞こえるくらいに早くなる。そして、悟空は低い声でうめき出し数秒後にはリング外の人間にも聞こえるほどに大きな声で唸りだした。
「グッグギギギー」
悟空は巨大化と気の上昇により東方不敗のダークネスフィンガーによる拘束を解いた。
「何!」
東方不敗は後ろに飛び悟空と距離をとり様子をうかがう。
「「「「まさかっ!!!!」」」」
ヤムチャ、ブルマ、ウーロン、プーアルの四人は昨年ピラフ城で起きた出来事を思い出した。
「ヤバイわ。」
「満月だ!」
思わず手を顔で覆って言った。これから起きる事に対して・・・。
「いったい孫選手どんな技なんでしょう。」
その一方で審判を始め悟空の変身の秘密を知らない大勢者達はこれは悟空の技だとこの時点では思っていた。概ね悟空の起死回生の大技という印象である。
「技なんかじゃない、みんな早くここから逃げるんだ!」
ヤムチャはリングの場外の溝と観客との間の手すりほどの高さの壁に飛び乗り会場全体に叫んで警告するが、誰もここから離れようとしなかった。また、自分たちだけが逃げる訳にはいかないとヤムチャは思いこの場から動かなかった。
悟空の体がどんどん変化していった。悟空の体中から獣のような体毛が生え数十メートルの巨体へと変化していった。
「グオオオー!」
悟空の咆哮が会場中、数キロ先の人々までに響く。
「こやつ、変化しおった。」
東方不敗を始めとして巨大化した悟空の変化に驚いた。
「なんじゃいったい。」
亀仙人は悟空の変化を知らなかった。
「・・・悪夢だ・・・」
ヤムチャそうつぶやき絶句する。
大猿化した悟空は今まで戦っていた東方不敗には眼中になく周囲の者を無差別に攻撃を始めた。次々に壊されていく武道会場やリングたち。観客たちに被害が出るのも時間の問題であった。
さすがに大半ののんきな観客たちもこの異常事態に気づき避難し始めた。
「正気に戻らんか。」
悟空が放り投げたものや無差別攻撃を避けながら東方不敗は悟空にいった。だが、その言葉は悟空には届かない。
「ならばこの技で目覚めさせてくれるわ、酔舞・再現江湖デッドリーウェイブ!!!」
独特のポーズをとった後、東方不敗は飛翔し蹴り技を決めた。東方不敗の攻撃は大猿に変身した悟空の腹部に直撃した。数十メートルある巨体を軽々と蹴り上げてふっ飛ばした。そして、
「爆発!」
ドンッ
着地する前に爆発の掛け声と両手両足を左につきだした。そして、同時に悟空の腹部あたりが大爆発した。
「・・・やったのか」
逃げ遅れていた観客や立ち止まっていた観客が今の爆発を見て倒したのかと安堵するが。
「グオオオッー」
安心できたのは一分にも満たなかった突然悟空は目をかっと開き立ち上がった。東方不敗の攻撃で少しふらついている様子だがあまりダメージはなく再び暴れ始めた。
「きゃあああ!」
「逃げろー!」
先ほどまで試合への大歓声が恐怖や悲鳴の阿鼻叫喚の大歓声へと変わった。
「わしの奥義を受けてすぐ立ち上がるとは」
驚愕する東方不敗。
「孫選手!突然叫びだしたかとおもいきやなんと大きな猿に変身しました。私もこの場をすぐに逃げたい心情でございますが審判として試合が終わる最後までここへ離れるわけにはいきません。」
先ほどまでリング外の外壁で試合を見守っていた観客たちが一目散と我先に全力で逃げていく中で審判のおじさんは審判としてのプロ意識からリングから離れようとせず実況を続けていた。
「悟空、しっかりしろ。元に戻れよ、みんなが危ないじゃないか」
クリリンはリングから離れず悟空に叫ぶ。しかし、クリリンの叫びは悟空には届かない。必死に呼び続けるクリリンのもとにヤムチャが近づいた。
「早く逃げるんだクリリン、あれは技なんかじゃい。悟空は満月を見ると大猿に変身してしまうんた。今の悟空には理性はないんだ。」
クリリンの手を引き大猿化した悟空から離れるヤムチャ。
「満月を見ると変化するのか。」
今だリング内にて留まっていた東方不敗はヤムチャの話を聞いてある妙案を思い付いた。東方不敗の心のなかでこれしか今の悟空を何とかする方法はないと思った。
「ならば根源を破壊するしかあるまい。」
悟空を止めるために覚悟を決めた東方不敗。その表情には一点の迷いもない。そして、
「はあああっ!」
気を高め始める東方不敗、その力準決勝での最後の撃ち合いの際の二人の技を足しても遥かにしのぐほどのものである。そして、
「何をするつもりですか師匠、いったい。・・・まさか」
東方不敗から溢れ出る気をドモンは感じ取り東方不敗がしようとすることを真っ先に気づいた。
「はあああっ!・・・覚えておるか、ドモンよ。おまえには以前この技を一度見せたことがあったな。」
「まっまさか!あの技を!」
「ドモン、あの技って?」
レインがドモンの隣で尋ねる。
「・・・流派東方不敗最終奥義石破天驚拳、師匠の最強の技だ。」
流派東方不敗最終奥義石破天驚拳、東方不敗の弟子であるドモンも一度しか見たことがない大技である。流派東方不敗の中でも最強の技であり術者の技量次第で破壊できぬものとはないと謳われる東方不敗マスターアジアにしか会得していない技である。
(・・・クロス、お前まさか流派東方不敗最終奥義石破天驚拳で悟空を・・・いや、おまえの狙いはあれか!)
亀仙人は東方不敗の意図をここにいる者のなかで唯一理解した。
「な、なっ、なんなんでしょう、東方不敗マスターアジア選手、いったいどんな技を繰り出すのでしょう。流派東方不敗最終奥義石破天驚拳とは、・・・私も逃げたいですが、審判として試合が終わるまでリングから離れるわけにはいきません。」
彼はけっして職業道具のマイクを離さず言った。先ほど同じことも言っているが逃げようとしない審判の精神は称賛に値するものだった。だが、彼の声を聞くべき観客は悟空の関係者たちだけであったのは残念であった。
「・・・プロだわ。」
(・・・試合と言っても悟空は場外に出ておるからもう関係ないと思うが・・・)
少し離れていて悟空を見ていて呆れつつも感心するブルマと冷静に突っ込んでいる亀仙人。
「やめろー!」
一方ヤムチャは東方不敗が悟空を殺してでも止める気だと真剣に思った。
「そう、そしてあの時もこの流派東方不敗最終奥義を放ったはず。」
つきだした東方不敗の手のひらに光が集まっていく。
「そうだ、これが、流派東方不敗最終奥義ィィー!」
先ほどのダークネスフィンガーの気をはるかに凌ぐ力が溜め込められついにそれが放たれる時がやってきた。
「石破っっ!!!天驚拳ぇぇぇん!!」
ズドドドッー!!!
ついに流派東方不敗最終奥義石破天驚拳が放たれた!
「グオオオー!」
その悟空の咆哮は最後の咆哮となり光への中包まれ見えなくなっていた。
「「「うわあああー!!!」」」
石破天驚拳が放たれたことによって至近にいた者はサングラスをかけていた亀仙人を除いて目を背けた。
シューン
「悟空・・・。」
「孫君が・・・しんじゃった。」
泣き崩れヤムチャの肩にうなだれるブルマ。ウーロンやクリリンたちも泣きながら悟空が死ぬもんかと泣き叫び悲しんでいた。
「馬鹿野郎、この人殺し。」
「ひとでなしー。」
「何とか言いなさいよ、あほんだらー。」
クリリン、ウーロン、ブルマは東方不敗に非がないことも仕方なかったことも理屈では理解ていたが、この悲しみをぶつける相手が今の彼ら彼女らには必要であった。
「何を勘違いしておる、あやつはまだ死んではおらぬ!」
しかし、彼らの心を救ったのは東方不敗の一喝であった。。そこには言葉に出来ない力強さを一同に感じさせるものがあった。
「えっ?」
東方不敗の一言で皆の気持ちが絶望から希望へと変わった。そしてやがて、煙が収まったリングの中央に裸で寝ている悟空がいた。まるで、何事もなかったかのような寝顔であった。
「では、いったい・・・マスターが攻撃したのは・・・。」
ヤムチャは悟空ではなく何を攻撃したのかわからなかった疑問を東方不敗にぶつけた。
「わしが石破天驚拳を放ったのはあの月だ。」
東方不敗は上空の月がある方向、いや月があった場所を指さした。
「「「・・・月?・・・」」」
武天老師を除きすぐに理解できなかった。
「おまえたちが満月を見たから悟空が変身したからと聞いてな、だから、月を跡形もなく破壊したのだ。」
月を破壊したと平然と言ってのけた。
「月を跡形もなく・・・破壊・・・した」
誰もが誰に対していうでもなく自分自身に対して口に出して東方不敗の言葉を理解するために口々に皆が言った。
「「「えええーーー」」」
「ああー、本当だ。」
この場にいる全員が叫びすぐに月のある方へと目を送った。そこには先程までほんの5分前まであった満月の姿がなくなっていた。
「これはとんでもないことをしてくれました。これから、お月見をどうしたらいいのでしょうか。これで月見団子を食べることもできませんし、狼男も変身することもできません。」
派手なオーバーリアクションで実況する審判。観客達はあまりの出来事にとくに審判の言葉に反応を示さなかった。そして、審判への反応は月を破壊した張本人である東方不敗から一喝がかえってきた。
「やかましい。さっさとカウントせんか。」
どうでもいいことを言い続ける審判に仕事を思い出させた。
「はっはい、ワーン・・・ツー・・・」
やかましいの一言で冷静を取り戻した審判はカウントを始めた。
ちなみにつき破壊のニュースはその後全世界に電撃的に伝わっていた。次の見出しはその一部を抜粋したものである。
『世紀の大事件!東方不敗マスターアジア氏、月を破壊!』
『悲報!突然の出来事!お月見文化終焉!』
『訃報!兎人参化元親分、月消滅とともに行方不明!』
などと次の日、世界各地の新聞、週刊誌、うさぎ団の会報誌などで大々的に報道されたがこの時点で月がなくなったことを気づいた者は少なかった。
さて、余談はさておきついに天下一武道会も終了の時がやってきた。
「ナイン・・・テーン!!!よって勝者、東方不敗マスターアジア選手。」
そして審判は一呼吸置いて最後の次に一言をいった。
「優勝です、天下一武道会優勝は東方不敗マスターアジア選手!」
今大会最大の音量、ハイテンションで東方不敗の勝利を叫んだ。
「まったく素晴らしい試合でした。今大会も天下一にふさわしい試合の連続でありました。孫悟空選手まだ目覚めませんが、最年少の出場者でありながら惜しくも準優勝となりました。ご来場の皆さん孫悟空選手に惜しみない拍手をお願い致します。しそして、圧倒的強さを見せた東方不敗マスターアジア選手に祝福をお願いします。」
「・・・あれえっ?」
審判が一人閉会の言葉を述べていく中悟空が目を覚ました。
「孫君!」
ブルマが一番に近づいた。ヤムチャやウーロンたちも続けて近づいていった。
「どっどうしたんだブルマ。」
突然の出来事に困惑している悟空。
「孫君が無事でよかった。」
泣きながらブルマは悟空を強く抱きしめながら言った。また、周囲では悟空をみんなが取り囲み口々に安堵の言葉を述べた。
「オラ試合負けたのか。」
悟空の言葉や表情には残念や後悔の気持ちは感じられない。
「ところでヤムチャ、なんで周りが壊れているんだ。まるで台風の後みてえだな。」
悟空はヤムチャは尋ねる
「えっと、悟空はそのなんだ。」
ヤムチャ達は本当のことを悟空にいうべきか悩む。誰自分から悟空に説明しようとしない。
「よくわからないけど、まっいっか。」
ヤムチャたちが答える前にけろっとどうでもよくなった悟空であった。
「東方不敗選手、本大会もいろいろ波乱がありましたが六度目の優勝おめでとうございます。今大会を振り返って感想を一言お願いできますか。」
マイクを近づけた。
「そうだな、優勝自体にはあまり興味もないが今大会で孫悟空という将来楽しみな小僧を拳を通して知ることができたのが最大の収穫だ。」
「師匠、優勝おめでとうございます。」
「東方不敗選手お弟子さんであるドモン選手になにかこの機会にお伝えたいことはありますか。」
「一言これだけいっておく。」
返事とともに東方不敗は高く飛び上がりドモンの赤いバンダナを奪い取り言った。
「答えろドモン!流派!東方不敗は!」
右手を突き出し、バンダナをドモンに投げた。
「王者の風よ!」
東方不敗の問に答えるドモン。
「全新!」
「系列!」
東方不敗、ドモン、東方不敗と交互に叫びながら二人は拳と拳を合わせる。
「「天破侠乱!」」
二人の拳のラッシュが早くなっていく。
「「見よ!東方は赤く燃えているぅぅぅ!!!」」
二人の体から発する激しい炎や光、お互いの拳がぶつかり合うたびに大きく火花が散っていく様子がほかのものにも見えたのであった。
「「「ポカーン 」」」
悟空やブルマ達、審判、戻ってきた観客たちはその光景を呆然と見ているしかなかった。他人にはわからない世界にあるのかと大半の人は思った。
とにもかくにも第21回天下一武道会は東方不敗マスターアジアの優勝に終わった。
このあと、彼らはホテルに戻り祝勝会を開いた。ブルマやヤムチャ達はあまり酒を飲まないようにするが、無駄な努力に終わった。ちなみに、大会東方不敗が得た50万ゼニーは食事代やホテルの修理代に消えた。
一方その頃同時刻西の都WYコーポレーション本社
地球にある数多くある都市の中でも人口、経済規模などで最大規模を誇る西の都、その中でも栄華を誇る西の都の中央部に連なる超高層ビル群の一角のビルにある一人の青年が最上階に近い階のある一室にいた。青年がいる部屋はあまり派手な内装ではなかったが、年齢にはあまりに合わない落ち着いた無駄のない作りのデザインであった。それらすべてが一流の品々はこの青年が所有するものであった。また、この部屋者だけでもなくこのビル自体が彼一人の所有物でもあった。部屋には中央のソファに座っている青年の他に背後に彼より五歳くらい年上の男が立っていた。
二人はある映像を巨大なスクリーンで熱心に見ていた。その映像とは、天下一武道会決勝戦東方不敗マスターアジアVS孫悟空の試合のリアルタイム映像であった。
一般に武道大会は基本的にテレビ放送やネット映像配信などはされていない。(テレビ放映が開始されたのはミスターサタンが優勝した第24回天下一武道会からであった。)しかし、一部の武道大会の愛好者である資産家や大富豪が世界には数少ないほどおり中には自前で専門の撮影班まで送りコレクション用に記録することもある。その中でこの男は資金面や設備面では最上位を誇っていた。
「これはこれは久しぶりに驚きましたよ。」
100インチ以上の大画面のモニター越しに青年は拍手しながら言った。驚いてるというよりは大変面白そうであった。少年がTVアニメの手に汗握る名シーンを見ている時のような感じであった。
「まさか、人間一人の力で月を跡形もなく破壊するとは」
もう一人の青年(彼の姿は長身で男性にしては長髪であり変わったシルバーのマスクを付けた姿は見るものに対して威圧感を放っており、また着用している軍服越しに素人目にもわかる鍛えあげられた筋肉はより一層彼の印象を引き立てていた。)よりは年上で軍服を着た男の受け止め方は青年よりは真面目であった。絶句といっても過大でないほどの衝撃であった、
「まったく規格外の強さですよ。もう少しで我々の撮影用の偵察衛星や無人機が巻き添えで壊されるところでした。」
面白げに青年は語る。驚いているよりも未知の規格外の存在の素直に受け入れている様子だった。これが青年をこれまで成功させてきた秘訣なのかもしれない。
「あの途方もない力が味方ならあれ以上に頼もしいものはありませんが、」
軍服の男は途中で次の言葉を止めた。自分の主人が自身が考えている先を理解しているのか試したかもしれなかった。
「敵となった時は恐ろしい相手になりますね。」
彼の主人というべきこの青年は男の考えをすぐに答えた。
「はい。」
彼自身まだ若いが経験や知識は豊富であった。そのため東方不敗の恐るべき戦闘力に表には出さないが恐怖や畏敬の念を覚えていた。既存の地球に存在する最大の兵器を使っても惑星や衛星の表面を傷つけるのがやっとである。その現時点での世界の常識を打ち破る東方不敗という存在はもし敵対すればどうなるか想像するのも恐ろしい結果になるだろうと彼は瞬時に頭の中で計算し理解した。
「ところでイシカワ君、例のものの一つは手に入りましたか?」
再び映像を東方不敗が最終奥義を放つ直前にまで巻き戻しながらイシカワと呼ばれた男に声をかけた。
「はい、こちらです。」
すでに用意して足元に置いてあったジェラルミンケースをテーブルに乗せた。そして、そのケースのロックを解除しケースが開かれた。開かれたケースの中にはさらに小さな箱が入っており、その箱をイシカワと呼ばれた男は手に取りもう一人の男に丁寧に手渡した。
開かれた箱の中にはいっていたのは、七つ存在するドラゴンボールの一つである三星球であった。それを右手で取り、自分の目線の前に持ってきた。
「これがドラゴンボールですか、実に美しい輝きです。古来より多くの権力者や野心家どもを惑わせ、これを巡って争わせてきただけのことはありますね。」
言い終わると男は右手に持っていた三星球をゆっくり先ほど入っていた小箱に戻した。
再び箱の中のクッションの中央に置かれた三星球は頭上の照明の光が反射しきらりと光る。なにかもが透き通る光には万人を魅了する力があるのかもしれない。
「それでは、これを手土産に明日例の自尊心だけの小男の所に向かいましょう。」
「はい、しかし、本当にこれをあのような男に渡してよろしいのですか。」
イシカワと呼ばれた男は彼に尋ねた。彼が尋ねるのも無理はない。この七つ存在するドラゴンボールの内一つを見つけ出すためにも少なくない資金や人員を動員していたのだ。その苦労して集めたボールを即座にあっさりと手放すのだ。凡人にはできない選択なのだろう。
「ふふっ、ええ問題ありませんよ。これは単なるビジネスの一つですよ、ビジネスのね。」
男はコーヒーカップを手に取り少量をゆっくりと飲んだ。そして、カップを持ちながら最後に言った。
「それにしてもあの大猿に変身した少年も気になりますが、ぜひとも一度お会いしたいものですね、東方先生。」
ある男の陰謀により新たなドラゴンボール争奪戦が始まろうとしていた!次回に続く!
第一章 第21回天下一武道会編 完
第二章 レッドリボン軍編 開始
次回予告
みなさんおまちかね!
大熱戦であった天下一武道会も終わり、新たなドラゴンボール探しに出発する悟空とドモン!
しかし、悟空一行の前に世界最強の軍隊が立ちはだかります!
また、その両者の裏で暗躍する組織も現れました!
いったい誰が7つのドラゴンボールを手に入れるのか!
次回ドラゴンボールGマスター武闘伝第七話「動き出す野望!進撃のRB軍!」に
レディーゴー!
さて、第六話私の中でまだ状況映写など不完成な部分もありますので、少しずつ良くしていきたいと思います。
第七話は今回よりも早く投稿したいと思います。