艦隊これくしょん〜ゴップ閣下の優雅な引きこもり生活〜   作:rahotu

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第7話

旅順鎮守府、ここは深海棲艦出現以降大陸側における主要軍港のみならず、大陸側から供給される各種資源や精密機器などを輸出入する経済港でもある。

 

ここに居を構えるゴップ大将は、派遣していた利根、筑摩からミッドウェイ島とハワイでの事の顛末を聞き直ぐに撤退してくる艦隊の収容準備と、各鎮守府に残る艦隊を派遣しその援護に当たらせるべく各所に指示を矢継ぎ早に出した。

 

本来彼には自信の鎮守府以外その他の艦隊に対し指揮権を有していないが、極東鎮守府に残る将官の中で彼が最高位であり、また彼はこれを見越して軍令部から非常時における残留戦力の指揮権を得ていた。

 

本来なんの効力も持たない唯の紙切れがここに来てその威力を発揮したのだ。

 

極東鎮守府の戦力の過半を投入しての大敗、失われた人命、艦娘、資源、資金、そのどれをとっても今後海軍のみならず社会に与える影響は計り知れないものがある。

 

だが内心彼はこれを好機と見ていた。

 

今回の出兵に反対であったゴップ大将はその評価をあげ、反対に横須賀、呉、舞鶴鎮守府の影響力は大きく後退した。

 

特に指揮官階級とその参謀スタッフを失った為、後任を巡り今後軍閥内で内紛が起こるのは火を見るよりも明らか。

 

つまり、今が絶好の好機となるのだ。

 

「ああ、私だ。例のファイルを憲兵総監に送ってくれ。あと嵐が起きた後の地面わ柔らかいが、固まると雑草が残ってしまうと、伝えてくれ」

 

ゴップ大将が送ったファイルの中身、それは各軍閥が隠している不祥事や現地企業との癒着、中にはとある前線基地で現地住民を奴隷化や売国行為をあからさまにするなどの悪行が証拠付きの密告が書かれており、艦娘の武力の前に二の足を踏んでいた憲兵をして無視できない内容であり、時間が経てば証拠は闇から闇へ葬り去られること明白であった。

 

これらの情報の多くは民間人提督等が時に命を賭して掴んだ物であり、その大半が名誉の戦死を遂げ巡り巡ってゴップ大将の所に渡ってきたのだ。

 

それらを今度はゴップ大将が権力闘争として用いることになると知った声なき民間人提督等は名を何を思っただろう。

 

兎に角、今絶好の機会があり憲兵総監はゴップ大将と近しい仲であり、目の上のたんこぶであった艦娘は留守であり躊躇う必要はない。

 

まず、横須賀、呉鎮守府司の営門を突き破り武装した憲兵団が突入。

 

瞬く間に司令部を制圧し、突然の事態に困惑するなか次々に拘束され隠し金庫や二重帳簿、各種資料が押収され人間は装甲車に、資料はトラックに次々と積み込まれていく。

 

抵抗する者には容赦なく暴力が振るわれ、この一切の仮借ない対応にまるでアヒルの群れが追い散らされる様にその手は本土のみならず前線にまで及んだ。

 

疲労困憊でやっとの思いで帰還した提督達も軒並み憲兵によって拘束連行され、残った艦娘達はドックに係留されその監視にはゴップ大将麾下の艦娘がついた。

 

後に『ゴップの草刈り』と呼ばれるこの一連の事態を機に時は大きく加速する事となる。

 

 

 

 

 

 


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