憑依拒否   作:茶ゴス

62 / 68
後日談「返事」

 夕暮れが差す公園…既に他の子達は家へと帰っている時間帯…僕はブランコに座っていた…

 

 覚悟はしていたつもりだった。それでも尚僕に襲いかかる喪失感に涙がこみ上げそうになる。

 

 

『元気だせよ。こうなるってことも考えて無かったわけじゃないんだろ?』

 

 

 うん。それでも悲しいことは悲しいかな…

 たった一人…されど一人…僕は友人を失った。

 

 理由は単純なもの…僕は自分の秘密を話した。

 結果的に拒否され、僕は記憶の改竄を行うこととなった…玉藻さんがしてくれたけど、それでも人の記憶を弄んだ罪悪感は凄まじい…

 

 彼には既に僕と喧嘩して仲が悪くなったと植え付けてしまった。皆は仕方ないと言ってくれるけど、それでも僕にはこらえきれない…

 

 

 空を見上げる。紅く染まった雲に少し紫がかった空…この世界に僕だけしかいない錯覚してしまう程の孤独……

 

 その日、僕は泣いた。

 

 

 

 

 

 ◇

 

「皆に集まってもらったのには理由があるの」

 

 

 ある日、僕たちはなのはちゃんの家に呼び出され、唐突にそう言われた。

 集まったメンバーは僕を入れて13人。内訳は、フェイトちゃんにアリシアちゃん。はやてさんとその騎士達5人。アリサちゃんとすずかちゃん。そして僕とユーノ君とクロノ君だ。

 

 正直、女の子ばっかで居心地が悪いと感じる…でもどうしても来てほしいとなのはちゃんに言われ、僕はやってきた。まあ、男一人だったらこなかったかもしれないけれど…

 

 

「私はこれから秘密を話します」

 

 

 なのはちゃんが僕達の前に立ってそう話す。アリサちゃんとすずかちゃんに魔法について話すならわかる。2人はこの前の事件に巻き込まれていたらしいから…だけど僕達に話す秘密ってあるのかな?

 

 

「まず最初に、私は魔導師だということはアリサちゃんとすずかちゃん以外の人は知ってるよね?」

 

「うん」

 

「やっぱりあれは夢じゃなかったのね」

 

 

 何かそれ以外に言うことってあるのかな…

 もっと重大な…何かを…

 

 

「私が魔導師になったのはユーノ君にあったからなんだけど…」

 

「そうだね。あの時に僕がなのはを巻き込んだんだ」

 

「うん。だけどねユーノ君。一つ謝っておかなきゃいけないの」

 

「なんだい?なのは」

 

「実はそれ以前に魔法の存在を私は知ってたんだよ」

 

「ええ!?」

 

 

 確か、僕がなのはちゃんが魔力を放出してるのに気付いたのは5歳の時だったかな…その時に皆が宿ったんだけど…

 

 

「実は小さい時に夢で自分の未来を見たの。その時は唯の夢だと思ったけど夢で起こったことが現実でも起きるようになったの。そして、未来の私は魔法を使っていて何となく使ってみたら使えたんだ」

 

「なんとなくって…」

 

「で、私はその夢が本当にこれから起きることだと知って行動してきた…」

 

 

 そうだったんだ…なのはちゃんも色々あったんだね。

 でも夢で自分の未来を見る、かぁ。一度見てみたいなぁ。

 

 

「ちょっと待って。だったらうちらの事も知ってたん?」

 

「うん。夢で見たよ。だからヴィータちゃんとかの襲撃を予測出来たんだ」

 

「…そんな理由があったのかよ…」

 

 

 随分と細かい所まで覚えているんだね。何処かにメモでもしてるか、僕みたいに忘れないって体質かってとこかな…

 それにしてもなのはちゃんは凄く勇気があるな…

 

 

「でも、実を言うと今の状況と夢の時の状況は色々と違うんだ…」

 

「違う?」

 

「うん。例えば、夢の中ではアリシアちゃんやプレシアさんは次元の狭間に落ちてしまったり、リインフォースさんは助かっていなかったり…」

 

「……」

 

 

 そうなんだ…でもそれってもしかして僕が関わっていることなんじゃ…

 

 

「私も夢で見たからそんな事は起きないようにって行動したんだけど…上手く行かなかったの…」

 

「でも、現に私やお母さんは生きているよ?」

 

「………夢では、優君がいなかったから…」

 

「!?」

 

 

 ………そう、か…

 

 そうなんだ……

 

 

「私は最初優君を見た時は、私と一緒で未来の夢をみていた子だって思ってた…魔法のことをしっている事にも気付いて、将来的に管理局か何処かで働いていた人なのかと思ってた」

 

「………」

 

「でも流石にそこまでの実力を持って管理局にいた私の耳に入らないわけがない……だから、それは違うと最近思った…」

 

「じゃ、じゃあ優は…」

 

「………」

 

「私は知りたい。優君が何者かを…」

 

 

 隠すなんて今更出来ない…か。

 

 

『何でしたらまた私が記憶を変えますよ?』

 

 

 いや、いいよ。話さないといけない気がするし…

 

 

「…….はぁーー」

 

 

 息を吐く。それによって場の空気が緊張したのがわかった。

 全員が僕を見ている。すずかちゃんやアリサちゃんはあまりついていけてないようだけど、それでもある程度は理解して話を聞いているみたいだ…

 

 

「僕は、普通の人間じゃない」

 

「………」

 

「僕が5歳の時、いきなり頭の中にあるイメージが流れた」

 

「…イメージ?」

 

「そう。英雄たちの話。こことは違う世界を救った人達の人生が……」

 

 

 突拍子もない事だとはわかっている。だけど、僕にはそれ以外に表現できる言葉が浮かばない。

 全部本当にあったことだから…

 

 

「その後に急に悪意を感じた。咄嗟に僕は拒絶したんだけど、それによって悪意は居なくなったんだ」

 

「…悪意…か」

 

「でも、僕にはそれによって変わったこともあったんだ…」

 

 

 僕にとっては結果的には良かったこと、だけどそれは普通に考えれば異常な事…

 

 

「僕に沢山の英雄たちの意識が宿ったんだ」

 

「英雄の意識」

 

「うん。そして、身体にも変化があった。具体的には肉体的に凄く強くなったのと、凄く大きな魔力を手に入れたこと。あと、物を忘れられなくなったこと」

 

 

 物を忘れられないというのは英雄王さんが宿ったらしいけれど、前者2つは皆とは関係がない。

 でも、一つだけわかってることはある。

 

 

「さっき言った悪意。英雄さん達から聞いた話だけど、神様にこの世界に転生させられた存在らしいけど、僕の予想では、その悪意のために僕は異常とも言えるほどの身体になったんだと思う」

 

 

 神の使いは僕のことを器と言っていたところから考えて間違ってはいない筈。

 

 

「それから、僕は英雄さん達に強くなったほうがいいと言われて修行を続けてきていたんだ」

 

「……なあ、一ついい?」

 

「いいよ。はやてさん」

 

「結局の所、その悪意ってもんがやって来なかった世界がなのはちゃんの夢で、やってきたのがこの世界ってわけなん?」

 

 

 うん。そうなんだ。確かにその解釈で正しい。

 

 だけど

 

 

「そこにもう一つ加えるよ。僕が悪意を拒絶出来たって事もあるね」

 

「どういうこと?」

 

「僕は、中にいる英雄さんの一人に他の僕の可能性を見せられた。そこは悪意を拒絶できなかった僕がいる世界だったよ」

 

「どんな世界やったん?」

 

「少ししか見ていないけれど、悪意に身体を奪われた僕は、魔法に巻き込まれた時に身体を奪い返していた。それから悪意の持っていた知識を元に行動していた」

 

 

 悪意が持っていた知識を僕が見たわけではない。その世界の藤崎優がそう思っていた事を感じたんだ。

 そして、僕にはあの世界の僕がそんな行動をした理由がわかる。悪意により全てを失った僕は他の人が僕みたいな思いを抱くのが我慢できなかったのだろう。

 

 

「行動か、どんな事をしたの?」

 

「テスタロッサ家の幸せを願った。ジュエルシードの魔力を使って願いを叶えていた」

 

「私達の?」

 

「ジュエルシード?」

 

「簡単にいえば人の願いを歪めて叶える願望機。だけど、あの世界の僕は正しい願望機を使うことでその願いを叶えたんだ」

 

 

 代償は苦しい戦いだったけれど、それでも願望機は正しくあの世界の僕の願いを叶えていたかな。

 

 

「で、フェイトちゃん達は幸せになれたかはわからないけれど、間違いなく願いは成就されたと思うね」

 

「そうなんだ」

 

 

 まあ、僕はその後に捕まったんだけどね。

 それからどうなったかは僕にはわからない。だけど、確かにあの世界の僕は僕に幸せになってと伝えてきたんだ。

 

 

「まあ、そこで重要なのは悪意が持っていた知識って事だけど、僕の考えではなのはちゃんが夢で見た知識と一緒なんだと思う」

 

「……」

 

「さて、これくらいかな。僕の秘密は」

 

 

 伸びをして皆の顔を見る。

 複雑そうな顔してるね。無理もないか。いきなりこんな訳もわからない話を聞かされて…

 

 話を切り出したなのはちゃんですら頭を傾げているし…

 

 

「優、一つ聞いてもいいかな?」

 

「どうしたの?ユーノ君」

 

「どうして優はそれを誰にも話さなかったんだい?」

 

 

 どうして…か。

 既にそれにたいしての答えはわかりきっているかな。

 

 

「怖かったから」

 

「え?」

 

 

 この前、拒絶されたばっかだからかな…酷く怯えている自分がわかる。

 話すことによって僕の周りから人がいなくなることを恐れている。

 

 

「僕は自分のことを人外だって思っていた。人として生まれて怪物になってしまったのだと…でも、ある英雄さんに僕は人間だと教えてもらえた。だから今では自分を人間だと断言できるんだけど、それでも怖いんだ」

 

「………怪物…か」

 

「すずか……」

 

「僕のことを怖がる人はいる。僕から離れていく人もいる。そんな僕は他の人が離れることを怖がったんだよ」

 

 

 ずっと周りに隠して生きていく事はできたんだと思う。

 少し変な人間として生きていくことはできたんだと思う。

 

 

「じゃあ、どうして教えてくれたの?」

 

「聞き出したなのはちゃんが聞く?」

 

 

 なのはちゃんは少し申し訳無さそうに頭を掻いていた。

 まあ、怖かったと言っても。いつか僕は話していたと思う。

 

 皆を騙して生きていくことは多分耐え切れないから…

 

 

「結局の所、僕はみんなを騙して生きていたんだ。騙して、笑って、僕は生きていたんだよ」

 

「………」

 

「だから、これで僕は帰るね。今までありがとう」

 

 

 席を立ち上がって鞄を持つ。これで僕はまた友達を失った…

 喪失感に支配される心。涙がこみ上げそうになる目。

 

 本当にどうしようもなく弱いな。僕は…

 

 いつかはそんな僕の隣を歩いてくれる人が現れるのかな…

 

 

『ああ。絶対現れるさ。案外近くにいるのかもしれないぜ?』

 

 

 それってどういう…

 

 

「「待って!」」

 

 

 部屋を出た所で呼び止められる。声の主はなのはちゃんにフェイトちゃん。

 どうして呼び止めるのだろうか。もう彼女達は僕とは関わりが無いはずなのに。

 

 

「何処に行こうとしてるの?」

 

「……家だよ?」

 

「もしかして、もう会わないつもりなの?」

 

「うん。騙してた奴とはいたくないでしょ」

 

「確かに黙ってた事は悲しかった。だけど会えなくなるのはもっと悲しいよ」

 

 

 なんで?普通なら怒るはずなのに…何で悲しむの?

 

 

「それに、私が聞いたから優君は答えたんだよ。優君がどうして黙ってたかはわかるし、それを言わされた優君は悪くないよ。」

 

「それでも」

 

「言っておくけど、優君がなんて言おうと私は離れる気はないよ」

 

「私も。だって、優には色々お世話にもなったし…」

 

 

 どうしてこの2人はそこまで僕に笑いかけてくれるのかな。

 

 どうして

 

 

 どうして…

 

 

『お前さんを見てくれてるからだよ』

 

「僕は…」

 

「あのね、優君。どうして私達が離れていくと思ったの?」

 

「実際に離れていったから…」

 

「そうなんだ…でも私達が離れていくのはあり得ないよ。だって私は優のことが好きだから」

 

「私も、優君のこと好きだよ」

 

「僕もなのはちゃん達はいい子だとは思ってる。だからこそ…」

 

「優君は勘違いしてるよ。私達はね。優君と結婚したいって思ってるんだよ?」

 

「へ?」

 

 

 結婚?確かになのはちゃんがそんな事言ってたようなきもするけど…

 好きってもしかして…

 

 

『やっと気付きやがったか』

 

 

 もしかして、皆知ってた?

 

 

『傍から見たらわかりやすかったしね』

 

 

 それなら言ってくれたらよかったのに…ってちょっと待って

 

 なのはちゃんは私達って言ったよね?じゃあ…

 

 

「もしかして、フェイトちゃんも?」

 

「…う、うん」

 

 

 ……これってどういうこと?

 

 何で2人が僕に求婚してるの?結婚って日本じゃあ1人としか出来ないのに…

 

 

『悩むのはいいがよ、返事してやりな』

 

 

 あ、うん。それもそうだね…

 

 

「へんじしたほうが、いいよね?」

 

「え!?」

 

「う!?」

 

「え?何その反応」

 

 

 予想外だったのかな。そっか。今思えば結構告白まがいなこと言っていたような気がする…

 

 

「た、確かに返事は嬉しいけど」

 

「まだ心の準備が…」

 

「……ごめんね2人共これまで気付かなくて」

 

「返事するの!?」

 

「だって…」

 

 

 これは伝えておかないといけないし。変に曖昧にするのは2人に失礼なんだよね。

 

 

「僕は実を言うとなのはちゃんやフェイトちゃんの事をそんな対象に見たことは無かったんだ。でもだからと言ってどんな気持ちが結婚したいってことなのかもわかっていない」

 

「………」

 

「だから、まだ僕は結婚できる決心はついていないけれど、仲良くしてくれたら…嬉しいかな…」

 

『それって曖昧にしてるのと変わんねえぞ』

 

 

 でも、僕の本心を言葉にしたらこうなんだよ。

 僕自身全く考えていなかったことだし…

 

 

『優さん?後ですこーし、お話しましょうね?』

 

 

 なんだろう。少し玉藻さんが怖いんだけど……

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

「あ、あの主?」

 

「黙っとき!今ええとこなんやから!!」

 

「なあなあ、一体どうしたんだよ」

 

「じっとしておきなさいヴィータ。なのはの一世一代の舞台なんだから」

 

「それを言ったらフェイトもだよ!」

 

「覗き見しててもいいのかな…」

 

「バレたら怒られるだろうけど、取り敢えずはほとぼりが冷めてから僕達も優と話せばいいだろう」

 

「そうだね。全く、隠し事くらいで大きく捉え過ぎだよ。確かに衝撃的だったけど、それでも僕達が優を嫌いにはならないよ」

 

「なのはちゃんいいなぁ。あんなに大胆になれて」

 

「すずかも行ってきていいのよ?」

 

「なのはちゃんに悪いよぉ」

 

「フェイトがいる時点でなのはにはどうでも良い事なのかもしれないけど…」

 

「人間とは面白いのだな」

 

「………」

 

「ええい!みんな煩いで!!」

 

「はやてが一番興奮してるんじゃないか?」

 

「だって、生の告白シーンやで?うちまでドキドキしてきたわ!」

 

 

 

 

 

 

 高町なのはによる大粛清があったのはまた別の話




後日談が重いというよくわからない状況に…


そろそろバラす時期だしなぁって思い書きました。寧ろすずか達に魔法を話すついでに話すのが自然かなと思ったので…










そう言えば第12話後編「旅の終わり」での会話シーンの結果を書くのを忘れていたのでここに書いておきます

「それじゃあまあ、行きますか!」←シング

「先手は打たせて貰う。穿て!赤原猟犬(フルンディング)」←エミヤ

「魔力消費が無いというわけですね…ならば、約束された勝利の剣(エクスカリバー)の乱れ打ちも出来るはず!!」←腹ペコ王(アルトリア)

「流石王!私も僭越ながらご一緒に転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)の乱れ打ちに挑戦したいと思います!!」←ロリ好き騎士(ガウェイン)

「だったら俺も父上に見習って我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)の乱れ打ちを…」←ファザコン(モードレッド)

「…我の無毀なる湖光(アロンダイト)だけビームが出ない……」←ランスロット

「おい、誰かこいつら止めろ」←玉藻

「ふふふ、楽しいじゃない。それに私も久しぶりに色々と暴れたい気分だし」←両儀式(「」)

「あんたが一番暴れたらダメでしょうが!全く、玉藻ちゃんをツッコミに回すなんて贅沢な連中ですよ!ぷんぷん」←玉藻

「よし、行くよ!ルドガー!!」←ジュード

「おう!!」←ルドガー

「じゃあさ、俺達も行くか!クレス!!」←スタン

「うん、行こうか!!スタン!!」←クレス

「な、なんだか大変な事になったね」←ルカ

「へっ!こういう乱戦も好きだぜ」←カイウス

「こんな所に私の武器が」←ヘラクレス

「おい、俺の方を見るなヘラクレス。絶対に投げるなよ?絶対だぞ?」←クーフーリン

「それはフリと受け取ってもいいのかな?」←ヘラクレス

「やめろ」←ブーメラン(クーフーリン)



「何かカオス過ぎるんだが」←ユーリ

「………」←カルナ

「で、お前さんはどうしてここに来たってわけ?俺達も初めて見るし優のやつも会ってないと思うが?」←ユーリ

「???あの少年が助けを求めただろう??」←カルナ

「ああ……で?」←ユーリ

「???」←カルナ


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。