「ユーノ君。一つ教えてほしいことがあるんだけど、いいかな?」
「どうしたの?優」
空中で射撃魔法を打ち合っている2人を横目にユーノ君に話しかける。
今のうちに覚えておかないといけない魔法があるんだよね。
「転移魔法を教えてくれない?」
「いいけど、このタイミングで?」
「今じゃないといけないんだ。」
僕の言葉に渋々といった具合に転移魔法の発動を見せてくれるユーノ君。本当に助かるよ。
それを真似して僕も発動させる。
座標さえわかればある程度どこにでも転移できるって話はなのはちゃんが言ってたとおりだったんだね。
まあ、その座標の指定が次元空間でさえも指定できる分範囲は広いんだけど。
「ありがとうユーノ君。これでどうにか出来そうだよ」
ここで、視線をなのはちゃん達に戻す。実は内心冷や汗を掻いているんだけど、ユーノ君は気づいていないのかな?
今なのはちゃんがバインドで捕まってユーノ君焦ってるけどさ。なのはちゃん、魔力を無駄に放出させながら戦ってるんだよ?
今にも飛び出しそうなユーノ君の首根っこを掴んで引き止める。
ずっと準備してるよ。近づかない方がいいからね?
「優!離して!」
「来ちゃダメだよ!ユーノ君!これは、私とフェイトちゃんの戦いなんだから!」
「でも」
隣のアルフさんも危険だって言ってるけどさ、今危ないのフェイトちゃんの方なんだってば。
「優は心配じゃないの!?」
「確かに心配だね(街が)」
「生返事!?」
◇
そして、僕の予想通りにフェイトちゃんの射撃魔法の嵐をかすり傷程度で済ましたなのはちゃんは、一度ディバインバスターを放った後、それを防ぎきってボロボロな状態のフェイトちゃんをバインドで拘束。そして超特大のスターライトブレイカーを放った。
フェイトちゃんがバインドで縛られたあたりでアルフさんが焦り、ユーノ君が遠い目をしていた。
だから言ったでしょ?近付いたら危ないって。
直撃したフェイトちゃんが生きてるのか不安になるね。一応デバイスは非殺傷設定らしいんだけど、流石にあの砲撃は…
意識も失ってるみたいで、そのまま海に…落ちる前になのはちゃんが助けたね。
なのはちゃんはそのままフェイトちゃんを連れてこっちに戻ってきた。
見たところショックで気絶してるだけみたい。少し安心したよ。
と、目を覚ましたみたいだね。なのはちゃんがトラウマになって無ければいいけど…
「私の勝ちだね。フェイトちゃん」
「そう…みたいだね」
フェイトちゃんがそう言うとデバイスから4つのジュエルシードが放出される。
じゃあ、僕も渡そうかな。
「おめでとう、なのはちゃん」
「うん!ありがとう、優君!」
僕もポケットから7つのジュエルシードを取り出し、なのはちゃんに渡す。
と、来たか!
「優君!上!」
「了解!ラウンドシールド!」
障壁を上方向に展開。枚数は50枚。
その直後に鳴り響く雷鳴。以前と同じ攻撃を僕の障壁は防いだ。
壊れた枚数は2枚。これならもっと少なくてもいいのかな。
と、僕が障壁に集中している間になのはちゃんに渡したジュエルシードが転移した。
予定通りだ。
今の強制転移の魔力経路で大まかな座標は特定できた。
僕は、この戦いが始まる前になのはちゃんに一つ頼んだんだ。
敵陣に乗り込ませてくれって。
その際に提案されたのがこの方法。転移魔法を戦いの間に習得。そして、来るであろう攻撃を防いで強制転移からプレシア・テスタロッサのいる時の庭園の座標を割り出す。
管理局も転移し始めてる頃だし、鉢合わせになるだろうけど、ジュエルシードを持っていない僕は捕まる心配はないそうだ。
なのはちゃんが嘘をつくことも無いだろうし、今の間は管理局を気にせずに行動しよう。
障壁を解いてなのはちゃんと目を合わす。
「気をつけてね。私もすぐ向かうから」
「わかったよ。じゃあ、行ってくるね」
転移魔法を発動させる。管理局みたいに正確な位置まではわかっていないけど、概ね合ってるだろう位置は割り出せた。
失敗したら失敗した時だ。
風景が変わり転移が始まったのがわかった。
今の夫婦みたい!というなのはちゃんらしき声は空耳だろう。
◇
時の庭園に着いたようだ。
暗くてじめじめしてる場所。心なしか空気が淀んでいる気がする。
周囲に管理局の人がいないところを見て、少し違う座標に転移したのだろう。
それがどういった影響を出すのかはわからないけど、今は僕に出来る事をしよう。
僕が、プレシア・テスタロッサを止める。
そう、考えた時だった。
いつも、パンダ師匠なりきりセットが出てくるように見たことのある円盤が現れたのは。
「鏡?」
ある時に夢で戦った時に影が使っていた物。
あの時は気づかなかったけど、よくよく見たら装飾が施された鏡だった。
どうして今現れたのかはわからないけど、鏡はあの時の影のように僕の周囲をふわふわと浮いている。
まあ、いざとなれば盾にでもなるだろうし、ラッキーだと考えておこうか。
取り敢えず、僕は少し騒々しい方向へと歩き出した。
◇
それから少しして、開けた場所に出た。何人かの人が倒れているところから察するにプレシアさんに返り討ちにあった管理局の人なのだろう。
あ、消えた。強制転移されたみたいだ。でも、一気に全員出来るってわけじゃあないみたいだね。
まあ、今はそのことは別にいいか。
ここに管理局の人達が倒れていたってことは、この近くにプレシアさんがいるってことだよね。
奥に見える通路に入る。
そこには、カプセルに入ったフェイトちゃんそっくりな子とプレシアさんがいた。
あれが、アリシア・テスタロッサ。本当のプレシアさんの子供か。
「作り物の命は所詮作り物。失ったものの代わりにはならないわ。」
プレシアさんはカプセルをなぞりそう呟く。恐らくは管理局の人と通信しているのだろう。
僕の存在に気付かずに話を続ける。
「アリシアはもっと優しく笑ってくれたわ。アリシアは時々我儘を言ったけど私の言うことをとても良く聞いてくれた。アリシアはいつでも私に優しかった」
……なんて言い草だよ。まったく
なのはちゃんに話を聞いた時は同情したけど、今はただただ、腹立たしい。
いや、あれは演技なんだ。フェイトちゃんが悲しまないようにするための。そうに違いない。
じゃないと、フェイトちゃんが可哀想だよ…
「フェイト、やっぱり貴方はアリシアの偽物よ。折角上げたアリシアの記憶も貴方じゃダメだった。アリシアを蘇らせる間に慰みに使うだけの人形。だからもういらないわ。どこへなりと消えなさい!」
疾走する。多分、これまでで一番早く走ってる。
鏡は僕の後ろを追尾するように飛行している。
もう我慢出来ないよ。さっきから聞いてれば偽物とか本物と違うとか……
演技にしたって限度があるよ……
思いっきり拳を握り、プレシアさんの振り向きざまに叩きこむ。
障壁のようなものが現れたけど、それすら壊してプレシアさんの頬を打ち抜いた。
『優君!?』
なのはちゃんの声が聞こえた。やっぱり通信してたんだね。
でも、今は返事してられないよ。この人に言ってやらないといけない。
「偽物だとか、本物だとか。もう聞き飽きたよ。偽物も本物、どっちもそこに存在してるだろうが!!アンタが娘を否定してどうするんだよ!!」
「くっ!デバイスも持たない餓鬼が!!」
プレシアさんが雷撃を放ってくる。
それを集気法を発動させながら手で打ち払う。
雷は横にそれて壁に穴を開けるだけに留まった。
「どんな事情があるにしても、家族を裏切る事は許さない。だからさプレシア・テスタロッサ。僕はアンタを今から10発殴る」
少し、お灸を据えさせてもらおうか。
優君激怒回
この時のアースラ内での反応
なのは「優君、かっこいいの!!」
ユーノ君「行けぇ!優!!」
アルフ「クソ婆を打ちのめせ!」
クロノ「口悪すぎないか?」
エイミィ「フェイトちゃん大丈夫?」
フェイト「……藤崎、優…」
リンディ「あの子無茶苦茶だわ。雷を殴るなんて」
12話は複数構成予定