2人のもつ杖にヒビが入る。よほどの衝撃でぶつけたのか、それとも魔力の放出量に耐え切れなくなったのかはわからないけれど、間違いなく2人のデバイスは破損した。
「くっ!」
「んっ!」
ジュエルシードから真っ白な光が放出されて2人は堪らず飛び退いた。あれは2人の魔力に当てられて暴走しだしたのか?
だとすればまずいかもしれない。なのはちゃんの魔力は尋常じゃない、それを吸収して暴走したとすれば危険極まりないよ。
だから
「止める!!」
一息で空中に静止するジュエルシードへ近付く。脈動音と周囲の空間が若干歪んで見えるそれは、間違いなく暴走してると言える。
フェイトちゃんがデバイスを待機モードにしたのが見えた。恐らくはこれ以上破損しないようにだろう。なのはちゃんのレイジングハートも使えない状況。
なら力づくで抑えるしか無い。
以前ユーノ君に教えてもらった封印方法。失敗すれば大怪我間違いなし、成功しても怪我しちゃうような荒業だけど、今はそれに頼るしか無い。
ジュエルシードを右手で掴む。
「うお…ぉぉぉぉぉ!!」
右手に魔力を集中!ジュエルシードを包み込むように魔力を凝結!
「優!!」
後ろからユーノ君の声が聞こえる、無茶をしている僕を止めようとしているんだろう。だけど、誰かがやらなきゃいけないんだよ?ユーノ君
右手に痛みが走る。蚊に刺された程度の痛みが…
ん?
全然痛くないや。とっとと封印しよう。
◇
2人の戦闘狂の決闘から一夜明けて既に放課後。少し夕焼けに染まる道を家に向かって歩いて行く。
ジュエルシードの封印は問題なく完了した。僕が元気にジュエルシードを掲げているとユーノ君は安心したのかふぅ、と息を零していた。取り敢えずジュエルシードはユーノ君に渡しておいた。
なのはちゃんは少し落ち込んだ表情をしていたけど、どうしてか僕を抱きしめると「既成事実を作ったの!」と言って走り去ってしまった。
フェイトちゃん達は悔しそうな顔をしながら撤退していった。その際に獣が女の人になったのには驚いた。カイウスさんみたいな物だと納得は出来たけどね。
まあ、これからは僕もジュエルシードの封印も出来るようになったというのは嬉しい情報だ。
これで本格的にユーノ君の手伝いが出来るよ。まあ、まだ覚えた魔法は少ないから僕自身力になれるかわからないんだけどね。
取り敢えずは特訓あるのみかな…っと、なのはちゃんの魔力を捕捉。レイジングハート治ったんだ。早いね…
さて、向かうかな。2人共昨日みたいな展開はやめてよ?
封時結界を張って駆ける。今回は範囲内になのはちゃん達もいるっぽいね。
これなら、一足でいける!
足に力を入れて跳躍する。
方向はあっているね。前方に巨大な木が見える。すごい顔が怖いやつだけど。
背中に背負うランドセルに魔力を纏わせる。これで多少の衝撃が来てもランドセルが壊れる心配は無いだろう。
そのまま、まっすぐ木に向かって落下を始める身体を抗わせる事無く全身に魔力を巡らせていく。
魔力は発火し、この身を火の鳥と変貌させる。
昨日も使った技だけど、落下時にはこれほど有用な技は少ないだろうね。
既になのはちゃんたちも戦っていたようで、2人共砲撃魔法を木にぶつけていた。
バリアのような物が見えるけど、それももう壊れそうだし。これで決めれそうだね。
「鳳凰天駆!!」
巨木に直撃し、その身体を霧散させる。相当なのはちゃん達の攻撃が効いていたようだね。
巨木がいた場所に小さな宝石、ジュエルシードが現れる。
それを封印する2人。フェイトちゃんのデバイスも治ってたんだ。デバイスって凄い治りやすいんだね、初めて知ったよ。
ってあれ?2人共ジュエルシード回収しないの?
え?僕が持っておけばいいの?…わかったよ
2人はどうやらジュエルシードを回収するのは戦って決めるようだ。それに伴って、また暴走しないように僕に預けておくって事になったらしい。
僕は回収出来ないんだけど、ユーノ君に視線を向けても困ったように顔をかいてるだけだし…
まあいいか。2人の戦いの行方でも見守ろうかな。
2人は浮きながらお互いを見つめる。
僕も次はユーノ君に浮遊魔法教わろうかな。あったら便利そうだし…
「ジュエルシードは譲れない」
フェイトちゃんのデバイスが変形する。
ああいう変形ってかっこいいよね。そろそろ僕もデバイスが欲しいけど、何処かで手に入らないのかな。
「私は、フェイトちゃんと話をしたいだけなの」
そう言ってデバイスを変形させるなのはちゃん。
なんでだろう。話だって言ってるのに会話ではない気がするのは。なのはちゃんの思考はいまいちわからないんだよね。
「私が勝ったら、ただの甘ったれた子じゃないってわかったなら、友達になって一緒に優くんと結婚してくれる?」
「え?え?えぇぇぇぇぇ!!?」
…僕っていつなのはちゃんと結婚する事になったのかな……初耳なんだけど…いや、多分聞き間違いだよね。
フェイトちゃんも驚いてるし多分凄い変なことを言ったのには変わりないんだろうけど。
「行くよ!フェイトちゃん!」
「え?ちょ…え?」
フェイトちゃんに突っ込むなのはちゃん。
困惑しながらなのはちゃんを迎撃しようとするフェイトちゃん。
なるほど、動揺させる作戦だったのか。なのはちゃんって凄い策士だったんだ。学校では頭良くなかったから気付かなかったよ。
また今度アリサちゃんの相手してもらおうかな。
と、なんだろ?あの魔力。いきなり2人の間に現れた魔力は…
2人の衝突とともに発生した光のせいでちゃんと見えないな、一体どうなってるの?
「ストップだ!!」
光が晴れて見えるようになったら、2人のデバイスを止めている黒い魔法使いがいた。
一体誰なんだろ?あの小さな子。
『小さいってお前さんが言えたことじゃないだろ』
その言葉は無視します。
今はあの少年が誰なのかが問題なんだよ!
『へいへい』
「ここでの戦闘行動は危険すぎる」
そうなの?街中じゃないし大丈夫そうなんだけど…すぐそこ海だし移動しろって事かな。
僕は空に向かって大声で言う。
「2人共!海に行けって事じゃない?」
「あ、なるほど」
「違う!!」
違ったみたいだ。じゃあ、一体どうしてなんだろ。
「時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ。詳しい事情を聞かせてもらおうか」
いや、だからどうして危険なの?
最近スランプです。外伝の執筆が止まらないのに本編は停滞気味。
でも、外伝は本編の無印編投稿し終わったら載せていくつもりなので、結局更新できないという状況です。