東方最凶覚   作:tesorus

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七:蘇る伝説の庭師

冥界に生きたまま入ることができるのは、幻想郷の住人の特権かもしれない。事実、博麗霊夢は春のエネルギーを吸い取られた際に、冥界へ足を運んでいる。果たして、冥界で命を落としたらどうなることか。

 

そして、その冥界で中心に位置している屋敷が白玉楼である。その屋敷の主こそ、幽霊の西行寺幽々子なのだが、今は彼女は倒れていて、残っているのは従者である魂魄妖夢のみだ。

 

「なんだお前は、妖忌はどうした。ここの庭師はあいつじゃなかったか?」

 

「今は、祖父はいません。どこかへ行ってしまいました。今は祖父の孫であるこの私が白玉楼の庭師です。」

 

「ほう、にしては随分頼りない奴だ。俺に太刀打ちできるのは、幻想郷全体を含めてもあいつと博麗の巫女である霊香くらい。違うか?」

 

「今の巫女は私で、巫女は霊夢さんですが、私と霊夢さんであなたを倒してみせます!」

 

《人符「現世斬」》

 

光を帯びた剣を手に、妖夢が斬りかかる。しかし、いとも簡単に剣はかわされてしまう。

 

《金符「メタルファティーグ」》

 

無数の光線が妖夢に襲いかかる。妖夢はなんとか避けきるが、さらに幾つかの光が妖夢目掛けて追撃をしかける。

 

「これは、パチュリーさんのスペル?あの人から能力を奪ったのですか!」

 

「まあな、言っちゃ悪いが、もう幻想郷でスペルカードが使える奴らなんて数えるほどしか居ない。俺にとって重要なことは、強い弱いじゃない。俺に心さえ読まれれば、そいつはもうゲームオーバーなんだぜ!まあ、お前や妖忌は能力なんて大して関係ないからな。それが俺の敗北の原因だ。まあ、それなら奪った大量の能力を使って倒すまでだ!」

 

「やめろ!」

 

鬱夜の段幕攻撃、それを妖夢が食らう直前、一人の老人が妖夢の前に立ちはだかった。老人は、魂魄妖忌は段幕攻撃を食らっても悲鳴一つあげず、まるで妖夢を守るように剣を抜いた。

 

「し…師匠…」

 

「覚妖怪、お主の敵は私であろう?また、六百年前のように倒してやる!」

 

「ああ、倒せるものならな。だが、もう霊香は映姫の所に逝っちまってるぜ?妖忌、六百年で少し老けたなあ。」

 

「ふん、そりゃ数千も生きてれば老けるわい。千年も生きているのに老けていないお主が羨ましいくらいじゃ。」

 

「はは、驚けよ妖忌。お前に倒されてから百年後と三百年後に妹が生まれたんだ。お前は知らないだろうが、可愛いんだぜ?さて…思い出話は終わりだ。さとりやこいしに遭わせられないのが寂しいが、死んでもらおうか。」

 

《想起「夢想封印・海」》

 

無数の札が妖忌目掛けて襲いかかる。妖忌に触れた札は3つの光線を出して爆発する。

 

「これは…」

 

「ああ、霊香のスペルカードだ。お前も霊香と戦ったことがあったんだな。一見真面目に見えるお前だが、異変でも起こしたのか?」

 

「ふん、昔のことなど忘れたわ。」

 

《威圧「燕返し・二刀流」》

 

妖忌が二本の刀を振りかざすと、夢想封印・海の札の全ては真っ二つになり、地に落ちた。

 

「まあ、お前はこれくらいじゃあ潰れないか。」

 

《人界剣「悟入幻想」》

 

妖忌しか目に入れていなかった鬱夜に、妖夢が斬りにかかる。その剣は今度こそ鬱夜を捕らえ、深い傷を残した。

 

しかし、その傷は直ぐに消え失せた。それは、鬱夜がパチュリーの治癒魔法を使ったからだ。

 

「おっと、二対一とは卑怯じゃないか?まあ、前回の霊香がお前の孫に変わっただけか。しかし、このままだと俺が不利だな。お前らが二人がかりってんなら、俺はこいつを使わせてもらうぜ。」

 

鬱夜が指を鳴らすと、巨大な黒い物体が空から降ってきた。数分たつと、それは金髪の少女に変わった。彼女は目を赤く光らせ、黒い翼を生やしている。

 

「こいつが誰だかわかるか?妖忌。」

 

「何だ?この妖怪は…さっぱりわからぬ。」

 

「!?まさか、ルーミアさん?」

 

そう驚きながら答えたのは、妖忌ではなくて孫の妖夢の方である。

 

そう、その少女こそ正に宵闇の妖怪、ルーミアである。彼女はその力故に、六百年前に博麗霊香に赤い札を付けられ、その力を制限されたのである。

 

しかし、今の彼女に赤い札は付いていない。故に、今のルーミアは自らの力を完全に支配できる。

 

「ルーミア…思い出したぞ。霊香が封じた宵闇の妖怪じゃないか!」

 

「その通り、それにイナバとか言う奴の「狂気を操る程度の能力」を重ね掛けることで、今のルーミアは催眠状態だ。さあ、宵闇の妖怪の真の力を止められるもんなら止めてみなあ!」

 

《新月「ムーンダーク・ソード」》

 

 

 

ルーミアの力は絶大で、もはやこれまでかと言うくらいに二人を追い詰める。霊香、かつての博麗の巫女は、赤い札でその宵闇の妖怪の力を数百分の一にまで抑えた。つまり今のルーミアの力は、かつてのルーミア百人分くらいの力だ。

 

「だが、狂気のままに攻撃していては私を倒せぬぞ!ルーミア!」

 

《「人斬りの龍返し・二刀流」》

 

妖忌の剣は時間すら切り裂くと言われている。ルーミアの黒い翼に傷をつけ、彼女を地に落とした。

 

「妖夢、サポートせい!二人でルーミアを正気に戻すんじゃ!」

 

《彼岸剣「地獄極楽滅多切り」》

 

《龍王剣「終末殺人飛龍」》

 

二人の剣は、ルーミアを捕らえて離さない。その剣を前にして、ルーミアの赤い瞳は次第に光ることを止め、その瞳を閉じて地中に倒れた。

 

「はっ、ルーミアさん!」

 

妖夢がルーミアに駆け寄って身体を揺すると、ルーミアはその赤く輝く瞳を開けた。

 

「うう…私は何をしてたの?」

 

「少し気を失ってただけよ。」

 

「ふうん、そうであるか…まだちょっと眠いかも。」

 

妖忌は妖夢に支えられたルーミアが静かに眠っている姿を見て安心した後、鬱夜を目で探し出した。しかし、いくら捜しても鬱夜は見当たらない。妖忌はまさかと思い、妖夢の方へ振り向いた。

 

時既に遅し、妖夢は気を失って倒れていた。

 

「なっ…しまった!私としたことが…妖夢を…」

 

《光符「トリプルメテオ」》

 

「ぐ…これは、妖精のスペルカード?何故…」

 

「まったく、妖精のスペルカードは最高だぜ。大した体力消費もなしに使える。まあ、大して強くもないがな。だが弱ったお前を倒すには十分だ。さて、もう一人潰しとかなきゃ気が済まない奴が居るな。見てんだろ?お前だよ、隙間妖怪の八雲紫!」

 

〈…見つかっちゃった。〉

 

「出て来いよ。噂に聞くと、お前と博麗の巫女がさとりに腕を上げたって言うじゃねえか。」

 

〈…間欠泉の異変のことね。まあ、間違ってはないわ。けれど、あなた達を地底へ沈めたもう一人の犯人は倒さないのかしら?〉

 

「はは、何で映姫を倒す必要があるんだ?あいつは俺の友達だぜ?」

 

〈そう、なら良いわ。けれど、私と戦うには条件があるわ。その条件をクリアしたなら、私の隙間の力を使って私を殺すなり、幻想郷と地底を入れ替えるなり好きにしなさい。その条件は…〉




あけましておめでとうございます。今回は2話連投します。


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