東方最凶覚   作:tesorus

3 / 13
弐:守矢神社と宵闇の妖怪

幻想郷、そこは幻となった者が集う土地である。俺は今、そこの巫女であり友人でもある東風谷早苗の神社、守矢神社に居る。

 

この神社を見ると、やはりここは何時までも変わらないなと実感させられる。この幻想郷と言う世界に関しては全く何も解らないが、生憎守矢神社のことについては何もかも知り尽くしたと言っても同然である。神奈子様、ざまあみろ。

 

そういえば、早苗から連絡が入る数日前、偶々図書館で居合わせた女子高生におかしなことを聞かれた。俺が異世界のことについての本を読んでいたら、隣に居た女子高生に、「お前、異世界に興味があるのか」とか、「もしこの世界で幻となった連中が住んでる世界があったら」とか、そんなことを聞かれたような気がする。

 

もしかしたら、外界にも紫さんのように幻想郷と外界を行き来できる人が居るのかもしれない。まあ、あの女子高生がそうとは思わないけれど。

 

「お前は確か…早苗の友人の想真じゃないか!?何で幻想郷に居るんだい?」

 

「神奈子様…お久しぶりです。それより、お怪我は大丈夫ですか?」

 

「ああ。まったく、幻想郷には荒っぽい妖怪も居たもんだ。しかも、聞けば地底の覚妖怪らしいじゃないか。恩を仇で返すとは本当に酷いねえ。」

 

「恩を仇でって、覚妖怪に何か恩を売ったのですか?」

 

「ああ、ペットだがな。おっと、これ以上は私の口からは話さないよ。知りたきゃ諏訪子にでも聞きな。」

 

「いえ、結構です。面倒なので。」

 

少しばかり神奈子様と話をして、とりあえず、妖怪捜索は明日にでもしようと言うことになった。こちらも、何の力も無いのに一人で出歩くのは危険だと言うことはわかる。何せ外は非科学的な力を持つ妖怪がうじゃうじゃ居ると聞く。もう今日は寝た方が良いだろう。

 

「おお、そうだ。お前、妖怪を見たことは無いだろう。せっかくなら、宵闇の妖怪と勝負でもしてきたらどうだい?」

 

「宵闇の妖怪って、勝負なんてする前に食べられちゃいますよ!」

 

俺がそう言うと、神奈子様はそうだなと少し考えた後、急に俺に腹パンをかましてきた。

 

「何するんですか!うわ…無茶苦茶内出血して…あれ?」

 

「ああ、すまんすまん。でもこれで、お前は多少戦えるようにはなったんじゃないのか?と言っても、説得力が無いな…そうだな、やはり宵闇の妖怪と戦ってきな。大丈夫、食べられたりはしないさ。きっと。」

 

 

 

宵闇の妖怪、山を下り、人間の里の人に調査をすると、宵闇の妖怪は金髪の赤目で、その容姿はまるで少女のようであると言う。宵闇の妖怪は人を食らい、それ故に夜中に一人で山へ行くことは愚か、外出すら禁じているらしい。

 

「あんたは守矢神社の人間じゃろ?こんな夜によう出てきたの。何、悪いことは言わん。今日は博麗神社にでも頼んで泊めてもらいなされ。魔法の森に宵闇の妖怪は出ないからな。」

 

と、ついには言われてしまった。それほどに人々が恐れていると言うことは、宵闇の妖怪は相当危ないらしい。

 

けれど、その宵闇の妖怪を倒せと言うことが神奈子様に与えられたミッションなので、このまま帰る訳にはいかない。

 

妖怪の山、そこは多くの妖怪が住んでいる故に危険であるらしい。どのくらい危険であるかと言うと、大人ですら二人でないと入ることを許されないと言われているくらい(と、人間の里で盗み聞きした。)

 

妖怪の山は先ほど人間の里へ下る時も通ったが、宵闇の妖怪は愚か、妖怪達の生活感すらなかった。やはり、所詮は迷信なのだろうか。しかし、神様である神奈子様も出ると言っていたあたり、迷信ではない気はするのだが。今もこうして妖怪の山に居るが、妖怪が潜んでいるとは思えないほど静かである。

 

妖怪が居ないか周りを見回していると、俺は一人の蒼髪の少女を目にした。人間の子供が夜に山に出没するはずはないので、妖怪であると見て間違いないだろう。よし、少し宵闇の妖怪について聞いてみるか。

 

「おい、そこの妖怪。」

 

「誰?妖怪ってあたいのこと?あたい妖怪じゃない!」

 

「嘘つけ、その透明な氷の羽が全てを物語っているじゃないか。それに、こんな時間に山に居る人間なんて居ないだろう。」

 

妖怪は、その言葉が図星なのか少しムッとした。

 

「あたいは妖精だよ、氷の妖精のチルノ・ブリザードセル。妖怪じゃない。」

 

「俺からしたら、妖精も妖怪も同じに思えるぞ。まあ、そんなことはどうでも良い。お前、宵闇の妖怪ではなさそうだしな。」

 

「宵闇の妖怪?ああ、ルーミアちゃんのこと?奇遇だね、あたいもルーミアちゃん探してるんだよ。でも、人間が何でルーミアちゃん探してるの?」

 

氷の妖精であるチルノは無邪気な表情で不思議そうに俺を見てくるので、答えないと、謎の罪悪感で押しつぶされそうになってしまいそうな気がする。

 

氷の妖精に教えたことは、俺が知り合いに頼まれて外界から来たことと、今はとある神社に居ると言うこと。それに、とある神社の神に宵闇の妖怪を倒してくるように言われたこと、人間の里の人から宵闇の妖怪について色々と聞いてきたと言うこと。

 

…ほぼ全部じゃねえか、何をやっているんだ俺は。

 

「ああ、あたいわかった!早苗に幻想郷に来るようにお願いされて、今は守矢神社に居て、神奈子にルーミアちゃんを倒すように言われて、でもルーミアちゃんが怖いから里の連中に慰めてもらいに行ってたんだね!」

 

ちょっと待て、何故早苗とか神奈子様のことやら、守矢神社のことがバレている。俺は一言もこれらの言葉を発した覚えはないぞ。

 

「あたいは天才だからね、人の心が読めるんだよ。」

 

おい待て、こいつさとり妖怪だったのかよ。マジかよ勝てる訳無いじゃん。

 

「嘘だよ。」

 

さいですか。

 

「幻想郷に神社は2つしか無いからね、でも博麗神社には今は霊夢が居ないから必然的に守矢神社になる。守矢神社には神奈子、諏訪子、早苗の三人が居て、その中で人間なのは早苗だけ。それでルーミアちゃんを襲わせるような人は神奈子だけ。あたいは天才だからね。それくらい簡単に解って当然だよ。」

 

流石は天才、格が違う。取り調べで言えば完落ちと言った所だ。

 

「それにしても、巫女でも魔法使いでもない人間にルーミアちゃんは倒せないと思うよ?そんなにルーミアちゃんと戦いたいなら、あたいを倒してから行きな。」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。