後はル級から逃げれば何とかなる…そう思った矢先。
《シーホークよりあたご!》
「どうした?シーホーク妖精さん」
《レーダーみて!》
言われた通りにレーダーをみるとル級の背後からチ級が4隻とヘ級2隻が出て来た。
オイオイ勘弁してくれよ…一体何処から湧いてきたんだコイツらは!?
「妖精さん!俺から離れてみんなの上空でソノブイを投下、同時にレーダーで敵艦や航空機を警戒してくれ!」
《わかったー!》
「みんな!俺が囮になるからその隙にシーホークと一緒に後退してくれ!」
「そんな…ひとりでほっておけないのです!」
「大丈夫、俺に砲弾が飛んできても迎撃できるし魚雷がきても俺のソナーと足なら避けれる」
「でも…危険なのです!」
「電、確かに危険だがこのままじゃ金剛達が到着する前に誰かが轟沈するかもしれない。電、わかるか?」
そう言うと電は涙眼でハッキリと俺の目をみて言った。
「……沈むのは許さないのです」
「…わかった、電達も沈むなよ!」
くそぅ…涙眼でそんな事言うから抱き締めそうになるだろ…
…さて、砲弾を迎撃なんて言ったけど主砲とCIWSじゃ怪しいな……
取り敢えずやってみるか。
あ、どうやって囮になろう…取り敢えず挑発しながら撃つか。
「主砲、撃ちぃ方ぁ始めぇ!」
相変わらずル級は1番後ろの位置にいるので無視してまず先頭のチ級に1発、小破させたとこで挑発。
「やーいやーい、お前の母ちゃん酢昆布!」
…どうしよう、とっさに酢昆布しか思いつかなかった。
あれ、なんか敵が大人しくなった?
「えと…出来ればそのまま大人しくしてくれると嬉しいんだが…」
そう言った時、先頭のチ級が腕で合図したかと思うと、ル級を除く敵艦全てが俺に砲弾やら魚雷やらを発射してきた。
え、そんなに怒ってるのか!?
て言うかヤバっ!これ主砲とCIWSじゃ無理だ!回避運動してても当たりそう!
「金剛!可能な限り急いでくれ!結構ピンチだ!」
《わかりましター!頑張って持ちこたえてくだサイ!》
「わかった!」
ル級を除く深海棲艦達は天龍達をガン無視して俺を包囲しつつあった。完全に俺を最優先で沈める気かよ…まぁアレだけ沈めれば仕方ないか。
ル級は動く気配がないから無視して…チ級とヘ級を注意しとけばいいか…
そう思った時、チ級が一斉射撃をしてきた。
まず主砲で砲弾を撃ち落として…あ、やべ、4発ぐらい撃ち漏らした。
「CIWS!AAWオート!!」
急いで1発目を主砲で撃ち落とし、2、3発目をCIWSで迎撃。
…あ、4発目直撃コースだ。
ドンッ!
「痛っ!?やばっ、沈…んで、たまるかぁ!左舷に注水、右舷排水急げ!」
被弾したが当たりどころが良かったのか辛うじて轟沈じゃなく大破だった。
けど対水上レーダー、ソナーが故障してしまった。しかも速度も落ちて来ている。
まぁ対空レーダーが生きてるだけまだマシか…
「……畜生、初陣で沈むとか勘弁してくれよ…!」
その瞬間更に魚雷を3本肉眼で確認、これをギリギリ回避した所で気付いた。
さっきまで全く動かずにかなり遠くにいたはずのル級がすぐ近くにいた。
チ級に注意を引かせてその隙に接近かよ……たぶんこれ生存は難しいな…
「…なら、少しでも損害を与えてやる!」
そう言って主砲を向けた瞬間。
「ぽい!」
チ級2隻が3発ずつ、ヘ級2隻は2発ずつ魚雷を受けて撃破され、更にはル級の主砲に小さい砲弾が直撃した。
え…電達の魚雷は尽きてるし…金剛達は到着までまだ時間かかる筈だし…一体誰だ?もしかして島風か!?
「ギリギリセーフっぽい!」
「……え、誰!?」
この喋り方って…夕立か…?
「始めまして!夕立よ!詳しい事は後で話すけどあたごちゃんの事は提督さんから聞いてるっぽい!」
「お、おう…」
一体いつの間に建造してたんだ?
「さて…楽しいパーティしましょう?」
そう言って残ったチ級に残っている魚雷を3発ずつ叩き込み撃破した。
なんで駆逐艦なのに重巡と軽巡相手に無双してんのこの人…
「さて…後は戦艦だけっぽい?」
「どうする?俺はもうアスロックと短魚雷しかないぞ?」
「アスロックって確かロケットで近くまで飛ばしてパラシュートで落とす魚雷っぽい?」
「そうだけど?」
「それって自爆させる事は?」
「できるな」
「じゃああのル級の上まで飛ばして落下中に自爆させればアスロックでも攻撃できるっぽい?」
「……天才!」
早速アスロックに諸元を入力、全弾連続発射する。
「アスロックってこんな使い方して良いのか…?まぁ短魚雷があるから潜水艦には対抗できるけど」
「緊急時だから仕方ないっぽい」
そう話している間にアスロックは機銃を上空に向けたル級の真上に到達、パラシュートを開いていた。
あれ?もしかしてル級さん…撃ち落とす気?
「あたごちゃん!対空機銃を壊さないと撃ち落とされるっぽい!」
「大丈夫だ!」
夕立の予想通り対空機銃によって2発のアスロックが空中で爆発、その爆煙が他のアスロックを隠してくれたおかげでル級もアスロックを狙えなくなった。
「なるほど…でもこれじゃ自爆タイミングが分からないっぽい…」
「大丈夫、対空レーダーあるから」
ちょうどアスロックが顔面に来た所で半分自爆、そしてもう半分は着水した瞬間に自爆させた。
運良く真っ二つになるか大破してくれるとありがたいんだが…
「これは…撃破出来ていないっぽい」
「うん、中破よりの小破って所だな」
くそ…もうVLSの中は空だぞ…
「バァニングゥ…ラァァアヴ!!」
「おっそーい!やっとついたー!」
この声は…よかった!間に合ったのか!
「助かった!…あれ?榛名は?」
「ここに来る途中で合流した天龍達と一緒に居マース!」
「わかった」
「所でそこのNewFaceは誰ですカー?」
「始めまして!夕立です!」
「ワタシは英国産まれの金剛デース!ヨロシクオネガイシマース!」
「こちらこそ宜しくっぽい!」
あれ?もしかして金剛達も夕立の事知らなかったのか…?
て事はついさっき建造されたって事か…?
《あたごさん!》
「赤城?どうした」
《食べ…敵を全て撃破したので99式艦爆をそちらに向かわせます!》
「…今食べたって……もしかしてイ級とか食った?」
《……いえ?別に…》
「…フライにするか焼くかして食べただろ?!」
《なっ…私は自分で持ってきたおにぎりを食べただけです!》
「……ならいいけど…深海棲艦を食べるなよ?」
《わかってますよ!あ、もうそろそろ99式艦爆がそちらに到着する頃なので通信切りますね》
「了解〜」
上空を見上げると確かに赤城の攻撃機が到着、急降下爆撃に入っていた。
そしてその姿をみた金剛達も我先にとル級に砲弾やら魚雷やらぶっ放していた。
もうこれリンチじゃん。
「速さなら誰にも負けないよー!敵を倒す速さも!」
「これは英国じゃなくてAmerica式ですケド…How do you like me now? 」
「パーティもそろそろ終わるっぽい!」
全員の砲弾、魚雷、爆弾がル級に延びて行き、その半数以上が命中。一気に大破に追い込んだ。
これなら俺の127mm砲でもダメージ与えられる!
「あたご!Youの出番デース!」
「ここまでくれば単装砲でも戦艦を沈めれるっぽい!」
「わかった!」
金剛達の攻撃が無くなった一瞬の隙をついてル級が回避運動をしながら逃走するが…残念ながら回避運動しても俺の主砲の命中率はほぼ100%なんだよな…
「主砲、連続発射!沈め!」
5発連続で発射、その全ての砲弾がル級に吸い込まれるように命中。爆発と共に轟沈した。
……まさか本当に127mm砲で倒せるとは…向こうが沈む寸前じゃなかったら跳ね返されて終わりだったな。
「さて、帰るか。確か榛名は天龍達と一緒だよな?」
「Yes!全員無事デース!」
「わかった、ありがとう」
《シーホークよりあたご!》
「どうした?」
《ねーねー!きいてきいて!》
「何かあったのか?」
《えっとね、せんすいかんを2せきげきちんさせたらね、はるなにほめられた!》
やめろぉぉお!そんな無邪気な声で〈ほめられた!〉なんて言われたらこっちは平静を保つのに必死で頭が動かなくなるだろ!
「そ…そっか、ちゃんと皆を護ってくれたんだな」
《うん!》
もうやめて…悶え死ぬ……
「ありがとう、じゃあそのまま対潜哨戒をしながら先に皆と一緒に帰ってくれ」
《わかった!》
ふぅ…このまま会話してたら俺轟沈したかも…
「私達も早く帰るのデース!」
「おっそーい!早くー!」
「あ、すまん。んじゃ帰るか」
「Yes!ゆっくり疲れを癒して、その後は皆でTea Timeデース!」
〜佐世保鎮守府〜
「てーとく!」
「ん?妖精さん?何かあったのか?」
「かんたいがすべてかえったよ!みんなぶじ!」
「弾薬はどれぐらい消費した?」
「……えっとね、ちょちくにまわしたしざいがすべてカラになるぐらい」
「……わかった、あたごに入渠が終わり次第部屋に来るように伝えてくれ」
「わかったー!」
「あ、ついでにみらいを呼んで来てくれ。先にあたごに紹介したいからな」
「りょうかーい!!」
金剛の英語の台詞はとある映画のネタですw
次回はみらいと長門の紹介になると思います!