あたごコレクション   作:今瓜リタ

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なんとか滑り込みセーフ…間に合いました
と思ったら投稿ボタン押す前に寝落ちしていました
申し訳ありません!


22話、提案

 

「血圧低下してます!」

「アレスト!心室細動!」

「そんな…提督!!!」

 

なんでこんな事になった…?

 

「電気ショックを使います、離れて!」

「なんで…なんで…!」

「もう一度だ!」

 

戦力差はあったとはいえ、ほぼ全滅させたはず

 

「島風と夕立の容体は!?」

「もう一度!諦めるな!」

「感電するぞ!夕立から離れろ!」

 

それなのに、急に増援が来て、しかもそれは深海棲艦じゃなかった。

どこかで見た覚えのある敵、けど思い出せない。

 

「くそ…入渠ドッグさえ使えれば…!」

「赤城さん…!お願い目を覚まして!」

「クラインフィールド突破されました!401とヒュウガの反応消滅!」

 

なんだあれは、どうしてミサイルを全て撃ち切っても攻撃が通用しないんだ?

それに401…ヒュウガ…?クラインフィールド……どこかで…もう少しで思い出せるのに…

 

「敵ミサイル、及び深海棲艦確認!」

「響ちゃん!そっちは危ないのです!」

「私は…雷や暁、みらいの仇を取るまで戦う。урааааааа!」

 

敵に攻撃が効かない。

だからなんだ、諦めて…たまるか!

 

「あたごちゃん上!!赤いミサイルなのです!!」

 

自分の身体の一部が、艤装が、ミサイルの弾着部分を中心に形成された黒い塊に飲み込まれる。

そして次の瞬間、黒い塊に飲み込まれていた右半身が消えた。

 

「……っ、あああああああああああああ!!!!!!」

 

 

 

 

〜医務室〜

ん……

 

おい……あ……ち……!

 

あ…ご!

 

 

「あたご!!」

「うあああっ!!!っ?!」ガバッ!

「グボァ!?」ゴッ!

 

敵は…!?俺の右半身は…?

 

「あたごさん!?」

「眼が覚めたっぽい!?」

「みらい…夕立…!?ここは…敵は!?」

 

落ち着け俺、右半身がちゃんとあるし、みらいと夕立が眼の前にいる…てことはさっきのは夢か……?

辺りを見渡すと、どうやら俺は鎮守府にある病室の中に居るみたいだった。

…なんで提督が床に倒れてるんだ?

 

「あ…あ…あたごさぁん!!!」ガバッ

「ふぇっ!?」

 

みらいが突然泣きながら抱きついて来た。

 

「ちょ、みらい?」

「ひぐっ……本当に……ぐすっ…目が覚めて良かったです…!もしっ……このまま目が覚めなかったら私は…!」

「みらいちゃん、あたごちゃんも病人なんだし、今は落ち着いて我慢するっぽい!あたごちゃんはどこか痛いところとかは無いっぽい?」

「うぅ…わかりました…」

 

なんだろう、夕立は間違ったこと言ってないのに違和感を感じる。

 

「痛いところ…額が痛むぐらいで特には無いかな…。てかどうして床で提督が倒れてるんだ?」

「あー…それの痛みはさっきあたごちゃんが急に起き上がった時に提督さんに頭突きした痛みで、倒れてる理由も同じっぽい」

「あー、なるほど…そういうことか」

 

時計を見ると襲撃があった日の2日後の昼の13時だった。

あれから24時間以上も寝てたんだな…

 

「いってぇ……起きるなら起きると言ってくれ…」

 

提督が鼻と後頭部をさすりながら起き上がってきた。

 

「あはは……悪い悪い。えっと…今みんなとか俺とかどういう状況なんだ?」

「そうだな…今、お前は榛名とヒュウガが救出して工廠で治療、んでさっきまで苦しそうにうなされていたから心配して来たら意識が回復して今に至る。みんなは深海棲艦の撃退と鎮守府近海の制海権の奪還のために朝まで交代でずっと働いてたから今は必要最低限の人員を残して全員ぐっすりお休み中だ」

「え…あの中で日向を建造したのか!?それにしても戦艦1隻が加わったとはいえ、よくあの戦力差で勝てたな」

「あー。たぶんヒュウガってお前が思ってるのとは違うと思うぞ?あと加わったのは2隻と1機かな」

「てことは…航空戦艦ってことか?あともう1隻と1機ってなんだ?」

「それも違うなー、説明するとだな…」

「秋津提督、あとはアタシから説明するわ」

「なんだ、来てたのか」

「え、誰?」

 

突然ノックもせずに部屋に女性が2人入ってきた。

 

「どうもー、航空戦艦でーっす……って違うわ!私は霧の大戦艦ヒュウガ。以後、お見知り置きを」

「私は霧の潜水艦伊401、イオナ。よろしく」

 

霧……なんか、この世界に来る前で聞いた覚えがあるような……え、霧!?

もしかして、あの霧か!?

 

「ええと…よろしく。もしかして…霧の大戦艦ってクラインフィールドとか…使えたりする?」

「あら、よく知ってるじゃない!ちなみにイオナ姉様も使えるし、奇襲してきたナガラ型も含め霧の艦隊は全員使えるわよ」

 

……なるほどな、うん、この2人のおかげで今回の襲撃の大体の事情は予想ついた。

 

「あともう1機ってのはコレね。これは詳しくは提督から後で聞いた方が早いんじゃないの?」

 

そう言いながら立体映像を展開、そこには見たことない戦闘機の映像があった。

 

「これは…初めて見るな」

「FFR31-MRっていう戦闘偵察機らしいわ。人間の技術の他にそこのチビっこいのの技術も使われてるわ。一通り解析したけど人間にしてはかなり凄い代物よ?搭載してるAIもそうだけど戦闘力も桁違い。各国の最新鋭戦闘機なんか足元にも及ばないんじゃない?」

「妖精さんの技術が使われた人間サイズの強力な航空機……ホントか提督?」

「嘘じゃないぞ。まぁそこは俺があとで説明しよう」

「わかった」

「さて…!本題に入るわよ」

 

そう言いながらヒュウガは立体映像の中にもう一つ、動画ファイルを開いた。

 

「今回の襲撃だけど…襲ってきたのは1つの勢力だけじゃないの」

「霧と深海棲艦がタッグを組んで襲ってきた……ってところか?」

「そこまで予想ついてるなら話は早いわ。説明するのも面倒だしこれを観て頂戴」

 

そう言ってヒュウガが動画を再生した。

 

ちょうど俺たちが定時報告を入れる少し前、佐世保基地近海に旧大日本帝国海軍の長良に酷似した艦が出現。

その艦艇はまず停泊中のはるさめに砲撃、さらにその他の護衛艦に向けて多数のミサイルを発射。

そこでスクランブルの任務についていた人間の海軍航空隊や、艦娘側の基地航空隊及び鳳翔の艦載機が発艦、更に即動についていた艦娘である比叡、霧島、龍田、暁、電が出撃準備に入る。

続いて最初の攻撃を免れた護衛艦こんごう他、数隻が反撃を開始、だが全ての攻撃が通らずに逆に戦闘不能にまで追い込まれ、更に離陸した航空機も全機が撃墜された。

そして出撃準備に入っていた艦娘が出撃する頃には敵艦は進路を変更し失探。

それと同時に大量の深海棲艦が出現、陸上施設への艦砲射撃及び海上戦力への攻撃を開始。

圧倒的な戦力差を前に比叡を始めとする艦娘は次々に損傷。更に上陸まで許してしまう。

そこで出撃準備を整えていた金剛、榛名、天龍、雷、響が参戦、更にメンタルモデルであるイオナ、ヒュウガがクラインフィールドを工廠の周囲に展開したところで、動画が終わった。

 

「これで大体わかったかしら?あとはアンタが気を失ってる間のことだけど、みらいがこの球体に閉じ込められて鹵獲されかけたのと、さっき言った戦闘偵察機が活躍したぐらいね」

 

立体映像の中に更にその球体と無人であり得ない機動をしながら戦っている戦闘偵察機の映像が追加される。

 

「なるほど…、同時というか、霧によってガリガリ戦力を削られたところを突かれた訳か」

「まぁ大方そうね」

 

上陸された理由は分かったので、もう一つの疑問をぶつける。

 

「あと1つ聞きたいんだが…2人はどういう事情でこの鎮守府に来たんだ?」

「アンタにはまだ説明してなかったっけ?私とイオナ姉様は、悪く言えば霧の離反者、裏切り者なの。色々あって攻撃から逃げてきたわけ。

港に停泊してる401がボロボロなのも、私が艦体を持たないのもそれが理由よ」

「なるほどな…」

 

あの時無線機で比叡が言ってたのはこの2人のことだったのか。

 

「で、これまでが説明兼反省会。目覚めたばかりでいきなりで悪いけどここからは反撃の作戦会になるわよ」

「容赦ねえな…」

「あと悪いけど2人は少し席を外してちょうだい。また話が終わったら呼ぶわ」

「わかったっぽい。ホラ、みらいちゃんいつまでもあたごちゃんの手を握ってないで、早く行くっぽい!」

「うう……わかりました」

 

2人が退出するとまず最初に提督が話出した

 

「まずお前とみらいが完治し、充分な休養を取り次第、さっきヒュウガが見せた航空機に乗ってもらう」

「……え?」

「あくまで試験的な話だから気楽に聞いてくれ。

あの機体を作ったのは、全容が明らかにされていない深海棲艦の情報を集め、どんな状況でも情報を持ち帰る事が可能、という条件のもと開発した機体だ」

「ほうほう」

「で、次はその機体を対霧の作戦に使おうと思う」

「……うん?」

「で、なんでそんな機体になんで艦娘であるあたごに搭乗してもらうのかと言うと、妖精さんいわく深海棲艦に対抗するには艦娘が必要不可欠、らしい。

だから取り敢えずパイロットは艦娘の中から選出する事になった。あと更に航空機の技術レベルの問題からなるべく艦艇として建造された日付が新しい方が馴染みやすいという話になったのでパイロットはあたごとみらいの2人に絞られたんだ」

「え…あの」

「あ、こいつはもし洋上でベイルアウトしても自力で戦闘、帰還、生存できるように艤装を搭載できるスペースを増やしておいたから安心してくれ」

「ちょ」

「あとこいつにはAIも積んであるから万が一の時はAIが最適な動きをしてくれるし、なんなら自立飛行させて艦隊の援護に回す事もできるし、その機能を利用すれば目的地まで飛んで行って脱出、そのまま援護を受けながら戦うことだってできるぞ」

「まてまてまて!待ってくれ、これ試験的な話…なんだよな?」

「本来はちゃんと試験を繰り返したかったんだが、今回は時間がないんだ。少しでも状況を有利にするためにも、悪いけどあれを使ってくれ」

「……まぁ、そういうことなら…」

 

まぁ、この鎮守府の惨状をみたら試作機でも使わないと勝つのは難しそうだしな…

 

「ありがとう、頼んだ。あと、これはヒュウガの提案なんだが」

「ん?」

「待って、これは私から言うわ」

 

ヒュウガが神妙な顔で話しかけてきた。

なんだ?もっもヤバイのがあるのか?

 

「実は霧の艦隊はその戦闘力のほとんどが、ユニオンコアという核の演算処理能力によって決まっての」

「うん」

「そして今の戦力じゃ他の霧に対抗するには正直、かなりの危険を伴うわ」

「うん」

「アンタとそこのみらいは建造された年で考えても今、艦娘の中で技術レベル的に1番私達霧に近い位置にいる。しかもアンタはそこの小っちゃいのの改良もあってみらいより2歩も3歩も進んだ位置にいるみたいね」

「どうしたんだ?勿体ぶらずに言ってくれ」

「……ふぅ。そうね、単刀直入に言うわ」

 

少し深いため息をついて腕を組むヒュウガ。

 

「アンタ霧と艦娘のハーフになってみない?」




次回は早くて来週の土日である16、17日か。遅くても再来週の日曜日までには更新する予定です!

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