ニールと一夏が話している。2人が一番落ち着ける時間だ。だがそれは、唐突に終わった。
「ちょっといいか?」
「……箒?」
視線の先には、気の強そうな女子生徒が居た。たしか、篠ノ之箒と言ったな。一夏に用があるみたいだが少しぐらい話しかけてみるか。
「篠ノ之箒さんだったな。どうしたんだ?」
「箒でいい。すまないが一夏を借りていいか?」
一夏の方を見る。申し訳無さそうな表情をし、両手を合わせている。ジャパニーズゴメンナサイのポーズだ。
「別に構わねえぜ。」
「ありがとう。」
何か大事な話があるのだろう。首を突っ込むのはヤボだ。一夏は箒に文字通り引きづられながら教室から消えた。
「さて…と…。」
この状況はマズイ。なぜなら教室にはニールだけ、しかも暇そうにしている。つまり…
「ねえねえニール君!好きな女の子のタイプとかある?」
「ニール君って外国人だよね?どこ出身?」
「ニール君ってノーマル?」
「ちょっと誰よ変な質問したの!」
そう、質問攻めにあう。また聞いてはいけない単語が出てきた。ニールはそういうのはとぼけつつ、普通の質問には答えた。
「ただいまーってニール!?どうした!?誰にやられた!?」
戻ってきた一夏が見たものは死んだ魚ような目をし、机に倒れこんでいるニールの姿だった?
「いいよな一夏は…、ガールフレンドと平和な休み時間を過ごしたんなもんな…。俺なんか猛獣に囲まれた気分だったよ…。」
おそらく女子生徒達の質問攻めにあったのだろう。合掌。
「やばい…やばいぞ…」
一夏の呟きが聞こえる。
「どうしたんだ?そんな鬼気迫る顔して。」
「ニール…、助けてくれ…全然わかんねえ…。」
「全然ってお前、今やってるやつ全部か?」
「予習してなかった…。」
「はぁ…。入学前に教科書貰っただろ?どうした?」
「敢えて言おう!全て捨てたと!」
「そんな顔で言われても…。」
「織斑君、分からないとこはあったらなんでも聞いてくださいね?」
一夏が深刻な顔をしているのが見えたのか、真耶が助けの手を差し伸べる。一夏は彼女が天使に思えた。
「はい!先生!ほぼ全て分かりません!おまけに教科書捨てちゃいました!」
「捨てちゃったの…?」
「はい!」
一夏元気に答える。全く、教科書捨てたのにどうしてそんな元気なんだよ。ニールは呆れるを通り越して少し笑っていた。
「じゃあ、後で再発行しましょうか。放課後、職員室まで来てください。それまではニール君に見せてもらってください。構いませんか?ニール君。」
「大丈夫ですよ。」
「ありがとうございます。では、続きをしましょう。」
授業が再開した。生徒達は真耶の説明を熱心に聞いている。
「ほら一夏、教科書貸してやるよ。」
「見なくていいのか?」
「ここら辺は全部覚えてある。」
「全部って…。お前天才かよ。」
「一週間も時間があったんだ。毎日読んでれば自然に頭に入ってくるよ。あとは、お前のやる気しだいだ。」
一夏は感心しつつ、ありがたく教科書を借りた。
「ちょっとよろしくて?」
「え?」
「なんだ?」
くつろいでる2人に声がかかった。声のした方を見ると、長く、カールしている金色の髪の少女がいた。頭には青いヘッドドレス、綺麗な肌をから育ちがいいことがうかがえる。
「まあ、あなた達なんなんですの?その返事は。わたくしに話しかけられる事が名誉名誉な事なのですからもっと相応しい態度を取りなさい。」
やれやれ、めんどくさそうなのが来たな。2人はそう思った。話し方からして男を見下している人間の1人だろう。
「あんた……誰?」
近くにいた全員がズッコケそうになった。
「お前、ちゃんと自己紹介聞いとけよ。セシリア・オルコット。イギリスの代表候補生だ。」
ニールが呆れながら言った。
「そちらの方はちゃんとわたくしを知っていたのですね。まあ常識ですし褒める必要も無いでしょう。」
上から目線の物言いはただ単に威張っているわけでは無いらしい。
(代表候補生か、実力はあるみたいだな)
ニールがそう思っていた時、一夏が声をあげた。
「質問いいか?」
「下々の人間の質問に答えるのも貴族の務め。なんでも質問なさい。」
「代表候補生ってなんだ?」
またしても全員がズッコケそうになった。
「代表候補生を知らないですって!?」
セシリアは怒声をあげた。
「お前なぁ…。字面で分かるだろ。国家の名を背負っているISパイロット。いわゆるエリートのことだよ。」
「そう!エリートなのですわ!」
エリートと言われて嬉しかったか、胸を張り笑みを浮かべている。
「そのエリートさんが何の用だ?」
一夏が疑問を口にする。
「あなた達、ISに関する基礎知識が乏しいようですね。そこで入試で唯一教師を倒したエリートのわたくしが教えてさいあげようと思いまして。光栄ですわねあなた達、このわたくし直々に教えを乞うことが出来るのですから。」
「いや、俺は間に合ってるしいいよ、困ったらお願いする。」
ニールが丁寧に断る。すると一夏が
「入試ってあれか?ISで闘うやつか?」
「それ以外に何があるのです?」
「それなら俺も教師の人倒したぞ」
「は?。わたくしだけのはずですが…」
プライドを引き裂かれたのだろう。一気に暗い表情になる。
「そこのあなたは?」
「俺はそもそも試験を受けてない。」
「女子だけっオチだろ。」
そこへ一夏の追い打ち。これはマズイ。
「あ、あ、あなたも教官を倒したというのですの!?」
「おう。まあ落ち着けって。」
「落ちつけるわけーーー。」
チャイムが鳴った。
「また後で来ますわ。」
そう言い残し、セシリアは自分の席に戻った。
「一夏、本当に教師を倒したのか?」
「向こうが壁に突っ込んで自爆したから正確には違うな。」
「ははは…」
ニールは苦笑いするしかなかった。
千冬が入ってきた。
「授業を始める…の前に再来週行われるクラス対抗戦の代表を決める。自薦、他薦はどうでもいい。誰かいるか?」
マズイぞこれは…ニールがそう思った瞬間だった。
「はい!一夏君を推薦します!」
「私も!」
「お、俺!?」
「私はニール君!」
「私もニール君を!」
「おいおいまじかよ…」
「お待ちください!!」
(この声は…セシリアか。これはチャンスだな)
「納得がいきません!そのような選出は認められません!やはりここは代表候補生の私が!」
セシリアが立ち上がりながら叫んだ。
「そもそも男というだけでクラス代表に推薦するなど…!納得出来ません!そんな物を見るために私はこの国に来たわけでわありません!そもそも…後進国の日本で暮らすのが屈辱なのです!それに…」
全く関係ない日本批判が始まった。ニールは日本出身ではないが…
「俺は昔イギリスに行った事あるけど大したところじゃなかったぜ。」
口が滑った。また面倒な事になる。
「だいたいイギリスだって大したお国自慢ないだろ!何年料理のマズイ国トップとれば気が済むんだよ!」
「なっ…!あなた達、わたくしの祖国を侮辱する気ですか!?」
「先にに喧嘩売ってきたのはあんただろ、セシリア。」
「そうだぜ、オルコット。」
すかさずニールと一夏が反撃する。
「もう我慢の限界ですわ!2人共!」
「いいぜ、勝負だオルコット!」
「おい待て、俺もか!?」
「当たり前ですわ!」
千冬が口を開いた。
「落ち着け3人共。クラス代表はその決闘で決めよう。ニールも構わないな?」
「……分かりました。」
「勝負は3日後の放課後、第1アリーナで行う。織斑はISの基礎知識を頭に叩き込んでおけ。2人は専用機の整備を。」
「分かりました。」
「分かりましたわ。」
「りょーかい。」
「はぁ…面倒くさいことになった…。」
ニールがぼやく。
「絶対に勝とうぜ!ニール!」
対して一夏はやる気満々だ。
「まあやるしかないか。」
「ところでニール、お前って自分の専用機持ってんの?」
「言ってなかったけか?今は待機状態だ。」
「初耳だぞ。オルコットも専用機持ってるらしいし…。あれ、俺は?」
「お前は世界で最初にISを扱える男として世間に認識されているわけだしどっかの研究機関が一夏の専用機作ってんじゃね?」
「はたして3日後に来るのか…。」
「来なかったら学校のISで闘うことになるだろうな。」
「なんかそうなりそうだな…。そういや、ニールは専用機どうやって手に入れたんだ?」
「俺の両親がIS研究者でね、作ってもらったんだ。」
「へぇー。」
そう、ニールのIS、デュナメスは表向きにはDr.イオリアが開発した第3世代とされている。これもすべて千冬が考えた事だ。少々無理があるがしばらくは問題ないだろう。
「一夏、お前の部屋は?」
「ここだ。」
一夏の指差す先には、自分の部屋があった。
「おお一緒だ!よろしくな一夏。」
「ニールと一緒か!まあそんな気はしてたんだけどな。こちらこそよろしく。あのさ、同じ部屋のよしみで勉強教えてくれねえか?」
「いいぜ。こっちも危なっかしくて見てられねえ。俺は専用機のメンテナンスは終わってるしな。」
「助かったニール!お前は命の恩人だ!」
「大げさだなぁ。」
2人は笑いながら部屋に入っていった。次の日、疲れ切った顔の一夏が朝目撃されたという。ニールの教育はスパルタ教育だった。そのおかげで基礎知識のほとんどを2日で理解できた一夏は幸せ者だろう。
〜決闘当日〜
放課後、アリーナにはたくさんの生徒が集まった。イギリスの代表候補生と期待の新人、男が闘うのだから見ものだろう。
〜Aピット〜
箒と一夏がニールを見守っている。試合開始まではまだ時間がある。
「ようお二人さん。これが俺のIS、「デュナメス」だ」
そう言うと、ニールはISを展開した。緑色のシールドに身を包んだ機体が現れた。
「ニールの専用機…すげえカッコいいじゃん!」
一夏が褒める
「お、分かるかい?一夏はいいセンスしてるねぇ。」
自分の機体を褒められてニールは嬉しそうだ。
「全身装甲(フルスキン)型か。珍しいな。」
箒が冷静に期待を分析する。
「ああ、特注品だからな。おっともう時間か。」
ニールはISを纏った。ニールの顔は隠れて見えない。
“Please Choose The Drive Mord”
War Mode
Fight Mode
(なんだこりゃあ!?)
突如画面現れた謎の選択肢。それに戸惑っているとデュナメスからデータが送られてきた。
(War ModeとはGN粒子の全能力を使用するモードです。
Figft ModeとはGN粒子の通信妨害機能を使用しないモードです。)
(なるほどなぁ…。ここで通信妨害機能を使ったら織斑先生からの事情聴取は避けられねえだろうな。ここはFight Modeで行くか。にしても太陽炉にこんな機能あったか?)
(モード設定完了。生体反応確認。GNシステムリポーズ解除。プライオリティをロックオン・ストラトスへ。GN粒子散布開始。)
「よし!準備完了!」
「なあニール、この光は?お前の機体から発生しているが…」
箒が疑問に思った事を口にした。
「すぐに分かるよ。」
そう言い、ニールはカタパルトに足を入れた。真耶からの通信が入る。
「射出タイミングをニール君に譲渡します。」
「オーライ。」
(懐かしいぜこの感覚。あいつらは計画を上手く遂行できているだろうか。)
仲間のことを思い出す。しかし、今は関係ないのですぐに意識の奥へとしまった。
「しゃ!行くか!」
「勝てよ!ニール!」
「任せな!」
2人にそう言い残した。
「デュナメス、ニール・ディランディ、目標を狙い撃つ!」
そう言いながら、彼は空へと飛び立った。
次回は戦闘描写ですね。ものすごい書きにくい…。上手く臨場感が伝わるように頑張ります。