機動戦士ガンダムIS00 成層圏の名を持つ男   作:リーマン

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今回は主に学校生活が始まる前のニールを書いています。


学校生活、再び

「ったく、なんでこんなことに…」

 

ニールは部屋でぼやいてやいた。何故なら、IS学園に入学するとは思ってもいなかったからだ。話は数時間前にさかのぼる。

 

 

 

〜数時間前〜

「IS学園に…俺がか!?」

ニールは大声をあげた。何故なら女子校と言っても差し支えのない学校に男1人、ただISを使えるという理由だけで入学する事になったからだ。誰でも驚くだろう。

 

「そう大声を出すな。世界でISを使える2人目の男なんだ。入学する理由には何も問題はない。」

 

「でもよ、俺だけってのも…」

 

「心配するな、私の弟もこの学校に入学する予定だ。弟は私のクラスに入る。お前も同じクラスにしてやろう。そうすればお前の言う“俺だけ”と言うのも解決される。」

 

「そうかもしれないけどよ…」

 

「戸籍がないお前が他に行くあてがあるのか?」

 

「そうだったな…。俺はこの世界に存在しないはずの人間だからな…。」

 

「行くあてもなく世界を旅するよりはここで学ぶ方が得策だろう。それに、この学園に在籍中は生徒はありとあらゆる、国家、団体、組織に属さず、原則として介入も認められない。お前が世界を旅するなら、いずれはお前の存在は世間に知られるだろう。命をねらわれるかもしれん。そうはなりたくないだろう?」

 

千冬の言う事は正しかった。ISの登場で女尊男卑となっている世の中でISを使える男性が居るとなれば危険分子と認識されるだろう。ISを使わなければいい話なのだが、使わなければならない時が来るかもしれない。さらに行くあても無いとなればこの学園に入学するのが最善策だろう。高校生活は経験しているのだから困る事は無いはずだ。ニールが返事をしようとすると、ドアのあたりからいつの間にか消えていた真耶の声がした。

 

「ニールさーん、教科書を持ってきました。」

 

数人を引き連れて真耶が帰ってきた。彼女らの手には分厚い本が何冊も持たれている。

 

「なんだあれ?」

 

「見て分からないか?教科書だ。」

 

「あれが…か?」

 

ニールは声を失った。なぜなら、真耶達に抱えられている本は教科書と言うより百科事典に近い分厚さだからだ。

 

「ニール、入学式までは1週間ある。あの教科書に書かれてある内容を全部覚えろ。」

 

「おいおい冗談はよしてくれよ。あれを1週間で覚えろだなんて…。」

 

「戸籍と経歴の偽造や入学手続きは私の方でしておく。時間はたくさんある。」

 

「ニールさん、部屋に案内しますね、ついてきてください。」

 

「ああ、よろしく頼むミス・マヤ…。」

 

ニールの思考は半分停止していた。そのため、言葉を返すのが精一杯だった。

 

「こちらがニールさんの部屋です。ルームメイトはまだ決まってませんが多分織斑先生の弟さんになると思います。」

 

「わざわざどうも。ああ、あとは俺が運ぶよ。他の皆さんもありがとう。」

 

「ありがとうございます。これ重くって…。」

 

「ハハハ、だろうな」

 

ニールはそう言い、真耶達から教科書を受け取り、テーブルの上に置いた。

 

「お風呂は使えませんが部屋にシャワーが備え付けてあります。食事は食堂でお願いしますね。制服などは後日お届けします。それとこれ、ニールさんの所持品です。拳銃は没収だそうです。」

 

だろうなと思いつつ、ニールはパイロットスーツとヘルメット、を受け取った。

 

「ブレスレットは後日お返しします。機体の詳しいデータを見なきゃいけないので。それでは、ごゆっくり。」

 

「ああ分かった、ありがとう。」

 

真耶達が部屋から出て行くと、ニールはため息をついた。

 

〜回想終了〜

 

「はあ…終わらねえ…。」

 

ニールは小言を言いつつ、机に置かれた百科事典(教科書)を読んでいた。学生時代は成績優秀だったニールだが、さすがにこの量はこたえたみたいだ。

 

 

 

 

「やっと終わったぜ、いやー疲れたー。」

 

ニールがこの世界に来てから6日目、彼は何とか教科書の内容の覚えることができた。

 

「入学式は明日か、今日はゆっくり寝るか。」

 

そう思いベットに入ろうとしたその時、ドアがノックされた。

 

「ニール、入るぞ」

 

千冬の声だ。

 

「いいぜ。」

 

ニールは軽く返事をする。それを聞き、千冬が入ってきた。

 

「どうしたんだミス・チフユ?」

 

「ここは学校だ、織斑先生と呼べ。制服を持ってきた。戸籍と経歴のの偽造も完了した。目を通してくれ。」

 

「了解。すまねえなミス…織斑先生。」

 

ニールはそう言い、制服と書類を受け取った。

 

「なになに…帰化した設定なのね。経歴はと、幼い頃はアイルランドのごく普通の家庭に生まれたが、つい最近ISを使えることが判明し急遽IS学園への編入が決まった…と。完璧だな。てか文章見た限り俺の事が世間にバレているみたいになってるけどOKなの?」

 

「敬語を使え。お前の存在はつい先ほど世間に公表した。私の弟の件で世界中が男でもISを使えるかという検証がされている。そこに乗っかれば大丈夫だ。お前の正体がバレることは無いだろう。」

 

「なるほどねぇ…。わざわざありがとうございます。織斑先生。」

 

「気にするな。明日は入学式だ、準備をしておけよ。体育館に行けばいい。終わったら職員室に来てくれ。」

 

「分かりました。ところで俺のブレスレットは?」

 

「明日返す。」

 

「了解しました。」

 

千冬はニールの返事を聞くと、部屋から出て行った。それを見ると、ニールは眠りについた。

 

「もう朝か、よく寝たなあ。しかし、緊張するな。入学式か、何年ぶりかな。」

 

ニールはそう呟きつつ支度をし、体育館に向かった。

 

(まあ人間関係もなんとかなるだろう)

 

この時のニールの考えは甘かった。

 

体育館に入るなり、一斉に視線がニールに注がれた。ニールは驚いたが、気にせずに中に進んでいく。

 

(まあそりゃそうだろうな。男が入ってくるんだ。注目しないわけがない。しかし、ジロジロ見るのはやめてほしいもんだな。)

 

そう思っていると、背後から話しかけられた。

 

「なあ、お前男だよな?」

 

振り向くと、自分と同じぐらいの背の高さの男が居た。噂のミス・チフユの弟か。

 

「ああそうだ、見ての通り普通の男だ。織斑一夏。」

 

「よかったぁー。男は俺だけだと思っていたよ。あ、やっぱり俺の事は知ってるか。」

 

「もちろんだ。世間じゃお前の噂でもちきりだからな。俺はニール・ディランディ。よろしくな。」

 

「こちらこそ。織斑一夏だ。」

 

「たく、人様の事を珍しい動物のようにジロジロ見やがって。」

 

ニールが小声で愚痴る。

 

「まったくだよ。ISを使える男が珍しいのは分かるけどここまで見なくてもねぇ。」

 

一夏もぼやく。2人は同じことを考えていたみたいだ。その後2人は、周囲の視線を浴びながら入学式を乗り切った。

 

「ニール、教室に行こうぜ。」

 

「悪い、先に行っといてくれ、職員室に用があるんだ。」

 

「分かった。じゃあまた後でな。」

 

「おう、また後で。」

 

そういい、2人は別れた。一夏は教室に、ニールは職員室に向かった。

 

「失礼します、織斑先生はいらっしゃいますか?」

 

「ニールか。じゃあ早速教室に行こうか。そら、ブレスレットだ。」

 

そう言いながら、千冬は職員室にから出てきた。

 

「?なんで俺を職員室に呼んだんですか?あ、ありがとうございます。」

 

「お前は急遽この学校に編入になったからな、最初から教室に居るのもおかしいだろう。前で自己紹介をしてもらう。」

 

ニールは嫌そうな顔をした。困った、話すことが無い。

 

「着いたぞ。私が呼ぶまで待機しておけ。」

 

「分かりました。」

 

千冬は教室の中に入っていった。

 

「きゃあああアァァァ‼︎‼︎」教室からものすごい大きな歓声が聞こえてきた。ニールはとっさに耳を塞ぐ。こんな爆音を聞いたのは初めてだ。歓声がやむと、ニールは耳を澄まし教室の様子を探る。

 

「すまないな山田先生、挨拶を押し付けて。あとは私がやろう。」

 

「ハイ。お願いします。」

 

どうやら中に山田先生が居たようだ。

 

「千冬様!本物の千冬様よ!」

「ずっとあなた様のファンでした!」

 

(そうか、織斑先生は有名なIS乗りだったな)

 

ニールは教科書に書いてあったことを思い出す。教室はまだ騒がしい。

 

「静かにしろ馬鹿共が。」

 

千冬の一声で静かになった。

 

「この1年1組を担当する織斑だ。これからよろしくな。さて、編入生が1人いる。紹介しよう。入ってこい。」

 

その声を聞き、ニールはそっと扉を開けた。」

 

「えーと…、IS適性がある事が判明し急遽この学園に編入になったニール・ディランディです。よろしくお願いします。」

 

ニールが挨拶を終えるとまた歓声の嵐なおこった。

 

「男!男よ!」

「しかも超イケメン!」

「私はこの世で一番の幸せ者だ…」

「妄想が捗る…。」

 

何か聞いてはいけないものを聞いた気がしたニールであった。

 

「お前の席は一番後ろ…ほら織斑の隣だ」

 

「分かりました。」

 

ニールが席に着く。男2人が並んで座っている。注目を浴びたのは言うまでもない。2人は周りの視線を何とか意識しまいと努力しながら、授業を乗り切った。休み時間に入る。

 

「よおニール、同じクラスでよかったぜー。この中で男1人は寂しいからな。」

 

「俺もだ。まあ頑張ろうや。」

 

2人は挨拶を交わした。当然注目の的となったままだった。

 

 

 

 




お読みくださりありがとうございます。今回は一気に2話投稿しました。次回、話が少しだけ動くかも?よろしければそちらもご覧ください。

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