魔法少女まどか☆マギカ -女神の決断   作:てにー

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長らくおまたせしました。
ちょっと忙しくて更新できずにいたんですが、やっと
余裕が出てきたので更新再開します。

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この話は杏子ちゃん達の過去編


第27話(24話杏子side)「アタシ、佐倉杏子-前編-」

 

 

 

 

「なっ!?・・・おい、待てっ!!翔一!!」

 

そう言っても、振り返らずに走り去ってしまう。

 

・・・会ったのは、あれ時以来、だったのに・・・。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―・・・初めて会ったのは・・・―

 

 

「紹介するわね、翔一。この子が・・・」

「うっ・・・///」

「あら・・・?恥ずかしがっちゃった・・・」

「へぇ・・・。誰かさんと一緒で恥ずかしがり_」

 

ブンッ!

 

「うわらばっ!?」

「もう!何言ってるのよ!折角の紹介が台無しじゃない!///」

「そ、それは・・・マミが_」

「・・・」ギリッ

 

「ひぃい!?すいませんでした!土下座しますなんでもします、だから許してっ!!」

 

「ぷっ・・・・ふふ」

「あら?」

 

「変な奴だな・・・オマエ」

 

「いきなり変な奴呼ばわりされたっ!?」

「えぇ、佐倉さん。そうなの・・・。・・・変な奴、なのよ。翔一はね・・・」

「マミにまで言われた!?」

「あら、自覚なかったの?」

 

「ないです」キリッ

「・・・はぁ。全く・・・」

 

 

 

 

「・・・アタシ、佐倉杏子」

 

「俺は翔一、戸原翔一。よろしくな」

 

「お、おう・・・///」

・・・これが、出会いだった。

 

本当、最初っから変な奴だ。

 

 

 

____

__

_

 

・・・その日の夜。

 

 

「我ながら頑張った!! 凄く頑張った!! マミ、褒めてくれっ!」キリッ

「はいはい、翔一は頑張りました・・・ご馳走一杯作ったわね」

 

「・・・・・・・・・・・・・アタシも・・・・・・・・いや、」

「・・・ん、何言ってるんだ?」

「あっ・・・・ごめん。アタシなんかが_」

 

「これ、全部お前のために作ったんだぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・えっ?」

 

 

「だーかーらー、マミが言ってたろ? 今日はお前を歓迎するって」

「えっ・・・・いや、でも・・・!!」

「お前のために作ったんだから、お前が食べなきゃ意味ないだろ」

「でも・・・アタシは・・・その・・・・・・・」

「・・・気持ちは分かるさ。俺も、マミと会った時はそんな感じだったから」

「・・・・・・・」

「・・・まっ、2時間もすると、すぐに仲良くなったけどなっ!!」

「・・・・」

「・・・とにかく、食べてみろってっ!! マズかったら俺の事殴って良いからっ!!」

「えっ・・・殴れるわけないじゃん・・・」

「だったら食べてみろって!!・・・なっ?」

「・・・・・・・」チラッ

「・・・佐倉さん。翔一はさっきも言った通り、変な人だから。・・・変な人だけど、

 人一倍優しいの。・・・・・・作った翔一のためにも、食べてあげてくれないかしら・・・?」

 

「・・・・・・そ、それなら・・・・・・・仕方ない・・・・・仕方、なく・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

「・・・・・・」パクッ

 

「・・・・・・!!!」

 

「おっ!?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・美味い・・・・。暖かい・・・・」ジワッ

 

「あれっ!?」 「佐倉さん!?」

「美味しい・・・! ・・・・・美味しい・・・・!!!」ポロ...ポロ...

「佐倉さん・・・・・」

「暖かいな・・・!! ・・・・・・飯って・・・食うと・・・こんなに暖かくなるんだっけ・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なら・・・さ」

 

「・・・・・?」ポロ...ポロ...

 

「お前がお腹一杯になるまで、遠慮なく食べてくれっ!・・・ほら、俺の分もやるから!!」

 

「!!!・・・・・・・・・・・・」

 

・・・この時は、本当に・・・・心から嬉しかった。

 

心の何処かで、優しさが怖かった。

 

自分のかけた優しさのせいで、あんな事になってしまった。

・・・あれからは、一人で生きると決めていた。

マミと協力するのは、ただ単に魔女を効率よく狩るための手段としか思わなかった。

・・・マミが会わせたい人が居るって言って、渋々ついて来たのに。

・・・イザ会うとなると、少し恥ずかしくなったけど。

 

・・・今、アタシに向けられているのは、間違いなく、何の裏のない、優しさで。

本当の意味での優しさで。

 

・・・一人で生きると決めた。・・・この飯だって、本当に仕方なく食べたつもりなのに。

それなのに、こんな事が起きるなんて、理不尽だ。・・・心の準備をさせてほしい。

 

・・・じゃないと・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ・・・!・・・・うぅ・・・!!・・・・ひぐっ・・・うぇぇ・・・!!」

 

 

・・・泣いちゃうじゃんか。

 

 

 

 

 

 

 

 

___

__

_

 

 

 

「・・・・・・・・・落ち着いた?」

 

「・・・うん」

 

「・・・・・・・その・・・」

 

「・・・?」

 

「・・・・・・ごめんっ!! 口では美味しいって言って気遣ってくれたけど、

 やっぱりマズかったよな!! ごめん!! 本当にごめん・・・・!! 土下座する・・・!」

 

「・・・ぷっ・・・ふふ・・・・・・・・違げーよ」

 

「・・・えっ、違うの?」

 

「違げーよ。・・・・・やっぱり変な奴だよ、お前」

 

「また宣言されたっ!?」

 

「・・・変な奴だから・・・・・・教えてあげねーよ」

 

「えぇっ!? 何それっ!? 俺が変な奴じゃなかったら教えてくれたのっ!?」

 

「安心しなさい。翔一が変な奴じゃない、何て事は絶対にないんだから」

 

「衝撃のカミングアウト・・・!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・変な奴だから、付き合ってやるよ。・・・よろしくな・・・・・・・・・・翔一」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・あぁ、よろしく。・・・・・杏子」

 

・・・・・・今思うと、もっとこの優しさに触れたかったんだろう。

この時はまだ裏がこいつには裏があるかも、って疑ってたけど、

それでも・・・。暖かく感じた。例え裏があったとしても、少しの間だけでも、

暖かさに身を投じたかった。・・・一人で生きていくつもりだった。

だから、この時は・・・。ちょっと一休み、って感じで接した・・・つもりだったけど・・・な。

 

・・・それから、段々アタシは・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

・・・だけど、後悔なんてしてない。

翔一と会った事を、後悔した事はない。・・・それどころか、感謝までしてる。

 

・・・本当は心の何処かで、寂しかった。辛かった。・・・それを、何の文句も言わずに

受け止めてくれていたから。不器用なアタシを、マミと一緒に受け入れてくれたから。

 

・・・・本当に、変な奴なんだ。翔一って奴は。

 

マミから聞いた話だと、自分だって家族亡くして辛いはずなのに。

まるで、全然気にしてないみたいに気遣ってくれる。

 

本当は、アタシ自身と、翔一の事を、心の何処かで重ねてたのかも知れない。

だけど・・・。それを気にならないぐらい、優しかったから。

 

 

・・・だから、アタシは、また辛い目や寂しい目にあっても、頑張れるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

―この時は・・・魔女退治で疲れてたんだっけ・・・―

 

「今日も頑張ったわね、佐倉さん。凄く逞しかったわよ?」

「・・・疲れた・・・もし明日もならダルい・・・」

「いやぁ~お疲れ山脈」

 

「おつかれ・・・さん、みゃく?」

 

「・・・」ギリッ

「あぁ。お疲れさん_」

 

ブンッ!

 

「ふっ、甘いっ! 当たなければどうという事はない!!」

「そこっ!」

 

「通常の三倍っ!?」

 

「・・・全く。佐倉さんに変な事を吹き込もうとするのはやめなさい!」

「良いぞ~!マミ~やっちまえ~!」

「えっ!? ダメっ!!リテイクはなし! いやお願い! やめてーっ!!」

 

 

 

\ギャァーーーーー・・・・・・・・・・・...../

 

 

「あははははは・・・・・・・・やっぱり変な、奴・・・」

 

 

 

 

 

 

―この時は、ホントに嬉しかった。居候のアタシでも構わず接してくれたのが。

 翔一が優しい事は知ってたけど、中々言い出せずにいたんだ。・・・疑ってたし。―

 

 

「・・・」パク

「・・・」ジー

「・・・」パク

「・・・」ジィー

「・・・」パクパク

「・・・」ジィーッ

 

「・・・・プリン、いるか?」

 

「えっ!? い、いや・・・いいよ・・・」

「ほれ、ちゃんとお前の分まであるぞ」

 

「えっ・・・」

 

「『えっ』とは何だよ」

「いや・・・なんで・・・アタシの分まで・・・」

「なんでってお前、居候でもなんでも、住んでるんだから、お前の分まで買うだろ普通」

「でも・・・迷惑じゃん。ただでさえ飯食べてる」

「お前なぁ・・・。そりゃ、何もせずゴロゴロしてるだけなら買わないぞ?」

「おぅ・・・?」

「だけどお前はマミの仲間じゃないか!」

「仲間・・・?」

「そう!あの正義の味方のマミの仲間だぞっ!? この見滝原の平和を守ってるのに、

 プリン一個ぐらい普通に食べていいだろ! 少なくとも俺だったら食べるぞ!!」

「仲間・・・か・・・そうだな・・・」

「そう!正義の味方の_」

 

「翔一?」ゴゴゴゴ

 

「ひぃっ!? マ、マママ・・・マミ!?」

「それは人前ではあまり言わないでね、って言ってるわよね?」ゴゴゴ

「あーっ・・・これはね、えぇーと・・・うん!アレなんだよ! アレ~!」

「『アレ』ってなにかしら?」ゴゴゴ

「・・・・・・何分土下座したら許されるでしょうか」

 

「まる一日」プイッ

 

「HAHAHA!! またまたご冗談を_」

「冗談じゃないわよ?」ニコッ

「・・・なん・・・だと・・・!?」

 

 

 

「相変わらず・・・変な奴・・・」クスリ

 

 

 

―・・・・・・必殺技っていうか何ていうか・・・///―

 

 

「むーっ・・・」

「・・・」

「はぁ・・・まだ決まらないのか?・・・」

 

「・・・!・・・名前が・・・決まったわ・・・!」

 

 

 

 

 

「・・・」ゴクリ

 

 

 

 

 

「・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロッソ・ファンタズマ!!」ドヤァ

 

 

 

 

 

「おぉー・・・?」

「・・・えぇーと、ファンタズマは確か・・・日本語だと確か・・・幻?」

「マミの付ける名前はカッコ良いけど、意味が分からない言葉使うから分からねぇな」

「そ、そう? でも・・・カッコ良い名前の方が良いじゃない?」

 

「・・・確かに名前叫んだ方が良いって言ったのは俺だけど、『ティロ・フィナーレ』とかは

 あまりに予想外すぎて笑いを堪えるのに必死_」

 

 

「・・・」ニコッ

 

 

「あっ・・・!? ちょ、マミ、今のは違う、違うんだ_!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

\ギャアーッ!?.........../

 

 

 

―この後結局、次の日、足が動かないままだったんだよな、翔一。今でも笑っちゃうけど―

 

 

「そこよ!佐倉さん!」

「おっしゃー!!! 今日は決める!!!」

「あっ・・・。後もう少しでマミの(パンツ)が見えたのにっ・・・!」ボソッ

___

__

 

「翔一?」

「・・・ん、何だマミ_」

 

「さっき、何て言ったのか・・・詳しく教えてちょうだい?」ゴゴゴゴ

 

「ひぃいいいいいいいいい!!?? ななな何も言ってままませせせんん!!!」

「ははは、良いぞー!マミやっちまえー!」

 

\すいません、謝りますっ!! だから許してっー!!!/

 

\ま、待ちなさ~~い!!!////

 

 

 

 

\ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!............./

 

 

_____

___

 

 

「~~これはこうだから、この計算するとね?」

「んー? やっぱりさんすーは難しいなぁ・・・」

 

「・・・マミザン・・・」

 

「なぁーに?」ニコニコ

「・・・後・・・何時間正座してればよろしいでしょうか・・・」

「んー、2時間経ったから・・・後3時間♪」

「・・・泣きたい」

 

 

 

―これは・・・背比べ・・・―

 

「うおおお!! 杏子にだけは負けられん!!」

「それはこっちの台詞だあああ!!」

「ふっ!」←背伸び

「あっ!? ズリぃぞ翔一!!」←とは言いつつ自分も背伸び

「杏子もやってるじゃないか!!」

「アタシは良いんだよっ!!」

 

「せいやあああぁぁ!!!!!」←限界まで背伸び

「うぉりやぁぁぁぁ!!!!!」←限界まで背伸び

 

「はいはい。ちゃんと計るんだから、背伸びしないの。・・・・・・・あっ、翔一の方が少し_」

 

「なっ!?」←限界を超えて背伸び

 

「やらせるかっ!!」←自分も背伸び

 

「「うぉおおお!!!」」←結局限界超えて背伸び

 

「・・・あっ、背伸びしても翔一の方が大きい」

 

「何っ!?」

「・・・勝った勝ったぞ!! 勝った勝ったー!!」

 

「・・・でも、佐倉さんは女の子だし・・・。翔一は男の子なんだからもっと大きくならないと」

「そ、そうだぞっ!! アタシは女だから良いんだ!」キリッ

「・・・まっ、杏子に勝ったからもうこの際小さいとかどうでもいい」ドヤッ

 

「あぁん?」

 

「あっ、ちょ、やめ_!」

 

 

 

\ギャアアアアア!!/

 

 

 

 

―この時は翔一と大分仲良くなった時かな。少なくとも翔一が作るホットケーキや飯が、

 今でも大好きだ。・・・また、食べて・・・みたいな。―

 

「翔一~!」

「ん?」

「ホットケーキ食べたい」

「おぉ、良いぞー。じゃんじゃん作るぞ。俺も食べたかったし」

「やったー!!」

「おいおいはしゃぐなよ。 ・・・ハチミツ?」

「おう、ハチミツ」

「・・・・・・」

「・・・? どうかしたのか?」

「・・・いやぁ、マミが最近、スリムなボデーなのにダイエ_」

 

ブンッ!

 

「いやぁ、危ない。間一髪だね。まさか辞書が後ろから飛んでくるなんて」

「・・・今の良く避けたな・・・」

「・・・杏子だって・・・いつもやられてたら・・・きっと慣れるぞ・・・」

「絶対にそれだけは慣れたくねぇ・・・」

「・・・でもスリムじゃん?」

「・・・そ、そうだな・・・アタシも・・・そう思う。・・・正直うらやゴニョゴニョ・・・///」

「しかもボッキュn_」

 

ブンッ!!

 

「」チーン

「あっ!?・・・翔一に辞書が・・・」

 

\ふ、ふん・・・!////

 

「お、お~い? 起きろよー、早くホットケーキ作ってくれよー」

「」チーン

「あぁ、ダメだなこりゃ。仕方ないからアイス食べよ~♪」

 

 

「」チーン

 

 

 

―この次の日から、いっつも撫でるようになりやがって・・・!///

 でも、今思うと、かなり嬉しかったんだ。・・・出来ればもう一度、撫でてもらいたい―

 

「んじゃ、学校行ってくる」

「行ってくるわね、佐倉さん」

 

「お、おう・・・・・・」

 

「そんな寂しそうな顔するなって。ちゃんと帰ってくるから。・・・な?」

「さ、寂しくなんかねーしっ!///」

 

「強がりは良くないぞ。・・・ほら」ポン

 

「うわっ!?///」

 

「ちゃんと帰ってくるから、良い娘に留守番してろって」ナデナデ

「や、やめろっ!///」

「その割りには抵抗しないんすねぇ?・・・あぁ、やばい、ずっと撫でたい」ナデナデ

「やめろっ!撫でんじゃねぇ!!///」

「・・・マミ、俺学校休んで杏子の頭撫でてるから、よろしく」ナデナデ

「佐倉さんを理由にしてサボらないの。・・・ほら、急がないと遅刻しちゃうわよ?」

「あー・・・もういいや。サボるから、ずっと撫でるから。マミ、いってらっしゃーい」

「だから・・・やめろって・・・////」

「もう良いや・・・今日はもう休む・・・」

「はいはい、さっさと行くわよ」ガシッ

「はぁ・・・・・・・・。それじゃ、行ってくるな」

 

「あっ・・・///」

 

「・・・おっ、何だ? ひょっとしてもっと撫でてほしかったとか!?」

 

「ち、違げーよバーカっ!! さっさと行っちまえ!!///」

 

「はいはい。・・・いってきます」

「いってきます」

 

(・・・はぁ。もっと撫で_、・・・いや、何考えてんだアタシはっ!!)

 

___

__

_

 

「ただいま~・・・」

「ただいま・・・はぁ、疲れた。」

 

「・・・お、おかえり・・・」

 

「おぉ。良い娘にしてたか?」

「な、何だよそれっ! アタシは子供じゃねー_」

「良い娘にしてたなら良い物あるんだけどな。・・・あーあー、残念だったなー」ニヤッ

 

「!?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・良い娘に・・・して・・・・・・・・・た・・・よ・・・!///」

 

「よしそれならOKだっ! ほれ、バームクーヘン!!」

「・・・バームクーヘン?」

「そう! まぁケーキみたいな物だっ!!」

 

「ケーキっ・・・!?」キラキラ

 

「そう、ケーキの親戚みたいな奴だ!! 食べるかっ!?」

「食べるっ!!」

「よし、なら今すぐ手を洗って皿とコップ一式を用意しろっ!!」

「お、おう!!」タッタッタ

 

________

 

「行動が早いわね、佐倉さん」

「まぁそれほど嬉しかったんだろ」

「目がキラキラしてたものね。まるで小さい子供みたいに」

「マミが言い出さなかったら、あんな嬉しそうな顔しなかったな。マミの天下だ」

「そんな事言って。私は何か買ってあげようって言っただけよ?」

「まぁ選んだのは俺だけどさ。・・・何ていうか・・・その・・・_が出来たみたいで・・・」

「・・・? ごめんなさい、聞き取れなかったんだけど・・・」

「い、いや、何でもない。・・・俺達も行こう」

「・・・?」

________

 

 

 

 

 

 

―これはマミが買って来ただんごを二人で食べてた時。

 『猫』って言われて・・・。恥ずかしいけど、そん時のアタシはバカにされたと思った・・・―

 

「だんご、だんご、だんご、だんご、だんご、だんご、大家族~」

「ん~?何歌ってんだ翔一」

「ん? まぁ実際みたらしだんご食べてるから良いじゃないか」

「そうだなー・・・うまい」

「マミ、遅いな」

「だなー・・・」

「外は雨だからこうやって部屋の中で暖房つけてゴロゴロするのが一番だな」

「なんだよそれ、猫みたいじゃんか?」

「・・・まぁ、猫が『猫みたい』と言ったら、それはそうなんだろうなぁ~」

「なっ!? それどーいう意味だよ!」

「そのままの意味だ~杏子は猫だ~~! HAHAHAHAHA!!」

 

「なんだとっ・・・?」

 

 

  \うわ、何をするやめ・・・ギャアッーーー!!!..../

 

 

 

―これは・・・3人(+キュゥべぇ)で遊んでた時―

 

「はい、杏子10万プリーズ」ニヤニヤ

「なっ! おい!幾ら仕返しだからって10万ってずるいだろ!?」

「仕方ない、そういうシステムなんだ、人生ゲームというのは」

「やれやれ。たかがゲームだろう?ゲーム内の通貨なんて~~」ブツブツ

「そう言いながら、楽しんでるじゃない?」

「いやいや・・・これはただ単にマミ達に付き合わされているだけだよ」

「あっ、キュゥべぇの番よ?」

「やれやれ・・・」

「本当、その耳便利だな、ルーレットのボタン押せるし」

「・・・8。・・・・・・・・・事故・・・?・・・保険は・・・ないね。5万_・・・4万しかない・・・」

「はいキュゥべぇさん、借金ですね~」

「やれやれ・・・」

「次は私・・・えいっ!」

 

「7~!7~!7~!7~!7~!7~!」「7~!7~!7~!7~!7~!7~!」

 

「な、何よ二人して!? 7って・・・10万支払い!?」

 

「7~!7~!7~!7~!7~!7~!」

 

「7~!7~!7~!7~!7~!7~!」

 

 

「うっ・・・・・・はぁ、6で良かった・・・」

 

「っち」「っちぇ~」

 

「・・・えぇと・・・宝くじで5万・・・やった」

「じゃあ次はアタシだっ!・・・いけっ!!・・・・・・・・4?」

「な・・・やめろっ! 早まるなっ!!」

「仕返し!?・・・どうしようかなぁ~」ニヤァ

「やめてお願い、この10万なくなったら2万しかないの!!」

「それでも十分だー!!」

「あっー!?」

 

「と見せかけてマミっ!!」

 

「えっ!?」

「だってマミ、さっきの5万足して18万ぐらいあるだろ?」

「えっ?・・・そ、そんなにないわよ?」ニンヤリ

「・・・マミの手持ちは21万だね」

「ちょっと、キュゥべぇ!?」

「・・・仕返し2連続にはめてくれたお礼だよ・・・」ドヤッ

「そ、それとこれとは別問_ああっ!?」

「やりぃ~!10万ゲットー!!」

「うぅぅ・・・」

「次は俺か・・・・・・・!! 見える・・・俺にも敵がっ!!」

「敵って誰だよ・・・」

 

「・・・・・・・1・・・だと・・・!?」

 

「・・・ぷっ!『旅先の商人に騙されて85000の絵画を買わされる』だってよ~(笑)」

「そんな馬鹿なっ・・・!?」

 

__

_

 

「・・・僕の勝ちだ」ドヤァ

「くっそー!! 2が出ればアタシが1位だったのにー!!」

「・・・俺なんて9が出て、結局最下位だよ!! ふざけるな、ふざけるな、ばかやろっー!!」

「悔しいわ・・・」

「よし、今度はこの世界一周コースだっ!!」

「ちょ、それ凄く長いじゃん!? 今22時だぞ、さすがに_」

「私が許可するわ!!」

「えっ!? ちょ、マミ_」

「今度こそ勝つんだから・・・!!」メラメラ

「マミのスイッチが入った・・・。もう誰にも止められない・・・!」

「今度も僕が勝たせてもらうよ。そして全員落ち込むと良い」ドヤァ

「そうはいかねぇよ!! よしっ、アタシが一番だっ!!(順番)」

 

___

__

_

 

「・・・そんな・・・!? 僕が・・・最下位だなんて・・・」

「ふっ、俺にも等々・・・幸運が訪れたようだな・・・すまないなっ」ドヤッ

 

「」ムカッ 「」ムカッ

「あれっ!?・・・マミ? ・・・杏子?」

 

 

「「・・・・・・」」ゴゴゴ

 

 

「ちょ、ま、待った!! たかが人生ゲームだからっ!! ねっ!? 落ち着こう!?」

 

「・・・・・・・やだ」ゴゴゴ

「・・・えぇ、勝ちたかったわ」ゴゴゴ

 

「えっ、何それっ!! 俺が一位だったからって何でそうなるのっ、ちょやめ___」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

\ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!/

 

 

 

 

 

 

―初めての焼肉・・・・・・―

 

「今日は!!」

       「今日は!?」

「なんと!!」

       「なんとぉ!?」

 

「焼肉だぁー!!」

        「焼肉だぁ~!!」

 

「こら、二人とも。そんなにはしゃいだらお隣さんに迷惑でしょ・・・?」

「だって隣俺の家だし、それに聞こえないだろうから良いだろ」

「聞こえないから良いだろっ!」キリッ

 

「・・・まぁ、こんな時ぐらいは良いかも知れないけど」

 

___

__

_

 

 

「・・・翔一?」

「ん?」

 

「これ、何でしょう・・・?」ニヤ

 

「なっ!?・・・何で・・・かぼちゃがあるんだっ!? 俺は買ってないぞっ!?」

「いつかのピーマンのお返し。ほら、好き嫌いせずに食べなさい。焼いてあげるから」

 

「・・・ふっ、俺は食べない_」

「おりゃっー!」ガシッ

「なっ!? 杏子、何をするっ!! 離せ! 離せぇー!!」

「好き嫌いはいけないって教わったろ! ちゃんと食べろ~!」

 

「・・・何の事やら、俺にはさっぱり・・・」

 

__

_

 

「さて。もうすぐ良い具合に焼けるわよ、かぼちゃ」

 

「やめて・・・。お願い、お願い・・・! かぼちゃだけはダメなんです・・・!!」

「往生際が悪いわよ。たまには一口ぐらい食べなさい。一口だけで良いから」

「そうだぞ~。 アタシとマミは普通に食べれるんだからお前も食べれるようになれよ~!」

 

「・・・僕には出来ない事が、君には出来る。・・・それって、素晴らしい事じゃないか」キリッ

 

「そうやって誤魔化しても無駄なんだから。はい、焼けたわよ」

「無理っ!やめてぇ!! お願いぃ!何でもするからぁ!!」

「じゃーあのかぼちゃ食べろ」

「いや、それ以外で!!」

「だって何でもって言ったじゃんか。嘘つくのか~?」ニヤッ

「それはですね。言葉の綾というか何ていうか・・・。 かぼちゃ以外なら・・・なっ?」

「アタシは嘘は嫌いだぞ。自分で言ったんだからちゃんと食べろっ!」

「そうよ~。中学生にもなって食べれないって恥ずかしいんだから」

「それはマミも一緒_」

「さて・・・」

「うわっ!? 自分の事を棚に上げやがった!! ひどい!!こんなのってないだろ!!」

 

 

「・・・・えっと・・・その・・・!/// は、はい、あーん・・・///」

 

 

 

「えっ!?・・・あ・・・・その・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ・・・あーん・・・」パクッ

 

「・・・///」

「どうだ・・・?」

 

 

「・・・あっ、普通に食べれる」

 

 

「えっ」「えっ」

 

「・・・・・・・・・ふふふ・・・・ふははははは!!! 良くもやってくれたなマミ・・・!!」

「え、えっと・・・。ほ、ほら!! お肉、焼けたから_」

「杏子!! いけーっ! マミを確保だ確保っー!!」

 

「おうっ!!」ガシッ

 

「きゃっ!? 佐倉さん、離してっ!!」

「ダーメ~!」

 

「・・・・・・マミにも味わってもらおうか。因果応報という奴だ」ニヤッ

 

「い、イヤよ・・・!! ダメ、ダメなの・・・・!」

「中学生にもなって食べれないって恥ずかしいんじゃなかったのか・・・?」ニヤァ

「そうだぞ・・・中学生にもなって食えないって恥ずかしい事なんだ、マミ・・・」ニヤァ

 

 

 

 

 

 

\イヤァァーーー!!...../

 

・・・それ以来、マミは嫌いだったピーマンが更に苦手になった。

 

 

 

―これは今でも忘れられない。留守番しろって言われて待ってたら、

 クリスマスケーキ買ってくるんだもんなぁ・・・あ、翔一の分まで食べたの思い出した。―

 

 

ガチャ

 

「おっ。帰って_」

「おーい!杏子ちゃーん!」

「・・・んぁ?」

「イヤッホオオウ!!  戸原最高ぉぉぉっ!!」

「・・・・・・・んで、何がやりたいんだ?」

「・・・実は、だな?」

「・・・お、おう・・・?」ゴクリ

 

 

「これだっ!!!」

 

 

「なっ・・・!?」

「ほら、皆で分けて食べましょう?」

「なっ・・・なっ・・・」

「どうだ!マミと一緒に買いにいった!」

 

「ク、クリスマスケーキ・・・!?」キラキラキラ

 

「というかまだクリスマスじゃないけどな。早いうちに食べようと思って」

「で、でかしたー! よし!食べよう!今すぐ食べよう! はやくはやくっ!!!」

「・・・猫だったら絶対尻尾凄い勢いで振ってるよな」ボソッ

「えぇ、そうに違いないわね」ボソッ

「はやくはやく~っ♪」

 

___

__

_

 

「・・・・・・」ジーッ

 

「ん? あっ、ロウソク消したいか?」

「はぁ!? ち、ちげーよ!! そんな訳ねーだろっ!! 子供じゃねぇんだしっ!!」

「じゃあ電気消しましょうか。佐倉さん、頑張って一気に消してねっ!」

「だ、だから!! ロウソクなんて消したく_」

「じゃあ俺が消す」

「えっ!?」

「おっ・・・? やっぱりロウソク消したいのか?」ニヤッ

「ち、ちげぇし・・・!」

「じゃあ私が佐倉さんの代わりに消しちゃおうかしら」クスッ

「えっ・・・!?」

「あ~あ~。杏子が消したいって言うなら素直に譲ってやるんだけどなぁ~?」チラッ

「そうね~。佐倉さんが消したいって言うなら譲るんだけどねぇ~?」チラッ

 

「し、仕方ねぇなっ!! そ、そこまで言うのなら消してやるよっ!!///」ニコニコ

 

「やばい、杏子が可愛すぎて生きるのが辛い」ボソッ

「・・・・・・・・・確かに可愛いわよね?」ゴゴゴ

「ひぃっ!?」

 

「そ、それじゃあ、電気消すのよろしく~っ!!」ニコニコ

 

「マミ、頼むぞ・・・」ボソッ

「・・・えぇ、分かってるわ」

 

パチッ

 

「よし、電気消したぞ!! 思いっきりやれ!!」

 

 

「よぉぉし!・・・・・・・・・すぅぅ・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅぅぅぅ~~~!!!///」\パシャッ!!/

 

 

 

 

 

「よしっ、激写成功だな!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・なっ!?」

 

「良くやった、マミ!! で、写真の方は!?」

「・・・うん、良く撮れてる」

 

「な、ななな、なっ・・・!?///」

 

「おぉっ!! 良く撮れてる!! これは永久保存だな!! もうこれは家宝だっ!!!」

「それは言いすぎじゃ・・・いえ、これは家宝かも・・・。見てると暖かい気持ちになるし」

 

「・・・っ!!///」

 

「早速これを焼き回ししよう!! 10枚ぐらいにプリントして!!」

「10枚は多すぎじゃない?」クスッ

 

「そ、それ・・・・それぇ・・・!!!」

「あっ、やばっ_!?」

 

 

「消しやがれっーーー!!!!!///」バッ

 

「ちょ、まっ、何で俺だけに_!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

\ギィヤァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!???/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―そして・・・クリスマス当日、デパート近く。

  ・・・ちなみに風船、萎れたままだけど、ポケットに入れて、ずっと持ってるんだ。―

 

「あぁ・・・寒ィ・・・」

「・・・あっ、あの人可愛いな_」

「・・・」ギリッ

「・・・何でもない」

「雪は降ってねーけど寒ィなぁ・・・」

「耳あて、似合ってるわよ。佐倉さん」

「そ、そうか?///」

「マフラー、コート、手袋、耳あて・・・フル装備かつ最高の組み合わせだ・・・」

「何の組み合わせだよー?」

 

「えっ?・・・・あぁー・・・その・・・・・ま、まるで『迷子』になりそうな子の組み合わ_」

 

「・・・」ギロッ

「すいません、謝ります」

「ふふ・・・あっ・・・」

「おぉー・・・すげーなぁー・・・」

「クリスマスツリーか。まだ昼ぐらいなのに光ってるんだな」

「綺麗ね・・・」

「うわぁ・・・こんな昼からクリスマスツリーの下でキスとか周りの目を考え_」

 

「・・・///」チラッ 「・・・///」

 

「・・・ん?(確かに見てるこっちが恥ずかしくなるよな。でも何でこっち見るんだ?)」

「あっ・・・」

「おっ。(従業員だけど)サンタさんだな。子供に風船配ってる」

「優しそうなサンタね・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ジィーッ

 

「・・・・・・・・・・よし」

 

「あっ・・・おい翔一!」

「ちょっくら、風船もらってくる!」

「あっ・・・アタシも・・・いやいや!あんなのほしくねぇ!・・子供じゃねぇんだし・・・」

「大丈夫よ。佐倉さん」

「えっ・・・?」

 

 

―――――――

 

「ちょりーす、サンタさん」

「おお。どうしたのかね?」

「いやぁ・・・その・・・」

「あっ、風船だね?」

「・・・・・・・・・・・・・_が、ほしがってるんで」

「ほーほー。良いお兄ちゃんだ。_ちゃんに渡してあげなさい」

「もちろん、そのつもりですよ」

 

 

「メリークリスマース! ホッホッホッホ!」」

「サンタさん!僕にも風船!」

「あたしも~!」

「今年も、素敵なクリスマスでありますように。メリークリスマース!」

 

―――――――

 

「・・・ほら」

「な、なんで・・・」

「何でも良いから! ほらっ!」

「・・・あ、・・・・あり・・・がと///」

「・・・まぁ、杏子はギリギリ小学生に見えるから大丈夫だろ、風船ぐらい」

「な、なんだとー!? アタシゃもう小学生じゃないっつーうの!///」

「はいはい、喧嘩はそこまで。折角のクリスマス、でしょ?」

「お、おう・・・///」

・・・凄く嬉しかった。店ん中に入る前に、恥ずかしいから自分で空気抜いたけど。

それでも、その風船は今でも持ってる。アタシの宝物の一つと言っても良い。

 

 

 

―念に一度の正月。・・・また、誰かと過ごせるだなんて思ってなかったけど・・・

 この時も、凄く楽しかったな。しかも朝だけじゃなく昼飯までそばだったし―

 

「正月だな~」

「正月ね~・・・」

「正月でございますよお嬢様方」

 

___

__

 

「~~~うめぇ!」ジュルルル

「こらこら、年越しそばなんだからもっと味あわないと・・・」

「でもこれだけありますよ、誰かさん・・・?」

「うっ・・・///」

「誰かさんが俺が買ってくるって言ったのを忘れて自分で買ってきたからな」

「し、仕方ないじゃない!///」

「仕方ない、明日の朝食も、そばだな」

「明日もそば食えるのかっ!?」

「おう、食べれるぞ~良かったな杏子、マミに感謝しろよ」

「うっ・・・///」

「ありがとなーマミ~」

「ど、どういたしまして・・・?///」

「まぁ、こういう時は、のんびりとしていたいよな」

「えぇ。・・・幸い、魔女も出てこないみたいだし」

「こんな時に魔女が出てきたら、アタシが一撃でぶっ倒してやるよ!」ジュルルル

「こらこら・・・食べながら喋っちゃダメよ」

「まぁぐったりできるのは良いことだな」

「お~う♪」

 

____

__

_

 

 

「マミ~? まだ起きてるか?」

「まだ起きてるけど・・・?」

「・・・・・・最近、さ」

「うん・・・?」

「・・・最近、すっごく・・・・・・楽しい」

「・・・」

「朝起きたら、マミがいて・・・さ?」

「うん?」

「そんで・・・寝ぼけたマミが、『おはよう』って言って、アタシも『おはよう』

 って返して・・・。少しすると、翔一が『おはよう、朝ご飯』ってアタシら呼びに来て・・・。

 それで、三人でいただきますをして・・・。翔一がアタシの事からかったりしながら・・・、

 楽しく話しながら飯食ってさ・・・?」

「・・・・・うん」

「・・・・あっ、翔一には言う・・・なよ? マミだから話すんだからな・・・?」

「えぇ、もちろん。約束するわ」

「・・・認めたくないけど、二人が学校の時、少し寂しい気持ちになるんだよ」

「・・・やっぱり。寂しいならちゃんと口に出せば良いのに」

「い、言えるわけねーだろっ!!」

「・・・翔一には、でしょ?」

「っ!!///」

「・・・まぁその気持ちは私も十分分かるから、安心して?」

「そ、そうか・・・?・・・それで続きだけど・・・。

 二人を見送ろうとすると、『恥ずかしいからやめろ』っていっつも言ってるのに、

 翔一が頭撫でてくれて・・・。本当、本当認めたくねぇんだけど、それが嬉しくて・・・・・・」

「・・・・・・・うん」

「・・・それが・・・さ? なんか・・・何て言うか・・・・・・」

 

「『出来れば毎日やってほしい』?」

 

「っ!?///」

「・・・図星かしら?」クスッ

「~~~っ!!///」

「ごめんなさい、ちょっとからかいたくなって」

「・・・っ!/// ま、まぁ・・・マミだから・・・許す・・・けど・・・・・・さ。

 ・・・・・・今こうやって思い出すだけでも、十分・・・心がポカポカするんだ。

 ・・・でも・・・・・・・・・・でも・・・・・」

 

「・・・『自分はそんな資格ない』・・・?」

 

「っ!?・・・な、なんで・・・?」

 

「・・・・・・・・・翔一が会った時にいつも言っていた言葉、だからよ」

「・・・えっ?」

「・・・『俺のせいで父さんも母さんも・・・弟も死んだ。だからマミとは仲良く出来ない。

 マミと仲良くなったら、きっとマミもひどい目に遭うかも知れない。だから、マミとは

 仲良く出来ない。気持ちは凄く嬉しい。だけど、マミとは仲良く出来ない』」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・っ・・・」

 

「・・・でも・・・ね?」

 

「・・・?」

 

「・・・そんなの、私だって、同じ事だったのよ」

 

「・・・えっ?」

 

「・・・自分だけが生き残って・・・。事故に遭って、残ったのは・・・家族が居ない家と、

 自分。そして、私を助けてくれたキュゥべぇだけ、だったのよ」

 

「・・・・・・・」

 

「・・・私は堪らなくなったわ。『一人はイヤだ』って。『一人ぼっちは怖い』って・・・。

 ・・・でも、そんな事いつまでも考えてたら、きっと魔女と戦って死んでしまうから」

 

「・・・・・・」

 

「・・・だから、逃げたわ」

 

「・・・逃げた・・・?」

 

「・・・そう。一人ぼっちの寂しさも、辛さも。全部、魔女や使い魔と戦う事で、

 忘れようとしたの。・・・戦ってる時だけは、悲しい事も、辛い事も、忘れられたから」

 

「・・・それは・・・アタシもだ・・・」

 

「・・・でもね?・・・魔女と戦って、疲れて家に帰って来た時に・・・。迎えてくれる人は、

 誰も居なかった。・・・『おかえり』って言ってくれる両親はもういなかった。

 ・・・キュゥべぇが居たから、何とか耐えられていたけれど・・・。きっと、それも

 ごまかしの延長でしかなかったもの。・・・・・・自分一人で生きていたら・・・。

 背伸びや胸を張るのに精一杯だったでしょうね。・・・強がっていても、本当は

 ずっとずっと寂しくて。でも、一人で生きなきゃいけない。だから、背伸びばっかりして・・・」

 

「・・・・・・」

「・・・でも、そんな時。そんな時に、翔一と会ったの」

 

「・・・そっか。・・・その後の続きは、大体分かる」

 

「・・・そう?」

 

「・・・あぁ。きっとマミが段々翔一に惚れていく話だ」ニヤッ

 

「っ!?///」

 

「さっきの仕返しだ」

 

「・・・もう。からかわないの・・・」

 

「だって実際そーなんだろ?」

 

「・・・・っ///」

 

「・・・でも・・・」

 

「・・・?」

 

「・・・暖かい・・・な」

 

「・・・」

 

「・・・・・・アタシは・・・今、幸せ・・・なんだろう・・・な」

 

「・・・」

 

「・・・おかしいな・・・。そんな資格・・・ない、はずなのに・・・!」ジワッ

 

「・・・佐倉さん」ギュッ

 

「・・・・・・アタシがこんな事してたら・・・きっと・・・恨まれちまうよ・・・!!

 『何でお前がそんな幸せになってるんだ。家族を殺した癖に』って・・・!!」ポロ...ポロ

 

「・・・・・・そんな事、ないわよ」

 

「・・・そんな事あるんだよ・・・!!」

 

「・・・きっと、佐倉さんのご家族も・・・。佐倉さんの幸せを願っているはずよ」

 

「・・・そんなの・・・分からないじゃん・・・。もう、死んだんだ・・・。

 天国で見守ってくれてるのかも、怒ってるのかも・・・全然、分かりやしねぇ・・・」ポロッ...

 

「・・・でも」

 

「・・・ん・・・?」ポロッ...

 

「佐倉さんのご家族は、居なかった訳ではないでしょう?」

 

「・・・」

 

「・・・私は何も言えないけど・・・。確かに言えるのは、今の佐倉さんが感じてるその辛さも、

 悲しさも・・・。佐倉さんのご家族が、ちゃんと生きてた証のはずよ・・・?」

 

「・・・生きてた、証・・・?」

 

「・・・翔一が言ってたの。『・・・人に忘れられるのって、凄く悲しい事だよな』・・・って」

 

「・・・忘れ、られる・・・?」

 

「・・・そう。佐倉さんのご家族の方を批判してしまうのかも知れないけど・・・。

 『人には2種類の死がある。・・・一つは、肉体の死。・・・もう一つは、存在の死』

 ・・・というの言葉を、聴いた事はあるかしら・・・?」

 

「・・・ない、な・・・」

 

「一つ目の『肉体の死』は、佐倉さんも分かるわよね?」

 

「・・・おう。それは・・・・・分かる。・・・・・・それで、『存在の死』・・・って?」

 

「・・・時が経てば、人は死んでしまう。・・・それは、私も一緒だし、佐倉さんも一緒」

 

「・・・」

 

「・・・それで、

 段々時が進んでいくうちに、自分を知っている人が死んでいってしまう訳じゃない・・・?」

 

「・・・・・・そう、だな・・・」

 

「・・・それで、それを繰り返していく内に・・・自分ももし死んでしまったら。

 ・・・自分の事を覚えていてくれる人って、どれだけ居ると思う?」

 

「・・・・・・30人、ぐらい?」

 

「・・・そうね。偉い人や凄い事をした人なら、もっと多いかも知れないけど・・・。一般的な人は、

 それぐらいかも。・・・・もし自分の事を覚えていてくれている人も死んでしまったら、

 もう自分を知っている人はもう、いないわけじゃない・・・?」

 

「・・・!!」

 

「・・・そう。それが『存在の死』、なのよ。・・・確かに生きていたけれど、

 自分を知っていてくれている人物は誰もいない。・・・もし死んでしまったとして、

 逝き付く場所があったとしても・・・。この世に自分を知っていてくれる人物は誰もいない」

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・でも、佐倉さんはまだ、ご家族の事を覚えている。

 ・・・だからまだ、佐倉さんのご家族は、本当に意味では死んでなんかいないわ」

 

「・・・・・・そう、か・・・・」

 

「・・・でも、佐倉さんには佐倉さんの考え、価値観がある。・・・だから、私がこれ以上

 言える資格はないわ。・・・・・・本当は、何も言う資格もないんだけど・・・」

 

「・・・そんな事ない」

 

「・・・どうして?」

 

「・・・マミは、私を幸せにしてくれてるから。・・・だから、資格はある」

 

「・・・・・・佐倉さん・・・」

 

「・・・ワガママ、言って良いか・・・?」

 

「・・・えぇ、別に構わないわよ?」

 

「・・・・・・・もう少しだけ・・・このままで居てくれ・・・後ちょっと・・・後ちょっとだけ・・・!」ポロ...

 

「・・・別に良いわよ。明日だって、また明後日だって、してあげるから・・・」ギュッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・お_ちゃん・・・」ボソッ

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ん? 何か言った?」

 

「・・・何も言ってない・・・・・・///」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――・・・最後のお出かけ。・・・スケート場。――

 

「おぉぉ~~~!!! すっげ~~!!」ワクワク

 

「こらこら、あんまりはしゃがないの」

「だって、だって!! すげーじゃん! 皆滑ってるし!! アタシもあんな感じに

 滑れるのか!? えっと・・・・いなばうあー? も出来るのかっ!?」ワクワク

 

「それはさすがに・・・。でも、佐倉さんも私も初めてなんだし、そこまで出来なくとも

 楽しめるわよ、きっと」

「おうっ!」ワクワク

 

「・・・ふっ、素人が。話にならんな」ドヤッ

 

「っ!?/// な、なんだよっ!? 翔一は滑った事あるのかよっ!?」

「まぁな。少なくとも杏子よりは滑れる」ドヤァ

「っ!?・・・このぉ・・・! 自分が滑れるからって調子に乗りやがってぇ・・・!///」

「翔一って自分の都合や立場が良い時は調子付くから・・・。悪い癖よ」

 

「ふっ、杏子、俺に対する上から目線も今日で終わりだ」

 

___

__

_

 

 

「うぉぉ!? マ、マミ・・・!!」ウルウル

「ほらほら、大丈夫。そのまま滑ってきて」

「こ、怖ぇよ・・・手、離したくない・・・」ガクガク

「ほらほら、翔一なんか_」

 

「進化の現実ってやつを教えてやる・・・!」スルスルッ

 

「うぅぅ・・・、確かに上手なのが悔しい・・・!!///」

 

「杏子には手すりがお似合いだっ!」ドヤッ

 

「~~っ!?/// くっ、くっそう・・・!!」

 

「そこで見ているがいい、杏子。お前がなにを求めたのか・・・とぉっ!!!」

 

「なっ!?」「えっ!?」

 

「ダブル・・・!!」クルクルッ

「回ってやがるっ!?」

 

「アクセルだっ!!!」キリッ

 

「ダブルアクセル・・・!?」「翔一が輝いてるわ・・・というより何でそこまで出来るの・・・」

 

「・・・ふんっ、増徴だったな。杏子がイナバウアーなど」ドヤッ

 

「うっぜぇ!?」

 

「HAHAHAHAHAHAHA!!! それにしても、まるで空気だな、杏子!!」キリッ

 

「・・・うっぜぇ!? 翔一がいつになくうっぜぇ!?」

 

「翔一は調子に乗ると凄い勢いで調子付くからね・・・」

 

 

___

__

_

 

 

「どうした杏子、さっきから手すりに捕まったままだが」ドヤッ

 

「こ、このぉぉ・・・!///」

「ほらほら。ちゃんと受け止めてあげるから」

 

「うぅぅ・・・うぉ・・・うぉぉおととととっ!?」

「佐倉さん!?」

 

杏子(ランサー)が転んだ!?」

 

「翔一の人でなし~!!///」

 

「えっ!? 俺!?」

「そんなに滑れるんならアタシの事引っ張れ~!! くっそー!悔しい~~~!!」

「・・・・・・悪いけど、無理だ・・・・・・・・・だって・・・」

 

「や、やだ、い、行かないでよ・・・!!」ガクガク

 

「・・・マミが掴んでる。おかげで滑れないし」

「じゃあアタシも掴ませろっ!! ついでに滑り方教えろバーカっ!!///」

「いや無理だからねっ!? 今俺マミに掴まれたままだからねっ!?」

「ご、ごめんなさい・・・佐倉さん・・・」ガクガクガク

 

「くそ・・・こうなったら・・・!」

 

「な、何をするんだっ!? 杏子、やめろっ!?」

「マミが右腕掴んでるんならアタシは左腕を掴むっ! ついでに教えろっ!!」ガクガクガク

 

「・・・いや・・・うん。・・・その・・・・・動けない」

 

「「 ・・・・・・・・ 」」ガクガクガク    

 

「・・・動けない。助けて」

 

__

_

 

 

「おぉー・・・慣れたら結構滑れるもんだな・・・教えてもらったのは悔しいけど・・・」

 

「そうね・・・。・・・・・あれっ、翔一?」

 

「今の俺は輝いているっ!! 何をしても1番になれる気が____」

 

 

 

\ガタンッ!/

 

「な、なんだっ!? 何が起こった!?」

 

「「 翔一!? 」」

 

「・・・スケートがイカれただと!? ・・・ダメだ、滑っていく! こんなものが俺の最期か!?」

 

「・・・すっげぇ勢いで滑ってってるぞ・・・」

「って!! あれ自分で止められないんじゃない!?」

 

「(せっかく勢いに乗ってたのにこんなの)認めん、認められるか!こんな事ぉおおおお!!」

 

 

・・・へへ、この後注意されたんだけど、凄く楽しかったから良いか・・・

 

___

__

 

「楽しかったー!」

「・・・2人とも前半は俺に頼りっぱなしだったな」

 

「し、仕方ないじゃない!///」 「仕方ないだろ!///」

「はいはい・・・全く、情が移ったのかねぇ・・・」

「な、何だよそれ!?///」

「いや、何でもない」

「何でもなくないでしょう?///」

「そ、それに!翔一だって注意されたじゃんかっ!」

「それはそれ、これはこれ」

「ズ、ズルいぞっ!?」

「・・・さて、バス乗って~夕飯の買出しして、帰るか」

「話を逸らさないでっ!」

「夕飯何にするかなー」

「ちゃんと言えー!結局『情が移った』ってどういう事だよー!!」

 

「HAHAHAHAHA それはまた今度な!」

 

「」ムカッ  「」ムカッ

 

「・・・あ、すいません土下座します許してください」

「じゃあ今日の夕飯・・・」

「ん?」

 

「アタシ、オムライス・・・? が良い。・・・ほら、翔一と会った時に作ってくれた奴・・・」

「うーん、オムライスか・・・・・・」

「・・・・・ダメだよな・・・」

「い、いや、ダメなんかじゃないぞっ!!」

 

「・・・・・・私も、オムライスで」

「えっ?」

「・・・私もオムライス」ニコッ

「マミ・・・」

「はぁ・・・全く。 それから卵買いにデパート寄るけど良いよな? いやなら作らないぞ」

「そ、それじゃあ・・・!」

 

「全く・・・オムライスなんてあまり作った事ないから期待するなよ? 前のは偶然だからな」

そう言った後に・・・

 

「・・・世話のかかる_だな・・・」

そう、小言で呟いた翔一を、ただじっと見つめていた。

肝心の部分が聞き取れなかったけど。

 

___

__

 

「・・・うまい!」

「・・・美味しい・・・」

「そうだろう。美味くなかったら自信をなくす」ジュプルル

「・・・」ジィーッ

「・・・はいはい、ケチャップかけるのは自分でな、お前ら先に食べちゃうんだから」

「おぉー!」

 

 

「えぇーと・・・ KYOKO・・・KYOKO・・・」

「ん? 杏子、KがYになってるぞ」

「ち、ちげーよ! これがKYO『K』Oの『K』なんだよ!」

「なんじゃそりゃww 『Y』にしか見えな_」

「ふしゃっー!!」

「ギャアッー!?」

「ふふ・・・はい、頂きましょうか」

「ん?マミはつけなくて良いのかー? ケチャップ」

「んー・・・どうしようかしら」

「普通にMAMIでいいんじゃねーの?」

「う~ん・・・」

「まぁ文字に拘らなくても良いと思うぞ、俺は」

 

「・・・ティロ_」

 

「やめた方がいい」 「やめとけ」

 

「な、何よ二人揃って!///」

「大体書くスペースねぇだろ・・・?」

「いや、頑張ればいけると思うけどケチャップが勿体ないぞ、マミ」

「も、勿体ないって・・・!///」

「やれやれ。そんなに手間取っているなら普通にかければ良いのに」

「おー。キュゥべぇ、帰ってきたか」

「・・・キュゥべぇ見ると・・・」

「ん?」

「ん?」

「何かこう、白い毛を赤く汚したくなるよな。・・・何か血が騒ぐ感じ」

「・・・訳が分からないよ、これでも身なりには気にしてるというのに」

 

「・・・・・・隙あり~!」ジュプルル

「あっ!? 佐倉さんっ!?」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・普通だな」

 

 

 

 

 

 

「えぇ、普通ね・・・」

「な、何だよ! 食べ物にイタズラすんのは気が引けたんだよ!」

「まぁ良いか」

「えぇ。美味しく食べれればそれで」

「いただきます」

「・・・いだだきます」

「いったっだっきまーす!」

 

 

 

 

 

 

「・・・僕の分は? ねぇ、僕の分は・・・?」

「キュゥべぇのは予め作っておいた。タマネギはダメだからな」

「やった!!」

「・・・ん? どうした、キュゥべぇ。珍しいじゃないか、そんなに喜んで」

「・・・・・・僕にだってたまには、そういう事もあるんだよ」

「・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―・・・そして・・・―

 

 

「がはっ・・・!?」

魔女の攻撃にやられて、思いっきり吹っ飛ばされ、挙句に壁に叩きつけられる。

 

「佐倉さん!?」

吹っ飛ばされる最中、マミがアタシに目を向けるけど、すぐに魔女に目を向けた。

代わりに翔一がこっちに走ってくる。

 

「ぐ・・・・こいつ・・・!強・・・すぎ・・・だろ・・・!!」

体中が痛い。・・・!?

 

「ぐぁっ!?」

・・・とにかく、動こうとした時。・・・背中に何か刺さっているのが分かった。

そして、そこから血が流れてるって事も。それでも、これぐらいは後で何とかなる。

とにかく・・・これぐらいは・・・。

 

「杏子、大丈夫かっ!?」

「あ、あぁ・・・ぐっ!」

無理に動こうとすると、背中に痛みが走る。

 

「なっ!?・・・血が!?・・・マズい・・・!!」

「アタシの事は良いから・・・早くマミを助け・・・ぐっ! 早くマミを助けろっ!!!」

「・・・待ってろ・・・! すぐに終わらせるっ・・・!」

そう言って翔一を行かせたけど、本当は背中だけじゃなくて

肩ら辺も刺さってるぽかった。・・・動けねぇ。

 

・・・情けねぇけど、この状態であの魔女の相手なんかしても、足手まといだった。

 

・・・そして・・・

 

「なっ!?」

・・・魔女がこっち向かってきたんだ。動けないアタシに目を定めて。

正直、死ぬと思った。痛みで動けずに。

体中が、『怖さ』って重りで動かなくなった。

 

 

反射的に、目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザクッ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・えっ・・・?」

 

 

 

魔女が大きな爪で切り裂いたのは・・・・。

 

 

アタシじゃなく・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アタシを庇った、翔一だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・なん、で・・・?」

 

目の前で起こった事が、信じられなかった。

何で翔一が目の前に?

何でアタシを庇った?

 

そんな疑問が、唖然とする頭の中で流れた。

 

動けず座り込んでいるアタシに、翔一が覆いかぶさるようにして倒れてきて、

やっと状況を理解した。

 

「お、おい!!??」

そう叫んでも、反応はない。

そして・・・爪によって破かれた服から・・・背中に大きな傷が出来ているのが分かる。

中の『モノ』が見えるんじゃないかってぐらい、深い傷が。

 

「お・・・おい・・・!・・・・起きろ・・・!!! 起きて・・・くれよ・・・!!」

震えた。いや、震えるつもりなんて全然ない。

それでも、その傷を見たアタシの体は、凄く震えていた。

もう何がどーなっているかも分からねぇ。そう思うほど、アタシの頭はパンクしていた。

 

マミが魔女をアタシ達から引き剥がして、一人で戦っているのも頭に入らなかった。

今あるのは、アタシを庇った翔一が、死んじまう程の怪我を負っているというだけ。

 

「お、おい・・・!ふざけんじゃねぇよ!!! 死ぬんじゃ・・・ねぇ!!!」

体が震えている。それでも、アタシは翔一の怪我を、魔力を使って治す事で

頭が一杯だった。

 

マミほど怪我を治すのが得意なわけじゃない。

ただ、魔法少女たるもの、戦闘中に負った怪我は出来るだけ早く完治させる。

そう言ったマミに、怪我の治し方を教わっただけだ。

 

でも、実際はアタシや翔一の怪我はマミが治してくれていた。

 

アタシ自身の怪我を治した事も、3回にも満たない。

 

自身の怪我を治す要領で、怪我人の怪我を治せるという事も聞いていたが、

実際やった事はない。それでも。それでも・・・治す事しか頭になかった。

 

必死に、必死に。

 

溢れる涙を気にする余裕なんか全くなく。

 

 

 

 

自分の怪我の事を考える余裕なんかなく。

 

 

 

 

 

 

一人で戦っているマミの事を考える余裕もなく。

 

 

 

それでも、傷口は塞がらない。

 

 

そこから溢れる血が、自分達の足元へ広がる。

 

 

 

嫌だ。

   嫌だ。

      嫌だ。

 

 

 

翔一の死ぬところなんか見たくない。

 

 

 

・・・頭の中で、妹・・・。家族の事が浮かぶ。

 

 

 

 

 

「モモ・・・!!」

 

自然に妹の名前を口走っていた。

 

 

 

 

 

 

何でかは分からない。

 

でも、口走っていた。

 

 

 

 

・・・頭がボーっとしてくる。

 

 

 

 

その度に怪我を治すのが疎かになる。

 

 

 

 

「・・・いけねぇ・・・っ・・・!」

 

口を噛み締める。

 

 

 

「死ぬな・・・!死ぬ・・・なぁ・・・!!!」

 

少しずつ朦朧とする意識の中で、それだけを言い続けて・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・もう、どれぐらい経ったんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「翔・・・一!?・・・佐倉さん・・・!?」

 

 

 

「マ・・・ミ・・・?」

 

「くっ・・・!」

 

「あっ・・・」

 

「大丈夫・・・!大丈夫だから・・・!翔一は大丈夫だから・・・!今は自分の怪我を治して!!!」

 

 

「そっ・・・か・・・もう・・・大丈、夫・・・なん・・・だ・・・な?」

 

「えぇ・・・!大丈夫だから・・・!お願い・・・!早く・・・!」

 

「なら・・・安心、だな・・・」

 

 

「佐倉さ________________________.......................

 

 

 

 

 

 

そこで、アタシの意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 




ちょっと長めの27話でした。

ところで、久しぶりの本小説の詳細を見てみたら、まさかの
135件もお気に入り登録してもらっていて、腰抜かしました。

皆さんありがとうございます!!
これからも本小説を、過度な期待をせずにお読みくださったら、
幸いでございます。

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