魔法少女まどか☆マギカ -女神の決断   作:てにー

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断話「想い」

断話「想い」

 

 

 

 

 

―あの頃の俺は、正義の味方に憧れていた。

 

子供のから、特殊な力はどうせ使えやしない、使えたとしても一限りの人間だけ。

俺にそんな能力があるとは思えなかった。だから・・・・。自分でも出来る物を・・・。

 

それがまぁひねくれた結果が、武器を手にする、まぁ・・・銃に興味を持っていったのだ。

特殊な能力なんかなくとも、武器を駆使して敵の野望を打ちくだく。

 

そんなものになりたかった。だから俺は、自分なりに強くなりたいと・・・努力した。

 

 

 

 

―時間が過ぎて・・・。

 

・・・バカな俺は、少なくとも他の奴らよりは強いと思い込んでいた。

 

毎日鍛えたり、バカな鍛錬をしようとしたり・・・。

危ないのは全部時雨に止められたが。

 

・・・本当に、バカだ。実際は、目の前で母親が居ても何も出来ずに、

ただその場で立ち尽くしていただけ。目の前で母親すら救えなかった。

 

なのに誰が救えようか。

 

何も出来ない。そんな弱い人間だった。

 

同時に、絶望した。

 

 

  『この世界に正義の味方なんて居やしない。

           光の速さで助けてくれるやつなんて居やしない。

 

   だが目の前で起こるたった数秒の出来事。たった数秒。

 

   ―数秒だけで―

  

   目の前で、大切な母さんが死んだ。

 

   俺のせいだ。強いと自分を過信してしまった。

 

             全て俺が弱かったのが原因だ        』

 

 

 

そう。自分の愚かさ、弱さに絶望した。

 

結局は何も出来ない、そこら中に居る人間の一人でしか過ぎないと。

 

憧れていた者とは、ほど遠かった。

 

 

だが同時に絶望した。

  

 

 

 

 

     『この世界に、―正義の味方― なんか、居やしない』

 

 

自分が強く憧れていた、正義の味方に対して。

 

目の前の事故を目が追いつけない程の速さで救ってくれるような、

ただの都合が良い奴なんて、居やしない。

 

 

 

 

 

 

 

今までやってきた事は全てが無駄。

 

ただ自分を過信、酔いしれていただけ。

 

それが、中学生の年頃には付き物である、中2病である事はすぐに分かった。

 

ただ、それだけである。

 

 

・・・ただ、それだけで母親が死んだ。

 

 

 

 

 

・・・神に縋った。

 

― 本当に神が人間の事を考えているなら ― と。

 

俺の命なんか捨てて構わなかった。

 

だから母さんを取り戻してくれと。

 

― 俺の命を捨てるから母を返してくれ ―

 

 

 

俺が母を殺したなら、俺が死ぬ事によって母は生き返ると。

 

そう想い縋った。

 

でも返答はなかった。

 

 

 

 

『この世界に神は居ない』

 

そうも絶望した。・・・今から思い出しても、自分がアホにしか見えないが、

 

そう絶望したと同時に、

 

 

罪悪感が襲った。

 

 

俺が母を殺したと。

 

じゃあ俺はどうすれば良い。何をどうすれば償える。

 

・・・だが、俺のせいで死んだ・・・。母が庇った弟には、

弱さを見せる事は出来なかった。・・・今思うと・・・怖かったのだ。

 

 

 

―弟に、俺が母を殺したと言われるのが―

 

 

だが弟は俺を責める事はなかった。

 

あんなに母を愛していた父親ですら、少しも俺を憎む事をしなかった。

 

 

・・・じゃあ誰が俺を責める。誰が罰を与える。

 

 

・・・いっその事、罪悪感で狂ってしまった方が楽だった。

 

 

だから俺は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自らその身に、死を与えようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それもただの現実逃避でしかなかった。

 

罪悪感から逃げたかっただけだった。

 

 

理由を並べ、それを自分で正当化し、それを実行する事で、

 

逃げただけだった。

 

 

 

・・・そんなんだから、親友に病院送り寸前の所まで殴られ続けたんだろう。

 

 

まぁ・・・。過ぎた事は仕方ない と言えるタイプではない。

 

過去の事をズルズルと引きずるタイプなのだ。

 

 

だから数年経った今も引きずっている。

 

 

だからこんな偽善も正当化できる。

 

 

 

 

 

今の俺には、誰かを救える力がある。

 

 

昔とは違う。

 

なら、やる事は一つ。

 

 

―救える命を救う―

 

 

 

例え誰に何と言われようと構わない。

 

どう理屈を並べられたって。

 

 

 

 

そう。

 

アニメやゲームでも、俺もこんな力があったらなと思わずには居られなかった。

 

それ故に・・・。

 

 

 

 

 

誰かを救える力を持ったマミさんを、

尊敬の目だけではなく、嫉妬の目で見たのも事実だった。

 

 

俺も正義の味方(マミさん)みたく、誰かを救いたいと。

 

 

だから魔銃を手にした時、心臓が跳ねる程に嬉しかった。

 

そして、自分が契約出来るという事も。

 

 

 

 

 

自分の魂を差し出せば、救える命があるという事も。

 

 

 

だが、魂を差し出すのはまだ先だ。

 

 

今自分に出来る事を精一杯やる。こんな所でたった一度の奇跡を使えば、

取り返しのつかない事になる。

 

 

 

・・・今気づいた。

 

自分の魂なんかどうでも良いのだ。

 

契約による、『たった一度の奇跡』を勿体なく感じている。

 

 

・・・ああ、何て偽善なんだろうか。自分のエゴを押し通しているだけだ。

 

 

 

 

 

それでも、救える命があるならば。

 

 

 

 

 

 

 

救った人が『生きている』という結果さえあれば。

 

そして生きていてくれたが、また幸せになる事を願って。

 

 

 

 

 

 

そしてここに導いてくれた者の存在も、否定出来ないのも事実だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・俺は生憎、力を持っても心が折れたりするだろう。ヘタレだからな。

 

だけどその度に自覚するはずだ。

 

俺は一人じゃないと。傍に居てくれる人がいると。

 

大事な事を決めて、それを突き通すだけで良い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが、俺を突き動かす理由だ。

 

 

今こうして、足を大きく、強く踏み出している理由だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正義の味方になりたいとはもう思わない。

だからって、人の英知に称えられる、英雄になりたいとも思わない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ・・・この身体を駆け巡る・・・、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

想いだけが、生きる全て。

 

 

 

 

 

 

               心に 振りかざす          

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                 ―  願い  ―

 

 

 

 

 




断話「想い」でした。

短めですね・・・・。

本当は前書きを書きたかったんですが、
折角の内容をぶち壊してしまう可能性があったので、こうやって後書きで詫びる事になりました。
他の人とか見たら、「あれっ?前書きがない」
と思われるかも知れませんが、内容ぶち壊しを防ぐための配慮だと思ってください。

終盤の 『想いだけが 生きる全て 心に 振りかざす 願い』は

まどか☆マギカのエンディングテーマ「magia」の2番の歌詞が、
作者ながら、

(あれっ? これ翔一君の事指してるんじゃね)と思った末に書きました。

少しだけ歌詞を書いてしまう事になるんですが、

2番からの

==================

『いつか君も 誰かの為に 強い力を ―望むのだろう』

からの、

『想いだけが 生きる全て 心に 振りかざす』
『願い』

==================


↑部分が翔一君の事しか思い浮かばなかった次第なんです(

歌詞を載せるのはあまりいただけないので、お手数ですが興味ある方は
調べて ↑の『いつか君も~~』の部分から 『想いだけが~~願い』の部分までの歌詞を
見ると良いと思います。

作者ながら何て妄想なんだと。

「作者が妄想に血走ってしまったなら、皆叱るしかないじゃない!!」
って事でもう叱ってください。・・・反省はしている。後悔はしていない。

何かこんな妄想作者ですいません。本当。
でも思いついちゃったんだからやるしかないじゃないか!!(

・・・こんなデタラメ作者の妄想でしたけど、
これからも本小説を楽しんでもらえる様なら光栄です・・・。

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