真灯真美は魔王である   作:灯乃葵

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すいません、更新遅くなって。ちょっと新しいのでも書こうかなぁとか考えてましてですね。すいません言い訳ですねごめんなさい!


08 あなたを見つめる

「....し.....や..ろ.....おき....い.....起きなさい、社!!」

「......ん、くあ、まー...ちゃん?」

「起きた?なら早く立ちなさい」

 

頭を振って意識をしっかり覚醒させると、すぐに周囲を見回して現状を確認する社。どうやら樹海の底にいるらしい。

 

「そっか、私たちバーテックスの攻撃が直撃して.....私気絶しちゃったんだ。ごめんね」

「気にしなくていいわ。気絶してたのも五分ぐらいだったしね」

「けどなんでだろ、精霊がいたのにダメージが入るなんて」

「見てたけど、なんか精霊の防御ごと落とされてたって感じね。で、先に落ちたあんたの方が衝撃強かったみたい」

「これは大赦に意見しとかないとなぁ。あれ、じゃあまーちゃんは私より後に落ちたの?」

「ていうか、あんたの上にね」

「気絶した理由それじゃないのかなぁ.......?」

 

真美は無視してスマホからひーふーみーを呼び出して、頭の上に乗せた。そして画面を『因子一覧』に切り替えて社に問い掛ける。

 

「これのこと教えなさい」

「えーと、私もよくは知らないんだけど。聞いた話によるとバーテックスの力を武器に変換することができるとかどうのこうの」

「ふーん.......」

 

と、その時だ。絡み合う樹木を貫いて、赤い光が降り注いだ。真美と社は即座に反応すると、剣と鉄扇を振るって全ての光を打ち消した。社はスマホを睨みながら言う。

 

「『射手座』だけ私たちの真上にいて、『乙女座』はシンジュ様のところに向かってる!?早くしないと!」

「けど、あの光をどうにかしないと『乙女座』には近付けないわよ?そもそもここから脱出できるかどうかもわからないのに」

「だからって!」

「だから、私に任せてみない?」

「ふえ?」

 

『因子一覧』画面にある『魚座』の紋様を社に見せながら得意気に言う。

 

「これを使う。なにかいけそうな気がするの」

「そ、そんなのてきとー過ぎだよ!いきなり使ったこともない力使うなんて!」

「あら、いいじゃない。大丈夫、私のこと信じなさいって。女の勘って奴よ」

 

その言葉に社は少し考える素振りを見せる。真美に全部を任せるというのが余程不安のようだ。その不安は真美のことを下に見ているとかではなく、単純に心配なのだ。

 

「.......わかったよ。まーちゃんのこと、信じるね」

 

だから、社は笑顔を見せることにした。目の前の『友達』が安心できるように。

 

「ありがと」

 

一言だけ真美は言うと、黒い剣をバーテックスがいる空に振り上げて、高らかに宣言した。

 

「さぁて、それじゃあ始めよう。楽しい楽しい逆転劇をね!!」

 

スマホに表示された『魚座』の紋様をタップする。すると、画面から色とりどりの光が溢れ出す。光が少しずつ集まり、何かを形作っていく。それは、深い青をした三匹の『魚』だった。魚たちはゆっくりと真美の周囲を立体的な円を描くように泳いでいる。

 

「.......これだけ?」

 

ポツリ、と社が呟いた。真美も首筋から冷や汗が大量に出ている。そして突然カッ、と両目を見開いて叫んだ。

 

「あんな化け物倒して、これだけって!『魚座』もっと仕事しなさいよ!全国の魚座の人に謝れ!」

「ま、まーちゃん、それは逆ギレ過ぎるよぉ」

「だって!これだけって!もっと気合い入れて作りなさいよ大赦!」

 

さんざん無茶苦茶なことを言った真美がついにシンジュ様にまで愚痴ろうとした、その時だ。もう一度赤い光が樹海を突き破ってきた。

魚に気をとられた二人はまた反応が遅れた。

このままでは先程と同じになってしまう。そんな考えが頭をよぎり、思わず目を閉じる社。

だが、いつまで経っても衝撃はこなかった。

 

「ーーーーなるほどね」

 

嬉しそうな真美の声が聞こえたので、恐る恐る目を開ける。そして驚いた。何故なら、社と真美を包むように青い何かが展開していたからだ。どうやらこれが光を防御したらしい。指で触れてみると、チャプンと柔らかい感触が返ってきた。

 

「これって.......水?」

「この魚たちが出してるみたい。水のバリア、ってとこね」

「す....すごいよ!これなら『射手座』を倒すことができる!」

「じゃあ、『射手座』は私に任せなさい。あんたは『乙女座』を足止めしてて!」

「了解!」

 

ドン!!と真美が真上に跳んだ。同時に、何本もの赤い光が真美に向かって放たれる。だが真美は速度を緩めずに、光と真正面から衝突する。そして、水のバリアに触れた途端、全ての光が欠片も残らずに消えた。樹海を抜ける後ろ姿を見つめて社は呟いた。

 

「まーちゃん、私も頑張るからね」

 

 

「.......見えた!!」

 

『射手座』の元に辿り着いた真美は、迫る鉤爪や赤い光を水のバリアで防御し、十字の中心点に剣を突き立てた。ギャリギャリギャリギャリ!!と剣とバーテックスの皮膚がぶつかり合い、火花が散る。 その火花も次々と水の膜に当たり、音をたてながら蒸発していく。反射的に目を閉じそうになるが、それを気合いと根性と押し止め、剣を握る手に更に力を込める。

だがバーテックスも貫かれるのを待っているはずがない。火花が散る十字の中心に赤い光が収束し、真美の目の前で放たれる。

 

「っ!?」

 

剣の切っ先が光線に圧倒されて押し返された。負けてたまるかと腕に力を込めるが、少しも前に進めない。水のバリアのおかげで真美が地面に墜落したりダメージを負うことはないが、これでは『射手座』に攻撃できない。しかも、今しがた作った刺し傷も完全に回復している。

こうなってしまえば、高い自己修復能力を持つバーテックスに真美が勝てるはずがない。

 

「それなら!!」

 

光線の射程から外れるように、真美は『射手座』の上に跳ぶ。そこから剣を逆手に握り返して、回転しながらバーテックスを斬り付けた。その一撃で身体の中身をさらけ出す『射手座』。そこには、鈍く輝く『御霊』もあった。

真美はもう一度高く跳ぶ。そして、今度こそ敵を貫くために剣を両手で握った。

 

「覚えてなさい、私の敵。私は真灯真美、最強の魔王よ!!」

 

『射手座』がこちらに十字を向けようとボロボロの身体を動かすがもう遅い。バーテックスの肉体が修復されて『御霊』が見えなくなる前に、真美の剣が貫いた。

 

「ひーふーみー!餌の時間よ食べなさい!」

「「「ワンワン!」」」

 

黒い三つ首精霊が嬉しそう尻尾を振りながら光の群れに飛び付いて、んぐんぐと美味しそうに咀嚼する。光の全てをひーふーみーが食べ尽くすと、前回と同じように真美のスマホが震えた。見ると画面には『新たに因子『射手座』を追加しました』の文字が。『因子一覧』を確認すると、『魚座』の隣で赤銅色の紋様が輝いていた。思わず気を緩めそうになるが、すぐに引き締める。まだ戦いは終わってないのだ。スマホで社の位置を確認すると、かなり後しにいた。そして『乙女座』も同じ場所にいた。

真美は後ろを振り返る。視線の先にはスマホが示す通り、白の勇者とバーテックスがいた。

 

「.......」

 

それを見た真美が無言で指を動かす。指先がスマホの画面に表示されている『因子一覧』にある一つをタップした。その因子の名は『射手座』だ。

先程と同じように光が溢れ、形作っていく。現れたのは赤銅色の長弓だった。弦に指をかけると現れた矢を力一杯引く。

 

「撃ち抜きなさい!!」

 

赤い流れ星が天を翔る。途中で矢が何本も分裂して、まるで流星群のようになる。

 

「やああああああしいいいいいいいろおおおおおおおおおおおお!!よおおおおおおけええええええなああああああさああああああいいいいいいいい!!!!」

 

腹の底から思いっきり叫ぶ。すると社がこちらを向いて、次に迫ってくる流星に気付き、最後に慌てて真横に避けた。

 

そしてーーーーーーーバーテックスの、『乙女座』の体躯が『御霊』ごと穿たれた。

 

ひーふーみーが『乙女座』の『御霊』から溢れる光に向かっていくのを見て、今度こそ真美は安心して息を吐いた。と、同時に横から抱き付かれた。

 

「まーちゃあああああん!やったねえええええええええ!!」

「これも社のおかげよ。ありがと」

「えへへ」

「どうしたの?」

「まーちゃんがまた名前で呼んでくれたし、『ありがと』って言ってくれたから」

「.......」

「あ、顔真っ赤!かわいいー!」

 

そうやって楽しそうにじゃれつく二人を、たくさんの花びらが包み込んだ。

 

 

花びらが開けた時、二人が立っていたのは楠木公園ではなく学校の屋上だった。どうやら戦いが終わった後は確実にここに飛ばされるらしい。

 

「はー、今回も疲れたね」

「けど勝てたからいいじゃない」

「うん!.......それで、早くまーちゃん教えてよ!」

「.......あー。ちょっと長くなるわよ?」

「ドンとこーい!」

 

元気良く胸を叩く社。真美は思わず微笑みながら、まず最初に何を話そうか考えて、口を開いた。

 

「『小さく世界を変えてみなさい』」

「ふえ?」

「これ、私の従姉妹の言葉なの。大きな世界を変えることは難しいけど、自分の世界だけは変えられる、変えることができるって意味なんだけど」

「いい言葉だね!さすがはまーちゃんの従姉妹!」

「ありがと.......私さ、小さい頃に親をどっちも事故で亡くしてるんだよね」

「.......え、そ、そうなの?」

「うん」

 

真美は頷いて、なんとなく社から視線を上げて夜空を見上げた。そして予報では今日は満月だった事を思い出したが、残念ながら雲に隠れて見えなかった。真美は視線を社に戻して続ける。

 

「で、厄介になれる親戚がその従姉妹の家族しかいなくてさ。私はそこに預けられることになったの。けどまぁ、その従姉妹も家族が死んで一人暮らしだったんけど」

「お母さんとお父さんがいなくてしくなかったの?」

「そう、ね。寂しくはなかったかな。観月姉』のおかげで毎日がすごく楽しかったから」

「楽しい....?どうして?だって、まーちゃんと観月さんは家族を亡くしたんだよ!なのにどうして毎日が楽しいって思えたの!?」

「初めて観月姉と会ったときにね、言われたんだ。『小さく世界を変えるわよ。そしたら寂しくなくなるから』って」

「.......」

「だから、寂しくはなかったの。だって両親が死んで終わったはずの私の世界を観月姉が楽しいものに変えてくれたから」

「恩人、なんだね」

「うん。本当に、観月姉には感謝してるし、恩人だと思ってる。けど、それと同時にねーーーーーー」

 

その時、雲が晴れて満月が顔を出した。月の光が真美と社を照らした。思わず社は息が詰まった。何故なら、照らし出された真美はーーーーーーー

 

「私が殺した人でもあるの」

「..............え?」

 




感想やここ間違ってるよ!など待ってます!

追記 新作上げます!こうご期待!.......あ、やっぱ嘘です。あんまりこうはしないでください

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