ソードアート・オンライン ー閃光の弟の嫁は黒剣士ー   作:雄大

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なんとか続きを投稿。
読んでもらえると幸いです。


第3話 隠れた乙女心とスパルタ教育

自然と鼓動が速くなっていった。

仮想世界アインクラッドでもそういった感情面においてもよく作られているしい。

草むらから突如現れた青いイノシシ、フレンジーボアを前に俺は剣を握り攻撃体制に入っていた。

敵の強さはスライムレベル。

しかし膨れ上がる恐怖感は止められず息が荒くなる。

本来ならばこの程度の敵を相手に何も恐れる必要はない。

だがこれは遊びじゃなかった。

 

「ショウマ!」

固まっていた俺に叱咤の声がかかった。

その一声を皮切りに俺はソードスキルを発動させる。

自分が狙われていることに反応したイノシシが俺を睨み右の前足をかき、突進攻撃の準備に入った。

このまま怯みまた固まってしまえば間違いなく大ダメージをくらう。

下手をすれば体力ゲージの残ヒットポイントが0となり俺は死ぬことだってある。

最早ゲームとしての定を失ってしまったこのSAO。

俺は恐怖心を捨て去り冷静にイノシシの弱点へと照準を入れる。

そして俺は真っ向からブーストしたスラントをイノシシのたてがみに放った。

 

「ギイィィィィィィ!!!!」

 

その結果イノシシは激しい断末魔と共に青いエフェクトを纏いポリゴン状になって消えた。

目の前の敵が消え緊張が途切れた俺はその場に座り込む。

 

「あー、疲れた。やっと上手くいったな」

 

相手の弱点をつきさらに技の威力の上乗せ、片手剣使いである俺には必須な二つのテクニックの習得。

それが俺のこの世界での友人から課せられた最初の課題だった。

 

「お疲れさま、ショウマ。中々良かったよ」

 

「お褒めにあつかり光栄ですよ。勇者様」

 

かつて勇者顔のイケメンだった少女、キリトは女の子らしい愛らしい柔らかな笑顔を向け俺に手を伸ばした。

その手を掴み腰を上げる。

ここが仮想世界でなかったらイノシシとの戦いにより吹き出た冷や汗でべったりだっだろう。

「うー、勇者って言われるとやっぱり恥ずかしいなぁ…… そんなに私のアバター姿って勇者顔だった?」

 

「ああ、もう丸出しだな。何て言うか俺かっけえぇぇぇぇって言うのがひしひしと伝わってきたぞ」

 

「そ、そんなに!?」

 

俺の言葉によりいまさら恥ずかしくなってきたのがキリトは顔を赤らめ、くぅーと変な声を出した。

こうしてみると本当に女の子なんだなと改めて思う。

アバターの姿でいたころは話し方や動きも本物の男プレイヤーにしか思えなかったというのに今のキリトは恥ずかりやの美少女といった感じだ。

いったい何故キリトは態々、女であることを隠していたのだろうか。

男が女プレイヤーのふりをする所謂、ネカマならばまだわかる。

ネカマはアバターが女というだけで他プレイヤーから優遇されやすい。

その為、それを利用しネカマになる悪質なプレイヤーが結構いる。

だから、態々メリットの少ない男プレイヤーになる女性は珍しいと思うのだが。

「ま、聞くのは野暮ってもんか……」

 

「え? 何か言った?」

 

「いや、なんでもねーよ。それよりもはやくしねーと日が暮れるぞ」

 

「うん。そうだね……」

キリトは仮想世界に浮かぶ作り物の夕陽を見つめて顔を曇らせる。

その表情からは決してゲームを楽しむ余裕はない。

突然のデスゲームを突きつけられた俺たちは少しでもこの世界で生き残るためにモンスターを片っ端から狩り尽くしていた。

キリトは純粋に経験値を稼ぎ俺がテクニックを向上させつつ目的地《ホルンカの村》へと向かう。

はじまりの街に残ったクライン、それに名も知れぬプレイヤーたちのことを思うと気が引けるところがある。

だからといって俺に彼ら全員を救うことは出来ないしキリトにどうにかしてやれないかなどと無責任なことは頼めない。

だから例え最低だなんだと言われようが今は俺たちが生き残るために最善を尽くすしかない。

「それじゃあ、これから森の中に入るけどモンスターの反応圏を避けていくから慎重にかつ素早く動いてね。あんまり戦闘ばかりしていても集中力が途切れるだけだから」

 

「結構難しいことをサラリと言ってくれるな…… ま、やってやるさ」

 

俺はキリトに促されるままに、敏捷力ステータスの許す限りの速度で《ホルンカの村》に向かい走り続けた。

 

 

 

「あの…… キリト?」

 

無事《ホルンカの村》にたどり着いた俺たちは、まずこの世界の通貨、コルを補充するためにモンスターを狩って手に入れた素材アイテムをNPCが経営している武器屋に売却していた。

そして、その金でキリトが防具の一つハーフコートを購入し着込む。

のは良い。良いのだがキリトはそれだけでは留まらずじっと武器屋に並べられていたもう一つの防具、 女性用コートとセットになっている少し長いフリルのスカート食い入るように見ていた。

色は黒と地味ではあるが女の子特有の可愛らしさはよく作られている。

あか抜けない女子なんかが着るにはちょうどいいスカートだろう。

とはいえ何故こんなものがゲームの序盤で売られているのか。

防具の説明欄を見ても特にこれといったステータスアップは見受けられない。

寧ろ防御力が下がっている気がする。

完全に趣味目的の服に、しかもデスゲームとなったこの世界で金をだすやつはいないだろう。

それはゲーム経験歴の長いであろうキリトが一番よくわかっているはずなのだが彼女は相変わらずじっと見ている。

俺の声かけも聞こえないのか無我夢中で何度も残りのコルを確認している様子がなんとも言えない。

 

「おい、キリト」

 

「うー、やっぱり今後のことを考えると…… コルが足りない」

 

「キリトさーん」

 

「だいたい私なんかが女の子らしい格好すること事態が間違っているのはわかってる。普段も男装が基本だし」

 

「ちょっ」

 

「でも今は側にショウマがいるし、男の子の前で女である私が杜撰な格好でいればどんな風に思われるか。下手したら、うわー、コイツ女子力ゼロだわ、ないわーとか言われるかも……」

 

「キリト!」

 

「うひゃぁ!? あ、はい!」

 

あと少しでキリトからなにか黒い物が出てくるような気がした。

俺の声にようやく反応したキリトは奇声を上げると俺に顔を向けた。

 

「あのなー、無理に女子らしくする必要性はどこにもないぞ?」

 

「え!? き、聞こえてたの?」

 

「そりゃ聞こえるだろ。それとも女子力云々関係なしにそんなに欲しいのなら俺のコルを使っていいが」

 

俺とキリトはアイテムを共有していない。

本来ならばパーティーを組みアイテムは一時的(テンポラリ)ストレージに保管されるのだが、俺たちはパーティー申請をしていない。

キリトも勿論、パーティーについては知っているだろう。

だが彼女は未だにパーティーについての事を話さない。

恐らくキリトは、街においてきたクラインのことを思いパーティーを作ることに無意識に抵抗を覚えているのだろう。

それは俺も同じくでお互いに何となく言えないでいる。

その為、アイテム売却によって増えたコルの金額はモンスターを相手に特訓をしていた俺の方が多いので余裕はある。

「いや、いいよ! こんなスカート買ったってコルの無駄使いだしショウマに申し訳ないよ! そりゃあちょっとばかし可愛いーなーとは思っていますけども!」

 

キリトは身振り手振りで購入に対し拒否した。

しかし言葉の裏からは欲しいのがひしひしと伝わってくる。

「…… 本当にいいんだな」

 

「え? い、いいよ! それよりもショウマもコートを買いなよ。それ着れば今よりも少しは防御力が上がるから」

 

じゃあ先に隣の道具屋に行って待ってるからとキリトは武器屋から逃げるように出ていった。

恐らくこれ以上は墓穴をほるとでも思っているのだろう。

「さて…… どうするか」

 

並べられた防具。

俺の視線は革のハーフコート、ではなくフリルのスカートに注がれていた。

 

 

 

先に道具屋にて回復ポーションや解毒ポーションを買えるだけ買っただろうキリトは俺の存在にも気づかずゼロになった所持金蘭を虚の眼差しで見つめていた。

やっぱり服欲しかったんだな……

「おい、キリト。大丈夫か?」

 

「あ、ショウマ……」

 

背後から声をかけた俺に気づき振り替えるキリトの顔は笑顔だったが目は笑っていなかった。

「お前、そんなにおもいつめてのかよ!」

 

「あはは。別にそんなことはないよー」

 

思わずツッコム俺にキリトは乾いた笑いで答えた。

本気で心配に思えてくる。

このまま、SAO攻略不能にでもなると思ったがキリトの瞳が俺の防具を見て虚からゲーマーのそれへと変わる。

 

「あれ、ショウマ? 私が勧めたハーフコートはどうしたの?」

 

俺は武器屋にて防具を購入した。

しかしそれはキリトに勧められたハーフコートではなくシンプルで軽量な革鎧だ。

ハーフコートより全体的なステータスは劣るが値段はその分、安く設定されている。

 

「ああ。俺はアイテム重視でいこうと思ってさ。安上がりなこっちにしたんだ。それに残ったコルで色々買おうと思ってな」

 

軽く言う俺だったがキリトは厳しい対応をとった。

 

「うーん、あんまり私が口出しするのは良くないことはわかっているけど安さ重視で進むのはダメだよ。ショウマにあったステータス重視で進まなきゃ」

 

流石はSAOの先輩。

随分現実的なことで。

さっきまで心を揺るがしていた女の子とは思えん。

 

「わ、わかったよ。今度から気をつけるからさ……」

 

実はキリトにちょっとしたサプライズがあったのだが発表は後にした。

キリトに対するちょっとした反撃である。

 

「うん。じゃあこれから私はクエストの一つ《森の秘薬》をやろうと思うんだけど……」

 

「ん? なにか問題でもあるのか」

 

「いや、そのショウマって正直、このクエストを受けるにはまだまだ未熟な点が多いというか、なんというか」

 

キリトは申し訳なさそくに言うが否定はできない。

キリトに提示された課題、二つのテクニックの習得を完全にこなせていはいなかった。

一度イノシシ野郎もといフレンジーボアを相手に成功したが結局その後は失敗ばかり。

キリト曰く自分は習得に10日もかかったから凄いほうだとフォローされたがデスゲームとなったSAOではそれで満足してはいられない。

 

「そうだな…… まずはテクニックを上昇させなけりゃすぐに死んじまうか。でもだからって何もしないわけにはいかなくねーか? 急がねーと他のプレイヤーたちもどんどん集まってくるし」

 

「だけど急ぎすぎも死を早めるだけだよ。だから私に提案があるの。ホルンカの村にはゲーム序盤として練習用の人形が置いてあるから……」

 

何故だろうか。

俺の背筋に冷たい何かが走った。

この感覚は姉貴が俺に対し無理難題をぶつけたときと同じ……!

 

「今日一日中、できるまで技の空打ちね」

そう言うキリト大先生の笑顔は非常に可愛くどこか狂気じみて見えた。

そんな彼女の提案を今まで頼りにしきっていた俺には断りきれず

 

「ひゃい」

 

我ながらに情けない声で提案を受けた。




今回の話は今作のキリトが女の子であることを強調した部分があります。
それと原作のキリトと違い最初からソロプレイヤーでなくショウマという仲間がいるためほんの少し心に余裕ができている状態です。
その結果、隠された乙女心が溢れでてしまいましたが。
ではまた次回。
感想など待っています!

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