ソードアート・オンライン ー閃光の弟の嫁は黒剣士ー   作:雄大

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遅くなり申し訳ありません。
一話投稿いたしましたのでどうぞ。


第1話 新世界へのダイブ

自室のベットに寝転び俺はナーブギアに手を突っ込みくるくると回していた。

というのは嘘です…… 格好つけました。

実際はナーブギアは重く、とてもじゃないが回すなんて無理だ。

内蔵バッテリーだかが重量をアップしているのだろう。

実際には俺はナーブギアを優しく撫でるように触るっていた。

こんなヘルメットみたいな形のやつが世界初の民生用VRマシンとは驚きだ。

「姉貴は自室で勉強中、母さんは仕事だし、公式サービスの開始もそろそろだな……」

家族の行動を確認し、安全にSAOの世界へ飛び込むための準備は怠らない。

扉に勉強中というプレートを張り付け誰も入らないようにする。

そしてベットに再び仰向けに寝転がりナーブギアを被った。

そしてまるでお決まりの様に自然とその言葉を放つ。

 

「リンクスチャート!」

 

……噛んだ。

そう思った次の瞬間、あらゆる雑音が消え去り俺の視界が真っ黒に染まった。。

すると電子音が鳴りアバターを設定をしてくださいと文字列が書かれたウィンドウが表示された。

ここでどうするかが問題だな……

ネットゲーム上の自分自身は勿論自由に作れるがイケメンに変えるのも気が引けるなぁ。

一瞬女にしてしまおうかなどと考えてしまった思考を振りはらい、結局現実とあまり変わらないようにした。

ただ栗色の癖っ毛をストレートヘアーに変えはしたが。

名前は……特に思いつかないな。

変に格好つけるのも嫌だしな。というか自慢じゃないが俺は名前つけのセンスがない。

考えた末、結局現実と同じ名前、ショウマで登録した。

その後も体格、容姿全てを設定し終えると今度は俺の視界が白に染まり数秒間たちーー

 

目を開けるとそこは広場の真ん中だった。

恐らく中世の町並みをモデルにしたのだろう建造物が立ち並び、頭上には白い雲に広い青空が広がっていた。

あまりのリアルさにしばらく言葉を失い唖然としていたが俺は直ぐに足を進め始める。

一分一秒一コンマでも多くこの世界を遊びつくしてやる。

そんな思いで俺は街中を駆け、フィールドへと向かった。

 

 

 

「来るなぁ! このイノシシ野郎! 鍋にすっぞ!おい!」

 

フィールドに出るなりモンスターと遭遇した俺は、「けっ、イノシシごときが人間様をなめんなよ!」と豪語し剣を振りかざしたものの返り討ちにあい逃げ回っていた。

「ちくしょう! よく考えたらソードスキルの使い方とか全然知らねーし! つーか、いっとくけどイノシシ料理なら最近食ったんだからな! 感想言うと俺は豚の方が好きだ。ザマァみろ!」

 

データ状の知性の欠片もないイノシシに虚勢を張るも奴は逃げる俺の尻に容赦なく突進をけしかけてくる。

顔面からリアルに再現された芝生へとスライディングし俺は、車にひかれた蛙の様なポーズを取ってしまった。

痛みなどありはしないが、恥ずかしさと怒りの感情がふつふつと膨れ上がった。

こんの野郎…… こうなったら起き上がりざまに剣でひとつきにしてやる…… 考えてみたらスキルを無理して使う必要もないだろう。

独自の剣さばきでイノシシの命を絶つ。

そう思い立ち上った瞬間だった。

眼前にイノシシ野郎の平たい鼻面が迫っていた。

 

「ウソーン!?」

 

イノシシの突進攻撃に俺は予想以上に吹っ飛ばされそのまま、後頭部から地面に叩きつけられるーー

 

「あ?」

ことはなかった。

体に感じたのは地面の硬い感触ではなく、一部ゴツゴツとしているが人肌を感じる柔らかい感触。

目を開けて知ったがそれは、人間。プレイヤーだった。

「あんた大丈夫か?」

 

それも凛々しい顔立ちの男。

その男に俺は抱き止められたのだ。

 

「って、恥ずかしいわ!」

 

「うお!?」

 

なんでこんなイケメン面に抱き止められなきゃいけないんだよ! BLか! 腐女子大喜びだぞ。

羞恥心を抱きながら俺は跳ねるようにして男から少し離れた。

すると男は、

 

「あー、い、いきなりごめん。いや、なんというかあんたが今にもやられそうなってたのを見てつい……」

 

「あ、いや別に謝らなくてもいいって。ただびっくりしただけというか…… うぉっ!?」

 

このイノシシ野郎、人が話している最中にまで攻撃してきやがった。

俺が剣を構えると男が前に立った。

俺の方をチラリと見る。

どうやらここは任せろということらしい

男が剣を右肩に担ぐように持ち上げ構えると刃が光を帯びた。

そして光を帯びた刃はイノシシの首めがけて放たれた。

見事命中し、イノノシはぷぎーと短い断末魔を上げるとガラス状となって砕けちった。

「すげ…… 今のがソードスキルか」

 

俺が感心していると、

 

「おーい、キリトぉ!」

 

と軽い感じの声がかかった。

見ると向こうの方から、バンダナをつけ革鎧に身を包んだ男が走ってきた。

「はあはあ…… キリト、いきなりいなくなんなよ! あのフレンジーボアとかいう青イノシシ、全然倒せねーんだけど」

 

「あ、悪い…… 他にやられそうになっているプレイヤーがいてつい……」

 

キリトと呼ばれた男が苦笑いを浮かべながら自身の頬をかいた。

どうやらこの二人は友人らしい。というかこの赤毛男にレクチャーでもしてやってたのか…… あ、だったら、

 

「なあ、俺を仲間にいれてくんないか?」

 

「え?」

唐突に言ったからかキリトは少し困ったような顔を見せた。

しかしそれに反し赤毛の男は満面の笑みを浮かべグーサインを向けた。

「おう、いいぜ!初心者同士仲良くレクチャーを受けようぜ」

 

「っておい! 何勝手に決めてんだよ」

 

赤毛の男に即座にツッコムキリト。

まるで漫才コンビみたいな息のあいかただな。

しかしやはり迷惑だったろうか…… と心配になっているとキリトが頭をかきながら、

 

「えーと、俺は問題ないんだけど…… あんたはいいのか? 俺なんかが相手で」

 

「え?」

 

少し驚いてしまった。

迷惑がられているのかと思ったら、まさかそんな心配をかけられていようとは。

「いやいや、頼んでんのはこっちだからさぁ、別に気にする必要ねーって。むしろ戦いかた教えてくれるんだっつーなら無茶苦茶嬉しい」

 

「そ、そうか? だったら…… まあ」

 

キリトは少し恥ずかしそうに手を差し出した。

握手を求めているのだろう。

俺も手を出し、キリトの手を握り握手を交わした。

仮想世界だというのにちゃんと人の体温や感触が伝わってくる。

「俺はショウマだ。よろしく頼む」

 

「よろしくな。俺はキリトだ。でこいつがクライン」

「おいおいキリト! 名前くらい自分でいわせろよ!」

 

クラインが笑いながらキリトの頭をかき回した。

キリトもやめろよと言いながら笑っている。

なんだろう…… なんだか懐かしい感じだ……

最近はこんな風な光景目にもしなかった。

なんとなく昔を振り返っているとクラインがいきなり背中を叩いてきた。

 

「うし! じゃあさっさと始めーよぜ!」

 

元気な奴だな。少しは感傷に浸らせてくれよな。

キリトもこのテンションにはちょっと慣れていないらしい。

苦笑いを浮かべながら、そうだなと言い向こうを指さしすと俺にとってとんでもない事実を言い放った

 

「あっちにもフレンジーボアがいるから、とりあえず行こう。いっとくけどあのモンスター、スライムレベルだからな」

 

「「え、まじで」」

 

恐らく俺とクラインは初対面でありながら見事にハモったことであろう。

 

 

 

仮想世界アインクラッドに夕陽の淡い光が差し込まれた。

精巧に作られた太陽からなる光はあまりにも綺麗で温かく興奮していた俺の心を落ち着かせてくれた。

それにしてもSAOを堪能している間にいつの間にか昼飯時にまで時間が進んでいたらしい。

草原の上で胡座をかきながら時刻をチェックしているとクラインが歓喜の声を上げていた。

 

「いよっしゃあぁぁ!! イノシシ野郎を連続で2体倒したぞ!」

 

いや、クラインさん。あんたスライムレベルのモンスター2体相手に喜びすきだろ。

でもまあ、さっきまでの俺を考えると人のことは言えないが。

とはいえキリトの優しくも解りやすい教えかたにより俺はかなり上達した。

キリト曰く俺にはかなり才能があるらしいが、一番の理由は教えてくれる本人の腕の良さだ。

流れるような剣捌きでモンスターをあしらう姿は本物の剣士と言っても過言ではない。

それに本日発売のSAOの世界でここまで動けるのも彼がβテスターである事が大きい。

βテスターとはSAO発売前に抽選で選ばれ先行でプレイする資格を得たプレイヤーたちのこと。

今日プレイし始めた俺たちにとって彼等は正しく先導者だ。

と、呑気にしている場合じゃないか。

急いでログアウトしないと、姉貴にばれてしまう。

「わり、二人とも。俺、そろそろ戻るわ」

 

俺が言うとキリトは少し残念そうな顔をしたが直ぐに爽やかな笑顔を向けた。

 

「そうか。じゃあまた、良かったら会おう」

 

「おう。またな」

 

俺とキリトが握手をするとクラインはいきなり立ち上がり、

 

「やべぇ! 俺も早く戻ねーんと。晩飯用にピザ予約注文してたの忘れてた!」

 

「用意周到だな…… まあ、俺には構わず二人とも早くログアウトしなよ。また機会があったら会おう」

 

キリトが笑いながら、今度はクラインに手を差し出す。

クラインも、おうっ! と手を握り返し固い握手を交わしした。

「よし、じゃあ早く戻らねーとな…… あり?」

 

キリトとの握手を終え《メインメニュー・ウィンドウ》を開いたクラインは頓狂な声を上げた。

どうしたのだろうか? 眉を寄せ仕切りに指を動かしている。

 

「ない…… ログアウトボタンがねーぞ」

 

「なに? そんなバカな……」

 

ログアウトボタンがない。

その言葉に俺は一瞬寒気を感じた。

ログアウトできないということは、この世界から離脱することができないということ。いくらSAOに憧れを抱いていたとはいえそれは困る。

そんな俺の心情を他所にキリトは呆れたように、何言ってるんだ、ちゃんと見ろよと言うとクラインの開くメインメニューを除きこんだ。

しかししばらくし間をおくとキリトの表情が強張った。

すると無言でクラインから離れメニューを開く。

咄嗟に俺もそれに続きメニューを開いた。

幾つにも並ぶメニュータブを指で滑らせていく。

本来ならばあるはずなんだ……!

ある、はず……

 

「ない……!」

 

俺は神にも願うつもりでキリトの方を見たが、

 

「確かにないな」

 

「な、本当かよ!」

 

そんな…… じゃあどうやって現実世界に戻れっつーんだ。

「ま、こんな事もあんだろ! 運営側のミスってな。今頃GMコールが殺到してるだろうよ」

 

クラインが笑いながら言った。

確かに…… 普通に考えたならば単なるバグだろうな。

俺の考えすきか。昔から心配性なのは悪い癖だな。

キリトもニヤッと笑うと、

 

「いいのか…… ピザ」

 

「げっ! 忘れてた!」

 

クラインは頭を抱え泣きそうになる。

俺もハハッと笑みをこぼした。

クラインとキリトのおかげで俺の気も少し緩んだきがする。

しかし次の瞬間、リンゴーン、リンゴーンという鐘のような音が突然鳴り響き俺たちは反射的に飛び上がった。

 

「な、なんだ!?」

 

「……!」

 

「んな……っ」

 

三人同時に叫び俺たちは互いに姿を見やり、目を見開いた。

俺たちの体を青色の光の柱が包んでいたのだ。

俺の視界の先にはあった草原の景色と共にキリトたちの姿が薄れていく。

いったい何が……!

俺の持つ知識を絞りだしこの現状を理解し終える前に、体を包み込む光が一際強く脈打ち、完全に俺の視界を奪った。

青の輝きが薄れると同時に俺の視界に再び風景が戻っていた。

しかしそこは、

 

「はじまりの街……!」

 

記念すべきSAO初ダイブの先にはあった世界。

文字どおりのはじまりの場所。

俺は、俺たちは立っていた。

「いったい…… これは」

 

この日、俺は後悔することとなる。

こんな世界に憧れを抱いたことに。

そして落胆し自覚し諦める。

俺には自由などという言葉など似合わないとーー




あらすじにキリト女体化と書いているのにいまだ女版キリトが出ないことに謝罪します。
しかし次回ついに真実が……
ご感想お待ちしております。

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