いぬがみっ!   作:ポチ&タマ

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四話目


第六十一話「リベンジ(中)」

 

 

 地中に埋没していた死神が辺りの土やコンクリートを吹き飛ばして姿を現した。

 胸部には拳二周りほどの穴がポッカリ開いていて、向こう側の景色が覗いて見える。

 穴がゆっくりゆっくり塞がっていく。絶望の君が土埃で汚れた黒のローブを脱いだ。

 

「下等な人間風情が、この私に土を着けさせるとは……!」

 

 初めてローブを脱いだ絶望の君。その姿は少々異様なものだった。

 体幹と上肢。首から下の上半身を余すことなく黒い包帯で覆われていたのだ。何重にも巻かれた姿はまるでミイラや重症患者のようにも見える。

 そして、その表情にも変化が見受けられた。それまで余裕の笑みを浮かべていた絶望の君だが、今はその余裕も消えている。どうやら遊び(・・)は終わりのようだ。

 

「貴様らはただでは殺さん。泣いて許しを乞い、己の運命を呪いながら苦痛にまみれて死ね!」

 

 パチンと指を鳴らすと地面に直径三メートルほどの魔方陣が浮かぶ。

 ダークブルー色の魔方陣が輝くと、中央からナニかが這い出てきた。

 

「紹介しよう。私の眷属マグルアントリオのポチだ」

 

 それは異形の生物だった。見上げるほど大きな体は一軒家ほどの高さ。鋭い目から獰猛な気配が窺え、びっしりと生え揃っている牙で咬まれたら一たまりもないだろう。

 分厚い二本の足で立ってはいるが、どっしりしているため俊敏な動きをするとは思えない。大きな尻尾は根元から先端にかけて円錐状に狭まっている。

 ぱっと見た感じの第一印象は二足歩行する小ぶりの怪獣。ゴ○ラをもう少し人型にしたような感じか。

 死神はその鋭い目で啓太たちを睥睨していながら、意外と大人しくしている眷属の足を撫でた。

 

「マグルアントリオは冥府の最下層に住み着いているモンスターでね。声帯が異なるため話すことはできないが、人間並みの知能を持っている。この図体で魔法も使えるのだぞ?」

 

 自慢げに自分のことを話してくれる主人に眷属のポチは咆哮を上げた。喜びからくる咆哮なのだろうが、その巨体で発せられる声は一種の攻撃である。

 声、というよりは音による衝撃が啓太たちを襲った。吹き飛ばされそうになるのをぐっと堪え、両手で耳をふさぐ。

 

「貴様ら程度が相手ではいささか過剰戦力となるが、まあよい。」

 

 圧倒的優位を確信しているのか余裕を見せる絶望の君。そんな死神を視界に入れながら、はけは小声で啓太たちに話しかけた。

 

「啓太様。この状況で戦力が強化されるのはあまり望ましくないでしょう。なので、あの者は私が引き付けます」

 

 三人でようやく拮抗していた中、はけが抜けるということは単純に戦力が減少するということ。必然的に厳しい戦いを強いられることだろう。

 しかし、はけの言葉ももっともだった。見ただけで攻撃特化なのは分かるし、何より魔法も使ってくるとなると、同時に相手をするのは下策。

 そう考えた啓太はただ一言だけ聞いた。

 

「……大丈夫?」

 

 自身の身を案じてくれる啓太に柔らかな微笑を浮かべたはけは力強く頷いて見せた。

 

「ええ、もちろん」

 

「……気をつけて」

 

「はい、啓太様も。ようこ、頼みましたよ」

 

「うん。はけも気をつけてね」

 

 ようこの言葉に微笑み返したはけは巨大な生物の前まで歩み寄った。

 小さな獣がやってきたのを見てジロッと睨むポチ。自分を前に余裕の表情を浮かべている小さな獣を見て、ポチは内心イライラした。

 冥府にいた頃は誰もが自分を恐がっていた。自分を恐れなかったのは己より強者であった主のみ。

 ポチは今すぐこの無礼な獣を自慢の爪で切り裂いてやりたかった。しかし、まだ主の命令は下されていないため大人しく待機を続ける。ポチは主の忠臣なのだ。

 無謀にも一人で眷族の前に立ったはけを見てポチに命令を下す、それよりも早く。

 

「申し訳ないですが、あなたには私に付き合ってもらいますよ。破邪結界四式・孤月荘!」

 

 はけが扇子を一閃すると、激しく結晶が吹雪く。あっという間に視界を遮り、一体と一人を結晶の風が飲み込んでしまった。

 そして、結晶の吹雪が止むと、二つの影はすでに居なくなっていたのだ。どうやら転移の術で別の場所へ移動したらしい。

 眷属が転移するのを見た死神が顔を歪める。思惑が外れてしまい激昂しているようだ。

 

「下等生物が、どこまで私を不快にしてくれるな……っ! よほど死に急いでいるとみえる」

 

 死神の体から凍てついた霊力が立ち上る。それと同時に威圧感も感じられるようになった。

 啓太たちの動きを阻害するほどの威圧感ではないが、明らかに死神の態度が変わった。

 それまでは啓太たちを格下の相手としてみて舐めてかかっていたが、ここにきてようやく敵と認識し直したのだ。

 神族至上主義である絶望の君にとって、人間は明らかに種族として劣っている下等の生物だ。死を運ぶ者として多くの人間を見てきた絶望の君は人間がいかに脆く、醜く、弱い存在だというのを知っていた。

 そのため、下等な種族である人間に初めて虚仮にされた絶望の君は腸が煮えくり返る思いに襲われていた。

 

「……ようこ、気張っていくぞ!」

 

「うんっ!」

 

 はけが抜けて厳しい戦いが強いられるなか、気合を入れ直した啓太は刀を強く握りしめた。

 地面を陥没させて弾丸のごとく飛び出す啓太。風を纏いながら一瞬で背後を取った啓太は、無防備な背中に向けて刀を横薙ぎに振るった。

 圧倒的な強さを誇る絶望の君だが、『極限体』のスピードには追いつけないことが分かっている。

 予想通り、刀が死神の体を切り裂くが――。

 

「……残像っ」

 

 刀が通過すると死神の体が揺らぎ、掻き消えてしまった。 

 それが死神の残像であると気がついた啓太は咄嗟に振り返りつつ、刀を立てた。

 

「ぬん!」

 

「……っ!」

 

 啓太の背後に回りこんでいた死神が無造作に右ストレートを放つ。

 間一髪のところ刀でガードすることに成功した啓太であったが、押し負け、弾かれたように吹き飛んだ。

 アスファルトを砕き、土煙を巻き上げながら地面の上をバウンドしていく。

 

「ケイタっ!?」

 

「貴様も主とともに逝くがいい」

 

「きゃあ!」

 

 瞬間移動並みの速さでようこに接近した絶望の君は彼女の頭を鷲掴みにすると、啓太の許に投げつけた。

 砂煙を上げて啓太のそばに転がる。お気に入りの洋服が汚れ、破けてしまっていた。

 死神は右手の平を天に掲げた。

 手のひらに闇が集い始め球体を形成していくと、やがて直径五メートルほどにまで膨れ上がった。

 宙に浮かび、自身の身長以上ある球体を啓太たちへと向ける。

 そして――。

 

「消し飛べ下等生物どもっ、身の程を弁えよ! 破滅に導く死の光(ニュートリノ・レーザーカノン)!」

 

 巨大な球体が一回り小さくなると中央から極大の光線が射出された。

 バチバチとスパークしながら放たれた光線は間違いなく、ケイの邸宅を消し飛ばしたやつだ。

 啓太は転がっていたようこを抱き起こすと直ぐにその場を離れた。

 超人的な脚力で空高く跳び上がり、数十メートル先の大木の枝に飛び移る。

 自分たちが少し前までいた場所を光の本流が駆け抜けるのを見届けた啓太たちは、その惨状を目にして厳しい顔つきになった。

 

「……アレはまずい」

 

「うん。あんなの食らったら一溜まりもないよ」

 

 啓太たちの視線の先には、進路上の木々などを消し飛ばして出来た新たな道が延々と続いていた。

 そう、山脈を穿ち、地平線の彼方まで。

 ここが現実世界に影響を及ぼさない裏世界だからよかったものの、もし向こうの世界だったらと考えると、相当の被害が発生したことだろう。

 山をくり貫いたかのように貫通してしまっているのだから、人の目をごまかすのにも限界がある。

 つくづく、この場所を選んでよかったと、改めてそう感じた啓太であった。

 

 

 

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 啓太たちと死神の戦いを離れた場所で見守っていたなでしこは強烈な葛藤に苛んでいた。

 啓太の切り札と思われる技には驚いたし、変貌した姿に戸惑いはしたけれど、それに見合う力が今の啓太にはある。間違いなく、今の啓太は人類最強に近い存在へとなっているといえる。

 しかし、相手は大地を抉り、山々を消し飛ばして風景すら変えてしまうほどの破壊力を持つ死神。一撃でも受けてしまえば、いくら啓太といえども一溜まりもないだろう。人間である以上、肉体が耐え切れるわけがないのだから。

 主とともに戦場を駆ける同僚の顔を見ると、今すぐ飛び込んで行きたい気持ちに駆られる。

 ――ケイタと一緒に戦うのが楽しい! ケイタとならどこまでもいける!

 そう全身で喜びと楽しみを表現しているかのようだった。

 

 ――今すぐ駆けつけたい。ようこさんと並んで、啓太様と一緒に戦いたい!

 

 そう思う一方、脳裏を過ぎるのは遠い記憶。

 苦い過去の出来事と、その時の誓いが今のなでしこを見えない鎖で縛り上げていた。

 

 

 三百年前、その頃のなでしこは今とは違い、少々活発な少女だった。犬神の中でも抜きん出た力と才を持って生まれ、ひまわりのような明るい笑顔をよく見せていた。

 そして、なにより戦うのが大好きだった。一種の戦闘狂。しかし、犬神の山で自分より強い相手はいないため、全力で戦うような機会はなかった。

 奴が現れるまでは。

 当時から『犬神の山』に住み着いていた犬神たちの許にとある妖が手ぶらでやってきたのだ。

 そして、まるで近所に挨拶をしに来たようなノリでこう言った。

 

『気に入った! 今日からここを俺の縄張りにするから!』

 

 身勝手かつ子供のような理論で犬神たちと敵対したのだ。

 もともと犬神は力のある妖であり、犬神の山には数十匹という同胞たちが暮らしていた。さらには盟友である川平一族の助力もあることから、たかが敵一人追い出すのは容易だと誰もが考えていた。

 しかし、その考えはあっさりと打ち砕かれる。この敵が大妖と呼ばれる妖の中でも別格の存在だったのだ。

 活発だった少女のなでしこも、この大妖と戦った。

 犬神の中でトップの実力者だった当時のなでしこは、自分と互角に戦える敵が現れたことに心を躍らせていたのだ。

 

 ――この人、すごく強い!

 ――楽しい! 戦うの楽しい!

 ――もっともっと、戦いたい!

 

 自分の力を惜しみなく振るう快感。戦闘による高揚感。これらすべてがなでしこにとって麻薬のような効果をもたらした。

 いつしか戦いに夢中になり、周囲の被害も省みずに暴れ狂った。この時の彼女は周りのことが見えておらず、ただただ戦うのに溺れていた。

 その結果、近くにあった人間の村を巻き添えにしかけたのだ。

 自分が放った攻撃を受け止めてくれたのは、皮肉にも敵対していた大妖だった。

 大妖は身を盾にして人間たちの村を守ると、なでしこを「なに考えてるんだ、バカ!」と叱った。

 そこにきてようやく自分が何を仕出かしたのか理解した。

 周りを見れば山や森が破壊され、仲間は巻き添えをくらって怪我をしている。

 そして今、危うく本来守るべきはずの人間の村を自分の手で壊すところだった。

 

 生まれて初めて、なでしこは自分の力に恐怖を感じた瞬間だった。

 一旦戦いを始めてしまうと没頭してしまう、戦闘狂としての性。それをようやく理解したなでしこは自責の念にとらわれた。

 そして、誓ったのだ。もう二度とこの力は使わないと。誰かを不幸にする力はあってはならないと思うから。

 なでしこは自分の力を封じて、それを手の届かない場所――天に預けた。

 これが、なでしこが『ならず』である理由である。

 

 

「啓太様……ようこさん……っ」

 

 どこか泣きそうな顔で見つめる視線の先には、激戦を繰り広げている主と友達の姿がある。

 破壊の化身と称してもおかしくないほど、圧倒的な力を振るう死神。一撃でも当たればすべてが終わってしまう状況の中、啓太とようこは果敢に戦っていた。

 その驚異的な身体能力で敵を翻弄し、攻撃を確実に入れる。そして時にはわざと隙を作って相手を誘導させ、ようこに攻めさせる。

 まるで神話の戦いを再現したかのような、そんな光景が広がっていた。

 

「――人間風情が、図に乗るなぁッ!!」

 

「ぐぁは……っ!」

 

 厳しい猛攻の嵐の中、とうとう死神の放った一撃が啓太を捕らえた。

 啓太は強烈なボディブローを叩き込まれ、くの字に折れ曲がる。あまりの威力に呼気がすべて漏れた。

 そして、無防備な背中へ向けて組んだ両手を鉄槌のごとく叩きつけた。

 すでに限界ギリギリで戦っていたのか、地面に激突して『極限体』の状態が解けてしまった。赤銅色だった肌が普段の肌色に戻り、筋肉も萎んでいつものしなやかな肉体へと変わる。

 地面に埋まって動かない啓太を見て、ようこの表情が一変した。

 

「この……っ、よくもケイタを!」

 

「吠えるな、うっとうしいっ」

 

「きゃぁ!」

 

 激昂するようこの攻撃を正面から受け止め、殴り飛ばす。

 重い音とともに吹き飛んだようこは大木に激突すると、力なくずるずると腰を落としていった。

 

「いや、いやぁ……っ」

 

 なでしこは涙目になりながらその様子を眺めていた。

 自分は何をしているのだろうか。なんで何もせずにジッと眺めているだけなのか。

 己の在り方がひどく歪に感じてしまう。

 このままだと、このままだと取り返しのつかないことになる。

 三百年前の、あの日以上の後悔を背負うことになる――!

 

「ふん、下等生物風情が手こずらせおって。苦しみを与えられないのが残念だが、せめてもの慈悲だ。このまま送ってやろう」

 

 宙に浮かんだ絶望の君は頭上に球体を形成し始めた。

 徐々に徐々に大きくなる球体は、やがて数十メートルという巨大なサイズへと成長していく。

 あんなのが降ったらここら一体が吹き飛んでしまう。啓太もようこも気を失っているから、避けられない!

 

「では、さらばだ。少年少女たちよ」

 

 最後の別れを告げて、巨大な球体を落下させる。

 なでしこは震える体を叱咤していた。

 

 ――動け、動きなさいなでしこ! 啓太様たちを見殺しにするつもりなの!?

 

 震えるだけでなかなか動こうとしない体。まるで自分の体じゃないかのような錯覚を覚え、焦りばかりが募る。

 

 ――せっかく出来たお友達なのに! せっかく出会えた主様なのに!

 

 もう一人の自分に語りかけるように、必死に心の中で声を張り上げ続ける。

 

 ――あなたは、最愛の人と親友を、こんなつまらないわがまま(・・・・)で失うつもりなの……っ!?

 

「……っ」

 

 そこまで自問自答してようやく、なでしこは気がついた。

 なぜ自分がここまで頑なに戦おうとしないのか、その理由を。

 体の主導権を取り戻したなでしこは、桃色の髪を揺らして飛び出した。

 必死に足を動かして、一秒でも早く、主人たちの許へ。

 そして――。

 

 すべてを破壊し尽くすダークブルーの球体が啓太たちを飲み込む直前で、その華奢な体を滑り込ませることに成功した。

 

 カッ、と目も開けられないほどの眩い光が辺りを飲み込み、一拍遅れて鼓膜を揺るがすほどの大爆発を巻き起こす。

 地面を、木々や森を、湖を。すべてを吹き飛ばす勢いで破壊の光が円球に広がり飲み込んでいく。

 まるで、この世界を消し飛ばしてしまうかのようなそんな圧倒的な破壊力がそこにはあった。

 やがて光は止み、収束へ向かっていく。

 球体が落下した爆心地はもちろん、跡形もなく消し飛び――。

 

「な……っ! なん、だと……!?」

 

 いや、そこには人影があった。

 両手をかざして、絶対的な破壊から愛すべき主と友を守った一匹の犬神、なでしこが。

 ありえない光景に絶句する絶望の君。

 そんな彼を余所に、なでしこは背後を振り返り、守りたかった人たちの安否を確認する。

 気絶をしてはいるがなんの変わりもない。守りきれたのだ。

 安堵の吐息を零したなでしこは啓太を抱き上げ、ようこのそばに下ろしてあげた。

 二人仲良く大木に身を委ねて眠る姿に微笑む。

 そして、笑顔を消すと、改めて振り返り、絶望の君と対面した。

 普段の柔和な表情からは想像もつかない、冷たい顔。

 絶望の君の背中に嫌な汗が流れた。

 

 ――この私が、気圧されているだと……?

 

 意味不明の現象に戸惑いを覚える死神を見つめながら、なでしこは静かに口を開いた。

 

「私は……醜い女です。許されない罪を犯し、そしてまた同じ過ちを犯そうとしているのですから。そしてなにより、私のわがままで……啓太様たちを見殺しにするところでした」

 

 なでしこが頑なに戦いを拒んだ理由。それはなんてことのない、ただの小さなわがままだった。

 ただ、己の本性を啓太に知られたくない。戦い狂う破壊の権化に成り下がる醜い姿を愛する人に見られたくない。

 知られることで、見られることで、啓太に嫌われて拒絶されることが何よりも恐かった。

 そんなちっぽけで自分勝手な願い。つまらないわがまま。

 目を閉じ、啓太たちとの日々を振り返る。

 啓太と初めて出会って十年。彼の犬神になり、憑かえることになって三年。

 毎日が賑やかで楽しく、充実した時間を過ごしてきた。

 決して裕福だったとは言えないけれど、お金なんてなくても幸せだった。

 初めて憑いた人に、生まれて初めて恋をして。

 ちょっとすれ違った時もあったけれど、かけがえのない友達と一緒にお仕えすることが出来て。

 本当に、幸せだった。

 

 それを壊してしまうのが怖かった。無くなってしまうのが怖かった。

 啓太に嫌われてしまったら、怯えられてしまったら、捨てられてしまったら。

 きっと、自分が自分でなくなってしまう。そんな確信にも似た思いがあった。そんな事態になるのなら、自分は死んでもいいとさえ思う。

 だけど、そんな私のつまらないわがままで、啓太様たちを死なせることになったら……それこそ死んでも死にきれない!

 本性を見られてもいい。嫌われてもかまわない。

 それでも、大切な人を――愛する人に死んでほしくない。死なせたりしない!

 

「ですが、たった一つの願いを叶えてくださるのなら。私は今一度、喜んで罪を犯しましょう」

 

 ――啓太様を守るためなら、私は……。

 なでしこは禁断の言葉を紡ぐ。三百年間、決して口にしなかった、己を縛る鎖を解く言霊を。

 

「<破壊の槌よ。全てを滅ぼす万物の力よ。私は再びたった一つのことを望みます>」

 

 




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