いぬがみっ!   作:ポチ&タマ

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 皆さんの暖かいお言葉を励みに頑張って仕上げました。

 結構原作に引かれる人が多いですね(汗)
 一応、改めて説明します。当作品は原作の設定をかなり弄っており、原作とは異なった点が多々あります。ですので、原作とは別物として捉えた上で読んで頂ければと思います。

 設定を弄ったという話だけで、読者の皆様にこの辺も理解されているものだと勝手に解釈していました。深くお詫び致します。m( __ __ )m

 以下を修正します。
・啓太の台詞を一部修正。


第十五話「条件」

 

 どうも皆さんこんにちは。晴れて犬神使いになりました川平啓太です。

 もう当初はなれないのではないかと不安で心配で絶望に染まり掛けた俺だったが、どうにかこうにかやっていけるようになった。もう、なでしこやようこには足を向けて寝れないな。

 二人には呼び捨てで言いと言われたので呼び捨てにしている。彼女たちは相変わらず“啓太様”と“ケイタ”の呼び方で固定されているが。

 さて、犬神に二匹憑かれた俺だが、犬神使いとしてのステータスは……まあ可もなく不可もなくといったところだ。

 落ちこぼれと呼ばれている俺が犬神を二匹従えることができたため、家中では落ちこぼれ以上普通以下のよく分からんやつという意味不明な称号をつけられた。解せぬ。

 で、目下、避けられない問題と直面しているわけで――。

 

「うーむ。ようこが啓太の犬神になるのはのぉ……」

 

 渋い顔で腕を組むお婆ちゃん。その後ろではなにを考えているのかまったく分からない無表情でようこをジッと見つめるはけが控えている。

 問題というのはようこさんだ。

 そう、お前だよお前。宙に浮きながらなにが楽しいのか俺の頭をパシパシ叩いてるお前だよっ!

 後ろに控えたなでしこがどうすればいいのかわからず困った顔をしているぞ。なでしこの制止を振り切ったからなお前。

 なにがしたいのかまったくわからん……。

 

「ようこはちと問題を抱えておってな、まだまだ犬神として半人前なのじゃ」

 

「問題?」

 

「うむ。まあ、この辺りは追々話すとしよう。それでじゃが」

 

「ん?」

 

「正直、このまま啓太の犬神にするのは時期尚早なのじゃが、しかし既に契約を済ませておる。さすがに破棄しろとは言えん。そこでじゃ」

 

「……」

 

「ようこにはしばらくここで犬神としての修行を積んでもらい、お主の下で働けるとわしが判断したときに禁を解こうと思う」

 

 そう厳かに言うお婆ちゃんにようこが柳眉を上げた。

 

「それじゃあ啓太と一緒にいられないの?」

 

「うむ。まだまだお前さんは犬神として未熟じゃ。しばらくわしの下で修行を積みなさい」

 

「……せっかく啓太と一緒になれると思ったのに! ヤダヤダヤダ! 啓太と一緒にいたい、離れたくないっ!」

 

 俺の頭をギュッと抱きしめてイヤイヤと首を振る。

 足まで絡めて全身で拒絶を表していた。

 

「ようこ。あまり我侭を言うものではないですよ」

 

「なによ、はけはずっとお婆ちゃんといれるからそんなこと言えるのよ! わたしも啓太とずっと一緒にいたいもんっ」

 

 キッと睨むようこに難しい顔をするはけ。

 んー、困った。なんか怪しい方向に話が進んでいってるぞ。

 俺自身、俺の犬神になってくれたばかりのようこと離れるのは少し淋しいしなぁ。

 とりあえず気になったことを聞いてみることにする。

 

「お婆ちゃん。犬神の修行ってなに?」

 

「そうさなぁ、ようこに限って言えば犬神としての在り方や心構えじゃな。……そんな目で見るでない。この子はちと特殊でな。その辺りが犬神としてまだ未熟なんじゃ」

 

 犬神なのに犬神としての在り方や心構えを説くってお前……。思わず可愛そうな子を見る目をしちゃったじゃないか。

 しかし、特殊ねぇ。何か訳ありだとは思ったが。

 ま、そういうことなら話は早いわな。

 

「なら、提案」

 

「うん?」

 

「俺の下、暮らしながら修行する。なでしこいるから修行、見てもらう」

 

「むっ……」

 

「えっ? 私が、ようこさんの……?」

 

 突然自分の名前が挙がりビックリした顔をするなでしこをシャーッと猫のように威嚇するようこ。

 折角お前さんのために交渉してんだから大人しくしてなさい!

 ぺしんっ、とようこの頭を叩き、なでしこを手招く。

 隣にやってきたなでしこの手を軽く握った。頭の上からあーっとの声が聞こえるが無視する。

 

「なでしこに頼みたい。お願いしてもいい?」

 

「ですがようこさんが…………いえ。わかりました。不肖ながらようこさんのお手伝いをさせて頂きます」

 

 一瞬何かを言いそうになったなでしこだったが、目を閉じて軽く頷くと応諾してくれた。

 その目の奥には決意を秘めた色が宿っている、そんな気がした。

 

「……犬神が起こした問題は主人である啓太に責任を問われる。啓太、お主にその覚悟があるか?」

 

 真剣な表情で俺を直視する。その心の奥底までも見極めようとする視線を正面から受け止め、はっきりと頷き返した。

 

「ようこもなでしこも、俺の犬神」

 

「……そうか」

 

「啓太様……」

 

 おいはけ。なんだ、その立派になられてとでも言いたげな視線は。

 なでしこも嬉しそうに微笑むな、照れるだろコンニャロ!

 

「ケイタ……ケイタはやっぱりケイタだっ」

 

 おいおい嬉しいからってそんな抱きつくな。お前の大きい双丘が顔に……ハッ! どこからか殺気が!

 視線だけを向けると、そこには先ほどと同じニコニコ顔なのにどこか恐怖を感じさせる笑顔を浮かべたなでしこさんがいた。

 人知れずガクブルしていると、そんな俺たちを眺めていたお婆ちゃんが感慨深そうに言った。

 

「そこまで言うのならようこをしっかりと教育することを条件に特例として認めるとしようかの。……しかし、あのようこがすごい懐きっぷりじゃのぉ」

 

「そうですね。失礼ですが我が目を疑うばかりです」

 

 そういえばと、今更のように思ったことを口にする。

 本当に今更だけど。

 

「そういえば、お婆ちゃん。ようこ、知ってる?」

 

「……うむ。まあ知ってるには知ってるが……」

 

 チラとようこを一瞥するお婆ちゃん。なんか、そこはかとない不安を感じるのですが。

 おいお前、なにか失礼なことしてないよな?

 

「あっ、言っちゃダメ言っちゃダメ! ケイタには言わないで!」

 

「しかしケイタはお前の主じゃから知る義務があるぞ?」

 

「そうだけど……っ、これは自分から言いたいの。時間がきたらちゃんと言うから!」

 

「ううむ……まあ犬神使いになったばかりのケイタでは荷が重い話ではあるか。あい、わかった。ちゃんと自分で言うんじゃぞ?」

 

「うん! ありがとうお婆ちゃん!」

 

 ……当事者を置いてきぼりにして話を進めないで欲しいんだけど。

 というか、ようこさん。ホントになんもしてないよね? ね?

 なでしこに視線向けると困った笑顔が返ってきた。うん、なんかごめんね。

 

「まあよい、話を進めるぞ。ようこがお主の犬神になるのはまあ条件つきではあるが認めよう。が、それだとこの家に置くことができん」

 

 今まで通りここに住む予定であった俺だが、当然犬神である彼女たちも一緒に住まう。

 しかし、聞くところによると、ブラックな何かを抱えているようこは他の犬神使いや犬神たちに疎まれているらしく、この家に置くことができないらしい。まあ親戚連中とかその犬神がよく来るしね。

 と、いうことで家を出なければいけないために居住と資金の確保が必要になったと。うん、超急な話だよねこれ。

 

「すまんのぉ。住まわせてやりたいのは山々なんじゃが……」

 

「……ま、仕方ない」

 

 お婆ちゃんに無理を言うわけにはいかんか。唯でさえこの人には苦労を掛けてるんだから。

 住まいはお婆ちゃんが紹介してくれるらしい。アパートになるがそこの大家さんとは知り合いらしく、裏の世界も知ってるから色々とフォローしてくれるだろうとのこと。

 いやもう、本当にありがとうございます。当分の資金も一緒にくれるとのことだし、もう大好きだわこのお婆ちゃん。

 

「んー。で、どうしよ?」

 

 その後の資金確保は俺自身でしなくちゃいけないため、仕事を紹介してほしいのだが。

 

「うーむ。普通なら高校生になる十六歳から仕事を紹介するんじゃが」

 

「俺たち、異例」

 

「そうよな。じゃが、若すぎる。中学校に入ったばかりの者に責任ある仕事を任せることはできん」

 

 そう、俺が若すぎる。これが非常にネックとなっているのだ。

 お婆ちゃんは俺に定期的に資金を送るとに言ってくれるのだが、ここまで好意に甘えてそれの上に胡坐をかくわけにはいかない。

 なんとか自分で稼ぐ方法を模索しているのだが……。

 

「いいたいことは、わかる。だけど、仕事に対する責任わかってるつもり」

 

「ですが啓太様。啓太様は中学校に入学したばかりですよね? それでお仕事受けるのはちょっと……」

 

 控えめに意見を述べてくれるなでしこに頷く。

 確かに、今年になって最寄の中学に入学した。しかし、学業と仕事を両立させることはできると思う。

 

「なにも社会人と同じとは言わない。初対面の人に信用されない、わかってる」

 

 こんな中学校入りたての子供に依頼を任せられる依頼主はいないだろう。

 しかし、こんな時に役立つ心強い味方が俺にはいるだ!

 出でよ、謎知識~!

 

「そこで、依頼主とはメールでのやり取り。直に会うの、なでしこ。俺の代理」

 

「ふむ……なるほどのぉ。依頼主には一切顔を明かさないと。それならば依頼詳細はメール、ないしはなでしこが聞けばよいし。解決した後に報酬を指定した口座に振り込んでもらえればよい。しかし、相手が直接顔を見せるようにいったらどうするんじゃ? 依頼主も同行というケースもあるぞ?」

 

「そのとき考える」

 

 ま、そのときはその時だ。

 

「ふぅむ……」

 

「あの、啓太様。本当に啓太様がお仕事をされるんですか?」

 

 背後に控えたなでしこが心配そうな顔で尋ねてくる。

 もう、なでしこさんは心配性だなぁ~。

 

「なでしこは反対?」

 

「そう、ですね。啓太様はまだ十三歳なのですから、今は学業に集中なされて、そういった話は正規の年齢になってからでもとは思います」

 

「いいたいことわかる。でもこれ以上、お婆ちゃんの好意に甘えるのよくない」

 

「ですが、啓太様はまだ子供です。素直に甘えてもよいのでは?」

 

 確かに普通の純粋な子供ならそうだろう。しかし、なんの因果か俺には前世の知識なんてものを持ち、精神年齢が同い年より異常に発達しているのだ。

 中身は大人な俺からすれば良心が痛むのだよ。

 

「試しに依頼受ける。駄目なら甘える。これじゃ、ダメ?」

 

 どっちにしろ、依頼を受けれないようなら援助を受けざるを得ない。

 なでしこはふぅと息を吐くと、小さく微笑んだ。

 

「……わかりました。そこまで言われるのでしたら」

 

「ん。ごめんね。でも、ありがとう」

 

「いいえ。私は啓太様の犬神ですから……。私の方こそ出すぎた真似を致しました」

 

「問題ない。俺を思ってのこと、嬉しかった」

 

 顔を赤くして俯くなでしこさん。そのお尻から生えた尻尾がふっさふっさと波打った。

 やべぇ、超可愛い。うちのなでしこさん超可愛いんだけど。もふりたい……。

 だが、今は我慢だ。自重だ。契約を結んだからといってお互いそんなに親しいわけではないんだ。

 もふるのは親睦を深めてからでも遅くはないさ。もふもふは逃げない。

 

「……儂らの前でラブコメしないで欲しいんじゃが」

 

「ラブ……っ」

 

「よいではありませんか。見ていて微笑ましいですよ」

 

 ぷしゅー、と頭から湯気が出るほど顔を赤くするなでしこさんに、人知れず悶える俺。

 そんな俺たちを半眼で眺めたお婆ちゃんは苦笑を漏らすと大きく頷いた。

 

「まあ、ここは啓太の意志を尊重するかね。近々仕事を紹介するからやってみるとええ」

 

「ん。ありがとう、お婆ちゃん」

 

 よし、これでなんとか繋ぐことができたぞ。あとは上手く切り抜けて依頼を完遂すればいい。

 なにはともあれ、すべては依頼次第だな。

 

「すぴー……」

 

 ――そういえば、やけにようこが大人しいと思ったら。寝てたんかいお前さん。

 ホント、フリーダムな奴だなお前……。

 




原作ようこに比べてちょっと素直で甘えん坊な感じがしますね。
少し、設定に無理があるような気もしますが、色々とやりくりした結果こうなりました。

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