永久の軌跡   作:お倉坊主

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ESを書く間にちまちま執筆してようやく投稿。お待たせいたしました。

余談ではありますが、活動報告の方で自身の経験談を元にした雑記を書き始めてみました。生存報告と文章練習を兼ねて細々とやっていくつもりなので、興味がありましたらお気に入りユーザー登録をとダイレクトマーケティング。

あと空Evo買いました。限定版のパッケージデカい(笑)


第12話 歯車

 西ケルディック街道を北上して道なりに進んだ先、ヴェスティア大森林の一部を観光資源として利用した施設、ルナリア自然公園はそこにある。アーチに掲げられた施設名を見上げながら短い坂を上ると視界が開ける。大きな鉄門の向こうに青々として森林が広がっていた。

 目的地まで来たところで「さて」と一息つく。取り敢えず来てみたはいいが、正直なところここからは無計画であった。

 

「どうする? 一見して異常はないようだが」

「うーん……まずは中に入ってみようか。魔獣はどれも興奮していたみたいだし、その痕跡が残っているかもしれない」

「痕跡っていうと、どういうものなんだい?」

「色々と考えられるよ。食糧がなくなって森の外に出てきたなら果実や樹液が見当たらなくなっている筈だし、もし新しい天敵に追い出されたのなら争った形跡が残っていると思う」

 

 もっとも、前者の食糧不足は考えづらい。もし、そうだとしたら農家への被害は施設等の無作為な破壊より作物への被害に集中していた筈だ。何より広大な森林で食糧が無くなるという事態が起こるとは思えない。

 それなので可能性としては後者の方が高いのだが、ブレードホーンならともかくゴーディオッサーという比較的大型の魔獣が追いやられる相手が存在するという仮定にも疑問が残る。こちらも納得がいくものとは言い辛いだろう。

 だが、どちらにせよ想像にすぎない。実際のところは自分の目で見て確かめるしかないという訳だ。

 

「要するに、お前の得意分野って訳だ。サバイバルならともかくフィールドワーカーみたいな真似は門外漢だからな、そっちに任せるぜ」

「あはは、分かったよ」

 

 肩を竦めて丸投げしてきたクロウであるが、それならそれでトワとしても望むところである。父親譲りの調査能力を活かせるのなら本望である。

 一先ずは自然公園に足を踏み入れるべく、鉄門近くまで進んだ時だった。

 

「おや……? 君たち、すまないが今ここは立ち入り禁止だよ」

 

 鉄門の向こう側から一人の男性が現れる。後ろに引く荷車にはスコップなどの道具類が積まれており、その服は少し土に汚れていた。彼は何者なのか、立ち入り禁止とはどういうことなのか。四人は一度顔を見合わせてから男性に向き直った。

 

「えっと、あなたは……?」

「私はジョンソン。このルナリア自然公園の管理人だよ。そういう君たちは格好からして、どこかの高等学校の生徒みたいだが」

「僕たちはトリスタのトールズ士官学院の生徒です。ケルディックには学院の実習で訪れている最中でして」

 

 ジョルジュの簡潔な説明に自然公園の管理人と名乗った男性、ジョンソンは「なるほど」と感心したように頷いた。きっと、こうして学生が実習という名目で各地を巡っているのが珍しいのだろう。

 それはともかく、取り上げるべきは彼が口にした立ち入り禁止という言葉である。自然公園という名前からして、ここが観光施設として利用されているのは間違いない。それなのに入れないという事は、何か利用者に危険が及ぶような事態にでもなっているのか。

 もしかしたら、それが魔獣被害の原因にも関連しているのかもしれない。そこまで想像したトワはジョンソンに問い掛けた。

 

「すいません、立ち入り禁止という事は何かあったんですか?」

「ああ……それが困った事に、普段は奥地にいる魔獣まで自然公園の方に出てきているらしくてね。おまけに導力灯の効果も薄くなっているようだ。施設の一部が壊されていたから、今しがた直してきたところなんだ」

 

 ジョンソンが引いてきた荷車を見遣る。よくよく見れば、道具類の底には廃材のようなものが転がっている。形状からして、元はベンチか何かだったのだろう。それが何かの争いに巻き込まれたかのようにへし折られていた。

 

「正直、この森をよく知っている私でも入り口近くでの作業が精一杯でね。それ以上、奥に進めば何が起きるか分からない。そんなところに一般客を入れる訳にはいけないだろう?」

 

 表情に申し訳なさそうな色を浮かべるジョンソン。トワたちがこの自然公園の観光に来たものと思っていたのかもしれない。せっかく来てくれたのに入れてあげられないという面目なさがあるのだろう。

 だが、幸か不幸かトワたちの目的は観光ではない。ジョンソンの言葉を聞いて彼女たちは顔を見合わせて頷き合った。

 

「魔獣の狂暴化、ねえ。こりゃ間違いなく」

「ビンゴという奴だろう。周辺への被害はその煽りと言う訳かな?」

「……君たち、何の話をしているんだい?」

「ええと、実はですね――」

 

 話に付いていけなくて不思議そうなジョンソンに、トワは今までの簡単な経緯を含めて事情を説明する。彼に協力してもらった方が、話が早そうだったからだ。

 最近の農家への魔獣被害のこと、元締めに許可を貰って調査に乗り出したこと、魔獣の種類や被害地域などからルナリア自然公園に原因があるのではないかと考えたこと。一通り今回の件について説明する。

 語り聞かせた後、彼は納得したように頷く。なるほど、と前置いて口を開いた。

 

「確かに君たちの推理は当たっているよ。この自然公園にはゴーディオッサーもブレードホーンなどの昆虫類もいる。農家に被害を出していた魔獣はここから出てきたもので間違いないだろう」

「魔獣が狂暴化しているようですけど、やっぱりその影響なんでしょうか?」

「おそらくは、だがね。外縁部を調べてみれば魔獣が外に出た痕跡も見つかると思うのだが」

「今はそれを確かめるより先にやる事があるだろ。その狂暴化ってやつがどうして起こっている原因の方が重要だ」

 

 クロウの言っている事は間違っていない。現段階で魔獣が出没しているのがここであるという事は、ほぼ確定しているのだ。そちらの確証を得るよりも先に原因――魔獣の狂暴化の理由を特定する方が優先される。

出没経路を特定するのは、その原因が解決不能であると判断した場合に必要になる事だ。つまり、これ以上魔獣が出てこないようにするための方策を立てる時である。

 

「ジョンソンさん、狂暴化の原因に何か心当たりはないんですか?」

「ううむ……実を言うと、私もこれほど魔獣たちの気が立っているのを見るのは初めてでね。前にも小競り合いくらいの事はあったのだが」

 

 ジョルジュが改めて問い掛けるが、返ってくるのは悩ましげな声。彼も初めての経験に戸惑っているようだった。

 

「しかし、これほどのものとなると……もしかしたらヌシが関わっているのかもしれない」

「ヌシ?」

「ここの川にデカい魚でもいるのかよ?」

 

 そんな彼の口から、ふと一つの単語が零れ落ちる。トワはオウム返しに疑問を呈し、クロウは適当に思いついた事を言って苦笑いを返されていた。少なくとも、釣りに関する話ではなさそうだ。

 

「ヌシっていうのは、この自然公園で一番強い奴さ。いわばボス猿だね」

 

 へえ、と一同の口から言葉が漏れる。そういった存在が居る事は知っていたが、実際に見聞きするのは初めてのことだった。

 魔獣にも生態系というものは存在する。弱い魔獣は強い魔獣の捕食対象であるし、弱いほど数が多く強いほど少ないというのも変わりない。そしてピラミッドの頂点に存在する魔獣、その中の最も強い個体が俗に言うヌシである。

 

「森について熟知している私でようやく見つけられるような普段は奥地に引っ込んでいる奴なんだが、これだけ荒れているとなると奴の縄張りに踏み込んだ魔獣でもいたのかもしれないな」

「なるほど……しかし、それほど強力となると下手な敵など簡単に追い散らしそうなものですが」

「そうなんだが、実際にはこうした状態が続いている訳だからね。確かめようにも迂闊に近寄れない状況で私も頭を悩ませているんだ」

 

 揃って頭を悩ませてしまう。原因を確かめに行きたいが、ジョンソンの言葉からして不用意に近付けば痛い目を見るのはこちらだろう。興奮したヌシなど一つの災害に等しい。

 こうなったら原因は置いておくとして、一先ずは魔獣が出てこないように対策を立てるべきだろうか。そう考え始めた時だった。

 

「まあ、そうだな……案外、ヌシ同士で派手に喧嘩でもしているのかもしれねえな」

「でもクロウ君、ヌシっていうのはちゃんと縄張りを持っているものなんだよ。それを他のヌシが犯すなんて滅多なことが……」

 

 クロウの憶測にトワが反論しようとして、途中でその言葉を途切れさせた。

 ズン、と鉄門の奥から地響きが届く。森がざわめき、鳥たちが何かから逃げるように飛び去っていく。

 言い知れない圧力、それが暗がりの中から迫ってくる。トワにアンゼリカ、クロウは勿論のこと、ジョルジュとジョンソンでさえそれを感じ取っていた。

 

「……ジョンソンさん、後ろに下がっていてください」

「あ、ああ」

 

 トワの警告に従ってジョンソンが森から距離を取る。場の空気は急速に緊迫したものへと変わっていた。

 腹の底に響くような音が近付いてくる。四人は迫り来る脅威に備え身構えた。

 

「――来るぞ!」

 

 アンゼリカの叫びと、それ(・・)が姿を現わしたのはほぼ同時であった。

 けたたましい音を立てて鉄門の横に広がる木柵を巨大な角が突き破る。切れ味などという上等なものは無い。ただ純粋な力を以てして森と街道を隔てる壁は容易く打ち砕かれた。

 木端微塵になった木柵の奥から巨大な存在が姿を晒す。天を突くように反り立つ一対の巨角、ギシギシと軋む黒光りする甲殻、黄褐色の前翅には無数の傷が刻まれ、それが幾多もの闘争を勝ち抜いてきたのだと窺わせる。人の胴ほどあるのではないかと思わせる刺々しい前肢が持ち上げられ地を震わせた。

 馬鹿馬鹿しいまでに巨大な昆虫型魔獣。それがトワたちの前に現れたものの正体だった。

 

「……まったく、そこの男が余計な事を言ったばかりに」

「おいおい、俺のせいじゃねえだろ!? アレが勝手に出てきたんだっつうの!」

「じょ、冗談言っている場合じゃないと思うんだけどね……」

 

 文句をつけるアンゼリカにクロウががなり立て、ジョルジュが冷や汗を垂らしながら正論を述べる。いつも通りと言えばそうなのだが、生憎と今は笑っていられるような状況ではなかった。酷く興奮した様子で目をギョロギョロとさせている巨大魔獣の前でふざけている余裕などない。

 顔を蒼くさせているジョンソンに視線であれは何かと問い掛ける。返って来たのは首を横に振ることによる否定の意だった。

 

「あんなのは私も見た事が無い……も、もしやヴェスティア大森林の方から……?」

「……あれもヌシという事なら説明はつくね。ヌシの縄張り争いが起きて、その影響で他の魔獣も森から追いやられていたりしたんだ」

 

 これほど巨大な魔獣が争い合えば周囲への被害も洒落にならない。農家を襲っていた魔獣たちもまた、生態系の頂点を巡る闘争の煽りを受けた被害者だったのだ。

 

「ジョンソンさんは周りの農家の人たちに避難を呼びかけてください。それとケルディックの領邦軍に応援の要請を」

 

 だが、明らかになった事態の真相もこの状況を前にしては些事に成り下がる。更なる脅威が明確な形で迫っているのだから。

 この興奮具合からして、ヌシは確実に周囲の人々に被害を与える。今までに被害を出してきた魔獣のように、いや、今まで以上の甚大な被害を。それを可能にする力を目の前の存在は持っている。

 だからトワは努めて冷静にジョンソンに必要なことを頼む。今にも街道に向けて進撃を開始しそうなヌシから目を離さないようにしながら告げると、視界の外から困惑した雰囲気が伝わってくる。

 

「そ、それは勿論だが、君たちはどうするというんだ?」

「ここで足止めをします」

 

 得物を抜刀し、キッパリと言い切ったトワにジョンソンは絶句する。規格外の魔獣を前にして、その小さな体躯と刃で立ち向かうのは如何にも無謀に見えただろう。抗弁する気配を察して、トワはその前に言葉を続けた。

 

「大丈夫です。四人がかりなら倒すはまだしも、何とか撃退はできるかもしれませんし、自分たちも無理はしないつもりです」

「まあ、元締めに無理はしないと約束している。そこらへんを破る気はありませんよ」

「俺は正直、今すぐ帰って寝たい気分なんだがな」

「こらこら、混ぜっ返さない」

 

 それぞれ武具を構えながら四人四様の言葉を口にする。げんなりした表情で文句を零したクロウのおかげで、何とも締まりのないものになってはいたが。

 

「~~~~っ! すぐに助けを呼んでくる!」

 

 だが、そんな返答でも自分たちの覚悟を伝えることは出来たようだ。

 意を決したように走り去っていくジョンソン。それを見送って、トワは正面に向き直りながら「さて」と仕切り直す。

 

「なんか大事になっちゃったね。三人ともごめんなさい」

「なに、付き合うと決めたのは私たちさ。そこで文句を垂れている男もね」

「分かってるっつうの。まあ、取り敢えず……」

 

 クロウの銃口が向けられる。ジョンソンの後を追い、街道に進もうとしたヌシへと。

 

「こっち向きやがれ、デカブツ!」

 

 銃声と共に弾丸が吐き出される。ヌシの頭部に向けて放たれたそれは寸分違わず標的に吸い込まれ……金属音のような音を響かせて、明後日の方向に弾き返された。

 ヌシの目がギョロリとトワたちに向けられる。どうやら完全に敵と認識されたようだ。ジョルジュが「ははは……」と苦笑いを零した。

 

「いやぁ、硬そうだね」

「おや、随分と余裕がありそうな態度じゃないか」

「冗談はよしてくれ。笑うしかない心境でいるだけだよ……もっとも、逃げるつもりもないけどね」

「その意気やよし。せいぜい踏ん張ってくれたまえよ」

 

 全員、心の準備は出来ているらしい。その様子を見てトワは自然と口元が緩んだ。

 それをすぐさま引き締め直し、刀の切っ先を前翅を広げて威嚇するヌシへと向ける。獣の雄叫びとは異なる声ならぬ叫びにも怯まず、トワは号令を発した。

 

「倒すことは考えなくていい。街道に進ませず、森に追い立てる事を優先して。行くよ、みんなっ!」

「「「おおっ!!」」」

 

 四人が強大な敵に立ち向かうべく走りだし、ヌシがその巨大な角を振り上げる。

 初めての試験実習、その趨勢を決める戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 振り上げられた巨角。ヌシは立ち向かってくる四人に対してそれを上から叩き付けんとする。それぞれが攻撃の範囲から抜け出るべく散開した直後、巨角は大地へと直下する。

 足元からの激震、罅割れる大地、規格外の魔獣の一撃は自然の猛威に似ていた。思わぬ衝撃に走る足を止めさせられたジョルジュがうめくように声を上げる。

 

「これは、喰らったらタダじゃ済まないね……!」

「分かっているなら動きを止めない事だ。そら、次が来るぞ!」

 

 アンゼリカの叱咤激励に突き動かされるように、ジョルジュは立て直した足で必死に走る。その体があった場所に太い節足が突き立てられた。

 ヌシの巨体はもはや昆虫型の魔獣のものではない。いかなる過程を経てその巨躯を持つに至ったのかは想像するしかないが、普通では考えられないような長い時を生きた魔獣であるのはまず間違いない。それは黒光りする甲殻に年輪のように刻まれた古傷の数々が物語っている。

 そして気の遠くなるような年月を闘争と共に過ごしてきたヌシには、戦いを乗り越えてきた中で確かに積み上げてきた経験があったようだ。四人の中で最も動きが鈍い相手、すなわちジョルジュに狙いを定めたのか、彼に対して執拗に攻撃を続けようとする。

 

「クロウ君、お願い!」

 

 それに気付くや否や、間合いをはかっていたトワはヌシへ向けて疾駆した。走りながら発した言葉の返答は銃声。二丁拳銃より放たれた弾丸は先と変わらず弾かれるが、確かにヌシの気を引いた。

 巨躯が動きを止め、銃弾の送り主に目が向けられる。作り出された隙を利用し、トワは死角となる横合いから斬り込んだ。

 頭部と前翅の継ぎ目、鋼鉄の如き甲殻の庇護を受けない箇所。斬撃は生身のそこを傷つけ、迸った体液が地面を汚す。痛みにヌシは唸り声のような音を発し、自身を傷つけたものを薙ぎ払うように巨角を振るう。一撃の後にすぐさま離脱したトワは、そのままジョルジュから遠ざかるようにヌシを引き付けた。

 

「トワ!」

「そっちは体勢を立て直して! 場当たりで勝てる相手じゃない!」

「ちっ、無理すんじゃねえぞ!」

 

 助太刀すべく駆け出さんとするアンゼリカを言葉で押し留める。この巨躯をどうにかするには一人の力ではどうにもならない。まずは準備を整える必要があった。

 囮を買って出た形のトワに、怒鳴り返して窮地を脱したジョルジュの元へと駆け寄っていくクロウ。それに頷きながら、トワは回避と観察に専念する。

 巨大な一対の角による振り下ろしに薙ぎ払い、本来であれば滑り止めのものが鋸の刃のように連なる太い足、そして何よりその巨体による重圧。ヌシを脅威たらしめる矛は主にその三つだろう。加えて、その甲殻は銃弾を弾くほどに堅牢。まさに難攻不落だ。

 当たれば肉を削がれそうな足を、受ければ押し潰されそうな角を、慎重さと大胆さを織り交ぜて避けていく。絶え間なく動き回りながら、トワは事態を打開する方法を見出さんと思考を巡らせる。

 

「腹に潜り込む? いや、それだと潰されちゃうから……わわっ!?」

 

 甲殻の無い腹を狙うことも考えるが、それはあまりにもリスクが大きい。そうこう考えるうちにヌシも動きを変えてくる。角で樹木を挟むと、それを容易く引き千切って投げ飛ばす。慌てて地に身を飛ばしたトワの背後を樹木が埋め尽くす。

 地面を転がって即座に立ち上がる。前翅を振るわせて威嚇するヌシ。仲間は準備は出来ているものの手を出しあぐねている。どうすればこの脅威を退けられるのか、それが分からないからだ。

 どこに、どのタイミングで、どのように攻めるのか。戦術リンクが繋がっていない今、四人が暗黙のうちにその一致を図るのは不可能に近い。普通の魔獣相手には誤魔化しつつ戦えてきたが、これほどまでに強大なものには一つのミスが命取りになりかねない。

 だから下手に手を出せない。例えば、よかれと思って放った銃弾が、味方を傷つける可能性を孕む状況では。

 

(でも、このままじゃ……!)

 

 かと言って、現状維持も愚策である。ヌシがトワたちを脅威と認識しなくなれば、それは街道への侵攻が再開する事を意味する。なんとか有効打を与える事で注意を引き付けなければならない。

 改めてヌシの全体を見渡し、突破口を探し求める。雄々しい角、攻撃的な足、黒鋼の甲殻まで見て――ふと、異質なそれが目に入った。

 掻い潜って来た闘争を物語る古傷の数々。それに紛れるようにして、幾つか真新しい傷がある事に気付く。それは一部が欠けた角であり、他に比べて動きの鈍い足であり、罅割れた甲殻であった。

 その傷が何に与えられたものなのか、今はどうでもいい。付け入るべき箇所を見出したトワは、そこを最も効果的に叩く策を即座に練り上げる。

 痺れを切らしたかのように突進してくる巨体を躱し、トワは跳躍して一息に三人と合流した。

 

「っと。みんな、今から言うことを聞いて欲しいんだ」

「な、なんだい?」

 

 追い掛け回されて、荒くなっていた息を何とか整えたジョルジュが問う。律儀なそれに、トワもまた律儀に返す。

 

「攻撃の仕掛け方を、私の言う通りに従って欲しいの。方法、箇所、タイミングまで、全部だよ」

「全部……」

「ふう、そこまで言うのなら、もちろん理由もあるんだろう?」

 

 確認するように話すアンゼリカに「うん」と頷く。樹木群に突っ込んだヌシが振り返り、再びこちらに向き直るのを油断なく見据えながら、ごく単純な理由を最小限の言葉で伝える。

 

「私たちの連携は未完成。下手に合わせようとしたら、きっとどこかで破綻する。だから私が全部の指示を出す。みんなの動きを把握して、一連の流れを作り出す事であれを撃退するの」

 

 個々の連携が難しいのならば、意志を一元化してしまえばいい。どのように動くべきかを示す司令塔を設ける事で、四人がお互いを阻害する事なく攻撃を仕掛けられるよう調節するのだ。

 三人とも、理解は出来たのだろう。だからこそ雰囲気に戸惑いが混じる。クロウが憮然とした様子で口を開いた。

 

「へっ、要するに命を預けろって事だろ」

「…………」

 

 皮肉っぽいそれに黙って頷く。全く以てその通りだった。

 動きを司令塔に一任するという事は、自身の命運をその人に預けるという事と同義。判断を誤れば敵の攻撃をまともに喰らう可能性すらある。だが同時に、その判断を信用しなければ連携は成立しえない。疑念が混ざってしまえば、そこに乱れが生じるからだ。

 命を預けるのに抵抗を感じない人間はいない。だが、そうしなければこの窮地を乗り切るのは困難だろう。さもなくば自分たちの後ろにある平穏が乱される。

 ヌシが次なる攻撃を仕掛ける時が刻々と迫る中、一秒の躊躇すら惜しまれる。

 

「……まあ、俺は別にいいぜ。指示を出すならさっさとくれよ」

 

 そんな中、いの一番にクロウが答える。偽りの仮面を被り、他者を信用しているとはとても言えなかった彼が。

 思わず「え……」と口から零したトワに、クロウは冗談気味に問い掛けた。

 

「んだよ。まさか自信がねえとでも言うつもりか?」

「……そんなことないよ。きっと上手くいく……ううん、絶対に上手くいかせてみせる!」

「ふう、これは良いところを取られてしまったな。私としたことがこんなチャランポランな男に後れを取るとは……」

「こんな時にまで喧嘩を売らなくてもいい気がするんだけどね……」

 

 それに確固たる意志を示したトワを目にして、アンゼリカは自身の行動の遅さを嘆き、ジョルジュはさりげなく悪口を混ぜる彼女に苦笑いを零す。同時に、その瞳からは迷いが消え去っていた。

 未だトワたちの間に心からの信頼が築かれたわけではない。戦術リンクが繋がらない事からもそれは確かな事実であった。

 だが、この実習を通してトワは信用を勝ち得ていた。目的の見えない状況でも率先して動く行動力、出身も考えもバラバラな四人を纏めてきた統率力、そして何よりこの調査を決めた時に見せた強い意志によって。彼女であれば、きっとやり遂げるだろうと。

 

「グダグダ言ってねえで準備しろ。そろそろ奴さんも向かってくるぞ」

「分かっているさ。さあトワ、こっちはいつでも構わないよ」

「僕も足手まといにはなりたくないからね。君の指示に全力で応えるよ」

 

 だから三人はもう迷わない。今この時はトワに身を委ね、目の前の敵を打ち砕くために全力を尽くす。それが彼らの出した答えだった。

 今にも襲い掛からんとするヌシの前に臆する事もなく立ち、自身の指示を待つ三人にトワは小さく「……ありがとう」と呟いた。これ以上の言葉は必要ない。後は結果を以てその礼とするべきだろう。

 脳裏に全員の動きを思い描く。ヌシはどのように攻撃してくるか、それにどのように対応し、堅固な防御を突き崩していくのか。シミュレーションの果てに一つの結論をだし、トワは声を張り上げる。

 

「クロウ君は後衛でアーツによる支援、ジョルジュ君は側面の死角に回り込んで! アンちゃんは私と一緒に注意を引くよ!」

 

 応、と威勢の良い返事と共に四人が動き出す。ヌシもまた、その巨体に攻撃の挙動を見せる。

 再び突進を仕掛けようとする相手に妨害をするのはクロウ。ARCUSを駆動し、機械動作による魔法を紡ぎだす。放つは火のアーツ、ファイアボルト。概して昆虫型が苦手とするそれが眼前に迫れば、さしものヌシも攻勢から守勢に回り身を守る。

 その隙を突き接近するトワとアンゼリカ。しかし、仕掛けるにはまだ早い。牽制するように一撃を加え、狙いが自分たちに移ったのを確認して散開する。死角に回り込むジョルジュから目を引き離すように。

 

「っ! クロウ君、もう一回アーツの用意を! 私とタイミングを合わせて!」

 

 角の一撃を横っ飛びに躱しながら声を張り上げる。態勢を整え、中衛の距離に位置取って更に指示を出す。

 

「ジョルジュ君は怯んだ隙に側面の甲殻の罅に一撃を! アンちゃんは左後ろ脚の関節部に攻撃して支援して!」

 

 口から出てきたのは攻撃部位まで指定する具体的なもの。その内容にジョルジュとアンゼリカは目を見開く。

 アーツで出来た隙を狙うと言えども、ジョルジュの機械槌は出が遅い。死角から接近しても迎撃を喰らう前か後かは五分五分といったところ。アンゼリカへの指示にしても、ただの脚一本を狙ってどうなるのかと思われても仕方がない。

 

「――分かった! 任せてくれ!」

「左後ろ脚……なるほど、了解だ!」

 

 だが、それでも動きを止めるものはいなかった。トワの言葉を信じると決めたのだ。今になってその決定を覆すほど、彼彼女らの覚悟は軽くない。ジョルジュは意気込み、アンゼリカは指定された部位を見てその意図を理解した。

 

「そら、行くぜ。ヘマすんなよ!」

「クロウ君こそ先走らないでよ!」

「「ファイアボルト!」」

 

 背から響く煽り文句に言い返しながら駆動を完了する。アンゼリカが引き付けるヌシに向かい、二つの火球が放たれた。その身を舐める火に怯むことで生じる僅かな隙。そこに機械槌を肩に担いだジョルジュが右側面に突っ込んでいく。

 しかし、苦手とする火とはいえ所詮は下級アーツ。さして時間を置くことなくヌシは硬直を解き、視界の隅に映った最も動きの鈍い標的に目を付ける。

 迎撃せんと右脚が振り上げられる。鋸刃のようなそれに直撃すればひとたまりもないと分かっていながらも、ジョルジュは歩みを止めはしない。ヌシの奥、自分とは反対に位置するアンゼリカが必ずやってくれると信じていたから。

 

「コオオォォ……」

 

 そして、その信に彼女は見事に応えてみせた。

 

「破ぁっ!!」

 

 零勁。闘気を滾らせ全力の一撃を左後ろ脚――傷を負い、動きを鈍らせた部位へと叩き込む。

 衝撃力を余すことなく敵に伝え、立ち塞がるものを粉砕する拳を受けたヌシの反応は顕著であった。悲鳴のような声を上げ、片側の脚を上げていた状態から体勢を崩されて完全な隙を晒す。もはや、ジョルジュを阻むものは存在しなかった。

 

「どっせええええええええい!!」

 

 機械槌が唸りを上げる。導力機構が内部で指向性を持った爆発を起こし、推進力に変換されたそれは鉄塊を突き動かす原動力となる。振るう本人が扱えるギリギリの速度に加速された鉄槌は凶悪な威力を以てヌシの横っ腹に叩きつけられた。

 罅の亀裂が広がる。巨躯を横滑りさせるほどのあまりある衝撃に甲殻は耐え切れず、ついに守りを崩され無防備な生身を晒す。その弱点を、一連の流れを頭の中で描き切っていた彼女は逃がさない。

 アーツを放った直後から動きだし、既に標的は正面に捉えていた。甲殻が砕けた範囲は僅か、そして彼我の距離も刀の間合いではない。それでも問題は無かった。

 手に握る愛刀に力を籠め、一回転するように身を捻る。溜め込んだ力を解き放つように、トワは力強く前に踏み込んだ。

 

「――神風!!」

 

 振るわれた刃から闘気の斬撃が飛ぶ。戦技が生み出した遠当ての剣閃は、寸分違わずヌシの柔身を斬り裂いた。

 響く甲高い悲鳴。今までのそれとは比較にならないであろう苦痛にヌシは身を捩る。

 

「ふう……ふう……や、やったのかい?」

「ううん、倒しきれてはいない。でも、これで……っ!?」

 

 これで、森に引き返すはず。そう言おうとしたトワはヌシが見せた動きに口を閉ざさざるを得なかった。

 巨角が乱雑に振り回され、刺々しい脚が無茶苦茶に周囲を荒らす。あまりの暴れようにアンゼリカもジョルジュも後退する。

 暴走。そう表するしか出来ない行動をするヌシは興奮を越え、もはや狂っているようにさえ見えた。その黒い目に理性の色は無かった。

 

「くっ……これでは流石に手が付けられないな。まさに後先考えずという様子だね」

「厄介な奴だぜ。まだ暴れたりないって言うのかよ」

「そんな、これだけの傷を負ったら身を守ろうとするはずなのに……まさか……」

 

 トワは、このヌシがどのような経緯でルナリア自然公園の方にまで出てきてしまったのか分からないが、それは偶然に近いものだと思っていた。何かの拍子に別のヌシと遭遇し、争いの果てに街道側に弾き出されてしまっただけなのだと。こちら側に進むのが危険だと分からせれば、元いた場所に戻ろうとするだろうと。

 しかし、実際にこのヌシは尚も暴れようとしている。どうして退かないのか。進んでも傷付くだけだと分かっている筈なのに。傷付いて尚も進もうとするのは何故なのか。

 その理由に思い当たったトワは悲痛な表情を浮かべた。

 

「あなた……帰る場所がないの……?」

 

 戻ろうとしないのではなく、戻れないのではないか。偶然ではなく、止むに止まれず出てきたのではないか。

 確証はない。だが、もしそうであるならば今も暴れ続ける理由に納得がいく。この魔獣も生きようとしているのだ。生物としての本能に従い、命の灯を少しでも長らえようと。居場所を失った森を去り、その外へと活路を求めて。

 その悲哀が、彼女の判断を遅らせた。ヌシは周囲の煩わしい敵が下がったと気付くや否や、その巨躯を先ほどまでの突進とは比にならない速度で突き動かし始める。それを為し得たのは火事場の馬鹿力というものだろうか。

 

「ちっ……!」

 

 行く先は街道。その間には、後衛で援護すると共に道を塞ぐ役目を担うクロウが立っていた。

 ヌシは既に暴走状態。銃撃だろうとアーツだろうと、その動きを止める事は無いだろう。だから身を守るためには避けるしかないというのに、どうしてかクロウは躊躇うように動きを鈍らせた。

 その一瞬が仇となる。もはや彼我の距離に回避するほどの余裕はない。巨躯の突進を受け、弾き飛ばされるクロウの姿が脳裏に予期される。

 

(そんなの……!)

 

 そんな事は許されない。自分が許さない。

 例えヌシが望んで森から出てきたのではないとしても、ただ生きようとする本能に突き動かされているのだとしても、トワは認めない。自分のことを信じてくれた仲間を傷つけようとするならば、どんな手を使ってでも止めてみせる。

 そう、だからこそ彼女は呼びかける。ひた隠そうとしていた感情をかなぐり捨て、仲間を助けるただそれだけのために。いつも自分の助けとなってくれる彼女ならば、きっとそこにいると信じて。

 

「来て! ノイ!!」

 

 仲間を助ける。その一念の叫びに呼応するようにARCUSが輝いた。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

「ちっ……!」

 

 クロウは突貫してくるヌシを見て舌打ちする。

 あれだけの質量を押し返すような手段は持ち合わせていない。銃やアーツ程度では止まらないだろう。まともにぶつかり合えば導力車に轢かれるような衝撃が彼の身を襲う……少なくとも、今のままでは。

 だから横っ飛びに回避しようとして、不意によぎった考えが彼の足を止める。

 

 ――自分が躱したらどうなる?

 

 ヌシはきっと街道を突き進んでいくだろう。何が目的かは知らないが、都合よくどこかで止まるとは思えない。その課程で農家には更なる被害がもたらされ、下手すればケルディックの町にまでそれは及ぶ。そう危惧した時、彼は回避することを一瞬であっても躊躇った。

 少し前のクロウなら知ったことではないと思っていただろう。だが、昨夜のささやかな語らいが、あの底抜けにお人好しな少女の言葉が彼を踏み止ませる。ここでヌシを通したことで傷付く人が現れれば、彼女はきっと悲しみ、無用な責任を感じる事だろう。そんな、らしくもない考えが頭を過るくらいには、クロウはトワに感化されていた。

 

(こうなりゃ、人目に触れようと……!)

 

 躊躇の間に回避できるほどの距離は失われている。もはや形振り構わず、本気(・・)を出して凌ぐしかない。そう考えた時だった。

 

「来て! ノイ!!」

 

 声が響く。ヌシの向こう、共に戦う仲間から。

 いったい何が。疑問を感じると同時に、クロウは彼女と繋がった。そして直感する。何の意味があるのかも知らず、ただその感覚に従い身を地面に伏せ。

 

「合点承知なの!」

「んなっ!?」

 

 彼女に応える声が耳朶を叩き、黄金の歯車が頭上で振るわれる光景が目に焼き付いた。

 歯車はヌシに激突し、勢いづいていた巨躯を弾き返す。速度に比例した反動に呻き声のような音がヌシから漏れる。衝撃が傷ついた身に堪えたのか、その動きは完全に止まっていた。

 その隙を逃さぬとばかりにクロウの背後から小さな影が飛んでいく。桃色の髪の妖精、そうとしか言いようのない姿に呆然とする。それはアンゼリカもジョルジュも同じであった。ただトワだけが、そこにそれが居るのを知っていたかのように淀みなく動く。

 

「吹っ飛ばして! 思いっ切り!」

「いきなり呼んでおいて無茶言うの!」

「お小言は後でいいから!」

 

 彼女の気安い声、少なくとも、自分たちが聞いたことが無いくらいには。まるで姉妹のような気の抜けるやりとりに反して、その動きは洗練されたものであった。

 妖精の髪を二房に分ける髪留めのような歯車。それが如何なる原理か巨大化し金色の鈍器となる。

 掬い上げるような一撃。回転する歯車はヌシの甲殻とぶつかり合い火花を散らす。顎下より打ち上げられ、巨躯が仰け反るように僅かに持ち上がる。

 続く二撃。二つの歯車が束ねられ、巨躯が持ち上がった事で僅かながらも露わになった腹に捻じ込むように叩きつけられる。岩塊ですら破壊するのではないかと思える歯車の衝撃力により、ヌシは低空ながら宙に飛ばされた。

 上下ひっくり返るように回転するヌシ。無防備に晒された腹を狙い、後ろから追撃が迫る。

 

「星よ、我に集いて魔を払う光となせ!」

 

 トワの刀が闘気を纏う。光剣と化したそれを握り、およそ修める剣技の全てを解き放つ。

 錐揉むように斬撃を繰り出しながら宙に舞い上がる。頂点に達し、尚も刃は振るわれる。全身全霊、彼女の全力を以て刻み込まれる剣技。体液が返り血となり、頬を汚そうが止まることは無い。

 連撃の末にトワは身体を矢のように引き絞る。舞い上がった妖精が魔法陣を描き出し、その行く先を指し示す。

 ――そして、彼女は流星となった。

 

「「はああああああ!!」」

 

 一筋の光が空を駆ける。魔法陣が力と速さを与え、光の鏃と化した彼女がヌシの腹へと突き刺さり、そして貫いた。

 突きの勢いのまま靴底をすり減らし、荒い息を吐きながら止まるトワ。その背後に風穴を穿たれたヌシが墜ちる。か細い末期の声を上げ、ケルディックを襲わんとしていた脅威は息絶えた。

 静かな時間だった。トワの乱れた息遣いが響くだけで、仲間たちは目の前で起きた出来事に理解が追いつかず唖然とするのみ。突如として現れた妖精も、どこかトワに気遣うような視線を向けるだけだった。

 静寂の中、息を整えたトワが背後を振り返る。横たわるヌシの骸を前に、彼女は瞑目する。

 

「……どうか、女神の下で安らかに」

 

 その姿は、どこか悲しげであるようにクロウの目には見えた。

 




【ヌシ】
第1章のボスを務めてもらった不遇のオリ魔獣。実はトワたちとの戦闘前にグルジャーノンにボコされている。モデルは伝説のアノ虫。分からない人は空の軌跡3rdをプレイしよう。

【神風】
オルバス師匠から教えてもらえる奥義の一つ。踏込と共に剣を払うことで剣圧を飛ばす中距離攻撃。割と範囲が広く、軽い敵に対しては吹き飛ばし効果もあるので使い勝手がいい。

【ギアバスター】
ノイが使えるギアクラフトの一つ。巨大な歯車で殴りつける。三連続で攻撃可能。通常攻撃が効かない相手や硬いオブジェクトに有効であり、岩の塊だろうが鉄の角だろうがぶち壊す。

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