艦隊これくしょん~明かされぬ物語~   作:kokonoSP

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後期試験がやっと終わった………
な、長かったぜ。

という事でお待たせしてしまいましたが、完成したので投稿しました。

予想の斜め上どころか予想の真上な展開になりました……が。
関係ねぇ!今すぐ出撃だ! ←真夜中テンション

てことで、どうぞ!




司令官、着任ス

 

~提督side~

 

 

「よく来たな。カナリア鎮守府所属睦月型駆逐艦の菊月が歓迎する」

 

 言ってる言葉とは正反対に菊月がへカートをこちらに構える。

 不審者ならそのまま殺す気満々じゃねぇかよ。

 今まで沈黙を通していたが、流石に我慢の限界を超えた。

 

「はっ!よく来たとか言っておいて銃なんか構えてんじゃねぇよ。自分の言ってる事を理解できねぇオツムな頭してんのかテメェは」

 

 挑発すると、微かに菊月の眉が動いた。

 発破かけてみる価値はある、か。

 

「おいこら、前に耳タコになるくらい口酸っぱく言ったろが。感情を表に出すんじゃねぇよ」

「っ!?」

 

 今度は明らかに動揺しているのを確認して、確信を持つ。

 

「菊月、お前"オリジナル"だな?久しいじゃねぇか。元気にしてたのか?」

「黙れっ!!"ステラ"提督が生きてる筈がない!貴様っ!提督の姿声色を真似て何のつもりだ。それで私が狙撃を躊躇うとでも思ったか!?」

 

 明らかに怒りの表情と銃口の照準を俺の顔に向ける。

 あぁ?俺と殺り合おうってのかガキんちょの癖して。

 

「ほぅ、菊月てめぇ。俺に喧嘩売るたぁいい度胸だな、おい」

「あーあ、相棒もキレちゃったか、…………あれ?電ちゃん?」

 

 相棒が電の名前を疑問形の形で呼びかけるのを聞いて思わず意識を後ろの電に向けてしまった。

 だが、その行動が自分にとっても電にとっても悔いる結果にしかなりかねないという事を、意識を向けた数瞬あとに気がついた。

 

「はわわわわわわわわわわわわわわ」

「うるせぇ!だぁっとれガキが!!」

「っ!!………きゅぅ…」

 

 やべ…と思わず心の中で呟くが、体は正直に思ったとおりの行動を起こしてしまう。

 思わず体から覇気を放出してしまい、電にダイレクトでぶつけてしまった。

 スムーズに事を運べない事にイラつくが、その原因が自分なので誰にもぶつける事が出来ない。

 その自分の状態にも怒りが沸いてくる。

 もう何もかもがどうでも良くなってきやがったぜ……

 

 

~司令官side~

 

 

 ほんとに此奴は沸点低いよなぁ、全く。

 電ちゃんも顔面蒼白になっちゃってるし、どうしよっか。

 

「相棒、ちゃっちゃとその餓鬼入渠棟に放り込め。ついでに艦装を整備棟に入れるの忘れんじゃねぇぞ」

 

 お?案外冷静だな。

 

「当たり前だろぅが。こんな事で一々暴走してたらキリがねぇだろ、この場所で」

「僕喋ってないんだけど、エスパーかな?」

「アホじゃねぇのか?何十年来の付き合いだと思ってんだ」

「それもそうかー、でもなんで電ちゃんを入渠させ……あぁ、なるほど」

「そういう事だ。恐怖症(フォビア)でパニック起こしてやがるだろ。そいつは一定時間大人しくさせときゃ治る」

「艦娘の疲労状態と治し方は似てるからね、いい手かも」

「あれくらいの氣を受けた位で……情けねぇ」

 

 いや、あれを初見で耐えられる奴なんか戦艦クラスの艦娘か深海棲艦くらいだと思う。

 でも、僕と電ちゃんを先に行かせるって事は相棒………

 

「久々に使うのか?お前の"力"を」

「相手がアイツなら、それくらいの価値はある」

「ほんと……真性のロリコンだな。お前は」

「仕方ねぇだろがよ。自分の性癖は簡単には治らねぇ」

 

 そう言いながらも顔が少しずつ獰猛な、狩るか狩られるかの瀬戸際を楽しみたくてしょうがないという顔になる相棒に、いつも通りな笑みで返す。

 その獰猛な笑顔の先にある表情を知ってるが故に、僕……俺はいつもの笑顔であいつを見送る。

 

「少し借りるぞ、電」

 

 彼はいつの間にか気絶してしまった電の頭に手を置き、一度だけ頭を撫でてからその力を解放するキーワードを口ずさむ。

 

能力強奪(テイル)

 

 彼の目が……翡翠色に染まった。

 

 

~菊月side~

 

 

 『ステラ提督の生存』

 

 

 風の噂でもなく、誰かしらの報告でもない。

 私の目の前に本人が現れたのだ。

 服は言わずもがな。

 髪や髭が酷い状態になっているが、こっちを睨んできた時の威圧感、耳にどっしりと響く声色が本人であると告げている。

 それに加え、目の前でステラ提督が使っていた能力を発動させた。

 もう本人以外の何者でもないのは明白だ。

 しかし、人間には"絶対なる枷"が存在するが故に、提督の生存に疑問が存在する。

 

「おい、菊月」

「っ!な、なんだ」

「光栄に思え。久々にちょっと本気で相手してやる。その代わり…」

「わかっている。電を入渠させるなりなんなりすればいい。……同胞をそのままにしておくのは私も申し訳ない」

「サンキューな」

「勘違いするな」

 

 銃を再度握り直して構える。

 

「私はまだ本当にお前がステラ提督だとは思っていない。別人だったら…容赦無く殺す!」

 

 提督(?)は獰猛な笑みを浮かべながら能力で翡翠色に変わった瞳を細めてこちらを見据えた。

 

「それでいい。正しい反応だ」

「減らず口をっ!」

 

 そして提督……いや、彼はイカダから"海上に"降りたった。

 

「じゃ、先に失礼~」

 

 のんびりした口調で対峙する私たちの真横を警戒もせずに鎮守府へ進んでゆくもう一人の男を、一瞬だけ横目に見てため息をつきたくなった。

 もう少し警戒心という物を持ってくれと思うが、口には出さない。

 

 

『ウォン司令官』

 

 

 その名前が頭を過る。

 目の前の男と同様に髪や髭が酷い事になっているが、司令官と同じ独特の雰囲気と行動をする事で提督とはまた違う存在力の持ち主だ。

 今までに培われてきた勘で言うなら司令官と同一人物であるが、理性がそれを拒否する。

 生きてる筈がない。

 まるでドラマの様に死んだと思っていた相手と生きて再会する感動物だが、現実は甘くない。

 それを知ってるが故に二人の生存を認められず、裏を探ってしまう。

 でも、もし……もし本当に目の前の男がステラ提督ならば………

 

「私の全力を持ってして倒す!」

「意気込みはいいが……それだけじゃ俺には勝てねぇぞ?」

 

 

 

 戦闘が開始された。

 

 

 

~電side~

 

 

「ん……ぅん?」

 

 電は一体何を……

 確か、提督さん達と鎮守府に向かって…それから。

 

「あれ?電ちゃん起きた?…手加減したのか?いや……」

 

 誰?

 そういえば何だか暖かくて、それでいて気持ち良い揺れが……

 

「……?……っ!あわわ!」

「ぅおっ!?っとっと」

 

 し、ししし、司令官さん!?

 な、なんで電は司令官さんに背負われてるのです!?

 電が跳ね起きて暴れたせいで司令官さんが少しバランスを崩して電も落ちると思いましたが、何とか体制を立て直しました。

 

「あわわわわ!?」

「落ち着いてって。電ちゃん。ほら深呼吸して」

「す、スー…ハー…スー…ハー」

「どう?落ち着いた?」

「は、はいなのです。迷惑かけて御免なさい」

 

 深呼吸をして落ち着いた為か一つ、疑問が出てきました。

 

「司令官さん?どうして電を持てるんですか?」

 

 電だけならそこまで重くない(重くない…ですよね?)ので提督さんや司令官さんなら持ち上げる事は可能だと思います。

 でも、今の電は艤装を装着して"艦娘化状態"になっているのです。

 艦娘化している状態だと、重さは比じゃないくらい重くなります。

 艤装単体・艦娘単体の時は大人でも持ち上げられますが、それらが一緒になると大人が何人居ても持ち上げる事は不可能。

 なのに地面が沈む事はない、だからイカダにも乗る事が出来た訳でもある。

 未だにその謎は解明されておらず、一番有力な論文では艦娘が艤装を装着する事で艦だった頃の概念を無意識の内に引き出しておるのではないかと言われている。

 だから艦としての自覚がある場面、先ほどの例えで言うと『人間がそのままで艦を持ち上げる事は不可能』という常識を艦娘が思っているのではないか、艦が地面を歩く・乗るなどの行為は『本物の艦ではありえない事』だからそれらの概念が発動されてないのではないか、というのが今の人間の解釈である。

 そんな常識を覆す出来事が目の前で起こっているのです。

 しかし、司令官さんは何でもないと言うような顔で電の問いに答えました。

 

「ん?あぁ、そのことね。何故かって言うと、今の電ちゃんは"艦娘の加護を奪われてる"からだよ」

「……え、ええええええええええええええ!?」

 

 そ、それってつまりですよ?

 電はもう艦娘に戻れないという事ですか!?

 

「そ、そんな!私…もう艦娘には戻れないんですか!?」

「えっ?」

「え?」

 

 あ、あれ?

 話が噛み合ってない?

 しかし、そこでやっと司令官さんが納得がいったという顔をして電の疑問に答えてくれました。

 

「えっとね、加護を奪われてるって確かに言ったけど、それは一時的にって事なんだよ」

「一時的に加護を奪う?」

「うーん。こればっかしは一度見て貰った方が早いかも。百聞は一見に如かずっていうし」

 

 そう言って180度進む方向を変えて歩き出そうとした所で司令官さんは足を止めました。

 何か有ったのだろうかと疑問に思っていると…

 

「てか、電ちゃん立てる?いつまでも背負われてると恥ずかしいでしょ?」

「………はぃ//////」

 

 そ、そうでした。

 色んな衝撃がありすぎて失念してたのです。

 ゆっくりと地面に下ろして貰い、立とうとした所で背中に体重が持って行かれ、倒れかけました。

 

「危ないっ!」

「っ!!」

 

 すんでのところで司令官さんが支えてくれて、何とか立ち直しました。

 何故、そんな事が起きたのかというと。

 艤装が重いのです。

 重いといっても重さからして艤装単体の重さだけなので、電だとちょっとキツイですけど普通の大人にはちょっと重いくらいでしょうか。

 ただ、不意打ちで襲ってきた重さなだけに驚いて反応が遅れてしまった。

 

「え?なんで艤装が?」

「電ちゃん、今言った事忘れちゃった?君は今、艦娘の加護を奪われてるんだよ?」

「あ……」

 

 正直、失念してました。

 自分にその事実が降りかかってきた事により、初めて現実を直視しました。

 今の自分はただの無力な女の子でしかなく、戦いに役に立つどころか足でまといもいい所でしょう。

 

「辛いだろうけど、艤装はなるべく外さないでね。相棒の為に」

「提督さんのため?」

「そ、行けば分かるよ」

「そうですか……ところで、ここはどこです?」

 

 上を向けば青空、左右を見れば海が見えるが、前と後ろには建物が建っておりその中間に居る事が伺える。

 左は直ぐに海上だが、左は幾つかの建物を挟んで海が見える。

 という事は鎮守府を上から見上げたら、自分は鎮守府の左側に居るのだろうとアタリをつけた。

 

「えっとね、目の前にある建物が入渠棟、後ろの建物が武装整備棟だよ」

「武装整備棟…ですか?」

「分からないのも無理無いよ。ここにしか無い…少なくとも僕はここ以外でこんな設備は見たことがない」

 

 そう言って司令官さんは整備棟を時計回りに迂回する方向へ歩き出し、電も後に続きます。

 他にも建物がチラホラと見えてはいますが、司令官さんは説明する事なく先を歩いていました。

 整備棟の端まで来て左折し、そこでやっと司令官さんは足を止めました。

 

「おー。まだ続いてるか。菊月も粘るな」

 

 何の事かと首を傾げ、司令官さんに近づき同じ方向を向いて……絶句しました。

 

「あれは……なん…ですか?」

 

 ただの一点を除いたら、海上に浮かぶ普通の鎮守府の光景。

 つまり、その一点の部分が電を絶句させる要因なのです。

 それは… 

 

 

 海の上で二人の人が激しくぶつかり合ってるのです。

 

 

「遠目でも体格差的に区別は付くだろう?」

 

 誰が誰かは言わない司令官さん。

 つまりは電も面識のある人物同士という事になり、襟裳鎮守府を出航してから会ったのは僅か3人だけ…

 一人は真横にいる司令官さん。

 もう一人はここで会った睦月型の菊月ちゃん。

 そして最後の一人は…提督さんなのです。

 

「え?お、おかしくはないですか?だって提督さんは人間です…よね?」

 

 自分の言葉に自信が持ちきれず、最後を疑問形で尋ねるような形になってしまいました。

 

「あぁ、相棒も僕も人間だよ。ただ、ちょっとだけ特殊なだけ」

「特殊……ですか」

「そ、特殊な人間。もしくは"選ばれた人間"って言えばいいのかな」

「?」

「そこら辺は後で菊月君に聞いた方が早いよ、今の僕や相棒は世情や時勢にとことん疎いからさ。僕たちが居た場所から分かるでしょ」

「そう…ですね、そうします。それで、何で提督は海の上に?特殊なのは分かったのですが…」

「あれは彼の能力の一つだよ。『能力強奪』という…ね」

「能力強奪……」

「本当は『加護』って言ったんだけど、相棒はあの能力の有様から強奪って言ってるって訳。まぁ、僕もそっちの方が似合う能力だとは思うけどね」

「提督さんに…そんな力が。で、でも襟裳の司令官さんはそんな力持ってませんでしたよ?」

「そうなの?そんな筈は無いと思うんだけどなぁ…見せなかっただけかもしれないけれど。いや、もしかして今の司令官はそれが無くても………」

 

 質問をすると司令官さんは首を傾げて目を瞑り、思考の海に潜ってしまい、ブツブツと何かを呟き始めました。

 傍から見るととても危ない人に見えそうです。

 しかし、1~2分すると「情報が足りなさすぎる」と呟いて、思考を中断し提督さんが戦闘(?)を行ってる方向に向き直りました。

 

「おぉ?もう終わりそうだな」

「えっ?」

 

 司令官さんと同じ様に海上で戦ってる二人を見ました。

 戦闘が終わりそうかどうかは電には分かりません。

 ですが、戦ってる位置が先程よりも右方向に大きくズレた位置で戦ってる事から、どちらかが押してるのは間違い無いみたいです。

 その直後、戦ってる大きい人影が、もう一人の腹部に打撃を当て小さい人影が体を『く』の字に曲げて海上から少し浮いていました。

 一人は立ったまま微動だにせず、もう一人は海上に浮くよう倒れて動きません。

 

「終わったみたいだな」

「き、菊月ちゃんは大丈夫なのです!?」

「たった一発の{拳打《けんだ》でどうにかなる程、甘い鍛え方はしてないよ」

「そ、そうなのですか」

 

 まず、人間が艦娘に対して殴打を通せるというのが非常識だと思うのですが……

 展開が異様すぎて、もう何がなんだか分からないのですよ。

 

 

~提督side~

 

「ふぅ……やっと沈んだか」

 

 目の前で倒れている菊月に視線を固定しながら、先ほどまでの試合……いや、死合いを思い出す。

 へカートを『撃つ』為に使わず、『打つ』為に使用し俺との体格差やリーチなどのアドバンテージを消して来た時には少し驚いた。

 銃剣が装着されていなかったがために、切る事は不可能だが突く薙ぐの動作でへカートを豪快に振り回す事が可能だったのはやはり艦娘がゆえだろう。

 だが、それではアウトだ。

 アドバンテージを消したに過ぎない。

 最初から護りに入っては相手に勝つなど………いや、戦の勝利条件は千差万別か。

 先ほどの戦いでは悪手だったというだけの話。

 

「おっと?あんましグダグダ考えてる時間もねぇか」

 

 気が付くと足首まで海水に浸り初めている。

 このままだと徐々に能力が薄れて海にドボンだ。

 

「さっさと上陸するか…それにしても、どう説明するべきか」

 

 戦いの途中から相棒と電が整備棟の端でこちらを見ているのに気がついた。

 遠くて見えないが、電が驚いている顔が容易に想像できる。

 人間が海上に浮かんでたら誰だって驚くよな。

 

「……まぁ、菊月に説明させちまえば何とかなるか」

 

 他人任せ、便利な言葉だぜ。

 

「それにしても……帰ってきちまった………か。カナリア鎮守府」

 

 喜怒哀楽

 その全てが詰まった場所

 全ての始まりの場所

 

「また面倒くせぇ事に巻き込まれるんだろぅな。最悪だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男は気づいていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 口で悪態を付いているが、己が笑っている事に。




ナニコレ展開に、著者の自分でさえナニコレと言いそうですが、これも一応後々の展開に合わせての仕込みです。

だからと言って二人が艦娘に混じって深海棲艦とドンパチするという事はないのであしからず。
じゃあ、何のためにという質問は受け付けません!
それと菊月や電sideでのちぐはぐな思考部分は態とです。
子供心とかを私なりに書いてみましたが……結果がこれだよ、チキショーメー

次回!『幼女とは風呂も寝る時も一緒!』をお楽しみに~(嘘です

それでは、深夜テンションが酷いのでこれで失礼をば。

でわでわ~

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