箱庭でもリライター   作:ヤスズ

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お待たせしました。

今回は涼太の力の一端が判明します。

お気に入り・感想・評価よろしくお願いします。


第三話

十六夜side

 

俺は黒ウサギ達と別れて、勝手に世界の果てに向かっていた。乱立する木々を抜けそこそこの速度で走り抜ける。途中、チラホラと見たことのない生き物がいたがスルー。黒ウサギに黙って来た以上、恐らく俺がいないことに気が付くと追ってくるだろう。そんな簡単に追いつかれることは無いだろうが今回の目的は世界の果てを見に行くことなのでまずは目的を果たす。時間はたっぷりあるしな。

 

少し薄暗い森を数十分走り続けると、まばゆい光を見た。出口だと分かった時には俺の足は勝手にギアを上げていた。飛び出す様に森を抜け、目の前に広がっていたのは大きな滝。凄まじい量の水が流れるのを横目で見ながら歩いていると何か変なものと目があった。

 

「こんなところで人間とわな。小僧!此処で会ったのもの何かの縁だ。貴様の力を試してやろう」

 

「ハァ?何言ってんだ白蛇。俺を試せるかどうか、俺がお前を試してやる」

 

人の言葉を理解する白蛇だったが、帰って来た返事は耳をつんざく咆哮だった。そして咆哮と共に周りに溜まっていた水が竜巻になって此方に襲いかかるかの様に停滞している。

 

俺は近くにあった小石を拾い、白蛇に向かって投げた。唯の石ころをぶつけられるだけなら対したダメージにはならないだろう、そう白蛇も思っていたはず。だが、俺の投げた石の速度は規格外だ。

 

ゴシャッ!と鈍い音が響き白蛇が倒れ、水飛沫が上がる。そこで思わぬ乱入者が現れた。その乱入者は先ほどまでとは違った色の髪の毛にうさ耳を生えした少女と俺と同じ様にして箱庭に呼ばれた少年だった。

 

「みーつーけーまーしーたーよー!この問題児様ぁ‼︎」

 

「何、一人で面白そうなことやってんだ?」

 

正直、驚いた。幾ら本気で走ってないとはいえ、こんな短時間で黒ウサギと涼太に追いつかれたことに。

 

「まだ試練は終わってないぞ!小僧ぉ‼︎」

 

ブワッと起き上がった白蛇の周りに再び竜巻が現れる。どうしてこんなことになっているのですか?と黒ウサギが問うが無視する。襲いかかってくる竜巻の群れに俺は拳を叩きつけた。一つの竜巻だけを残して。

 

残った竜巻は軌道を外れ黒ウサギたちの方へ向かっている。黒ウサギはあたふたしながらも涼太を避難させようとしているが、それを押しのけ涼太が庇う様に前に出る。

 

取り敢えず、少しだけでもお前の力を見せてもらうぜ。涼太。

 

 

 

涼太side

 

黒ウサギと一緒に十六夜を探しに来て見つけたところまでは良かったのだが。そこで問題児はおっきな白い蛇とバトっていた。

 

しかも白蛇の攻撃の一つがこちらに向かって来てるじゃありませんか⁉︎目の前で黒ウサギが慌てて俺を逃がそうとして来るので、されるがままにしようとしたが足を止めた。

 

頭にピキリと一瞬の痛みが走る。その後に聞こえてくる誰かの声。

 

ーーーいいのか?此処で逃げてしまっても。

 

だってあんな攻撃俺にはどうしようも無いだろ?

 

ーーーお前は今までにもっと巨大な敵と戦ってこれた力がある。

 

それは記憶の中にあるだけのことだ。

 

ーーーだが、覚えているはずだ。お前のその身体は、精神は、魂は‼︎

 

その言葉が引き金だったかの様によく見ていた夢が映像となり流れ込んでくる。

 

俺は黒ウサギを押しのけ両手で何かを持っている様に重ねる。そのまま感じるがままに力を込める。

 

ーーーそれはオーロラ、アウロラと呼ばれるもの。お前はそれを使い戦って来たんだ。お前なら出来るさ。

 

力を込めた俺の両手の先には、大剣を模した虹色の光が出現していた。地面を踏みしめ、竜巻へと跳躍。

 

「はぁぁぁぁぁ‼︎」

 

上から下へと真っ直ぐに振り下ろすと竜巻は無残に散って行き、俺の記憶は此処で途切れた。

 

 

〜〜〜

 

なんだか揺れてる。移動しているのか?揺れにより俺の意識が覚醒した。どうやら気絶してしまったらしい。それにしてもさっきのあの記憶のなかで自分がしていたことだった。やはり俺の記憶なのか?

 

難しいことを考えるのは後にして、目を開けるとギョッとした。俺の目の前には大きな背中に金髪の少し癖っ毛な髪が現れていたからだ。

 

「おっ?ようやく起きたか」

 

「大丈夫でしたか⁉︎どこか痛い場所とかはありませんか?」

 

十六夜が呆れた声を出しながら立ち止まると黒ウサギが駆け寄って来た。

 

「だ、大丈夫だ。十六夜もそろそろ降ろしてくれ」

 

十六夜に降ろしてもらうと、十六夜が黒ウサギに目配せをしている。少しオドオドしながら黒ウサギはゆっくりと口を開いた。

 

内容は中々重いことだった。俺たちをわざわざ呼び出したのは自分のコミュニティが衰退しているから、数年前に魔王と言われるものに襲われて以来、崩壊の道を歩んできて、今日食べる物もままならない現状、そしてコミュニティを復活させるために力を貸して欲しい、とのことだった。

 

こんなコミュニティだが入ってくれないかと言われたのだが、俺には断る理由はなかった。俺の記憶について、手がかりのある世界へわざわざ呼んでくれたのだ。それぐらいの義理は果たす。どうやら十六夜は入るらしいが、残りの女子二人はどうなることやら。それに元々記憶について調べるために来たのだ、言っては悪いが何処に所属しても同じというもの。

 

何よりおっきなメロンを二つぶら下げて、涙ぐんだ上目遣いをしてくる女子のお願いを断れる俺ではなかった。

 

「心配しなくても最初から黒ウサギのコミュニティに入る予定だったから、安心しなよ」

 

「あ、ありがとうございます‼︎」

 

その時の黒ウサギの顔は今までで、一番輝いていた。

 

 

〜〜〜

 

日が暮れた頃、俺は十六夜と共に黒ウサギに引っ張られる形で他の皆と噴水広場で合流した。到着するやいなジンと呼ばれたリーダーらしき人物に色々と説明された黒ウサギは、さっきまでの笑みとは真逆、ウサ耳を逆立てて怒っていた。

 

「よ、ようやく全員揃ったのになんでこんなことになってんですか!?」

 

「"フォレス・ガロ"のリーダーとギフトゲーム!?」「しかも明日で敵地!?」

 

「準備する時間もお金もありませんし、一体どういうつもりがあってのことです!」

 

「聞いているのですか三人とも!!」

 

「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」

 

「黙らっしゃい‼︎!」

 

誰が言い出したのか、まるで口裏を合わせていたかのような言い訳に激怒する黒ウサギ。

それをニヤニヤしながら見ていた俺と十六夜が止めに入ってやる。

 

「別にいいじゃねえか。見境なく選んで喧嘩売ったわけじゃないんだから許してやれよ」

 

「そうそう、俺だってそんな外道許せねえし」

 

「はぁ〜……。仕方ない人達です。まあいいデス。腹立たしいのは黒ウサギも同じですし、"フォレス・ガロ"程度なら涼太さんか十六夜さんのどちらか一人いれば楽勝でしょう」

 

そう黒ウサギため息交じりに言うと、俺と十六夜と飛鳥は怪訝な顔をする。

 

「何言ってんだよ。俺は参加しねえよ?」

 

「当たり前よ。貴方達なんて参加させないわ」

 

「俺もパスで」

 

俺たち三人はフン、と鼻を鳴らす。だが納得のいかない様子の黒ウサギは慌てて食ってかかる。

 

「だ、駄目ですよ!皆さんはコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと」

 

「そういうことじゃねえよ黒ウサギ」

 

十六夜は真剣な顔で黒ウサギを制する。

 

「いいか?この喧嘩は、こいつらが売った。そしてヤツらが買った。なのに俺らが手を出すのは無粋だって言っているんだよ」

 

「あら、わかっているじゃない」

 

「要請なき手出しは不要ってことだ。この戦いはノーネームにとってはこいつら三人の自己満足ってぐらいしかメリットが無い。そんな戦いに俺たちが出てどうする」

 

「……。ああもう、好きにしてください」

 

一応、俺と十六夜の言い分が理解出来たのかそれ以上は何も言わなかったが、黒ウサギは納得のいってない表情で肩を落とした。

 

話を終える様に、椅子から腰を上げたジンは気を取り直して全員に切り出した。

 

「それで?今日はもうコミュニティに帰る?」

 

「あ、ジン坊っちゃんはお帰りください。皆さんのギフト鑑定を"サウザントアイズ"にお願いしないと」

 

「ギフト鑑定ってなに?」

 

「勿論、ギフトの秘めた力や起源などを鑑定するものデス」

 

俺たち四人はとりあえず黒ウサギについて"サウザントアイズ"に向かうのであった。

 

 

〜〜〜

 

 

「皆さんつきましたよ。此処が"サウザントアイズ"です」

 

辿り着いたのは立派な門構えのお店。そこにはコミュニティのシンボルとも言える、旗印が堂々と掲げられていた。そのまま"サウザントアイズ"の支店に入ろうとするが店先で箒を片手に掃除をしていた店員に止められる。

 

「お待ちください。うちは"ノーネーム”お断りです」

 

この箱庭に来たばかりの俺たちには何故いけないのかはさっぱり分からないが黒ウサギは動揺を隠せていなかった。そのまま何か考え事をしているのか難しい顔をしつつ、オロオロしていると小さな影が店から飛び出して来た。

 

「いぃぃぃやほおぉぉぉ!久しぶりだな黒ウサギィィィィ!」

 

黒ウサギは店内から現れた着物をきた白髪のロリっ子に抱きつかれ、ゴロゴロ転がりそのまま水路に落ちた。

 

「大丈夫?黒ウサギ?」

 

飛鳥が駆け寄ると白髪のロリっ子は黒ウサギの胸に顔をうずくめていたのだった。

 

「白夜叉様!?どうしてこんな下層に?」

 

「勿論、黒ウサギがくると予感していたからに決まっておろうに!」

 

白夜叉と呼ばれたロリっ子が黒ウサギの豊満なメロンにスリスリしているのを見た俺と十六夜は抗議の意を唱える。

 

「おいそこの和装ロリ!その胸は俺らの共有財産だ!」

 

「そうだぞ俺だってまだ味わってないのに!」

 

十六夜と一緒に文句を言いながら駆け寄った。それにしても何て大きさ、そして柔らかさ。白夜叉が顔をうずくめる度に形を変えていく。是非とも味わって見たい物だ。しかし、今そんなことをしてしまえば空気が凍るのは確実、機を待つしかないな。

 

「イヤイヤイヤ、黒ウサギの胸は黒ウサギのものですよ!?」

 

「なんだと!?コミュニティに入る代わりに揉み放題と言ったのは嘘だったのか?」

 

「仕方ねえ、じゃあ他のコミュニティに行くか?」

 

楽しそうに悪ノリしていると黒ウサギは白夜叉を投げ飛ばした。それを十六夜が足で受け止めた。

 

「てい」

 

「ゴハァ!お、おんし初対面の美少女を足で受け止めるとは何様だ!」

 

「十六夜様だぜ。和装ロリ」

 

ヤハハと笑いながら自己紹介する十六夜。横にいた俺は、涙目になりながら十六夜にもの申す白夜叉に手を差し伸べる。

 

「今のはお前が悪いぞ、十六夜。女の子は繊細なんだからもっと優しく扱ってあげなくちゃ。大丈夫か、白夜叉」

 

「おっ、こっちの小童は気が利くのぅ。すまんな………ッ⁉︎」

 

手が触れた瞬間、白夜叉が一瞬驚愕した顔をするがすぐに元に戻る。それに何か変な喋り方だが、気にしないことにする。だって外見はこの子が自分で言ったとおり美少女なんだもの‼︎

 

「………そろそろ目的を果たさない?私お腹空いちゃった」

 

耀が呆れたように呟いた。

 

「そ、そうですね。白夜叉様お願いがあるのですが?」

「なんじゃ?とりあえず此処だと迷惑だから店内で話を聞こう」

 

そう言って白夜叉が私室と言っていた和室に通された。途中で店員が何やら言っていたが、白夜叉に言いくるめられて黙ってしまった。

 

「ひとまず自己紹介しておこうかの。私が"サウザントアイズ"の幹部である白夜叉じゃ。この黒ウサギに故あってちょくちょく手を貸しておる。して東の"階層支配者"、最強の主催者だ」

 

「「「最強⁉︎」」」

 

そう聞いた十六夜・飛鳥・耀は何を思ったのか一斉に瞳を輝かせた。俺は東最強と聞いて思ったのは、ならばそれなりの権力を持っているのでは無いか。それにより多くの情報を調べることができるのでは無いかということだった。早くも記憶についての第一歩を踏み出せるかもしれないな。

 

「やっと暴れられるな」

 

「そうだな探す手間が省けたな」

 

「そうね、腕試ししたくなるわね」

 

俺が色々考えているなか、残りの問題児達は闘る気満々な感じで立ち上がる。

 

「抜け目のない童達だ。私にギフトゲームで挑むと?して、そっちの小童はどうする?」

 

「俺はやめておくよ。だけど少し聞きたいことがある」

 

「いいだろう。私も遊び相手には飢えておる。だがおんしらが望むのは"挑戦"かーーーもしくは"決闘"か?」

 

刹那、俺たちの視界が変化した。記憶のないはずの場所が流転を繰り返し、足元から呑み込まれて行く。

俺たちが投げ出されたのは、白い雪原と凍る湖畔ーーーそして水平に太陽が廻る世界だった。

あまりの異常さに何も言葉を発することのできない問題児達。それもそのはず、白夜叉の私室にいたはずなのに一瞬で全く別の場所に飛ばされたからだ、しかもそこはどう考えても既存の場所では無い。普通の場所とは違う変な感じがする、所謂亜空間といったところ。

 

唖然とする問題児三人に今一度、白夜叉が問いかける。

 

「今一度問おうかの。おんしらが望むのは試練への"挑戦"か?それとも対等な"決闘"か?"決闘"ならば魔王として命と誇りの限り戦おうではないか」

 

勝ち目のないことは四人ともとうの昔に分かっていた。だがプライドが邪魔して取り下げられないでいた。

しばしの静寂の後、諦めたように両手を上げた十六夜が笑いながら

 

「参った。降参だ、白夜叉。今回は黙って試されてやる」

 

「そうかそうか試されてやるか、真面な判断をしたようだの、して他の童達も同じか?」

 

「ええ。私も試されてあげてもいいわ」

 

「……右に同じ」

 

「それで、どんなギフトゲームをするんだ?」

 

「ちょうどおんしらに打ってつけの奴がおる」

 

白夜叉がパンパンと柏手を叩くと、眼前にそびえ立つ山の裏から何やら飛んできた。体長は五mはあるだろう、鷲の翼と獅子の下半身を持ち、飛んできたのはグリフォンだった。

 

 

ギフトゲーム名 "鷲獅子の手綱"

 

プレイヤー一覧 逆廻十六夜 久遠飛鳥 春日部耀

 

クリア条件 グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。

 

クリア方法 力・知恵・勇気の何れかでグリフォンに認められる。

 

敗北条件 降参、上記の条件を満たせない場合。

 

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。"サウザンドアイズ"印

 

 

 

 




あとがき座談会コーナー

座談会初ゲストは十六夜さんです。

「よろしくな」

「それにしても十六夜はやっぱり規格外だな。マジで闘いたくない………」

そうですね。やっぱり十六夜はこうでなくっちゃ。ちなみに涼太さんと十六夜さんには近いうちに闘ってもらいますから安心してください。

「オワタ!物理的に潰れる!………短い人生だったなぁ」

「ヤハハ!それより本文の最後のところ、涼太の名前だけなかったが特別扱いか?」

そうですね。ある意味特別扱いです。

「………嫌な予感しかしない」

ではでは今回はこの辺で………

「「「次回もよろしくお願いします!!(よろしくな!!)」」」

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