箱庭でもリライター   作:ヤスズ

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宣言通り連続投稿です。


第二話

 

NOside

 

「うわっ!?」

 

視界が瞬く間に開け、体は宙にまっていた。おそらく上空は………考えるだけでも恐ろしい。落下しながら周りを見渡してみるとどこまでも続く地平線、断崖絶壁、とても大きいとしか言いようがない滝、どれも涼太の見たことのないものばかりだ。

感動している反面…

 

「これどうすりゃぁいいんだ!?」

 

とても困惑していた。

 

10mからでも落下して水面に叩きつけられ、打ち所が悪ければ死んでしまう。段々と水面に近づいて行って、何か膜のようなものを通過して湖にダイブした。

 

「……いきなり空に放り出すとはどんな待遇だよ!かなりやばかったぞ」

 

そういいながら、涼太はびしょ濡れになったシャツを乾かすべく絞っていた。

 

どうやらこんな素晴らしい待遇を受けたのは涼太だけじゃなかったようだ。涼太と同い年くらいのヘッドホンで金髪の少年、1、2歳ぐらい下の黒髪ロングの少女が罵詈雑言を吐いている。その少し向こうにもっと幼い茶髪でショートの少女が三毛猫を抱き陸地を目指していた。

 

はぁ、とため息を尽きながら二人に近づく。

 

「そこのおふた方この素晴らしい待遇についてはひとまず置いといて、まずはあそこの女の子みたいに陸地を目指そうぜ。」

 

「そうね、服も乾かしたいし」

 

「そうだな」

 

そういって三人で陸地を目指した。服を脱ぎ絞っていると先に陸地に辿り着いていた少女が口を開いた。

 

「それで此処……どこだろう?」

 

「さぁな。まぁ、落ちて来る間にいろいろ見えたし、異世界というのは間違いないないみたいだが…まず間違えないだろうけど、一応確認しておくぞ。もしかしてお前たちにも変な手紙が?」

 

茶髪の少女の呟きに適当に服を絞り終えた金髪の少年が軽く曲がったくせっぱねの髪の毛を掻きあげ応える。

 

「そうだけど、まずは"オマエ"って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ。以後は気を付けて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女とチャラそうな茶髪の人は?」

 

「………春日部耀。以下同文」

 

「あながち間違ってない指摘をどうもありがとう。俺の名前は天王寺涼太。苗字でなく名前で呼んでくれると助かる」

 

「そう。(苗字が嫌いなのかしら?)……よろしく春日部さん。涼太君。最後に、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」

 

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」

 

「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」

 

「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」

 

「あ、俺も面白そうだから作ったら見してよ」

 

「ああ、いいぜ。涼太」

 

心からケラケラと笑う逆廻十六夜。

傲慢そうに顔を背ける久遠飛鳥。

我関せず無関心を装う春日部耀。

この状況に早くも順応する天王寺涼太。

 

(うわぁ……なんか問題児ばっかりみたいですねえ……)

 

彼らを物陰から見ていた黒ウサギは唸ったのだった。

 

涼太達がこの世界に来て数十分が経った頃。

 

十六夜が少し苛立っていた。

 

「で、呼びたされたのはいいけどなんで誰もいねえんだよ?この状況だと誰か説明する奴ぐらいいるんじゃねえか?」

 

「そうね。何の説明もないままでは動きようがないもの」

 

「……。この状況に対して落ち着きすぎているのもどうかと思うけど」

 

(全くです)

 

「もうなんでもいいから、早く遊びに行こうぜ」

 

(どれだけ自由人なんですか!)

 

黒ウサギはこっそりツッコミを入れた。

 

「ーー 仕方がねえな。こうなったらそこに隠れているやつにでも話を聞くか?」

 

「なんだ貴方も気づいていたの?」

 

「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?春日部と涼太も気づいていたんだろ?」

 

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

 

「うん。まあ、放っておいてもいいかと思ったから言わなかったけど。捕まえるか?」

 

此処に来た時からずっと、向こうの茂みから何かが潜んでいる感じがした。少し様子を見て見たが何もして来なかったのでほっといたのだ。

 

「いや、俺にやらせろ」

 

「あら?そんな面白そうなことを独り占めかしら」

 

「私が………捕まえる」

 

四人は理不尽な招集を受けた腹いせに、殺気のこもった冷ややかな視線を茂みにいる人物に向ける。

 

「や、やだなあ皆様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でごさいます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」

 

茂みから出て来たのはウサ耳をつけた、胸の大きな女の子だった。

 

「断る」

 

「却下」

 

「お断りします」

 

「ムリ」

 

「あっは、取つくシマもないですね♪」

 

(肝っ玉は及第点。この状況でNOと言える勝ち気は買いです。まあ、扱いにくいのは難点ですけ……)

 

何やら考え事をしているからなのか、自分の事を黒ウサギと呼んだ少女は自身に迫る影に気が付いてなかった。

 

「えい」

 

「フギャ!」

 

黒ウサギが値踏みしている時に春日部耀が根っこから黒いウサ耳を鷲掴みにした。

 

「ちょ、ちょっとお待ちを!いきなりどういう了見ですか!?黒ウサギのウサ耳を触るだけでなく引っこ抜きにかかるなんて⁉︎」

 

「好奇心の為せる業」

 

「自由にも程があります!」

 

耀は何だかご満悦のようだが、黒ウサギは涙目だ。

 

「へえ?このウサ耳って本物なのか?」

 

「……。じゃあ私も」

 

どうやら皆欲望に忠実なようだ。ならばと涼太は行動に移った。

 

「……。じゃあ俺は胸でも…」

 

「それだけはさせないのですよ!」

 

涼太の伸ばした腕はハリセンにより防がれた。その後、全員からゴミを見るような目で見られた。

 

 

 

涼太 side

 

「ーー とまあ説明するのはこれくらいでしょうか?」

 

黒ウサギは箱庭について一通り説明した。

 

話について要約すると

 

・この世界は箱庭といい、ギフトゲームというものが行われている。

 

・ギフトゲームによって決まったことは絶対だが、この世界の法ではない。

 

・当然犯罪を犯せば其れ相応の罰が待っている。

 

・そしてとても面白い世界だという。

 

この世界についてはどうでもいい。一先ずは俺の記憶について分かると言った声の主を探すしかないな。

 

「それでは私のコミュニティのリーダーが待っていますのでそろそろ行きましょう」

 

そう言われ先導する黒ウサギに俺たちはついて行った。

 

ついて行く間、黒ウサギが色々話していたが面白くなかったのでどうしようか考えていると、十六夜が何処かへ遊びに行った。

 

ならばと俺も飛鳥と耀には一言断わって遊びに出かけた。

 

少し力を入れて走ること数分。一つの大きな街へと辿り着いた。

 

ちなみに、俺こと天王寺涼太は瑚太朗と呼ばれた人物の記憶だけでなく、記憶の中で起きたことを身体も覚えている。

 

よって少し、一般人とは違う。まぁ、そんな事は置いといてすることはただ一つ!

 

「ナンパしかないだろう!」

 

ガヤガヤと賑やかな街中に駆け出した涼太はすでに品定めをしていた。

 

暫く声をかけ続けたが連敗中で、次で絶対決めてやると決意した。

 

「あ、あの子可愛い。あ、こっちの子も。ヤバイ。箱庭マジパラダイスだ。どの子にしようかなっと。よしあの子に決めた!ねえ、そこのお嬢さん。俺この世界に来たばっかだからいろいろ教えてくんない?」

 

「えー、どうしようかな?取り敢えず、そういうことはまずこっちの人を通してくれる?」

 

そう言われて向けた目線の先には.

 

「おい兄ちゃん、楽しそうなとこ悪いが、なに勝手にうちの女房に手ぇだそうとしてんだ?」

 

めっちゃくちゃムキムキな獣人がいた。俺はやばいと悟って後ろに下がろうとしたが時すでに遅し。

 

「まあ、まてや。兄ちゃん。話はあそこで聞くからよお?」

 

そう言われながら、首根っこを掴まれ引きずられていった。

 

 

 

黒ウサギ side

 

場所は箱庭二一0五三八0外門。噴水広場前。黒ウサギはルンルン♪という文字が見えそうなくらいの満面の笑みで歩いていた。

 

「ジン坊っちゃーん新しい方を連れてきましたよー!」

 

まずは我がコミュニティのリーダーに紹介しなくてわ。

 

「お帰り、黒ウサギ。そちらの女性二人が?」

 

「はいな、こちらの四人様が……」

 

一瞬、自分の目を疑った。数分の間に四人のうち二人が消えていたのだから。

 

「……え、あれ?殿方御二人様は?」

 

「ああ、十六夜君なら"ちょっと世界の果てを見てくるぜ!"とか言ってあっちに、涼太君なら"暇だ………ナンパでもしてくるわ"とチャラさ全開で向こうにそれぞれ駆け出して行ったわ。」

 

どうやら二人の少年はそれぞれ駆け出していったのだった。

 

「どれだけ自由人なのですか!あの問題児様方!」

 

そういうと黒ウサギはまず涼太が行った方向に弾丸のように飛び去った。

 

〜〜〜

 

「あーもう!一体何処まで行っちゃったんですか!?」

 

黒ウサギが涼太を探して随分たつが全然見つからなかった。

 

仕方ありません。片っ端から聞き込みでもしますか。

 

一つため息をついて捜索を始めるのだった。黒ウサギがまず目をつけたのは男女のカップル二組だった。

 

「あのーつかぬことをお聞きしますがこの辺でナンパしている茶髪でチャラチャラした殿方を御存じでしょうか?」

 

「うーん知らないな」

 

「俺も」

 

「あ、あたしさっき見たよ。で言ゆうかあたしも声かけられたし」

 

えー、マジかよ。それでそれで?どんな人だった?

 

なぜだか盛り上がってしまったようだ。

 

黒ウサギは申し訳なさそうに、

 

「そ、それでその殿方は今どちらにいるかご存じでしょうか?」

 

「ああ、その人ならなんかゴツい人にそこの酒場に連れて行かれたよ。」

 

その酒場に目を向けると一つの旗印が風でなびいていた。その旗印を見た黒ウサギは再びため息をついた。

 

(あ、あれは"フォレス・ガロの"の旗印、あまり、積極的に関わりたくありませんけど仕方ありませんね)

 

扉を開くと、当然ながら歓迎されるような雰囲気ではなかった。古びた建物の中には所謂獣人と呼ばれる種が集まり酒盛りをしていた。一つのテーブルだけが嫌に盛り上がっているが一先ずおいておく。

 

「あ、あのーすいません。此方に天王寺涼太様がいると聞いてきたんですが?」

 

恐る恐る黒ウサギが口を開くと、ギロッ!酒場の中全員の視線が黒ウサギに向く。だがこれしきのことで怖気ずく黒ウサギではない。

 

やっぱり、あんまり友好的ではごさいませんね。こうなったらますます、涼太さんが心配になってきました

 

「あれ?黒ウサギじゃんこんなとこでなにしてんの?」

 

心配させていた張本人のほうけた声が聞こえてきた。

 

「なんだい、涼太の知り合いか?こっちはまた誰か殴り込みにでも来たのかと思ったわい。おーい、お前ら。あいつ涼太の知り合いらしいからあんまりガン飛ばすんじゃねえぞ」

 

「なんだい、涼太の知り合いかい」

 

「それなら早く言えよ」

 

獣人たちはさっきまでの警戒したオーラは消えて再び談笑を始め、それぞれのテーブルで盛り上がっていた。

 

 

 

いきなりの状況についていけなくなった黒ウサギは涼太にウサ耳を引っ張りながら質問されようやく我に返った。

 

「それはそうと黒ウサギは何しに来たの?」

 

「な、何しに来たの?ではありませんこのお馬鹿様!黒ウサギは涼太さんが拉致されたと聞いて飛んできたのですよ!なに楽しく飲んでるんですか!?」

 

ハリセンの心地良い音が木霊したが涼太は全然答えてないようだ。

 

「あ、ああ。最初は本当に拉致されたんだよ。だけど、話がエロの方向に向いた時、俺のエロについてのなんたるかを語ったらなんか気があってさ、そっからは超仲良しだよ。なあ?」

 

「おう、俺らは兄弟だ」

 

ガハハと笑いながら肩を組む二人を見て

 

「もぉ、心配して損しました。もう勝手にしてください」

 

そう嘆くのだった。

 

 

 




あとがき座談会コーナー

今回もゲストは無しでいきます。

「今回はあんまり変わってねぇな」

そうですね。ですが次回からは大幅に変更してます

「まぁ俺としてはさっさと更新してくれりゃぁいいんだけどよ」

そこは………勘弁して下さい(土下座)

「しっかりしてくれよ………」

それではこんな格好ですが(←土下座状態)この辺で………

「「次回もよろしくお願いします(よろしくな)!!」」

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