箱庭でもリライター   作:ヤスズ

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遅くなりました‼︎
すいません‼︎


第十話

 

ーーーお風呂。

 

それは、温浴のために水または温泉や水を沸かした湯を満たして人が浸かる浴槽や浴室・湯屋・湯殿、熱源からの遠赤外線を利用した砂風呂や岩盤風呂などの温浴を指している。

 

元々は衛生上の必要性や、宗教的観念から古くから水のある場所で水浴を行ってきたが、温泉を利用した寒冷を払拭するためや、一層の新陳代謝や老廃物の除去や排出をするため、温かい水や蒸気を利用して、温泉のない場所でも温浴が行われるようになった。

 

5000年前のインダス文明の都市の中心に大規模な公衆浴場が完備していた。風呂の起源として現在確認されるものでは紀元前4000年のころメソポタミアで、払い清めの沐浴のための浴室が作られ、紀元前2000年頃には薪を使用した温水の浴室が神殿に作られていた。地中海世界では元の世界でも見られるような、社交場としての男女混浴の公衆浴場が楽しまれていた。ハドリアヌス帝の頃に男女別浴になった。←ここ重要!!

 

元の世界でいう平安時代頃は入浴は湯につかるわけではなく、薬草などを入れた湯を沸かしその蒸気を浴堂内に取り込んだ蒸し風呂形式だったと言われている。そしてその頃はとある職業の男の人は女湯に入れたという。←ここも重要!!

 

それがいつの間にか、男と女に別れ、浴槽にお湯を張り、一人で体を洗い、浸かるというスタイルとなっている。

 

何がいいたいかというと"古きを見直して新しきを知る"って事は重要なんだと思う。だから俺は戦地へと向かった。

 

 

境界壁の展望台・サウザントアイズ旧支店に帰って来た涼太・十六夜・ジンは用意された来賓室で例の女性店員とともに、歓談に勤しんでいた。尤も涼太と十六夜のセクハラまがいの質問を女性店員が軽くあしらい、ジンは頭を痛めていただけだったが。

 

耀、白夜叉、黒ウサギ、レティシア、は少し前にお風呂に行った。それに続く形でルチアと静流もどうやら入浴しに行ったらしい。

 

ネズミの集団に襲われ、レティシアに助けられた飛鳥はサウザントアイズの支店に着くなり例の女性店員によって、お風呂に連れて行かれたようだった。

 

此処で冒頭に戻る。

 

風呂とはなんぞやと、わざわざ古い歴史から話した。皆知らなかったようで熱心に聞き入ってくれた。

 

これはチャンスだと、今しかないと思った。だから「取り敢えず一緒に入って昔の人と同じようにしてみよう!」と気軽に言ったのだが、返ってきたのは無言の笑みと無数の拳。

 

ああ………世は無常なりけり。

 

顔をはらした一人と残り二人は海苔煎餅を齧りながらこの店がどうやって移転してきたのかを女性店員に質問。

 

嫌々ながら客人の相手に指名された女性店員は、眉を顰めながら応対する。

 

「ああ、この店ですか?別に移動してきた訳じゃありません。"境界門(アストラルゲート)"と似通ったシステムと言ってわかります?」

 

「「いや全然」」

 

即答する涼太と十六夜。ため息を吐き、少し砕けた口調で話す女性店員。

 

「要約すると、数多の入り口が全て一つの内装に繋がるようになっているの。例えば蜂の巣………ハニカム型を思い浮かべてくれれば分かりやすいはずよ」

 

なるほど………それで外観より内装の方が広いのか。十六夜は興味津々な顔つきで先を促す。

 

「へえ?つまり本店も支店も全部兼ね備えている、ということか?」

 

「違います。けどそうね、語弊がありました。境界門と違う点はそこです。境界門は全ての外門と繋がっているのに対し、"サウザントアイズ"の出入り口は各階層に一つずつハニカム型の店舗が存在しているの」

 

「ふぅん?つまり七桁、六桁と支店があるってことか?」

 

「そう。無論、本店への入り口は一つしかありませんが」

 

納得がいったように頷く十六夜。続ける女性店員。飽きたのか海苔煎餅をボリボリ齧りながら週刊雑誌を読んでいる涼太。

 

「この高台の店は立地が悪く、閉店となった過去の店。今回は白夜叉様が共同祭典に来られるということになり、一時的にこの店へ出入り口を繋げ、私室部と店内の空間を別に切り分けているの。店内へと繋がる正面玄関は、開かない仕組みとなっておりますので悪しからず」

 

「あいよ」

 

「あら、そんなところで歓談中?」

 

話が一区切り付くと、湯殿から飛鳥達が来た。

 

お風呂に入っていた女性陣は備えの薄い布の浴衣を着ており、首筋から桃色の肌を見せている。

 

十六夜は椅子からそっくり返り、涼太は雑誌を投げ捨て思わず立ち上がる。

 

「………おお?コレはなかなかいい眺めだ。そうは思わないか涼太、御チビ様?」

 

「はい?」

 

「黒ウサギやお嬢様、此花の薄い布からでもわかる二の腕から乳房にかけての豊かな発育は扇情的だが、相対的にスレンダーながらも健康的な素肌の春日部やレティシア、中津の髪から滴る水が鎖骨のラインをスゥッと流れ落ちる様は視線を自然に慎ましい胸の方へと誘導するのは確定的であ………アッガイッ!!」

 

スパァーン‼︎

 

耳まで紅潮した飛鳥とウサ耳まで紅潮させた黒ウサギの速攻ツッコミ。意味不明な言葉を発しデコを赤くした十六夜は地に伏せた。その横で涼太は目を細め考えていた。

 

浴衣!いいねぇ浴衣!これぞ日本の心!昔から浴衣は小さい胸のほうが似合うと言われるが………耀とレティシアと静流は似合いすぎ!耀は浴衣の上からでもわかるスレンダーなスタイル。長い手足に水が滴るのは妙にエロい。レティシアもいいんだが、俺にロリっ気はないからな。そして静流は耀とレティシアを足して二で割った感じだ。こちらは普段縛っている髪をおろしたロングストレートが俺の心をダイレクトアタック!ロリなのにロリじゃない。すばらすぃぃぃ!!

 

対して黒ウサギと飛鳥にルチア。けしからん。実にけしからーん!年のわりになかなかの発達をしている飛鳥。今でもかなりいい感じだが、これからも成長していくことを考えると興奮するぜぇ。だが問題は黒ウサギとルチアだ!なんだその浴衣がはちきれそうな二つのメロンは!見るものすべてを釘付けにする二つの果実が、普段着では醸し出せない浴衣ならではのエロさだしている。もう収穫すべきか?いや収穫すべきだ!

 

ーーーっと、危ない危ない。そんなことをしたら皆の俺を蔑んで見るだろう。そう、こんな風に!あれ?なんで皆さんそんなゴミを見るような眼差しをこちらに向けているのですか?これは………まさか、

 

最悪の可能性を浮かべている涼太の肩に十六夜が手を置く。無言で憐れむような笑顔で。

 

「そう、そのまさかだ涼太。お前が心情はダダ漏れだ。口に出してしまう癖は治した方がいいぞ」

 

「り、涼太さん。黒ウサギの事をそんな目で見てたんですか?」両腕で胸を隠しながら後ずさりする黒ウサギ。

 

「流石にちょっと引くわね」マジな軽蔑の眼差しを向ける飛鳥。

 

「主殿、コレは笑い事にはならないぞ」引き攣った笑顔を見せるレティシア。

 

「…たの……ヵ…」俯きながらボソボソ言ってる耀。

 

「………私もいつかメロンになれるだろうか」一人、別次元へといっている静流。

 

「ふ………不潔不潔不潔!!信じられない信じられない!!わ、わわ………私の体をそんな目で見てこの変態変態変態!」顔を赤くしながら竜巻となり俺に襲いかかってくるルチア。

 

ルチアから繰り出される無数の拳。それはそれら全てくらってしまえば致命傷だろう。だが俺はリライトされた身体能力で躱す。「見える!」と思っていたがそれは幻想。

 

「ゲルググッ!!」

 

全ての拳を身に刻み宙を三回転半してゴミのように転げ落ちる結果になった。落ちた先にいたのは耀の足元で、恐る恐る顔を上げるとそこにいたのは般若であった。

 

「よ、耀さん?」

 

ワナワナと震えていた耀の怒りが爆発した。

 

「涼太の大バカー‼︎‼︎」

 

ズゴォーーン‼︎

 

凄まじい音と共に衝撃を涼太の脳天にくらわした、耀はスタスタと何処かへ行ってしまった。俺の記憶はここで途切れた。

 

この現場を第三者として見た十六夜達はこのことを、"魔の湯けむり地獄事件"と言い、ノーネームの歴史上最悪の出来事だったと語り継ぐこととなった。

 

 

 

ーーー境界壁・舞台区画。"火龍誕生祭"運営本陣営。

中世ヨーロッパのコロッセオを思わせるような闘技場の観客席。その偉い人たちが佇むような位置に涼太達はいた。

 

祭りの目玉ということと、""箱庭の貴族"である黒ウサギが審判をしていることによって会場の熱気はヒートアップ。やんややんやと観客達からの興奮がひしひしと伝わってくる。

耀が出場するギフトゲームの応援をしていた"ノーネーム"一同だったが、相手は格上で不死身。端的に言うと耀は負けてしまった。本当はサポートとして出たかったが、誰でもない耀自身に「自分の力だけで闘いたいと」断られてしまったのだ。

 

ゲームが終わるのとほぼ同時に十六夜は箱庭の空を見ていた。その顔は遊ぶ約束をした子供が、ようやく遊びに行けると目を輝かせて笑っている様だった。

 

「どうした十六夜。空に何か面白そうなものでもあるのか?」

 

「ああ、どうやら来たようだ。空から何か降ってきてる」

 

涼太も強化された瞳を凝らして空へと向く。

 

「黒い…紙。いやあれは"契約書類ギアスロール"か?」

 

「何?ま、まさか⁉︎」

 

空から舞い降りてきた一枚の紙を手に取る。真っ黒と下地に白い文字。禍々しさを滲み出させるそれは、笛を吹く道化師の印が入った封蝋。開封するとそれは確かに魔王の"契約書類"だった。

 

数多の封書が舞い落ちる中、静まり返る舞台会場。

 

ここでようやく観客席の中で一人、悲鳴のような叫び声を上げた。

 

「魔王が………魔王が現れたぞオオオォォォーー‼︎‼︎」

 

この叫びが引き金になったのか観客達は叫びながら逃げ出そうと、それぞれが必死になっていった。

 

これに動じなかったのは"サラマンドラ"の連中と俺たちだけだった。

 

 

 

時間は少し巻き戻る。

 

ーーー境界壁・上空2000m地点。

 

遥か上空、境界壁の突起に五つの人影があった。

 

一人は露出が多く、布の少ない白装束を纏う女。白髪の二十代半ば程に見える女は二の腕程の長さのフルートを右手で弄びながら、舞台会場を見下ろす。

 

「プレイヤー側で相手になるのは………"サラマンドラ"のお嬢ちゃん、白夜叉、吸血鬼の子とカボチャのお化けってところかしらね、ヴェーザー?」

 

「いや、あのカボチャは参加資格がねえ。特にヤバいのは吸血鬼と火龍のフロアマスターだな」

 

答えたのは黒い軍服を着た、単発黒髪のヴェーザーと呼ばれた男。年はおそらく先程の女性と同じくらいだろう。

 

そして三人目は、外見がすでに人ではない。陶器の様な材質で造られた滑らかなフォルムと、全身に空いた風穴。全長五十尺はあろうという巨兵だ。

 

そのうしろで腕を組んでいる四人目の人影が口を挟む。

 

「火龍のフロアマスターの近くにいる茶髪の青年。彼奴には気をつけた方がいいぞ」

 

二人の会話に入った白髪で片眼鏡モノクルをかけ、斬鉄剣を持った老人は眼を細める。

 

「なんだ。じいさんあのガキのこと知ってるのか?」

 

「ああ、ちょっとな。彼奴の相手は私にさせてもらうぞ」

 

「ああ、別に構わねえよ。あんな弱そうなの」

 

斬鉄剣の老人は息を吐きながら遠くを眺めた。

 

ようやく、ようやくこの時がやってきた。作戦の要となる今回のフェーズ。もしも奴が試練に耐えれないような軟弱者であればその時点で世界は崩壊の一途をたどる事になる。だがここで手加減して生き延びたとしても、遠くない未来に彼女どころか、幹部達にも勝てないだろう。私が今するべきことはただ一つ………全身全霊を持って、叩き潰すつもりで刀を振るうのみ!

 

老人の顔つきが変わったのを感じ取ったのか、ここでようやく五人目の人影が口を開いた。

 

斑模様のワンピースに腕がスッポリ隠れるくらいの袖を身にまとう少女。年齢は十二、三歳ぐらいだろうか。あどけなさが残る顔の裏には確かな憎しみの炎が燃え盛っていた。

 

「誰が相手しようと別に構わないわ。ただ邪魔者には死を、弱者には圧倒的な力の差を見せてやりなさい。けど、見込みのありそうな人材は即確保よ」

 

「分かってるわよ、マスター」笛使いの女。

 

「ああ、俺達の初陣を勝利で飾ろうか」拳を構える男。

 

「BRUUUUUUUM!」陶器の巨人。

 

「仰せのままに。マイ、マスター」斬鉄剣の老人。

 

マスターと呼ばれ、魔王である少女。それに使える四人の従者。あるも者は音色で、ある者は拳で、その身体で、刀で襲いかかる。

 

魔王の思惑と同時に、老人の思惑、いるはずの無い少女達の行動、それらが今、天王寺涼太を中心に交差する。

 

 

 


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