箱庭でもリライター   作:ヤスズ

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第九話

涼太side

 

五人は"サウザンドアイズ"の支店につくと案の定、無愛想な店員とひと悶着あり(ジン以外はスルーしたが)今は白夜叉の私室の畳に腰を下ろしている。

 

白夜叉は厳しい表情を浮かべ、カン!と煙管で紅塗りの灰吹を叩いて問う。

 

「お前達の要件は何となく分かるが、その前に私の話を聞いてくれ。本題の前にまず、一つ問いたい。"フォレス・ガロ"の一件以降、おんしらが魔王に関するトラブルを引き受けるとの噂があるそうだが………それはジンよ、コミュニティのトップとしての方針か?」

 

煙管から捨てられた灰がの煙が立ち上り、まとわりつく。白夜叉のその顔は普段のおちゃらけた外見相応の笑顔ではなく、東の階層支配者そのものだった。

 

「はい。名と旗印を奪われたコミュニティの存在を手早く広めるには、これが一番いい方法だと思いました」

 

ジンの返答に、白夜叉はさらに鋭い視線で返す。

 

「リスクは承知の上なのだな?そのような噂は、同時に無関係な魔王を引き付けることにもなるぞ」

 

「覚悟の上です。それに強力なギフトを持った皆さんがいますから」

 

「倒した魔王を隷属させ、より強力な魔王に挑む"打倒魔王"を掲げたコミュニティなんてもんは他には無いだろ?」

 

「ああ、俺たちはこんな下層でいつまでもくすぶってるつもりはないからな魔王でも何でもどんとこいだ」

 

茶化して笑う十六夜と俺も去勢を張りながらフォローを入れる。正直、今のノーネームはあまりに弱い。底が知れない十六夜と箱庭の貴族である黒ウサギは兎も角、飛鳥、耀は発展途上段階。かくいう俺は自分の事で手一杯の状況。こんな時に魔王と対戦してしまえば最悪壊滅するだろう。

 

「それで本題は何なのかしら?」

 

「実は、"打倒魔王"を掲げたコミュニティに正式な依頼だ。まず詳しく話すと北のフロアマスターの一角が世代交代したことからだが………その前におんしらに紹介しておこう。入ってきて良いぞ」

 

ガララと襖を開いたのは二人組。ポニテ巨乳と金髪眼帯のおんなのこだった。

 

普段の俺ならすぐ様、連絡先を交換するぐらいのことはするのだが今回はしなかった。いや、出来なかった。

 

初対面であろう………初対面の筈である二人は何処か見覚えがあり、しかし思い出そうとしてもモヤがかかったように思い出せない。

 

「此花ルチアだ。サウザントアイズで雇われている。暫くよろしく頼む」

 

「中津静流、よろしく。………お前がコタローなのか」

 

「ッ!?」

 

ーーーコタロー。瑚太朗。俺の前世であろう人物の名前。

 

その名前を知っているのは俺と事情を話した白夜叉のみ。白夜叉が話したのなら分かるがそれはまずないだろう。と言うことは、この二人は瑚太朗本人と会った事があるという結論に至る。

 

「静流!!」

 

「すまないルチア。行き急いでしまった」

 

ルチアが静流に驚いたような、焦ったような雰囲気で睨む。此処にいる問題児+αは話が見えてこないのか頭に?を浮かべている。

 

やはり俺はこの二人を知っている。正確には記憶にあるというのが正しい。どんな関係だったのかは思い出せないがこの二人は俺の謎である天王寺瑚太朗について何かしら知っているのだろう。

 

ルチアの一言でピリッとした雰囲気になったのを白夜叉が仕切りなおす。

 

「この二人も火竜誕生祭に同行するので仲良くするように。それで北のフロアマスターが交代したのだが………」

 

「ちょっと待って。その話を、長くなる?」

 

ここで耀が話を遮る。

 

「ん?んん、そうだな。短くともあと一時間はかかるかの?」

 

「まずいかも。………黒ウサギ達に追いつかれる」

 

ハッ、と俺達も気が付く。一時間も悠長に、話を聞いていれば黒ウサギに見つかるだろう。

 

「白夜叉!今すぐ北側へ向かってくれ!内容は後で聞いた方が面白い!」

 

「話は後で聞く!今はすぐに北側に!」

 

「そうか。面白いか。いやいや、それは大事なことだ!面白いなら仕方ないのぅ?」

 

白夜叉は両手を前に出し、パンパンと柏手を打つ。

 

「ーーーふむ。これでよし。望み通り、北側に着いたぞ」

 

「「「「ーーー………は?」」」」

 

素っ頓狂な声を上げる四人。だが仕方ないだろう。今の僅かな時間で北側に移動したというのだから。その疑問は何処かへ投げ捨て、俺達は期待を胸に店外へ走り出した。

 

〜〜〜

 

飛鳥は大きく息を呑み、胸を躍らすように感嘆の声を上げた。

 

「赤壁と炎と………ガラスの街………!?」

 

ーーーそう。東と北を区切る、天を衝くかというほどの巨大な赤壁。東側とはまた違う街の賑わい。一目見ただけで家の造りや街並みの雰囲気が別物だと分かる。

 

遠目からでも分かるほどに色鮮やかなカットガラスで飾られた歩廊に瞳を輝かせる飛鳥。胸の高まりが静まらない飛鳥は、美麗な街並みを指さして熱っぽく訴える。先程まで一緒に北に来たルチアと静流はそのまま待機していると言っていたので今はいない。

 

「今すぐ降りましょう!あのガラスの歩廊に行ってみたいわ!いいでしょう白夜叉?」

 

「ああ、構わんよ。続きは夜にでもしよう。暇があればこのギフトゲームにも参加していけ」

 

ゴソゴソと着物の袖から取り出したゲームのチラシを四人が受け取る。

 

「分かった。涼太一緒にい……!」

 

「見ィつけたーーーのですよおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

ズトォン‼︎と、ドップラー効果の効いた絶叫と共に、爆撃のような着地。

 

その声に跳ね上がる一同。大声の主は我らが同士・黒ウサギ。

 

「ふ、ふふ、ふふふふ………!ようぉぉぉやく見つけたのですよ、問題児様方………!」

 

淡い緋色の髪を戦慄かせ、怒りのオーラを振りまく黒ウサギ。どうやら手紙に書いた脱退の文字が彼女をここまで変貌させたのは明らかだった

 

危機を感じ取った問題児達の中で、真っ先に動いたのは俺だった。この状況を打開するための一言を、一瞬のうちに閃くことができた

 

「白夜叉!今の着地の振動で着崩れ黒ウサギの胸が見えそうだから隠してやれ!」

 

「何!?それは由々しき事態‼︎」

 

白夜叉は言葉通りに騙され黒ウサギに突っ込む。たじろぐ黒ウサギだが、チャンスとばかりに必死にしがみつく白夜叉。

 

「し、白夜叉様!?ちょっとどいてくださいまし。今はそれどころじゃ………」

 

「今のうちだ!逃げるぞ!」

 

「ナイスだ!涼太‼︎」

 

十六夜は親指を立てつつ飛鳥を抱きかかえて、展望台から飛び降りる。

 

「え、ちょっと、十六夜君!?」

 

「耀。ちょっと失礼!」

 

「わ、わわ!」

 

涼太は耀を抱きかかえて逆方向に飛び降りる。

 

「に、逃がさないのですよー!問題児様方ー‼︎」

 

黒ウサギの叫び声がこだまするのだった。

 

だが俺は黒ウサギより何かを勘繰るような見定められているような二人の、静流とルチアの視線が気になった。

 

 

 

耀side

 

涼太に抱えられて崖から飛び降りたときはいろんな意味で死ぬかと思った。今は人混みの多い商店街の隅に身を隠した。ギフトを使って周りを確認するが、どうやら黒ウサギを撒くことが出来たようだ。

 

「とりあえず、撒いたみたいだな」

 

ホッと、胸を撫で下ろす涼太に私は耳まで真っ赤になっていただろう。

 

「りょ、涼太。とりあえずおろしてほしい」

 

「あ?ああ、ごめん」

 

漸く地面に足を付けパンパンと服をはたく。

 

「これからどうする?」

 

「うーん。兎に角黒ウサギに見つからない程度にブラブラするか?それともどっか行きたいとこあるか?」

 

「ううん。それでいい」

 

涼太と並んで歩き出す。近くで見ると余計に感じる東側との違い。建物もそうだがここにいる人たちの種族もまた一様である。土作りの道を歩きながら周りを見渡すと、この商店街にはいろんな屋台があることが良く分かる。それを見ているとだんだんお腹がすいてきた。

 

時刻はまだ昼前で朝ご飯もしっかり食べたが、それはそれ。目の前にある沢山の食べ物の匂いが空腹感を掻き立てる。屋台の品を目を輝かせて眺めていると、

 

「なんか食べる?」

 

自分でも現金な性格していると思ったが、誘惑には逆らえず、首をブンブンと縦に振った。

 

「オッちゃん。コレとコレくれ」

 

「おっ?カップルか?熱いね。おら、サービスだ。仲良く食えよ」

 

涼太は代金を払い、大きなクレープを二つ受け取り一つを渡してくる。カップルと言われた事が無性に嬉しく、顔がにやけてしまうが涼太が全く気にしていない様子だったのが少し嫌だった。クレープ片手に再び歩き出した。

 

「これうめぇな。俺のはストロベリーホイップだ。耀のはなんだ?」

 

「ほょこはなな(チョコバナナ)」

 

口をもぐもぐさせながらしゃべってしまった。はしたないと思ったが優先順位はクレープが上である。

 

「一口くれ」

 

返事を言う前にクレープをパクリと齧られた。

 

「チョコバナナも美味いな。こっちもうまいぞ。食ってみろよ」

 

ほいと、クレープを向ける涼太。これは所謂、関節キスなるもの。カァァと顔を赤らませ恥ずかしくなってモジモジしていると、早く齧れと言わんばかりにクレープを差し出してくる。此処で引くのも失礼だと思い、意を決して小さく齧る。

 

「どうだ?こっちもなかなかだろ?」

 

「………うん。お、美味しい」

 

スタスタと歩く涼太の後をついてく。この様な経験は今までにはなく、顔をまともに見れないので背中に隠れるようにしているとふと気付く。周りにはカップルが立ち並び先程の自分と同じことをしていた。傍から見て再び恥ずかしくなってしまう。

 

「………間接キスしちゃった。涼太と間接キス」

 

「そういえば、白夜叉がくれたギフトゲームのチラシがあったな。へぇー、いろんなギフトゲームがあるな。これなんか耀にぴったりじゃないか?」

 

そう言われて目を伏せながらチラシを覗き込む。

 

「うん。やってみようかな。けどどうやって出ればいいのかな?」

 

「とりあえず白夜叉にでも聞いてみるか」

 

「そうです。とりあえず白夜叉様にお伝えしておきましょう」

 

ん?この声は………

 

「黒ウサギ。このギフトゲームではとんなギフトがもらえるんだ?」

 

「新たにフロアマスターになったサンドラ様から直々に恩恵を与えられるとなれば、よっぽどのものでございますよ!」

 

カップル紛いのことをしていて周囲の警戒を怠ってしまった。

 

「そうかならさっさと白夜叉のところに行かなきゃな。それはそうと、十六夜達はもう捕まえたのか?」

 

「いいえ、まだですよ。なので今黒ウサギニオトナシク捕マッテクレマスヨネ?」

 

ギギギと壊れた人形みたいな動きで後ろを見ると憤怒の表情を浮かべた黒ウサギがいた。涼太はあっけら感と前に進みながら話続けている。

 

「ああ。いいよ。そろそろいい時間だし、鬼ごっこは後の二人に任せるとするよ。耀もそれでいいか?」

 

「………うん」

 

正直、短時間だったが涼太と二人でいていろんな意味でお腹いっぱいだ。

 

「逃げるのですね。そう言うと思ってま………え?今なんと?」

 

「だから、今から白夜叉のとこに行くからさっさとしろって言ったんだ」

 

「ならば私が連れて行こう黒ウサギは十六夜達を追ってくれ」

 

そう言って現れたのはレティシアだった。

 

「ならレティシア様、後のことはお願いします」

 

緋色の髪の黒ウサギは目にも止まらぬ速さで駆け出して行った。周りの人達は何やらギャーギャーいっている。

 

「じゃあ行こうか。主殿」

 

取り敢えず言われたとおり、三人で白夜叉のとこに向かうことにした。

 

後できいたことだが、あの後十六夜を追い詰めた黒ウサギはギフトゲームをし、街を破壊しながら鬼ごっこをして"サラマンドラ"のマンドラと言う人に連れて行かれたらしい。

 

その間に私は"創造主達の決闘"の予選を突破した。エッヘン!

 

 

 

NOside

 

鬼ごっこが終わり、集まった"ノーネーム"の涼太・十六夜・ジン・黒ウサギと"サウザントアイズ"の白夜叉・ルチア・静流、"サラマンドラ"のサンドラ・マンドラは話をしていた。

 

「"箱庭の貴族"とその盟友の方。此度はわざわざ足を運んでいただきありがとうございます。今回の件は白夜叉様のご厚意で修繕していただき、負傷者も無かったのでこの件に関しては私からは不問とさせていただきます」

 

「へえ?太っ腹だな」

 

「うむ。おんしらは私が直々に協力を要請したのだからの。報酬の前金とでも思っておくが良い」

 

ほっと胸を撫で下ろす黒ウサギ。十六夜は軽く肩を竦ませた。

 

「………ふむ。いい機会だから、昼の続きでも話しておこうかの」

 

ノーネームは全員、白夜叉にルチア、静流がこの場に残った。サンドラと同士を下がらせ、側近のマンドラだけが残る。

 

サンドラは人が居なくなると、硬い表情と口調を崩し、玉座を飛び越えてジンを駆け寄り、少女っぽく愛らしい笑顔を向けた。今のサンドラは、久しぶりに友達に会って嬉しさを表現しきれない年相応の子供の姿だった。

 

「ジン、久しぶり!コミュニティが襲われたと聞いて随分と心配していた!」

 

「ありがとう。サンドラも元気そうでよかった。けどあのサンドラがフロアマスターになっていたなんてーーー」

 

「その様に気安く呼ぶな、名無しの小僧‼︎」

 

ジンとサンドラが親しく話していると、マンドラは獰猛な牙を剥き出しにし、帯刀していた剣をジンに向かって抜く。ジンの首筋に触れる直前、その刃を十六夜が足の裏で受け止めた。軽薄な笑みを浮かべている十六夜だが瞳は笑っていない。

 

「………おい、知り合いの挨拶にしちゃ穏やかじゃねえぜ。止める気なかっただろオマエ」

 

「当たり前だ!サンドラは北のフロアマスターだ!"名無し"のクズが!」

 

「なら正当防衛だ。腕の一本ぐらい切られても文句はないよな?」

 

涼太はオーロラの片手直剣を展開してマンドラの側面から肉薄。下から上に剣を滑らせた、否滑らせようとしたが止められた。

 

「何の真似だ………此花ルチア」

 

「そう、弱い癖にいきがるな。底が知れるぞ」

 

今の涼太の剣速は本気じゃないにしてもかなりの早さだった。受け止めたルチアは唯の少女。だが今の彼女は少女と呼ぶには失礼だと思わせるほどの剣士の風格が漂っていた。

 

「喧嘩売ってんのだったら買うぞ?」

 

「良いだろう。表へ出ろ」

 

二人のその瞳には殺気が滲み出ている。まさに一触即発の雰囲気。涼太としては最初から、つまり白夜叉に紹介された時からルチアの事が気に食わなかった。

 

なんでも見透かしているような眼差し。俺を見ているようで見ていない、もっと別のもの………内面を覗かれているようなその目が酷く気に触る。

 

「これ、双方引かんか。そんなに戦いたいのであれば………私が相手をしてやろう」

 

白夜叉が憤怒の表情を浮かべる。マンドラが斬りかかった時は、涼太か十六夜が間に入るのが分かっていたのか呆れた様子だった。だが涼太とルチアが対峙した時からオーラが変わった。背筋がゾッとしたと言うのが本音だ。

 

大人しくいうことを聞こうとした様子を見てからは「あまり私を怒らすなよ」と最後に付け加えた白夜叉。その陰には既に魔王の風格はただよらせておらず、何時もの感じの良い空気に戻っていた。

 

「それで?白夜叉。俺たちを呼びたした要件はなんだ?」

 

涼太は苛立ちつつ白夜叉に問う。

 

「この封書の中に、おんしらを呼び出した理由が書いている。………己の目で確かめるがいい」

 

怪訝な表情のまま十六夜は手紙を受け取り、涼太も覗き込み内容に眼を通す。

 

内容を確認した二人からは普段とは違う表情をしていた。それを不思議に思った黒ウサギはピョンと跳ねて涼太達の後ろに立つ。

 

「何が書かれているのです?」

 

「自分で確かめな」

 

十六夜は黒ウサギに背中越しに手紙を渡す。

 

そこに書かれていたのは"魔王襲来"の兆しがあるということだった。

 

ーーー魔王。

 

話には聞いているが今だ闘ったことはおろか、見た事もない。白夜叉が最初に聞いてきた事がようやく合点がいった。

 

ジン、黒ウサギ、サンドラが緊張しながら息を飲む。白夜叉は硬い表情を一変させ、哄笑を上げた。

 

「そう緊張せんでもよい!魔王は私が相手しよう!おんしらは露払いでもやっておればそれで良い」

 

ジンが快諾する一方で、スッと眼を細めて不満そうな双眸を浮かべる涼太と十六夜。白夜叉が相手をするのは、確かにそれが一番安全だがそれはそれで面白くない。

 

それが気になった白夜叉は口元を扇で隠しながら苦笑を向けた。

 

「やはり露払いは気に食わんか、小僧ども」

 

「いいや?魔王ってのがどの程度が知るにはいい機会だしな。今回は露払いでいいがーーー別に、何処かの誰かが偶然に魔王を倒しても、問題は無いよな?」

 

「そうだよな。別に俺には戦う意思はなくても、たまたま、偶然、運悪く出会ってしまった場合は………仕方ないよな?」

 

挑戦的な笑みを浮かべる十六夜とあからさまな涼太に、呆れた笑いで返す白夜叉。

 

「よかろう。隙あらば魔王の首を狙え、私が許す」

 

こうして交渉成立。

 

涼太と十六夜の発言が不謹慎だと告げるマンドラは"ノーネーム"をゲームから追放するように訴えたが白夜叉とサンドラに説き伏せられ、涼太達は渋々協力を受け入れられるのだった。

 

その後、一同は謁見の間で魔王が現れた際の大まかな段取りを決め、宿泊予定の宿に向かおうとしたときにそれは起こった。

 

「天王寺。話がある」

 

扉を出ようとしたら声をかけられた。一度十六夜に視線を向け互いに頷く。何も言わずルチアと静流についていくと明らかに人気のないところに連れていかれた。

 

「何だ?こんなとこに連れてきて告白でもしてくれるのか?青春真っ盛りの高校生ですかよバカヤロー」

 

「面倒くさいのでいきなり本題に入らせてもらう」

 

「スルーかよ」

 

その後、二人から聞いたのはとある事。

 

ーーー俺が抱える問題について。

 

ーーー全世界共通の危機。

 

ーーー瑚太朗という少年について。

 

二人の少女が瑚太朗という人物を語る時の表情。それは今までの中で一番感情が顕になっていた。

 

そして俺は自分が現在立っている状況に何も言えず、ただただ立ち尽くしていた。

 


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