ゼロ魔 オリ主 TSの話[ネタ] と ネギま![習作] 作:仮登録
主人公の名前は一緒だが、スタンドは無しで。
胸の高鳴り
2001年4月1日。
少し肌寒いが、すぐに温かくなるだろう。
テレビでは桜の花がもうすぐ満開になると言っていた。
埼京線のある駅で、彼女は降りた。
小学生のような子だ。だが、彼女は一人で行動しており、とても落ち着いている。長袖長ズボンにリュックサックと、どこか遠足に出かける子のように見える。
ショートカットの金髪と服装で、彼女をまるで少年のようにみせている。
彼女の一番の特徴は、眉毛が枝分かれしていることだろう。
そして今、目の前の光景に彼女の褐色の眼が見張っている。
明らかに、別都市だ。レンガ造りの町並みはまるで、テレビに出てくるヨーロッパの都市の風景だった。そして、埼京線の電車からは見えなかった、高層ビルより大きい巨大な木が目に入った。先程までの電車からの風景は何処へ行ったのだろうか。
駅においてあったパンフレットを一通り掴み、路面電車に飛び乗る。世界樹前広場へ向けて、電車は動き出した。
◇
数えで8歳になる彼女は、麻帆良学園へ行く事になった。
彼女の身に危険が迫り、魔法関係のある保護プログラムを受けた。パスポートといった身分証明の全てを新しくし、彼女は完全な別人になったのだ。
新しい名前は春野 柚子(ハルノ ユズ)。年齢は12歳。
そして、心臓の病気を患っているという設定の中学一年生へと。
今、ユズがいる麻帆良学園とは、幼等部から大学部までのあらゆる学術機関が集まってできた研究学園都市である。
日本の技術の最先端をいく場所だ。
ユズは路面電車から降り、世界樹を見上げる。
天辺が見えない。
あまりに大きくて、本当にこんな近くにいて倒れてこないかと心配してしまうくらいだ。
「やぁ、ユズくん」
ユズは体勢を戻し、声の方を向く。
短髪で眼鏡をかけたスーツ姿の男性、タカミチ・T・高畑がいた。
気軽に片手を上げ、優しげな笑みをたたえている。
「高畑さん!」
ユズは知り合いのタカミチを見つけ、急いでそばに寄った。
「ほんとに一人で来れたんだね。迷わなかったかい?」
「ダイジョーブです。メルディアナの校長先生のお陰です」
ユズは胸を張りながら、あるアイテムをこっそり見せる。
タカミチはユズの頭を撫で、手を差し出す。
「さっ、疲れていないかい?お腹は?」
「私、日本食が食べたいです」
ユズはその手を握り、二人で歩き出した。
◇
「初めまして、学園長先生。春野柚子と言います」
ユズはそう言い、頭を下げた。
学園長は笑いながら、笑顔で返す。
「どうも、初めまして。ユズくん。近衛近右衛門です。学園長です。うむ、日本語は大丈夫そうじゃのう。どうじゃ、飛行機は?長かっただろう。疲れておらんかのう?」
ユズはそれを聞き、高畑先生と同じ事を聞いていると、内心おかしく思った。
「ダイジョーブです。私、この学校のこと、とても楽しみにしていましたから。早く通いたいです」
エヘヘッと笑うユズ。それを見て、頷く学園長。
「そうかそうか。君はとても賢い。勉強にもついていけるじゃろう。だが、体の方は違う。辛くなったら、いつでも先生に言うんじゃぞ」
大きな声でユズは返事をする。
それを見て、学園長はユズの後ろの方へ目を向ける。
学園長の目配せに源しずかは頷く。
「それじゃあ、ユズさん。行きましょうか」
「はい!源先生」
大きな声で挨拶するユズを手を振りながら、学園長は見送る。
扉が閉められると同時に、大きなため息を付いた。
「健気じゃのう」
「そうですね。彼女はまだ7歳なのに」
タカミチは少女の気持ちを考える。
ユズと言う少女は、イギリスから見知らぬ土地へたった一人できたのだ。不安だったに違いない。
タカミチが送り迎えをすることすら禁止され、適当な人物に監視させることしかできなかった。
「ユズくんを護るためとはいえ、年齢まで偽る必要があるとはのぅ」
彼女が存在した歴史は消えない。周りの記憶を消そうが存在までは消えないのだ。だから新しい身分を与え、追跡を不可能にし、自衛ができるようになるまで安全な麻帆良に匿うことになったのだ。
「麻帆良学園の、しかも紅きの翼のタカミチ君のクラスなら、身体面では安全じゃ。じゃが、精神の、心の面では」
普通なら泣き喚いてもおかしくはない。
だが、ユズは泣いていない。
だからこそ、学園長は不安そうな顔をする。
「友だちが出来れば良いのですが、体力の差は非常に大きいですね」
「うむ、そこは君に期待しとる」
学園長はタカミチに顔を向ける。
タカミチはそれに対し、しっかりと頷く。
「はい、生徒の皆も分かってくれると思います」
「同居する学生たちも仲良くして欲しいのぅ」
ユズのことが正式に決まる前に、寮の部屋割りはすでに完了していた。学園長は急いで大部屋を手配し、部屋の割り振りミスをしたことにした。
そのとき、ユズと同居する人物の条件を考えた。
魔法の関係者ではないこと、インドアであること、タカミチのクラスであること、優しいこと。
すでに決まっている寮部屋に、ユズを入れて問題が無さそうな部屋が選ばれた。
ユズに宛てがわれた大部屋に長谷川千雨、ザジ・レイニーデイの名前が書かれていた。
◇
「この部屋ですか」
ユズはドアを見上げる。
そこには春野柚子の名前があった。他にも名前があり、三人部屋だと分かる。
六階まで登るのはつかれたが、しっかりと背筋を伸ばした。
これから三年間を共にする人だと思うと、緊張する。
扉をノックし、返事が返ってくる。
「どちら様で?」
少しだけ開けられたドアには、チェーンがしてあった。
嫌われている。ユズはそう思った。
顔を隙間から覗かせた少女は眉を寄せ、怪訝な表情をしている。
眼鏡から見える目は細められ、"なぜ女性下着売り場に男性が?こいつ頭おかしいのか"みたいな目をしていた。
「は、初めまして。私、春野柚子と言います。仲良くしましょう」
ユズは仲良くしてくださいと言おうとしたが、別の言葉が出てきた。
「はぁ?!」
少女は声を上げる。ユズはそれを聞いて言い直した。
「あ、あの仲良くしてください」
目の前の少女は頭に手を当てて、こめかみを押さえる。
「本当に春野柚子って名前なのか?」
「あっ、はい。そうです。よく言われます。これ学生証です」
ユズは手際よく学生証をだした。
魔法アイテムではない学生証だからこそ、全ての人物に有効なアイテムであると、ユズは感じていた。
少女が学生証を見て、"まじかよ"と呟いた。
学生証とユズを見比べ、呆れた顔になった。
「あー、これ、返すよ。ちょっと待ってくれ」
そう言って、少女は一度ドアを閉めた。
チェーンを外す音が聞こえ、ドアが開かれた。
少女は学生証をユズに返す。
しかし、まだ怪訝な表情は続いている。
少女が普通に立つと、ユズの背の低さが際立った。
少女の背の高さは恐らく150cmを超えている。
一方でユズの背の高さは、120cmである。
これが同級生とは普通は思わないだろう。
「あっ、私の背は薬で成長するのを抑えているので、不思議に思うかもしれませんが、よろしくお願いします」
少女は背の高さを不審に思っていると、ユズは感じ取った。
すぐに、心臓病の設定を口にする。
「背を薬で抑えるって、どんな意味があるんだよ」
「それはですね、心臓の負担を少なくするためです。心臓の手術は小さい頃に終わってますし、激しい運動じゃないなら大丈夫です」
少女は予想外だったのか、気まずそうな顔になった。
「すまん、悪かった」
「いえいえ、よく言われます。それに、結構丈夫なんですよ、私」
ユズは力こぶを作る仕草をする。
少女はそれを見て、失笑した。
「わ、わるい、笑うつもりはなかった。ほら、早く入れよ」
「あ、あの!お名前伺ってもよろしいですか?」
「ああ、私は長谷川千雨だ。よろしく」
ぶっきらぼうな言い方だったが、ユズは"よろしく"と言われたことが嬉しくなった。
「なぁ、なんで敬語なんだ?日本語はそれで習ったのか?」
「なんと!私が日本人じゃないとよく分かりましたね」
「分かるっつーの!」
ユズは千雨と友だちになれると思った。愛想が悪いが、ユズとして初めての友だちに、胸が高鳴った。
章作成でちゃんとネギま!になっているのだろうか。