【完結】PERSONA3 Re;venger   作:清良 要

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第十三章 -Death-
第三百八十三話 軍曹殿


11月24日(火)

朝――EP社

 

 修学旅行も終わり、京都から戻ってきた七歌たちは休み明けの火曜日に朝からEP社へやって来ていた。

 別に学校をサボってきた訳では無く、単純に今日から体験学習として数日間事前に申請した企業で仕事体験を行なう事になっているためである。

 これは二年生の行事なので、美鶴たち三年生は普通に学校に行っているが、冬の朝っぱらからEP社敷地内の何もない広い場所へ集合させられた七歌は、一体どうなっているんだと集合時間になっても現われない企業側の担当者への不満を漏らす。

 

「ふざけんなよ。社会人だろ。時間守れよ。てか、勤労感謝の日の翌日に体験学習って普通は逆のタイミングでやるだろ。感謝してから仕事させずに、仕事させてから改めて勤労に感謝させるべきだろ常識的に考えてさぁ!」

「まぁまぁ、確かに僕たちの集合時間は八時半だけど、仕事の開始は普通は九時だからね。きっと僕たちが遅刻しないよう早めに設定されていたんだよ」

 

 七歌たちは行き帰りは制服で、作業中は動きやすい服でと言われているので学校のジャージを持ってきている。

 ただ、今はまだ始業時間前なので行き帰りと同じ制服姿であり、海に近く遮蔽物のないこの場所は冷たい風が吹いていているため寒い。

 企業側の人間が七歌の暴言を聞いていると拙いと思った綾時がフォローを入れるも、なら、お前らも女子と同じスカートを穿いて耐えてみろと反論される。

 

「うるせぇタコ! 覗き四兄弟の末っ子が話しかけてきてんじゃねぇ! てか、スカートの寒さ舐めんな! 行けると思うならズボン脱いで下着姿になってみろ! それがスカート装備の防御力じゃ!」

「ご、ごめん。ていうか、それなら湊に電話してみたら? 担当者がこないって言えば誰かしら送ってくれると思うけど」

「早く言えよタコ! 手がかじかんでボタン押しづらいっつーの!」

 

 体験学習は毎年の行事だが、その年々によって参加企業は異なっている。

 ジュネスや大手コンビニなどはほとんど毎年のようにあるが、およそ三百人の生徒を参加させる必要があるので当然誰も知らない小さな店もあったりする。

 無論、それらは都内に所在地があるところ限定なのだが、自分たちの知る企業や店はやはり人気のようで倍率が高かった。

 中でも今回初めて受け入れを表明してくれたEP社は研究中の最新技術を一部見せて貰える事もあって、工学系に進むつもりの生徒だけでなく、メカ好きの男子たちも多数応募する事態になり、最終的に八十人近い生徒の中から抽選という形になっていた。

 そうして、今回見事その抽選に勝ち残ったメンバー二十人の内E組からはチドリ、ラビリス、風花、美紀、渡邊、西園寺、F組からは七歌、ゆかり、アイギス、順平、綾時、友近となっている。

 最初は十名程度という事だったが応募人数が凄まじい事になっていると聞き、EP者側が配慮して募集人数を拡大してくれたのである。

 おかげで集まった者たちは最初は機嫌が良かったのだが、今は七歌をはじめとした数人が非常に不機嫌になっており、知り合いとは言えいきなり企業のトップを電話で呼び出す事態に発展していた。

 勿論、湊は企業のトップなので子どもの相手をしている暇などないのだが、まだ会社が稼働する前なので七歌の電話も受けてもらえたらしく電話が繋がるなり七歌は相手を怒鳴りつけた。

 

「おい! クソ寒い中、三十分も待たせるってこの会社どうなってんだ! お仕事手伝ってくださりありがとうございますって頭下げにくんのが礼儀だろうが!」

《……では、そのままお帰りください。学校へは生徒らは真面目に働いていたと定型文で報告しておきますので四日の休暇をお楽しみください》

「ゴメンなさい嘘です。でも、本当に寒いのに誰もいないし来ないんだけど八雲君助けて」

《……担当は武多のはずだがな。とりあえず、お前たちから見て右側にあるかまぼこ型の建物に移動しろ。三つある内の屋根が黄色い建物だ》

 

 最初は強気に言ってみるも、帰れと言われると流石に困るのか七歌はすぐに謝って助けを求めた。

 そして、今回自分たちの案内をするはずだった人間が武多だと判明すると、相手の姿を知っている何名かが「あのクソブタ」と瞳の奥に黒い炎を燃やす。

 彼は見た目や言動に問題はあるものの、幹部であるシャロンの助手としてEP社に合流したため、各分野の精鋭が集まっているEP社内でもトップクラスの技術を持っている。

 幹部になると自由に好きな事が出来ないため、今でも役職持ちにはなっていないが、そんな人間が学生の案内係になるなど普通はあり得ない。

 そうなると、彼が来ないのも何かしらの情報伝達にミスがあったのだろうかと考えるところだが、湊の指示に従って七歌たちがかまぼこ型の建物に移動すると、中で待っていた茶髪の白人女性職員が温かいお茶を一人一人に配ってくれた。

 

「寒い中お待たせして申し訳ありません。担当者が来るまでこちらでお待ちください」

「あ、いえいえ、全然そんな。お姉さんが悪い訳じゃないんで大丈夫っす」

 

 使い捨てカップのお茶を受け取った順平は、スーツを着こなす綺麗な白人女性に日本語で話しかけられドキドキしながら答える。

 他の者たちもお茶のサービスと温かい建物に入ったことで安心したのか気持ちが和らいでおり、先ほどの剣呑な雰囲気も霧散して建物の中を見渡している。

 彼女たちがいるのはただのロビーだが、その奥には腰までの高さの壁の上に大きな一枚ガラスがはめ込まれた仕切りがあった。

 機密に当たるのであれば近付いてはいけないと注意されるはずだが、風紀委員で真面目な小田桐が職員の女性に聞けば、ガラスを叩かなければ近寄って構わないと言われた。

 許可を貰えれば全員が寒い入口付近からロビーの奥へ移動し、ガラスの向こうに何があるのかを見に行く。

 

「な……これは、すごいな。パワーアシストスーツと呼ばれるものか」

 

 ガラスの向こう側の光景を見て小田桐は驚きのあまり目を見開いた。

 向こう側はロビーよりもワンフロア低くなっており、小田桐たちは上からそのフロアを見下ろす形になっているが、そこではロボットのアーマーのような物を装備した男性が束ねられた鉄筋を持ち上げて運んでいた。

 ガラスの前までやってきた女性職員が言うには一本五十キロの鉄筋を十本束ねているらしい。

 パワーアシストスーツを着ただけで一人で五百キロを運べるとは恐れ入る。

 こんな物が既に実用化されているとは聞いたことがないので、まだ公にはしていない試作品なのかもしれないが、小田桐たちから見れば既に完成しているように思えた。

 

「あの機械は既に実用化されているんですか?」

「我が社の施設内に限っての話ですが、あれの二つ前のもう少し小型の物が運用されています。あれは積載重量を増やすために大型化したもので、稼働時間やバランスなどまだまだ正式運用には課題の多い試作品です」

「なるほど。でも、どうして施設内でしか運用されていないのですか?」

「パワーアシストスーツの運用には法整備がなされていません。今後、馬力等で規制などもされるでしょうから、それらに対応出来るよう現時点では自社内のみの運用となっています」

 

 EP社製のパワーアシストスーツのように安定した性能が発揮出来るのであれば、軍事用に転用することも出来れば、犯罪に使うことも出来てしまう。

 そして、それらを制限するための法律がまだ出来ていないので、社会への影響を考慮してEP社では規制のない自社内のみで運用していた。

 話を聞いた小田桐や何人かの男子生徒はなるほどとメモを取って、注意深くガラス越しにパワーアシストスーツの作業を見学した。

 ゆかりやチドリのように機械に興味の無い生徒も、流石にこういった近未来の技術は素直に感心するのかジッと見ている。

 一先ず学生らがパワーアシストスーツの作業に興味を持ってくれた事に安堵した女性職員は、携帯を取り出すと内線であるところへ連絡を入れる。

 すると、鉄筋をフロアの端へ移動させたパワーアシストスーツの男性がフロアの真ん中へ移動し、七歌たちのいる壁の方を向いて何やら構えている。

 一体何が始まるんだと思っていれば、何と七歌たちの立っている下のフロアから軽自動車が走ってきて男性へ衝突する。

 風花と美紀が思わず悲鳴をあげかけ、男子たちも流石にヤバいのではとガラスに顔が付きそうになるほど接近して凝視した。

 

「す、すげー! 車を受け止めて無事だぞ!」

「かっけー! マジでアメコミのヒーローみたいじゃん!」

 

 友近と渡邊がその光景を目にして興奮気味に声を漏らす。

 なんと、車に衝突された男性は僅かに後退しながら車を受け止め、最後には掴んだ車を相撲のつり上げのように持ち上げて見せたのだ。

 スーツを装備した際の身長はおよそ三メートルほどなので、二周りか三周りほど大きくなる程度ならロボットでは無く人型ヒーロー扱いに出来る。

 幼い頃に夢見たヒーロー。それが実現する日もそう遠くないと思わせるに十分な光景は、主に男子たちの心をガッチリと掴んだようだ。

 

「デモンストレーションはお楽しみ頂けましたか? 皆さんには後ほど実用化されている小型のパワーアシストスーツでの作業を体験して頂けます。残念ながら車を受け止める事は出来ませんが、脱輪した車を一人で持ち上げるくらいは出来ますよ」

「それも人助けの定番じゃないっすか! オープニングで颯爽と現われて小さな問題をいくつも解決するシーンにあるやつっしょ!」

 

 アメコミの実写映画でよくあるシーンに、次々と人助けをして街の人に感謝されるというものがある。

 渡邊の感覚だと脱輪した車を一人で持ち上げるのは、その中の一コマによくある定番物らしい。

 すぐにそれを体験できる訳ではないが、期間中に体験可能と言うことなら多少つまらない作業が続いても頑張れそうだと何人かの生徒が気合いを入れた。

 女性職員はそんな姿を微笑ましそうに眺め、そろそろ時間かなと腕時計で時間を確認したタイミングで入口の扉が開き、中に入って遊べるバルーンアトラクションのような不思議体型の男が現われた。

 

「うむ。全員揃っていますな。では、すぐに移動してそちらで着替えてもらいますぞ。一人に一つ鍵付きロッカーを貸すので、貴重品や携帯電話も置いてくるように。アクセサリーは認めますが衣服以外の所持品は全てロッカーに置いて集合ですぞ」

 

 急に現われたかと思えば武多はすぐに移動だと建物を出て行こうとする。

 学生たちがここへ来たのは一時的に寒さをしのぐためで、実際の作業場所がここで無い事は彼らも理解していた。

 けれど、美人で優しいお姉さんの案内ならばともかく、急に現われた不思議体型のデブに上から指図されるのは勘に障る。

 主に気の強い女性陣が武多の事を冷めた視線で睨めば、それに気付いた女性職員が建物から出て行こうとする武多に声をかけた。

 

「武多さん。社長から伝言で“学生より後に来るとは良い身分だな”だそうです」

「おっふ……え、いやいや、そんな事はないですぞ。僕はちゃんと体験学習用のスケジュール通りに動いていますので」

「昨今はコンプライアンスに厳しいので気をつけてください。では、私はこれで」

 

 武多側にどういった思惑があったのかは分からない。

 しかし、学生を預かっている以上は企業として最低限守らなければならない事があるだろう。

 湊からの伝言を聞いた武多もそれを思い出したはずなので、女性職員が去って行けばどこか項垂れた武多が学生たちを先導して別の建物へ向かった。

 

***

 

 移動した先の建物でジャージに着替えて集合した学生たちは、何故だか迷彩服を着た武多の指示で施設内にある二百メートルトラックに集められた。

 どうやらここはEP社が経営するスポーツ関連の施設のようで、ここへ来るまでにテニスやフットサルの室内コートもあった。

 だが、どうして仕事体験で自分たちが運動場のような場所に集められたのかが分からず、学生たちが困惑していると全員の前に立った武多が竹刀で地面を叩いてから口を開いた。

 

「貴様らの教官を務める武多軍曹である! 話しかけられた時以外は口を開くな! 口でクソたれる前と後に“サー”と言え! 分かったかウジ虫ども!」

 

 突然の豹変に学生たちは困惑した。こいつ映画の見過ぎだろとあまりに有名すぎる軍曹の真似をするデブに白い目が向けられる。

 ただ、それでも武多は鬼軍曹スタイルを止める気はないのか、再び竹刀で地面を叩くと唾を飛ばしながら命令する。

 

「私がやめと言うまで走り続けろ。無駄口を叩く必要はない。貴様らウジ虫でもそれくらいは出来るだろう。ただ黙って走れ!」

「サー、意味分かんないです、サー」

「黙れ雌豚! どグサレに色目を使うことしか能の無い雌豚でも走るくらいは出来るだろう。さっさと始めるか。どグサレのマラをしゃぶりに帰るか選べ!」

 

 最新技術を取り扱っている企業でまさかの前時代的な軍隊トレーニングを模したしごきを体験するとは思わず、西園寺が軽いノリでちゃんと説明してと求めれば、武多は一発でセクハラ判定を受けるであろう言葉で返した。

 あまりに下品な言葉に女性陣が眉を顰めるも、武多は学生らに走れ以外の指示をするつもりがないのか走り始めない学生らに向かって小さく呟いた。

 

「ウジ虫ども、成績が欲しくないのか? 言われた作業を一切こなさないとなれば、当然、その評価はゼロだ。ここは楽しいテーマパークじゃない。仕事に理屈を求めるな。理不尽を飲み込み歯車になれ。命令に従わない者は必要ない。今すぐ走り出すか、帰るか選べウジ虫ども!」

 

 このままでは一切成績が貰えない。そう言われて男子の何人かが動揺する。

 校外学習は明確な採点基準はないものの内申点に大きく響く。

 もし、ここで武多の命令に従わずにいれば、本当に成績が貰えず内申点が貰えなくなるかもしれない。

 大学進学を考えている者にとってそれはかなりの痛手だ。せっかく有名進学私立に入ったのにそのアドバンテージが失われる事になる。

 武多の言葉を理不尽と感じて怒りを覚える者もいるのだろうが、成績のためには言うことを聞かなければならないと思うことにしたのか数名の男子が走り始める。

 一部が走り始めると他の者もつられて動き出すのか、最終的に全員が走り始めたが、言う通りに走っている学生らに武多がヤジを飛ばす。

 

「しっかり走らんかウジ虫が! カタツムリの方がいくらか俊敏だぞ!」

 

 言われた者たちはお前よりは速く走ってるわと心の中で怒りを募らせる。

 いくら運動部じゃない学生でも、明らかに動けないデブの武多よりは速く走れている確信があった。

 けれど、そんな相手でも今は自分たちの案内役だ。五周を超えてもまだ走れと言ってくる相手に殺意すら覚え始めた学生らは、終われば見てろよと拳を強く握り締めて黙って走り続ける。

 十周を超えた辺りで普段は運動していない風花や一部の男子のペースが落ち始める。

 それに気付いて他の女子がペースを合わせようとするが、全体のペースが落ちてきたことに気付いて武多が罵声を浴びせた。

 

「何をサボっている! どグサレの上で腰を振り過ぎて足でも震えているのか? いつも通りどグサレどもの前で尻を振ってみせろ!」

「いや、全員走るのをやめろ。しばらく休憩してていい」

「何を勝手な事を言っているウジ虫! …………あっ」

 

 武多の発言を否定し、学生らにもう走らなくていいという言葉が後ろから掛かる。

 すると、武多は勝手な事を言っているのは誰だと怒りながら振り返った。

 そこには蒼い瞳をしている湊とソフィアが立っており、会社のトップ二人を罵倒した武多は途端に顔を青くしている。

 走るのを止めた学生たちは湊と美少女の登場に驚いているが、彼らの上下関係を知っている者たちは“サヨナラ、クソブタ”と心の中で吐き捨て笑みを浮かべた。

 走り終えた学生たちにはシャロンと彼女が連れて来たスタッフたちからスポーツドリンクとタオルが手渡される。

 そして、学生とスタッフが遠目から見守っている状態で湊が口を開いた。

 

「どうも、雌豚に腰を振らせているどグサレのウジ虫です」

「では、わたくしはその上で腰を振っている雌豚ですわね」

「あ、いや、それは社会人としてのメンタルを鍛えるトレーニングで使った設定と言いますか……」

 

 湊とソフィアは肉体関係を持っているので、武多軍曹の言葉を借りるならどグサレとその上で腰を振る雌豚になる。

 ただ、会社のトップ二人をそんな風に呼べる訳がないので、あくまでトレーニング中の設定ですよと武多は言い訳した。

 無論、全てを分かっている人間にそんな言い訳が通じるはずもないのだが、湊はまだこの茶番を続けるようで武多に話しかける。

 

「軍曹殿、命令違反は銃殺刑と記憶しているが如何か?」

「い、いえ、閣下それはその……」

「そもそも、軍曹なんてただの下士官だろ。兵以外に威張れない立場でよくもそこまで増長できるな」

 

 武多が言い訳も出来なくなると、湊は茶番を終えて設定がそもそも間違っているだろうと呆れた顔をする。

 軍曹と聞くとそれなりに偉そうに感じる者もいるかもしれないが、階級を考えると下から数えた方が早いくらいの存在だ。

 確かに上下関係に厳しいので階級が下の者をいびることは出来るものの、それより上の階級の者が沢山いる場所でやれば自殺行為。

 学校の部活で例えるなら軍曹など一年生のリーダーポジション程度で、上に尉官や佐官に将官といった二、三年生と教師がいる訳だ。

 見つかればこんな風に怒られるのは当然で、湊は武多の手から竹刀を奪うと冷たい瞳で相手を見つめながら言った。

 

「走れ豚。走らせた合計距離の三倍走りきるまで休むな。走るのを止めれば腰に紐を巻いてバイクで引いて走るぞ」

「そ、それは流石に死んでしまうのでは?」

「死んで何か問題が?」

 

 蒼い瞳のまま話す湊から本気を感じ取った武多は、これ走らなくても死ぬやつだと理解し、湊に竹刀で叩かれる前に走り始める。

 すると、走らされていた学生たちの方から、

 

「しっかり走らんかクソブタ!」

「ナメクジにも劣るぞ、クソブタ!」

 

 と言った罵声が飛ぶ。

 まぁ、気持ちは分からなくはないので湊も止めないが、走っているデブを見ていても何も楽しくないので、湊は走っている武多の尻に向かって竹刀を投げて尾てい骨にクリティカルヒットさせると学生たちの許へ移動する。

 

「こちらの人選に不手際があったようですまない。あれには人格矯正プログラムを受けさせるので、残る作業はこちらから正式に指示を出そう。と言っても、今日は休憩が終わったら一通り施設内を見て回るくらいだが」

「湊様、それでは先に皆さんにシャワーと着替えのご案内をされては?」

「そうだな。じゃあ、シャワー室に案内するからついてきてくれ」

 

 事情を知らない者たちは何故湊がEP社の代表と共にいるのか不思議に思っているようだが、汗を流せるなら何でもいいやという気持ちが勝ったのか誰も質問してこない。

 そうして、武多の監視を他の者に任せると、湊は学生たちを男女別のシャワー室へ案内するべく運動場を後にした。

 


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