砲雷撃戦(物理)するには提督は必要ですか? ~はい。提督は脳筋仕様の化け物です~   作:elsnoir

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四話 提督は和解するつもりもなく拳で語る

★海域 ???

side:渚

 

 挑発すると同時に海面を全速力で滑り出す。目的はでかい奴。渚が接近すると気づき巨大な影から砲弾が放たれた。それを横に体重を傾け回避行動をとる。放たれた砲弾は海面に直撃し高い水しぶきを上げた。だいたい高層ビル程度の。

 

「おいおい…シャレになってねぇよ…」

 

 空高く上がった水しぶきを見上げ言葉を漏らした。その視界に青色に光る黒色の飛翔する物体を見つけた。それを敵の艦載機と判断するのが先だったか、腰に装備している魚雷に手を触れるのが先だったかわからない。もし先に魚雷に触れているのなら、「飛んでいるから撃ち落とせばいい」という単純な理由で触れたんだと思う。

 魚雷を三本指で挟み、それを飛翔する艦載機めがけてぶん投げた。くるくると回転しながら飛んで行った魚雷は六本。それが一つの艦載機に直撃し爆発を起こした。その爆発に誘爆してほかの艦載機も爆破する。目の前のでかい奴より先に動きを止める奴がいた。先ほどの艦載機を飛ばしてくる深海棲艦の帽子をかぶった人型の艦。空母だ。名前はヲ級。ただまとっているオーラが違う。おまけに目から蒼い炎が出ている。

 

「邪魔だっ!!」

 

 滑る方向をヲ級に向け、接近した。

 

「高雄!提督を援護!!」

「わかってます!!」

 

 夕張は手に持っていた砲を握り、放つ。同時に高雄も砲弾を放つ。放たれた砲弾は空を切り裂き、ヲ級に直撃するもあまりダメージはないようだ。渚はそのまま海面を滑りヲ級に接近する。ヲ級はこちらをにらみ艦載機を飛ばそうとする。

 

「させるか!」

 

 再び魚雷を指で挟みぶん投げた。今度は被弾するまいと回避行動をとるがさすがに六本を回避するには無理があったようだ。投げられたうちの二本が直撃する。爆炎がヲ級を包む。そして視界を奪っている間に渚は、

 

「こんのぉ!!」

 

 と声を上げ全力の腹パンを繰り出した。もちろん単装砲付きで。腹を殴られたヲ級は怯み、顔を上げこちらをにらむ。その顔に

 

「おらぁっ!!」

 

 今度は左ストレートだ。同じように単装砲をめり込ませる。そこに追い打ちをかけるかのように、右手を一度下げ

 

「ブロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 もう一度全力のブロー(腹パン)をお見舞いしてやった。おまけに零距離での砲撃を加えてやった。ブローの威力に加え零距離の砲撃でヲ級の体が上空へ上がった。ある程度ダメージは与えたから今度はでかい奴だ。

 

「オオオオオオオ!!」

 

 背後の巨大な影が雄たけびを上げる。雄たけびに答えるかのように肩らしき部分に付属している砲身が火を噴く。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 渚は同じように雄たけびを上げながら放たれた砲弾を避ける。全速力で海面を滑り巨大な影に迫っていく。赤色の瞳がこちらを睨みつける。渚も同じように睨めつけながら砲弾の弾幕を避け突き進む。

 

 

「シズメッ!」

 

 砲弾を避けていたがうまく誘導されるように砲弾を放っていたようだ。近くに着弾した砲弾が高い水しぶきを上げ視界を奪う。そして水しぶきの奥から砲弾が放たれた。砲弾は着弾し高い水しぶきを上げた。

 

 

side:高雄

 

 渚が砲弾に直撃してしまった。

 

「提督!!」

 

 提督は艦娘ではない。ただの人だ。そんな人がイージス艦をたかが一発で沈められる弾丸を直撃したんだ。生きているわけがない。着任してたった数時間、自分の指揮官を失った。

 

「……よくも……よくも、提督を!!」

 

 怒りがこみ上げる。今装填されている砲弾を全て放った。巨大な影が爆風に包まれるも大きなダメージを受けた様子は一切ない。お返しと言わんばかりに砲弾が飛んできた。それを避ける間もなく当たった。

 

「うああっ!!」

 

 服が焼け落ち、艤装が破損する。肌も焼け落ちるかのように痛い。向こうはまだ撃つつもりだ。そうはさせまいと夕張も砲弾を放つが、高雄の二の舞になってしまった。

 

「そんなっ…」

 

 砲身が動き角度を合わせる。今度は沈める。人型の艦の赤い瞳からそう伝わってきた。

 

「シズメ」

 

 まるで死刑宣告でもするかのようにつぶやいた。それと同時に人型の艦のすぐ近くから水しぶきが上がった。そこにボロボロの白い軍服を身にまとった一人の青年がいた。そう、渚だ。

 

「提督!!」

 

 

side:渚

 

 砲弾が直撃する前に足の艤装のエンジンを止めた。そして海中に潜ったものの威力は全部消えることなく少し被弾した。そして少しの間海中に潜って隙をうかがっていた。そして今艤装のエンジンをフルスロットさせ、海上に飛び上がったわけだ。

 目の前には巨大な影の口が見える。なんでも砕きそうな咢だ。この巨大な艦のどこに眼らしきものがないが、それがありそうな部分を両手の砲で殴りつけることにした。

 

「チェストオオオオオオオ!!」

 

 それにしてもよく叫んだと思う。ことあることに叫んでる気がする。今はそんなことを気にしている場合ではない。

 

「オオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 砲がめり込み、巨大な艦が声を上げた。その艦についている腕らしきものが渚をつかもうと動き出した。

 

「捕まるかよッ!」

 

 逆上がりの要領で口らしき部分を蹴り、艦から離れる。そして砲を一度ホルスターに収納させ、指に魚雷をはさみ投げた。その魚雷は口の中に放り込まれた。次の瞬間、巨大な艦が爆発した。

 

「キャアッ!」

 

 爆風で人型の艦が吹き飛ぶ。これで単なる人型の艦だ。おそらくこの艦に戦闘手段は残されていないだろう。渚はゆっくりとその人型の艦に近づき捕まえる。首もとのケーブルを持ってだ。

 

「お前を最後に沈めるといったな」

 

 視線を横にやる。いまだにボロボロになったヲ級がいる。

 

「ソ、ソウダ……タスケテ…」

 

 左足をゆっくりと引く。ケーブルをつかむ手をはなす。そして「ボ」という効果音が付属するであろうフォームでその人型の艦を左足で蹴り飛ばした。当然左足だけエンジンで加速した状態でだ。蹴り飛ばされ上空に上がった人型の艦。それが落下するポイントに向けて海面を滑る。

 

「………あれは嘘だ」

 

 と言い、速度を乗せた状態で右手に握る14cm単装砲で落下してきた人型の艦の顔を全力で殴ってやった。もちろん零距離砲撃もつけてだ。

 

 

★鎮守府 執務室

 

 その後ちゃんとヲ級も殴り沈め、無事帰還することができた。すぐにでも高雄と夕張を入居させたかったのだが……

 

「……………どうんすだこれ」

 

 入渠ドッグ。艦娘によって入渠の形は違うが、今は二人とも布団に寝かせておいた。電の話によればぐっすり眠っているらしい。そして艦娘が入渠に入ると時間が表示されるのだが、時間が時間だ。聞きたいことが山ほどある。

 

「二十時間と七時間だと……」

 

 艦娘の体力をすぐに回復させる魔法のような道具があるのだが、大淀に話を聞けばここにはないらしい。




お気づきかと思いますが、敵艦はヲ級フラグ改とダイソン……戦艦凄姫です。

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