砲雷撃戦(物理)するには提督は必要ですか? ~はい。提督は脳筋仕様の化け物です~   作:elsnoir

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参話 捕捉

★工廠

side:渚

 

 調子乗って適当に建造した。適当に資材指定してお願いした。その後五十鈴に注意された。そして結果は1時間22分と1時間25分。そしてその間大淀から逃げていた。青い服を着たペレー帽をかぶったスタイルのいい艦娘と銀色の髪を緑色のリボンで縛った艦娘。青い服の艦娘と比べ胸は貧相だった。

 

「朝霧 渚だ。これからよろしく」

「高雄です。よろしくお願いします」

「兵装実験軽重夕張です」

 

 新たな戦力として二人が加わった。駆逐、軽巡、重巡。3つの艦種がそろった。戦力も大幅も上昇するだろう。少しでも早く輸送ルートを確保しなければならない。

 

 

★執務室

 

 簡単な自己紹介をしている間に本部から一つ伝文が入った。今まで通っていた輸送ルートを確認したいから少し偵察をしてほしいとのこと。要するにちょっと偵察ついでに簡単に深海棲艦殴って来い。ということだ。で、今は電、五十鈴、夕張、高雄をそろえ小さなミーティングを開いている。

 

「ああ、本日輸送ルートの確認ということで、少し偵察に出ることになった。偵察という名目で戦闘ということになる。完全な輸送ルートを確保するには大分時間がかかるが、いつかはできるはずだ。というわけで鎮守府から少し離れたところにあるこのポイント」

 

 そう言って地図を広げる。そしてそのポイントを指でぐるぐるとなぞる。前回戦闘したところからちょっと遠くに行った場所だ。

 

「よし、皆準備はいいな?」

 

 目の前にいる艦娘は皆自信満々にうなずく。

 

 

★鎮守府正面海域

 

「で、どうして提督が出撃しているんですか?」

 

 夕張が声を出した。高雄も困惑している。どうして提督が出撃する必要があるのか。普通提督は鎮守府にいて指示を出すはずだ。なのに今は艦娘たちと同じように砲を手に持ち海面を滑っている。

 

「理由はいつか話す。今はただ戦闘だけに気を使っておけ。何が起こるかわからないからな。前に戦艦が殴り込みしてきたこともあった」

 

 その時は俺が殴り込みして戦艦を殴り沈めたが。

 殴り沈めたときに一つあることが証明できた。自分に深海棲艦に対抗する力があるということ。

 

 

side:高雄

 

 そして砲雷撃戦が始まった。始まりの轟音。その次には

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 提督の雄叫びだった。どうしてこうなってしまったのだろう。

 

「あ、あの五十鈴さん、提督が何で深海棲艦相手に単装砲で殴りつけているんですか…?」

 

 目の前の提督は高速で接近しては深海棲艦相手に砲撃など行わず接近戦しか行っていない。放たれる砲弾は牽制程度だ。恐ろしいことにダメージを受けていないことと砲身がだめになっていないことだ。

 

「高雄さん、提督にツッコミを入れたら間に合わないわよ。あと喧嘩吹っかけるのもダメ」

 

 喧嘩を吹っ掛けることはないと思うけど、深海棲艦相手に殴り込みしているのだから喧嘩しに行く人もなかなかだと思う。

 そんなことを考えている暇はない。前方からイ級が二つ組み合わさったようなタイプの船。クラスは軽巡。名称はト級だ。今のところ重巡クラスの艦は全部渚が殴り沈めた。渚の艦種クラスは駆逐だというが、本当に駆逐艦クラスなのだろうか。戦果を見れば完全に重巡か戦艦レベルだ。

 

「砲雷撃戦っ、用意!!」

 

 高らかに声を上げ、腰に付属している艤装から砲弾が放たれた。砲弾はト級に直撃した。こちらから見て左側が破損していた。追撃をかけようと次発装填を開始した。が、

 

「ふぅんす!!」

 

 隙あらば殴りに来る渚。もう全部彼一人に任せちゃってもいいんじゃないかな。

 

 

 戦闘はあっさり終わった。数もそれなりに多かったと思うが渚が暴れてくれたおかげで無駄な弾丸を使わずに済んだ。

 

「帰るぞ」

 

 と渚が声を出した。彼の後に続こうとした瞬間、ひっそり動かしていた索敵機から連絡が入った。九時の方向に深海棲艦と交戦中の艦娘を捕捉。とのことだ。そのことを提督に話す。

 

「どうしますか?」

「行くに決まってる!」

 

 当然の答えだ。

 

 

★海域 ???

side:???

 

 あれからいったいどれだけ砲弾を撃ち続けただろう。どれだけ被弾しただろう。もう動けない。ただの立ち砲台だ。目の前で一人の艦娘が自分を必死にかばっている。彼女もボロボロになっている。

 

「…結局……守れないんですか………」

 

 あの時もそうだ。何もできずただ空をにらみ立ち尽くした。今度はそうならないようにしたかった。でも今も同じだ。目の前の戦場をにらむことしかできない。艤装の砲はひしゃげて使い物にならなくなっている。妖精も倒れ、これ以上の戦闘はかなり困難だ。

 目の前の彼女が被弾する。彼女の艤装の砲身も潰れ、砲弾を撃つことはできなくなってしまった。

 

「……ここまでね…」

 

 彼女が諦めたようにつぶやく。残された手段は沈められるの一択だ。奇跡でも起こらない限りこの先の未来はない。かすんだ視界の中でゆらりゆらりと敵艦隊が近づく。たった二艦。それでも戦力はかなり大きい。

 

「…提督…お姉さま……皆さん………ごめんなさい」

 

 涙が零れ落ちる。悲し涙と、悔し涙。守れるものも守れなかった。

 

「………シズメ」

 

 背後に巨大な影を従える一つの艦が呟いた。このあと砲弾は自分に直撃し、それで沈む。そのあとは終焉だ。

 

「………少しでも生きる希望さえ…」

 

 ないと思っていた。かすんだ視界で何かが動く。

 

 

side:渚

 

「ストレェェトオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

 雄たけびを上げながらなんだかよくわからない巨大な艦を従えた人型の艦に全力で殴りつけてやった。

 

「「「!?!?」」」

 

 その場にいたボロボロの艦娘二人に残りの人型の艦一隻は目を丸くしていた。

 

「おい、生きてるか!!」

 

 敵艦から離れながらボロボロの艦娘に声をかける。セーラー服のような服装の女性と巫女服のような服の女性。どちらもボロボロで砲身は使い物にならず、服も破けていた。

 

「電、五十鈴!二人を撤退させろ!!」

「はいなのです!」

「わかったわ!提督っ、これを!!」

 

 五十鈴が持っていた装備を投げる。14cm単装砲と三連装魚雷二基。これだけでそれなりに戦える。14cm単装砲を左手に。魚雷は腰に付けた。

 

「…オマエハ…」

 

 深海棲艦のような帽子をかぶった人型の艦が喋った。目から出ている蒼い炎のような軌跡が目立つ。

 

「朝霧 渚、提督だ!」

「…ソウ……ナラ、シズメテアゲル」

 

 先ほど殴りつけた艦が言った。ちょっといらっと来た。

 

「ほう…………面白い奴だ」

 

 渚の顔に少しだけ笑みがこぼれていた。

 

「気に入った」

 

 少し楽しそうにつぶやく。向こうも愉快そうな表情をしている。が、次のセリフで一転した。

 

「沈めるのは最後にしてやる」

 

 渚の目は決して笑っていなかった。殺意しかなかった。




大変お待たせいたしました!!本当にすみませんでした!!

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