砲雷撃戦(物理)するには提督は必要ですか? ~はい。提督は脳筋仕様の化け物です~   作:elsnoir

31 / 33
弐拾六話 変えていく未来

★鎮守府

side:明石

 

「どっちのほうがよかったのかな……」

 

 数日前に一つの決断をした。今ある資材を新戦力に投入するか、別のものに投入するか。自分は別のものに投入した。そしてそれは今矢矧たちを助けに行っている。

 

「……練度の低いままじゃ足手まといになる可能性もある……だからあれに託したんだよね…」

 

 後悔はしていない。むしろ正しい選択だったのかもしれない。今はただ信じることしかできなかった。

 

 

★海域

side:矢矧

 

「九時の方向……何か来ます……!」

 

 全員が加賀の言葉を聞き、方向を見た。水平線に何かいるのが見える。距離が離れていてわからない。

 

「……ヤレ!」

 

 深海棲皇が声を上げた。次の瞬間、周りにいた空母、軽空母が一斉にそちらの方向に艦載機を放った。その数、数百を超える。

 

「………ナゼ……ナゼ生キテイル!!」

 

 深海棲皇が吠える。さっきまで平穏を保っていたのにもその平穏は消え去っている。

 

『残念だったな』

 

 通信。聞き覚えのある声。

 

『トリックだよ。全砲門一斉射、放て!!』

 

 その声の後、放たれた艦載機が爆発した。三式弾、噴進砲に直撃したのだ。

 

「この声って………」

 

 目頭が熱い。もう死んだと思っていた。その彼が今同じ戦場に立っている。そして今再び深海棲艦に立ち向かっている。そんな彼の姿がとても心強く、今ならどんな敵にでも勝てそうな気がした。

 

「朝霧 渚、再び参る!!!」

 

 

side:渚

 

 自分が沈んで鎮守府に復帰してすぐに明石が内緒で自分専用の艤装を作ってくれていた。今までよりも重武装で火力がある。右手には41cm連装砲、左手には12.7cm連装砲。左腕にはバルジ加工された飛行甲板。これは盾として使う。背には金剛、榛名の艤装と比叡、霧島の艤装をベースに組み合わせた艤装。×の字型の艤装の下の部分を金剛と榛名の艤装のように組み替えた感じだ。どれも41cm連装砲を装備。そして背には巨大な対艦刀を二振り。武骨なフォルムだが、なんでも叩き切れそうだ。そして腰には四連装(酸素)魚雷。両足には12cm30噴進砲が一基ずつ。

 

「…明石、最後の最後で凄い手間をかかせたな……でもこれならやれる。感謝してる」

 

 その声に答えるべく、手始めに艦載機をまずは蹴散らしてやった。

 

「…………………」

 

 脳裏にある女性が浮かんだ。榛名と矢矧、武蔵に大鳳がもともといた鎮守府の提督だ。彼女は目の前にいる深海棲皇にやられた。その仇が今ここで取れる。

 

「…あんたの仇は…ここでとる。それともう誰も死なせはしない……だから…………上から見守っててくれ」

 

 そう一言つぶやき海面を滑る速度を上げた。前方には無数の深海棲艦と先ほどの深海棲皇。記録とは違っている。やはり何らかの方法で変化、進化しているようだ。

 

「渚!」

「すまなかったな」

「なぎさぁ!」

 

 矢矧が泣きそうな表情で近づいてくる。よほど寂しかったのか、それとも不安だったのだろうか。もしかすれば後悔か。あの時自分を守ると約束したのにもかかわらず守れなかったのだ。だがその心配はもうない。

 

「感動のお話はこいつらを蹴散らしてからだ。それで、あの深海棲皇の進化を止めるにはどうすればいい?」

「随伴艦を全て沈める…それが一番手っ取り早いわ」

 

 話を聞くと深海棲皇は仲間の深海棲艦を捕食し、自分の力にすることができるようだ。ゆえに進化や変化をし戦力を増大させているのだろう。

 

「なるほど……わかった。作戦変更だ。各自的確に破壊しろ!いいな!?」

「「「了解!!」」」

 

 彼女たちからすればいつも通りの滅茶苦茶かつ適当な指示かもしれないが、それでも自分は彼女たちを信じているからそんな指示をしているのだ。それも当然だ。いままでずっと闘ってきた仲間だ。信じなくてどうする。

 

「さあ、一気に行こうじゃないか!!」

 

 速度を一気にあげ、手前にいたル級に肉薄。そして砲弾を放つ隙も与えることなくまずは左手の連装砲で顔面に一撃お見舞いする。そして今度は右手の連装砲を腹部にあて引き金を引く。轟音、爆炎と共にル級が爆ぜ、吹き飛ぶ。次の攻撃対象を視界に入れ進路を変更し、攻撃する。右手の連装砲の引き金を引き、左手にある連装砲で殴りつけては砲弾を放ち、時には魚雷を、噴進砲を撃ち、対艦刀で叩き斬る。敵艦隊を自分一人で蹂躙している。

 

「オ前ハ……沈メル……!」

「沈められるものならやってみろ!!」

 

 深海棲皇と正面から激突する。手に持つ砲を一度艤装にひっかけ、両手に対艦刀を握る。深海棲皇の手にはル級が持つ盾のような砲。対艦刀を全力で振るう。振るわれた刃は空を切る。同時に砲弾が放たれる。放たれた砲弾を的確に斬りながら、再び距離を詰める。

 

「クッ!オマエ達、守レ!」

 

 他の深海棲艦が近寄り、深海棲皇の前に立ちはだかる。

 

「邪魔をするなら排除するのみ!」

 

 左手の対艦刀を再び背負い、12.7cm連装砲を手に握る。正面にはタ級が一体、ヲ級が一体、ツ級が一体計三体。手始めにタ級に接近。左腕に装備されている飛行看板で砲弾を防ぎながら速度を上げ、突き進む。

 

「ッ!?」

「ふんっ!!」

 

 盾で攻撃を防ぎながら激突する。シールドバッシュと呼ばれる攻撃法だ。一撃によろけたタ級に右手の対艦刀を腹部に突き刺す。青黒い液体が噴き出す。

 

「ゴフッ!?」

 

 さらに左手に握る連装砲で零距離射撃を12発叩き込む。爆音が連続で鳴り響き、視界を赤と黒で染め上げる。そして左足で蹴り飛ばす。つづけて追撃。背に装備している艤装を展開し、すべての砲をタ級に向ける。

 

「爆ぜろ!!」

 

 掛け声とともにすべての砲から放たれる。響くは爆音。視界を爆炎と煙で染める。その悪い視界の中で敵を捕らえる。手に持つは二振りの対艦刀。速度を上げ前進。二つの影の間を通り過ぎながら両手に握る対艦刀を振るい切り裂く。刃がとらえたのは首。

 

「これ以上の抵抗は、俺たちが許しはしない」

 

 首を失った深海棲艦をしり目に見、深海棲皇を追った。




なんかすごい久々になりました。完全にもうお前だけでいいだろ的な感じですね。あと二、三話で終わりな感じですね

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。