砲雷撃戦(物理)するには提督は必要ですか? ~はい。提督は脳筋仕様の化け物です~   作:elsnoir

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弐拾弐話 運航不可

★無人島近辺海域

side:渚

 

 戦闘を開始してからかれこれ三十分が経過した。戦況は変わるどころか悪化していた。港湾凄姫による攻撃がほとんど渚に集中している。艦載機による攻撃や砲撃がとんでもない勢いで飛んでくる。こちらも砲弾を放つが、届く前に艦載機によって破壊される。角をへし折ってから一切攻撃が届いていないのだ。

 

「提督……どうするの?!」

 

 矢矧が声を上げる。今矢矧が狙いを定めているのは随伴艦。倒しているのにもかかわらず絶えず湧き出ている。主力を攻撃しようにも随伴艦の攻撃が激しいがゆえに攻撃することも出来ない。

 

「沈めっ!!」

 

 左手に持つ20.3cm連装砲で砲撃を放ちながら、右手の36cm連装砲による物理攻撃によって確実に沈めていく。確実に一手を決めいていく。だが一向に数が減らない。

 

「この状況を打開するには……何か…………」

 

 周囲を見渡す。さまざまなクラスの深海棲艦が無数にいる。

 

「……アイツか」

 

 その中に一つだけイレギュラーな個体を発見した。小さいが放つプレッシャーはまるで別物だった。駆逐艦クラスに思える黒い個体。もしかすればこの個体が複数の深海棲艦に呼びかけている可能性が高い。

 

「全艦に次ぐ、敵随伴艦の中心部に特殊な敵艦を発見。なるべく早めに下に送り返してやれ!!」

「駆逐凄姫……納得がいくわね……皆いい?集中砲火よ!!」

 

 自分も駆逐凄姫に向けて高速で海面を滑り始める。左手に持つ20.3cm連装砲を一度ホルスターにかける。そして対艦刀を引き抜く。港湾凄姫の放った艦載機から飛ばされる砲弾や機銃を回避しながら確実に距離を詰めていく。

 

「全艦、砲撃はじめ!」

 

 矢矧が声を上げると同時に轟音が無数に響いた。他の深海棲艦に直撃したりするものの、大半は駆逐凄姫へと向かって飛んで行った。砲弾は駆逐凄姫に直撃する前に艦載機やら砲弾で防がれるものの、直撃した。だがやはりいつものバリアに防がれる。

 

「これでぇっ、どうだ!!!」

 

 左手に持つ対艦刀を全力で投げつける。空気を切り裂き、一直線に飛んで行った刀はバリアに防がれる。が、みしみしとバリアにひびを作った。

 

「マサカッ!?」

 

 渚の手から放たれた刀は威力を下げることなく、バリアを貫き、駆逐凄姫の頭部に突き刺さった。

 

「ぶっ壊れろおおおおおおおおおおおお!!」

 

 右手の36cm連装砲のトリガーを握り、全力でバリアに向けて殴りつける。当然場所は刀が貫通した部分だ。まるでガラスが割れるような音を鳴らし、バリアが砕け散る。砲弾を弾くようなバリアが、いとも簡単に破壊された。

 バリアが砕け散ったのを確認して、何も握っていない左手の手を大きく開く。そして後ろに引く。

 

「パイル、バンカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 駆逐凄姫との距離をさらに詰め、間合いに入った瞬間に全力で押し出す。押し出した手は顔面に触れる。確かな手ごたえを感じ、さらに力を込める。小さな体からみしみしと音が鳴る。小さな音が徐々に大きくなり、次第に数も増えてきた。そしてもう一度力を籠め、押し出す。次の瞬間、頭部がはるか後方に吹っ飛び、爆発を起こした。

 

「随伴艦を沈めろ!!」

 

 声を上げると艦娘たちが再び一斉に砲弾を放った。砲弾が飛び交い、轟音が海に響かせる。

 

「提督!!」

 

 矢矧が声を上げる。上空には無数の艦載機。今にも攻撃を仕掛けるといったところだった。

 

「ッ!?」

 

 空を見上げると同時に無数の弾丸、魚雷が降り注いできた。砲を構え、防ぐ。豪雨のように降り注ぐ一撃が艤装を破壊していく。弾丸の一つが足の艤装に直撃した。

 

「ぐぁっ?!」

 

 足元が不安定になる。足の艤装がやられ、機能しなくなっている。重心が徐々に傾く。艤装のほとんどが使い物にならないくらいにダメージを受けている。これ以上の戦闘はほぼ不可。

 

「…くそっ」

「渚!!!!!」

 

 矢矧が声を上げる。彼女の顔を見る。そして一言。

 

 

side:矢矧

 

 目の前で彼がこちらを見ている。まるで最後の一言を告げるかのような雰囲気だった。そして彼を狙う港湾凄姫。

 

「後は……頼むぞ!!!」

「まって……やめて!!!」

 

 海面を滑り、渚を守ろうとした。だが、彼が叫ぶと同時に港湾凄姫が砲弾を放った。放たれた砲弾は一直線に渚に飛んで行った。そしてそのまま直撃し、爆炎を上げる。

 

「ぐっ!」

 

 熱風が周囲に吹き荒れる。目を焼くかのような紅焔が周囲に広がる。

 

「うそ……そんな………」

 

 目を開けるとそこには人の姿はなかった。

 

「なぎさあああああああああああああああああああああああ!!!!!」


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