砲雷撃戦(物理)するには提督は必要ですか? ~はい。提督は脳筋仕様の化け物です~   作:elsnoir

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壱拾八話 後悔は再び

★鎮守府正面海域

side:矢矧

 

 深海棲艦の襲撃があった。渚は後で出撃するとのこと。そして自分がほかの艦娘を率いて海を滑っている。

 

「これから作戦始めるっていうのに…仕方ないわね!」

 

 

★鎮守府 出撃ゲート

side:渚

 

「早速出撃だな」

 

 左手に巻物の付いた槍を握り、海面を滑り出す。

 

「索敵機か」

 

 巻物を開き、端を槍の持ち手で固定し巻物を広げる。巻物の端に式神。

 

「頼むぜ!」

 

 槍を前に突き出し、式神を放つ。放たれた式神は二式艦上偵察機へと姿を変える。

 

「……あとは皆に追いつくことか」

 

 自らも海面を滑り艦娘の後を追った。

 

 

side:矢矧

 

「くっ、数が多い!」

 

 砲弾を放つ。一撃一撃を確実に与えているものの数があまり減っていない。

 

「臆するな!一体一体確実に沈めていけば、いずれ終わる!」

 

 砲撃を行いつつ、武蔵が声を上げる。

 

「喰らえ!」

 

 砲弾は確実に深海棲艦を葬っている。だがずっと攻撃を加えているわけではない。少なからず損傷が出ている。

 

「加賀!!上!」

「!」

 

 加賀の上空には艦載機。そして今爆撃を行う所だった。

 

「対空砲火、間に合わない!?」

 

 爆撃を止めることができない。

 

「うぅあっ!!」

「加賀さん!!」

 

 大鳳が声を上げた。その加賀は大きなダメージを追っていた。飛行甲板に大穴があき、衣服もボロボロとなっている。弓も半壊していた。

 

「電!加賀を連れて、撤退して!!」

「はいなのです!」

 

 電が加賀を引き連れ、撤退を開始した。

 

「…まずい…どうする…」

 

 被害はますます大きくなっていく。このままではこのまま進行を許してしまう。

 

「矢矧さん!敵主力艦隊を攻撃しましょう!」

 

 榛名の声が聞こえる。それが妥当と思われる状況。だがどれが主力かわからない。駆逐から軽巡、ならびに戦艦、空母までいる。そしてどれも似たり寄ったりで主力とは思えない。

 

「…………提督だったらどうする……」

 

 考える暇もない。彼ならどうするか。

 

「……考える必要も…ないわね!!」

 

 再び引き金を引く。彼なら迷うことなく殲滅に移るだろう。そして横目に移る彼。槍を振り回し、一撃一撃を確実に叩き込む。

 

 

side:渚

 

 後方で艦載機を飛ばし、自分は飛行甲板の巻物を丸め、槍の状態で深海棲艦を貫き、切り裂いている。刃先が青くどす黒い液体に染まる。

 

「失せろ!」

 

 チ級の首もとに矛を突き刺し、横に薙ぐ。首がはね液体が吹き出し爆ぜる。突き刺しては切り裂く。自分の周囲では艦載機が飛び交い、視界に移る深海棲艦を沈めている。

 

「さすがね、あなたの無茶っぷりは」

「いつものことだろっと!!」

 

 矛でイ級の脳天らしき部分を突き刺す。再び爆ぜる。後方で爆ぜる音が響く。他の艦娘が沈めているのだろう。

 

「つぎっ!」

 

 海面を滑り、ヲ級に迫る。帽子と思われる部分にある口からいくつか艦載機が放たれる。

 

「頼むぞ!妖精たち!」

 

 自分の声に答えるかのように背後から艦載機が過ぎ去っていく。そして自分はヲ級に向かって接近していく。艦載機から放たれる機銃の一撃、魚雷をかわしながら突撃していく。そして間合いに入った瞬間にヲ級の左目に向けて矛を突き出した。

 

「ッッッ!!??」

 

 さらに一撃を叩きこむべく、力を加える。それと同時に一つの悲鳴。

 

「きゃあぁっ!」

「矢矧!!」

 

 致命傷を受けたのか、艤装が大きく破損している。これ以上の戦闘は不可と言っても過言ではなかった。

 

「来ないで!!」

 

 矢矧が上げた声。彼女の前方には金色のオーラを纏うル級。

 

「矢矧ぃ!!」

 

 ヲ級から槍を引き抜き、全力で矢矧の元にかけた。そして飛行甲板を開き、固定する。矢矧の前に立ち飛行甲板を立てにするかのように槍を構える。

 

「くっ!」

 

 飛行甲板のせいで前が見えない。そして衝撃が来た。その衝撃は前方からでなく、右から。それも砲弾による一撃なんかではなく、誰かに押されたような感覚。

 

「なっ!?」

 

 横に倒れる自分の視界の中で一人の艦娘がいた。その姿は過去にかばおうとして逆にかばった自分の姉とだぶった。

 

「…提督、元気でね。海の底から見守ってるから」

「ぁ…」

 

 彼女が初めて自分に見せた笑顔。榛名やほかの艦娘には見せて自分には見せていなかった。その笑顔すらダブった。

 

「矢矧いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」




間に合わなかった…

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