砲雷撃戦(物理)するには提督は必要ですか? ~はい。提督は脳筋仕様の化け物です~   作:elsnoir

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壱拾七話 秘書艦戦争

★鎮守府 工廠

side:渚

 

 明石に呼び出され、工廠にやってきた渚。ドアを開けるといつもの熱気と生ぬるい風が吹く。

 

「明石ーいるかー」

「提督!待ってましたよ!」

 

 なにやら黒い布に包まれた細長い棒らしきものを持って駆けてきた明石。棒の先端には布にはおさめられなかったのか、鋭い銀色が見える。

 

「なんだそれ?」

「新しい装備です!」

 

 明石に渡され、布を取ってみる。そこにあったのは先端に巻物のようなものがついている長い杖だった。

 

「………ん?」

 

 巻物を押さえている紐に気付いた。その紐を取り巻物を開いてみた。巻物に描かれていたのは飛行甲板によく似た図。

 

「………軽空母か!」

「はい!ちょっと後で飛ばしてみてくれませんか?」

 

 明石の話によれば飛鷹の持つ飛行甲板を改良し、こうやったようだ。ただの巻物だと「提督のこと」だからといってうまく使えないと判断し、オプションで長い杖と矛を付けてくれたようだ。この時点で接近戦をしろとでも言っているようだった。

 

「さて、いい時間だ。そろそろ始めるか」

 

 

★鎮守府 正面海

 

「よし集まったな!」

 

 艤装を装備した艦娘が待機していた。全員が全員艤装を装備しているわけではない。艤装を装備しているのは榛名、矢矧、武蔵、金剛、大鳳、加賀、鳥海、陸奥の八人。

 

「これより、秘書艦を決める演習を始める!」

 

 秘書艦を決める方法は簡単。この九人で乱戦式で戦ってもらう。二発被弾したらアウト。それだけの話。そして残った艦が秘書艦となる。砲弾、魚雷は演習用の物。中には白い粉末が入っている。

 

「それぞれ、始めろ!」

 

 適当な合図の元秘書艦戦争が開始された。

 

 

side:榛名

 

「Hey!榛名!妹だからって手加減はしないネー!!」

「榛名も、お姉さまだからって手を抜くつもりはありません!全力で参ります!!」

 

 掛け声とともに砲弾を放つ。砲弾同士が直撃し、白い煙を上げる。

 

side:大鳳

 

 クロスボウを空に向ける。視線の先には同じように弓を構えた加賀。

 

「秘書艦の場所は譲れません」

「わ、私だって負けませんから!!」

 

 艦載機を放つ。互いの矢が爆ぜ、艦載機へと変貌する。空が艦載機で埋め尽くされる。

 

side:武蔵

 

「さて、始めようじゃないか。ビックセブンの陸奥」

「そうね、こうやって派手に砲撃できるなんてあまりないからね」

 

 轟音が響く。その時には白煙を上げていた。二人の表情がゆがむ。

 

 

side:鳥海

 

 視線の先には矢矧。艤装を構え、こちらを睨みつけている。だが目はずっとこちらを見ているわけではない。ちょくちょく目が動いている。周囲を見ている。

 

「………よく見てますね」

 

 そういう自分も目を動かし、周囲を見ている。一対一でお互いに撃っている。自分と矢矧を除いて全員一度被弾している。

 

「矢矧さん」

「鳥海」

 

 お互いに砲弾を放ちながら声をかける。言わずともわかる。この戦いは一対一で戦うものじゃない。

 

「一時休戦ですね」

「ええ」

 

 そして手を組んでも構わない。矢矧に背を預け、ほかの艦娘を視界に入れる。誰もこちらにはあまり目を向けていない。好機だ。こちらに気付かないうちに攻撃を仕掛ければ高確率で被弾するはずだ。

 

「…榛名、ごめんっ!」

 

 矢矧が声を上げ艤装の引き金を引き、二度砲弾を放つ。同時に向きを変え魚雷も放つ。放たれた砲弾は榛名と金剛へ。そして魚雷は武蔵へ。

 

「撃ちます!」

 

 自分も砲弾と魚雷を放つ。二度放たれた砲弾は加賀と大鳳へ。そして魚雷は陸奥へと。

 

「「「「「!!」」」」」

 

 全員が気づいたころにはすでに遅かった。直撃するまで残り1cm。逃げることは不可。同時に、

 

「後は矢矧さんだけですね」

 

 一対一になることだった。

 

「ええ。これで周りを気にせず戦える」

 

 矢矧がこちらを見つめる。今度は周りを見渡さない。自分だけを見つめている。

 

「秘書艦はどっちか。これで決まりますね」

「そうね」

 

 砲を構え直す。

 

「「秘書艦(提督の修正係)は私です(よ)!!」」

 

 声を上げると同時に海面を滑り出した。

 

 

side:渚

 

「なあ、秘書艦のところに全く違う意味でのルビなかったか?」

「当たり前なのです」

 

 無関心そうに、答える電。

 

「最近の電キツイや」

 

 

side:矢矧

 

「撃つ!」

 

 海面を高速で滑り、砲弾を放つ。お互いに一撃ずつ被弾している。次にあてたほうが勝ちだ。

 

「負けるわけにはいかない!」

 

 鳥海も放たれた砲弾を回避しながら、砲弾を放つ。矢矧も同じように砲弾を放ちながら回避する。砲弾が飛び交い、魚雷が海面を切る。お互いに睨めつけ、負けずと砲弾を放つ。

 

「当たって!」

 

 鳥海が立続きに砲弾を放つ。矢矧も同じように砲弾を放つ。砲弾同士が直撃する。白煙が立ち込める。

 

「…行くしかない!」

 

 自ら白煙の中に突っ込んだ。

 

 

side:鳥海

 

 白煙が立ち込める。白煙の先には矢矧がいる。

 

「…………」

 

 考えている時間は少ない。的確な計算を出さなくてはならない。彼女ならどうする。

 

「…!」

 

 導き出した結果は引き金。引き金を引き白煙に向けて、砲弾を放つ。放たれた砲弾は白煙を切り裂く。そしてあるのは矢矧ではなく、空間。

 

「なっ!?」

 

 当の彼女は

 

「私の勝ちね」

 

 白煙からは声は聞こえない。聞こえた先は自分の背後。砲弾を放ったと同時に自分の背後に回っていたのだ。

 

 

side:渚

 

「決まったな」

 

 勝敗は決した。数ある艦娘から矢矧が選ばれた。

 

「よろしくな矢矧」

「ええ。これからしっかりサポートしていくわ」

 

 これで秘書艦が決まった。

 

 

●艦娘の日記←訂正・秘書艦の日記

 

 これからほかの艦娘じゃなくて、私矢矧が書くわ。激戦の末に私が秘書艦になった。これから提督をサポートしていくけど、どうなるかわからない。でも私が提督を支えて、正しい道を導かなければならない。無理させないように気を付けないと…

 


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