砲雷撃戦(物理)するには提督は必要ですか? ~はい。提督は脳筋仕様の化け物です~ 作:elsnoir
★榛名と矢矧のいた鎮守府
side:渚
「動かないで!」
声とともに突きつけられた殺意。彼女の右手に握るは鈍色。
「………あんた……ウソだろ…!」
驚いたのはその姿だ。白い服にいくつか大きな赤いシミが幾つかある。怪我をしている。それとはまた別に驚く点が一点。
「……死んだんじゃなかったのか」
「………私は死んだっていう情報が回っているのね…それでここでな」
ガコンッ。彼女の言葉をさえぎるかのように鈍い音が響く。
「……提…督…」
入口に榛名が立っていた。
「榛名…」
「提督ーー!!!!」
榛名が駆け寄り提督と呼ばれた女性に抱き着いた。
「は、榛名!どうしてここに!」
銃を向けていた彼女は提督だった。榛名の話によれば鎮守府襲撃と同時に死んだ。その彼女が生きている。
「榛名、あの人は?」
黒く長い髪を揺らし、振り向く。
「ていと…朝霧 渚さんです」
榛名がこの行動の事情を説明した。榛名の言葉にうなずきながら彼女は聞いていた。
「そう…ごめんなさい。そういうことだったら全部もってっていいわ」
「ありがとう。それより体は大丈夫なのか?」
白い軍服に赤色がある。怪我によるダメージだろうか。
「ええ。平気」
「そうか。無理はするなよ」
「お気遣い感謝するわ」
そうは言っているがあまり大丈夫そうには見えない。
「渚…っていったっけ?」
「ああ」
「そう。工廠まで来てくれる?」
彼女に案内されるがままに工廠に連れていかれた。
「彼女たちを託すわ」
「おいおい……本気かよ」
そこにいたのは重武装の薄着の女性に、ボウガンを持った女性。
「私のところにいても動かすことはできても、戦うことは難しい。だからあなた達の元で戦ったほうがよっぽどいい」
「……戦艦空母を渡すっていうのか」
二人の艦娘。名前は武蔵に大鳳。
「彼女たちだけは戦闘に入ってからすぐに入渠する事態に陥ったから、残っていた戦力よ」
「それなら納得がいくな」
「だから、渚大佐に託すわ。彼女たちを導いてあげて」
「…わかった」
提督が彼女たちに話をする。二人とも一度驚きこちらを見る。そして頷き今度はこちらに近づいてきた。
「戦艦武蔵だ。よろしく頼むぞ」
「装甲空母大鳳です。よろしくお願いします」
「朝霧 渚だ。よろしく頼む」
簡単に挨拶をかわし、外に向かった。
外に出るとすでに帰る準備は整っていた。そして武蔵と大鳳が挨拶をする。
「よし背負ってやるから乗れ」
体制を低くし、彼女を背負うとした。
「いいわ。私はここで沈んだ彼女たちとここにいるから」
「だが」
「それが私の役目。ここから居なくなったら彼女たちがさびしいでしょ」
ここで守るために命を失った艦娘たち。その彼女たちを見守るためにここに残るといった。
「……わかった。元気でな」
「ええ。それとあなたにこれを渡すわ。私には使えなかったもの。絶対に一人で見てね」
彼女から丁寧に包装された包を受け取った。
「…感謝する。よし、行くぞ!」
「はいっ!提督!今までありがとうございました!!」
「提督!向こうでも頑張るわ!」
「ええ!彼を守ってあげてね!!」
海面を切り鎮守府から離れ始めた。
side:提督
「行ったね」
彼女たちと提督を見送り、手を振る。
「………榛名、矢矧、武蔵、大鳳。彼を…渚を守ってあげって」
その声と同時に終わりを告げた。