砲雷撃戦(物理)するには提督は必要ですか? ~はい。提督は脳筋仕様の化け物です~ 作:elsnoir
★鎮守府 工廠
「初めまして!朝潮型駆逐艦、一番艦朝潮です!」
びしっと敬礼した少女。やはり背の低いことは駆逐艦らしいところだった。
「朝霧 渚だ。これからよろしく。雷、電、吹雪、朝潮を案内してやってくれ」
「「「はい(なのです)」」」
★鎮守府
side:朝潮
三人に案内されていろいろなところを歩いた。ここはもともと旅館でそこを改装して鎮守府としたらしい。そのついでに他の艦娘の紹介もあった。榛名と矢矧は分け合って別の鎮守府からきたと聞いた。この話は榛名から聞いた。矢矧を探していたのだが見つからなかったのだ。
「それで、ここが屋上なのです」
どこまでも続く空が見え、風が吹く広い屋上にたどり着いた。そこにいたのは二つの人影。矢矧と提督だった。だがなぜか提督が矢矧の左手によって宙ぶらりんの状態だった。
「わあああああああああああああああああああ!!!!」
吹雪が声を上げていた。皆で矢矧を止めようと駆け出した。
「あれは嘘よ」
「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ…………」
矢矧の左手から渚が放たれ、落下していった。
「司令官ーーーーーーーーーーーーーーー!?」
吹雪が悲鳴を上げながら矢矧に飛びついた。
「あら、どうしたの?」
「どどど、どうしたって、今司令官が!」
「ああ、平気よ」
人を殺しておいて何で涼やかな顔をしているんだこの人は。
「し、司令官さんがぁ……」
電に至っては泣き出している。
「ご、ごめんね…見苦しいところを見せたわね……」
矢矧が電の頭を撫で、慰めている。どうしてこうなってしまった。
今までの流れ。新たに鎮守府に着任した→司令官に挨拶した→ほかの駆逐艦たちに案内された→屋上に来たら提督が矢矧に殺された。
「……どうして…こうなってしまったんですか……」
「朝潮ね。私は矢矧。これからよろしくね。それとあの提督なら七階から落とした程度じゃ死なないわ」
それはありえない。七階から落とされたら誰だって死ぬだろう。
そんなことを考えていると屋上の扉が勢いよく開いた。
「矢矧さん!!ててて提督が!!!」
「ああ、榛名」
巫女服の艦娘。戦艦榛名が泣きそうな顔でやってきた。
「提督が………提督がぁ……」
そんな榛名も泣きだしてしまった。
「ああ……ごめんね、榛名。あなたを泣かせるつもりはなかったの。ごめんなさい」
「ぅぅ……提督……」
「…さて、一回に行きましょう」
矢矧が髪を揺らし、出口に向かっていった。その後ろを榛名と電は泣きながら。吹雪は絶望しながら。朝潮は呆然としながらついて行った。
★鎮守府 玄関
「腕の骨が折れた…!」
「ほらね。死んでないでしょ」
玄関にいたのは腕の骨を折ったとみられる渚。右腕を押さえている。軍服はズタズタになっていてびしょびしょ。びしょびしょなのはどうでもいいが、七階から落とされてどうして腕の骨を折るだけで済むのか不思議でしょうがなかった。
「提督ー!」
榛名が駆け寄った。その後ろを雷や吹雪が近寄った。
「司令官、大丈夫?怪我したのは腕だけ?」
「ああ。体の至る所に裂傷があって腕の骨が折れただけだ」
軍服が徐々に赤くなっている。なのにもかかわらず表情は苦しんでない。最初に出会った時と一緒だった。
「矢矧、今回は本気で死ぬと思ったぞ」
「とか言っておきながら死なないでしょ。言ったでしょ。食べ物の恨みは恐ろしいって」
提督が屋上から落とされた理由は冷蔵庫にあったプリンを矢矧のものと知らず、渚が食べてしまった結果こうなった。後で買えば許してもらえるといったところ嘘で落下したらしい。
その後提督は入渠に送られ、まさか意味ないだろうと思われていた高速修復材によって回復した。折れていた腕の骨も直っていた。
●艦娘の日記
side:朝潮
本日は私が書くことになりました。着任初日からまさかまさかの日でした。提督が殺されたと思ったら生きていました。言い方がひどいですが人間じゃないと思います。でも話を聞く限りではとてもいい人とのことです。少し不安ですがここで皆さんと戦っていきます。これからよろしくお願いいたします。