砲雷撃戦(物理)するには提督は必要ですか? ~はい。提督は脳筋仕様の化け物です~ 作:elsnoir
★鎮守府 資料室
side:渚
本日は出撃はしないことにした。たまには休暇も必要だった。というわけなので資料室を少し整理することに。
「矢矧、休憩するか?」
「そうね、そうさせてもらうわ」
箒を壁に置き、矢矧は部屋を後にした。その後ろを渚がいらない資料等を段ボールに詰めた物を抱え、着いて行った。たまたま進路方向が一緒だから仕方ないと思った。箱のおかげで視界があまり確保できていない。
「あっ」
真っ平らな床で躓くことは誰だってるかもしれない。それが今この状況で起きたのだ。ばこばこと音を鳴らし矢矧の頭部に箱がぶつかった。
「うあっ」
「きゃぁっ!?」
どさりと矢矧が倒れこんだ。
「………ごめん」
「………面白いわね……いいわ」
矢矧は何事もなかったように立ち上が有り、スカートをぱんぱんと叩きちりを払う。
「殺すのは最後にしてあげるわ」
「………………」
生涯で初めて凍りついた瞬間だった。
★鎮守府 執務室
「……絶対に矢矧怒ってるよ…」
「矢矧さんはいい人ですから、ちゃんと謝れば許してもらえますよ」
先ほどの資料室でよく使うと思われる資料があったのでそれを今榛名に棚にしまってもらっている。
「それに提督を殺すなんてしませんから」
「…だといいな」
資料を運びながら、しまいながら会話していく。
「あっ提督」
榛名が何か見つけたようだ。
「ん、どうした?」
「この資料っ」
榛名が振り向き、一歩踏み出した。そしてつま先がどうも引っかかっているように見えた。いわゆるデジャブだ。
「てっ、ひゃあっ!?」
「ああ!?」
榛名が躓き、渚を押し倒すかのように倒れた。体勢が悪かった。自分の左手に何か柔らかな感触が当たっていた。当たっていたというより、つかんでいたような感じもする。
「「………」」
お互いの顔が近い。それぞれ目をそらした。ただハプニングだと思った。が、これで終わらなかった。扉が勢いよく開き、一人の艦娘が入ってきた。
「何か大きな音したけど、大丈夫!?」
矢矧だった。
「「「あ」」」
すぐに榛名が体をどかした。とうの榛名の顔は赤くなっていた。
「……提督、ちょっと話があるのだけどいい?」
承諾を得ることもなく襟をつかまれ、ずるずると連れていかれた。
★鎮守府 屋上
「提督、さっきのは何?」
夜の屋上にて尋問が始まった。
「ハプニングだ」
「よろしい」
矢矧が渚の体をひょいと担ぎ、端までやってきた。そして左手だけで渚の足を掴み、宙ぶらりんの状態にした。
「押さえているのは左手よ。利き腕ではないわ」
「ちょっとまて!?なんでこうならなくちゃいけないんだよ!?」
今までの過程。資料室出た後に矢矧に段ボール箱ぶつけた→執務室で榛名に押し倒された→矢矧に屋上に連れて行かれた→そして宙ぶらりんになっている。
「あれがハプニングだというの?」
「ああ、ハプニングだ!」
「………榛名の胸、揉んだ感想は?」
「………………………大きく、やわらかかった」
「…………………」
矢矧の目から光が消えた気がした。沈黙が続く。
「あなたを最後に殺すと約束したわね」
「そうだ!矢矧、だから引き上げてくれ」
「あれは嘘よ」
矢矧の手が開かれ、渚が重力に従い落下していった。
「ウワアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ………………………」
★鎮守府 ラウンジ
side:矢矧
夕食はこのラウンジで食事になる。そしてバイキング形式なのだが、本日は日曜日のためカレーだ。作ったのは榛名だ。
「あれ、矢矧さん、提督は?」
「はなしてやったわ」
「?」
榛名はよくわかっていなかった。むしろよくわからなかった方がいいだろう。
「ちょっと頭にきてやっちゃったけど…大丈夫かしら」
カレーを盛り付け、自分の席に向かおうとした。が、自分の後ろに頭に残る問題が解決された。ズタボロになった軍服を身にまとう提督、朝霧 渚だった。
「…………逝ったかと思ったわ」
ため息交じりに矢矧が言った。
「とんでもねぇ、(この展開を)待ってたんだ」
ちなみにこの鎮守府の屋上は七階だ。どうやって帰ってきたのかは聞いたところで無駄と思った。
●艦娘の日記
side:矢矧
あの提督絶対に人じゃないわ。人の皮かぶった化け物に違いないわ。そもそもどうやって生還したのかしら………考えても無駄ね
なんか矢矧にこんなことさせてみたかったのです。矢矧提督の皆様、お許しください。
ちなみに私は榛名提督です。矢矧とか結構好きですよ。