砲雷撃戦(物理)するには提督は必要ですか? ~はい。提督は脳筋仕様の化け物です~   作:elsnoir

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渚がさらに凶悪になった回でした。


拾話 歓喜するは/恐怖するは

★工廠

side:渚

 

 本日久々に建造をしてみた。ボーキサイトを多く使ったレシピと、一番低いコストのレシピ。その結果、4時間10分と20分だった。渚は少し執務室を掃除しながら時間を待った。

 

 

 先に20分経過した後、交渉に戻った。そこには電に少し似た少女がいた。電と比べ活発そうな雰囲気を持っている。

 

「電…?」

「違うわ!電は私の妹。私は雷。「かみなり」じゃないわ!」

 

 間違ったのか少し怒られた。そこは申し訳ないと思う。

 

「すまなかった。俺は朝霧 渚だ。階級は大佐。よろしく頼むな」

「よろしくねっ、司令官っ!」

 

 にっこりと八重歯を見せながら笑う雷。渚は笑顔も見ていたが別のものを目にしていた。彼女が持つ錨だった。

 

 

side:明石

 

「いきなり呼び出して何の用ですか?」

 

 雷が着任してからすぐに渚に呼ばれた。渚が工廠で誰かを呼ぶということは今までになかった。もしかしたら新しいことを覚えようとしているのかもしれない。

 

「もしかして、何か新しいことを覚えようと思っていますか?」

「いや、そういうわけじゃない」

 

 そう思った自分が馬鹿に思えてきた。相手はあの脳筋の渚だ。そんなことあり得るわけない。

 

「雷が持ってたあの錨あるよな」

「ええ、あれがどうしたんですか?」

「あれを少し大きくしつつ、重い状態で作ってくれないか?」

 

 ………提督、お願いです。いつもの表情で目をキラッキラさせながらこっちを見ないでください。お願いします。断れそうにありませんから本当にやめてください。

 結局明石がOKを言うまでその目をやめなかった。

 

 

side:渚

 

 錨の作成を明石に依頼して、それからまた席を外して掃除をはじめた。そして4時間20分が経過した直後に工廠に向かった。そこにいたのは左手に巨大な弓を持つ女性。右手には盾のように装備された飛行甲板。背には矢筒。蒼色のツインテールの髪が目立つ。

 

「航空母艦、蒼龍です。これからよろしくおね」

「とんでもねぇ、待ってたんだ」

 

 蒼龍の言葉をさえぎり彼女の手を取り握手した。

 

「えっ、あの、その…朝霧 渚大佐…ですよね?」

「ああ。ここじゃ俺一人しか男はいないからすぐわかるだろうけど」

 

 白い髪の艦娘がいるかどうかわからないがな。

 

「さて、実践訓練とまいりますか」

 

 実を言うと工廠に来てすぐにアラートが鳴っていた。少数ではあるが、敵の艦隊が迫っていた。

 

 

★鎮守府正面海域 エリアA

side:蒼龍

 

 そろそろころあいだと思う。艦載機を飛ばすいいタイミングというやつだろうか。背に装備されている矢筒に手を伸ばす。そこから零式艦戦21型の矢を取り出す。海面を滑りながら、弓を構える。そして矢を放つ。放たれた矢が、徐々に燃え始めた。燃え尽きると同時に火から艦載機が現れた。十二の白い影が飛んでいく。艦載機に乗っている妖精が左手の親指をぐっと上げた。その行動に蒼龍も右手の親指をぐっと立てて、合図を返した。

 

「……………通信、入りました!」

「敵艦隊は?」

「タ級エリートが一、チ級フラグシップが二、ヲ級改フラグシップが一です!」

 

 数は圧倒的に少ない。だが、フラグシップ級がいる。フラグシップとは深海棲艦のなかでは上位クラスになる特殊な艦だ。それぞれ金色のオーラをまとっている。さらに「改」になると目から蒼い炎のような軌跡を現す。油断のできない相手だ。

 

「さて、行くぞ!!」

 

 前方で渚が声を上げる。提督が出撃していることに関しては出撃する前に榛名と矢矧に説明されて理解した。

 

「私は提督を援護します!」

 

 矢筒から九九式艦爆の矢を取り出し、放つ。続いて九七式艦攻の矢を取り出し、同じように放つ。空を無数の艦載機が飛んでいく。

 

「妖精の皆っ、よろしくね!」

 

 

side:渚

 

 右手に握る重みを確かめながら前方にいるチ級に目を向ける。明石に依頼した錨は完成した。それもすぐにだ。そして思い通りの、期待通りのものが出来上がった。それが今右手に握られている。

 

「明石、恩に着るぞ!!」

 

 放たれる砲撃を交わしながらチ級に接近する。そして距離が近くなった瞬間に右手を振り上げる。渚とチ級の距離がゼロなった瞬間に、右腕を振り下ろす。振り下ろされた錨はチ級の兜らしき部分をたたき割り、めり込む。そして爆発した。渚は一撃でチ級のフラグシップを葬り去った。

 

「ひゅーっ………次だな」

 

 この錨の一撃に感動を覚える。そして口元を大きくゆがませながらヲ級を視界に入れる。嫌なくらい不気味な笑顔で、敵対する者すべてに恐怖を与えた。

 

 

side:雷

 

「てーっ!!」

 

 榛名と矢矧を筆頭に支援してくれたおかげでチ級を倒すことができた。砲を持つ手が少し震えている。それでもれっきとした勝利だ。あとは渚だ。彼についてだがが、自分が持っている錨と酷似しているものを渚が持っているが、どう考えてもおかしい。自分の司令官はいったい何者なのか考えてしまった。

 

「雷ちゃん、司令官さんのことはあまり深く考えちゃだめなのです」

 

 視線の先で蒼龍の航空支援を受けながら、ヲ級を錨でフルボッコにしている。おまけに高笑いしている。

 

「ハハハハハハ!!!!!どうした、フラグシップ改だろ?そんなもんかよ!!手ごたえもないなぁ!!!ええ!?」

 

 錨を振り回しながらヲ級をぼこぼこにしていく。すごいテンションあがっている。狂喜乱舞という言葉が似合うかもしれない。

 前方の地獄絵図に気を取られている間に、タ級は逃げ出していた。艦娘全員はあっけを取られて見ていなかったが、渚は視界にとらえていた。

 

 

side:渚

 

 ヲ級を錨でフルボッコにしている間に視線の端っこでタ級が背を向けて、撤退していた。ぼこぼこで涙をぽろぽろ流しているヲ級から一度離れ、タ級を追い始めた。ひっそり逃げようとしてのか、速度は遅めだった。

 

「逃げるとはいい度胸だな!!」

 

 右手に握られている錨を全力で投げた。錨の持ち手には鎖でつながれている。渚が投げた速度のほかに海面を滑るときの速度も加わっている。それらが合わさって重量のある錨がかなりの速度で飛んでいる。速度を落とさず飛んでいった。

 

「ッ!?」

 

 気づいたころには遅かった。タ級の腹部に錨が触れかけていた。そしてそのままタ級の腹を突き破っていった。次の瞬間、水しぶきを上げながら爆発していった。倒したのを確認しながら鎖を巻き上げていく渚。何事もなかったような表情。

 

「さて、ヲ級はどうなったかな?」

 

 タ級を倒している間に、蒼龍が艦載機による攻撃で沈めていた。大きな被害もなく、迎撃に成功した。せめての被害と言えば渚の暴れっぷりを見てSAN値がガリガリ削られたぐらいだった。

 

 

●艦娘の日記

side:雷

 

 やっと着任することができたわ。これから司令官のために頑張るわ!それに頼ってもらうようにも頑張るわ!でも、ちょっと怖かったりするわね……深海棲艦相手に物理攻撃なんて不安だわ。今日なんてすごかったわ。いろいろな意味で……少しだけヲ級がかわいそうに見えたわ………力だけじゃ、ただ強いだけじゃだめだとおもうの。だから後で話すわ。わかってくれるといいな。




やっとまともな接近武器を手に入れて狂喜乱舞した渚提督でした。敵対する者すべてに恐怖の種を植え付けることでしょう。

★渚のステータス
耐久 不明
火力 50
装甲 不明
雷装 0
回避 40
対空 0
搭載 0
対潜 0
速力 可変
索敵 15
運  13
(0の部分は装備によって変動)
ドラム缶装備時火力+13
錨装備時火力+20

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