砲雷撃戦(物理)するには提督は必要ですか? ~はい。提督は脳筋仕様の化け物です~ 作:elsnoir
「……んぁ…朝…」
カーテンの隙間から差し込んでくる光がまぶしくて目を開けた。少しだけ見える空を見ると青空。快晴かどうかはわからないが晴れいてるようだ。
「………時間…」
現在朝の7時48分。
「あれ…今日何曜日…」
時計に表示されている曜日を見ると火曜日。確かゴミ収集の日。燃えるごみの日。明日火曜日だから捨てに行こうとして玄関に置いた燃えるごみ。などと徐々に思い出してきた。それでごみ収集の時間は8時締切……
「嘘だろぉっ!?!?」
布団をはねのけ、ダッシュで玄関に向かい、ゴミ袋を手に取り走り出した。次の燃えるごみは1週間先。ここで捨てなければまたたまっていく。
自分の出せる限りの力を発揮して、ゴミ回収地点に走った。目と鼻の先でゴミ収集車が動き出そうとしていた。
「おーーーーい!!待ってくれ!!」
出せる限りの声で叫んだ。ゴミ収集車は止まり、作業員らしき人が二人降りてきた。
「はぁ…はぁ…はぁ………行ったかと思ったよ…」
「とんでもねぇ…」
ゴミを渡そうとして一歩踏み出した。彼らはゴミ袋ではなく、ゴミ収集車の中に手を伸ばした。そこから鈍色に光る鉄の塊。
「待ってたんだ」
彼らの手にサブマシンガンが握られていた。
「!?」
それに気づいたころには遅かった。もう鉛の雨が自分の体を真っ赤に染めているのだから。
「…ごふっ」
意識がなくなり、視界が真っ暗になった。
「はっ!!」
体を起こす。さっきとは違い暗くはっきりとしなかった。先ほどのことを思い返し、体を触る。包帯もなく、弾痕もない。どうやら夢で終わっていたようだ。
「…司令官」
目の前に一人の少女が自分の体に馬乗りになっていた。そして体を押し倒された。
「お、おいそういったことは…」
夜戦(意味深)するには時間的に問題ないが、さすがにと思った。が、そんな甘い考えは一瞬で消えた。グサリという鈍い音が聞こえた。
「え?」
突然の出来事に変な声が出た。何が起きたかわかっていなかった。だが、何が起きたかすぐに理解できてしまった。自分の体に激痛が走ったから。
「ああああああああああああああああ!!」
自分の胸に包丁が深々と突き刺さっていた。痛いとかそういったレベルじゃない。そう言った表現をすることができない。気道をやられたのかもしれない。息苦しい。体が冷たい。
「…だめじゃないか…大声を出しちゃ」
少女が耳元でささやく。
「て、てめぇ…」
「…でも、全部、司令官が悪いんだからね」
ガコン。鈍い音が部屋に響いた。二つの銃口が自分の顔面に向けられていた。12.7cm連装砲。駆逐艦の主砲。それが今自分に向けられている。
「ぁ…」
「…………さよなら」
少女がニコリと笑う。そしてドォン!!と砲が放たれた。弾は自分の顔面を破壊し、少女とあたりを真っ赤に染めた。
「うわあああああああああああああああああああああああああ!!」
またも布団から起き上がる。今度は窓から光が差し込んでいる。自分の胸と顔はどうだ。胸を触り、顔もペタペタと触る。どうやら何事もなく、単なる悪夢のようだ。
「し、司令官さん…?」
ガチャリとドアがゆっくり開けられた。ドアの隙間からひょこっと顔を出す少し大人しげな少女。
「電…すまん、起こしてしまったか?」
彼女の様子を見る限り、髪は後ろで結んであり、服も乱れていない。たぶん起こしに来たか俺が叫んだことに異変を感じて起こしに来たんだと思う。
「あ、あの、司令官さんがなにか叫んでいたから…」
「ああ、すまん、酷い悪夢を見ていただけだ」
ゴミを出したと思ったら、作業員二人にマシンガンでハチの巣にされるわ、少女に胸を包丁で突き刺された後、顔面を砲撃で吹っ飛ばされる。これが悪夢じゃなければなんになるのだろうか…。
「えっと、朝ごはんできてますよ…」
「すまん、すぐ行く」
布団を畳み、クローゼットの中から肩に装飾の付いた一着の白い軍服を取り出した。
「……似合わないな」
軍服に着替え、ボタンは第一だけ外した。着崩したところで指示する人間はほとんどいない。総司令部は結果だけを見ている。たかがボタン一つ外したところで何も言われないはずだ。そして自分が白色がかなり似合わないことを知った。