司令は終始、真剣に私の話をきいてくれました。あんまり信じられる話ではありませんが、正直に話すしかありません。
話の最後に一番気になっていた事を聞いてみることにしました。
「私も艦娘さんなんですか」って。
艦娘は船の生まれ変わりで、私も船の生まれ変わりです。
でも艦娘は、人間では全く歯が立たなかった深海艦隊を相手に戦います。今の私にはそんな力があるとも思えませんし、どうやって戦うかもわかりません。
意外な事を聞かれたといった風に司令は目を丸くしました。
「そうか、説明しておらんかった。お主は間違いなく艦娘じゃ、言葉で言っても難しいから実際に見た方が早いだろう、4人で案内してくれ、彼女の儀装は3号ドックにある。」
「3番ドックですか、少し遠いですね。」
「基地内の案内も一緒にやってくれると助かる、お菓子代もはずんでおくぞ。」
その言葉を聞いた四人は一斉に立ち上がって。今までで一番元気な声で言いました。
「「「「了解しました、司令官!!」」」」
私は四人に引っ張られるようにして司令室を後にしました。最初にいた部屋に着替えが置いてあるそうなので、四人に急かされながら部屋に戻ります。
言われるままに引き出しを開け、中に入っていた{重巡洋艦用}と書かれた箱を開けてみると、服が入っていました。下着は別の棚に入っているそうです。
「よければ手伝いましょうか?」白雪ちゃんが言います。
「だ、だいじょうぶです、すみません...。」
服の着方はわかります。乗組員がいっぱいいましたから。
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わかりませんでした......ごめんなさい...。
入っていたのはやっぱり女性用の服、下着も女性用のものみたいです。薄い面積の狭い布切れが2種類あります。一つは「ぱんつ」というのは分かります、もう一つの「ぶらじゃあ」のつけ方がわかりません。今まで女性は広報活動でしか乗せたことがないので、こんなものは、(乗組員の)本の中でしか見る機会はありません。
考えていてもしょうがありません。白雪ちゃんに手伝ってもらいましょう。
ベッドの上でくつろいでいる四人に近づきます。なんだか恥ずかしいような気がして自分の顔が赤くなるのが分かります。
「あ......あの...白雪ちゃん......これのつけ方を教えて下さい!!」
「ぶらじゃあ」を突き出す。
四人はきょとんとした顔をして、次にみんな一斉に笑い始めました。
「やっぱり分からなかったね。」吹雪ちゃんが言います
「未来の軍艦には女性も乗っていると思ったんですが。」白雪ちゃんはうなだれています。
「白雪の一人負けみたいね......」初雪ちゃんはうなだれている白雪ちゃんの背中を慰めるように撫でてます。
「よぉしっ!」深雪ちゃんはガッツポーズ。
四人の一喜一憂に置いてけぼりのまま、私は白雪ちゃんに「ぶらじゃあ」のつけ方、服の着方を教えてもらいました。
話を聞いてみると、艦娘のほとんどが最初は分からないそうで、四人で私が付けられるかどうかを賭けていたみたいです。
部屋にある鏡で初めて自分の姿を見ます。黒い髪を肩のあたりまでで切り揃えた、少し気弱そうな眉が印象的な、かわいらしい女の子がいました。
服装は黒のタイトスカートに白のセーラーカラーが付いた紺色ベースのジャケット、ちょっと凛々しい感じがします。
これが艦娘になった私です。これからよろしくお願いします。と鏡の中の自分に頭を下げる。
「じゃあ行きましょう」部屋を出て、吹雪ちゃんに引き連れられて3番ドックへ出発です。
丁度その頃、司令室に一人の艦娘が血相を変えて入っていった。
「大変です、司令、例の艦娘の整備と補給で物資が大変な事に!!」
そう言って紙を渡す、その数値を見た坂田は一瞬めまいを覚えると共に、また厄介ごとが増えたと思うのであった。